昨期の原作マンガのアニメで一番力が入っていたのが「神のみぞ知るセカイ(神のみ)」なのは間違いないと思います。
構成が倉田英之氏かつ秋葉原やギャルゲーが頻出するあたりで「俺妹」と被ってしまったという不幸は無くは無いのですが、それでも、片や昨期No.1売り上げという差は如何ともし難いでしょう。
原作の面白さの差、と言われるとアレですが、ラノベとマンガという違う媒体で比較するのもフェアではない気がします。
神のみアニメは、とにかく声優陣が豪華ですし、ヒロインごとにエンディングを歌う声優さんが変わったり、キャラソンのようなものもあったりと手間は掛かっているのは凄く感じました。
それと「オトナアニメ」の倉田氏×原作の若木民喜氏の対談記事を読んでわかったのですが、原作者の意向がかなり入った作品だったということでした。
確かアニメ絵を渡辺明夫氏(エロゲ原画家としても有名だったぽよよんろっく氏)にしたのも原作者の意向ですし、バグゲーム回の脚本を担当した高橋龍也氏もギャルゲーオタクだった原作者のためでもありました。
アフレコ現場には倉田氏よりも長く居たという話もありましたし、原作者が相当深くアニメに関わったという意味では、他の原作漫画のアニメ作品よりも原作により近いのだと思います。
実際にアニメを観てから原作を読みましたが、原作の雰囲気をかなり再現していましたし、少なくとも原作レイプなんてことは有り得ないかと思いました。
ただし、アニメBDは思ったほど売れませんでした。原作は初動でイカ娘の3倍は売れているので、原作ファンがアニメBDを応援の意味でも普通に買ったとしても、この差にはならないでしょう。
作画のクオリティは高かったですし、それなりにBD特典もありますし、インパクトあるOP曲といい、原作ファンが手を出さない理由はない気がするからです。
でも結果的には、原作派が3分の1しかいないイカ娘に2倍以上の差をつけられてしまっているわけです。
この差はいったい何なのでしょうか?
個人的には、漫画の読者がアニメBD/DVDの主要な購入者にはなっていないから、と考えています。つまりは、漫画をアニメ化する前から愛読しているような人たちは、アニメのBD/DVDをあまり買っていないのかな、と。
もし原作ファンが一定割合でアニメ化された際にBD/DVDを買っていたとしたら、それこそ週刊少年ジャンプの作品のアニメDVDでランキングが埋まるでしょう。
でもそうはなっていませんよね。
もちろんジャンプあたりの作品がアニメ化された場合は深夜アニメとはならないでしょうから、普通に視聴率とにらめっこしながらでしょうがスポンサーからのお金があるので、DVDが売れなくても問題はないんでしょう。
アニメ化されることにより原作に箔が付く意味の方が大きいのでしょうからね。
イカ娘は原作ファンの数が非常に少ない状態でアニメ化され、正直なところ「何でこれがアニメ化されるんだろう……?」という話題しか放送前は無かったのですが、
アニメ化されて以後は、コアなファンのみならずライトなアニメ視聴者にも浸透し、しかしアニメからハマった層にはさほど原作に繋がらずに、BD売り上げでかなり高い数字が出たわけです。
つまりは、深夜アニメ視聴者がお金を出そうと思ったからこその成功だったと思うわけです。
イカ娘アニメの特徴は、アニメ化の際の1回3話構成など、原作ネタの構成の上手さでやや薄くなりがちな原作ネタを魅力的に描写したことと、
アニメオリジナル回・オリジナル要素がことごとく視聴者にはウケたことだろうと思います。
イカ娘アニメの野球をする場面がありますが、原作ではあそこはバドミントンなんですよね。
水島監督は野球アニメ「おおきく振りかぶって」も手がけていたことから原作の安部真弘さんに「バドミントンを野球に変えてもいいですか?」ということを聞いたそうですが、
原作の安部さんは特にアニメに口を出さなかったそうです(オトナアニメVol.19より)。
ここって結構重要なことだと思うんですが、イカ娘の場合、原作者がアニメ側に要望を出すことはほぼ無かったようで、ここが神のみとは大きく異なるところではないかと思うわけです