あれは冬の寒い時期のことでした。
ロケで地方の山奥へ行きましてね、
そこでTVの撮影をしたんですが、
なんとも奇妙な目に遭いましてねぇ
ええ、その御婆さんが言うんですよ、
「お客さんは2人連れですか?」
もうビックリしましてね、その日は後から友人が
合流するはずだったんですけど、
そのことは誰にも知らせていなかったんですよ。
ふと視線を感じて振り返ったんですが誰もいないんですよ。
でもその時は背中がゾクゾクーってしましてね、
慌ててその日は旅館に戻ったんですけど
着いているはずの友人がまだ着いてないって言うんですよ。
なんだろー、事故とかに遭ってたらいやだなー、って思いながらも
仕方がないので待つことにしたんですがね、
そしたらですよ、電話がかかって来たんですよ。
友人が中古のキャラバン買って高速で警察に止められた
なんでも「泣き叫んでる子供が車内にいて虐待の恐れがある」という通報が元だったらしい
しかし友人は独身でこのときも一人しか乗っておらずいたずらだと思ったそうな
次は一般道で後方車からクラクションで止められた
後方車のドライバーは「車内に怪我した子供が3〜4人乗ってた」と言う
さすがにその車は売り払ったとさ
次の日は朝から雨が降りましてね、
ロケは中止かなーって思ってたらディレクターさんから
連絡が入りましてね、なんでも少し山の奥に入った所に
誰にも知られていない温泉があるって言うんですよ。
でも雨が降ってるじゃないですか、
山岳地帯だから霧だって出るし、止めましょうよって言ったんですよ。
でもね、このディレクターさんが「絶対いい絵が撮れるから」って
聞かないんですよ。
私も困ったんですけど仕事ですからね、
渋々その温泉へ行くことにしたんですよ。
今考えるとあの時止めておけば良かったと思うんですけどねぇ
で、友人が言うんですよ、
「あれ?さっきの子はどうした?」って。
「え?さっきの子って何のこと?」
「いや、さっき男の子といたじゃん」
もうゾッとしましてね。
そんな山奥ですし近くに民家なんか無いんですよ。
時々炭焼き小屋の人が寄るくらいで、他には絶対に人が来るような
場所じゃないんです。ましてや子供なんて。
私も何か気味が悪くなってきましてね、帰ろうよ帰ろうよって
友人に言ったんですけど、その友人は来たばかりですからね、
「何言ってんだ、自分だけ温泉に入ってさ。俺も入るんだ」
っていうこと聞いてくれないんですよ。