かんなぎ 127柱目

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126名無しさん@お腹いっぱい。
(第7話)

「僕は東大卒の弁護士だ」と言えばそれになれた。「僕はブラッド・ピット似のイケメンだ」と言えばそれになれた。
IDを沢山使い分ければ、場を支配する多数派になれた。面倒なことになったら切ってしまえばいいだけだった。

なのに、彼の心が満たされることはついに一度もなかった。

書き込んでも書き込んでも、それが現実に反映されることはない。
たまにふと、そのことに気づき、「何をやってるのだろう」と我に返る。

なのに、やめられない。
インターネットを、2ちゃんねるを、やめることが出来ない。
書き込みをやめたら息が詰まって死んでしまうような錯覚すらある。

「ヤマカンが、憎い…」

ヤマカンは、彼が欲するものをすべて持っていた。
若くして一国一城の主となり、雑誌にはインタビューが載りまくる
作ったアニメはヒット作となり、海外のアニメコンベンションからゲストで呼ばれ渡米する
さらに高学歴で、美人の妻を持ち、さらに実名を晒して言いたい放題を言う男。
彼から見れば、ヤマカンは自分がネットで演じるしか出来ない「完璧な男」だった。

悔しかった。憎かった。同じオタクなのに何故ここまで差がついた。
年齢も似たようなものなのに向こうは完全な勝ち組、自分は…そう考えたとき、彼の行動は決まった。

自分の未来には希望などもうない。ならば、せめて彼に敬意をささげまい。
生涯をかけてどこまでも粘着し、イヤがらせをしてやろう、インターネットならばそれが出来る。
2ちゃんねるの中ならば、僕は神なのだから…

九州南東部から一度も出た事のない彼は、はそう考えた。