エウレカセブンは最低視聴率0.7%の糞アニメ 74
吉田健一×安彦良和 (1)
(中略)
安:実は今日のためにエウレカを見て、「どうしようかな、俺生意気なこと言いそうだな」とも思ったりも
したんだけど、吉田さんだっていうこと出てきたんですよ。(中略)で、エウレカでは総作監を?
吉:いちおうメインアニメーターという名前で、全カット自分のところを通してもらっています。
安:そうすると全話なんらかの形で手は加えているわけだ。第1話は作監?
吉:第1話は作監です。1話に関してはレイアウトから原画まで、かなりのところまで手を入れてました。
安:第1話は、作画はすばらしかったと思うよ。2話以降の演出はもっぱら「?」なんだけれど。
作画については第2話以降もね、第1話が非常にいいから多少落ちて見えるけれど、
じつにナイーブな感じで「よく維持なさっているな」という感じが強いですね。
(中略)
安:あの、最初に演出の話をしたんだけれど、察するに、演出とあなたとの間に軋轢があるんじゃないの?
吉:え!正直、僕自身も安彦さんにそこを突っ込まれるとは思わなかったです。軋轢というか・・・。
たとえばエウレカなんかも監督と話をして合意してもまたズレてくるんですよね。その辺の齟齬は、
べつの人間だから当然なんですけれど、なかなかキャラクターをつくることと、自分の妄想を働かせることと、
ドラマを考えていくこととの間でずいぶん引き裂かれている感じがするんです。
だから時に「ちょっと違うんじゃない?」という気分に陥るときもあるんですよ。
安:第1話から順番に見ていって、第6話で「うーん、もういいな」って思ったって感じになったのね。
それは率直にいって演出に対してなんですよ。こういう話をムック本に載せてどうかという気もあるんだけれど、
どうせだから率直に拾っていただけると、いいなと。いろんな意見が出ているんでしょ?
吉:あると思います。
安:はっきり言ってしまうと、監督さんが何をおやりになりたいかわからないんですよね。
監督さんは若い方のようだけれど、主体的にものをおつくりになる立場がおありなのだったら、
監督さんが未熟なんだとしかいいようがない。
吉:・・・はい。
吉田健一×安彦良和 (2)
安:アニメってずっと「子供がみるんだからわかりやすく」ということもあって、ディティールはどうでもいいって
いうことでやっていたんだけれど、それがそこにだんだんと趣味が持ち込まれるようになったわけですよ。
(中略)ところがガンダムやエヴァンゲリオンの影響を受けた”子供”の作品になるとディティールから入るのが
当たり前になってしまって非常に瑣末になっていくんだけれど、全体が見えないっていう、そういう傾向が今強い
ように見えるんですね。それは趣味性のもたらした弊害ですよ。だから第6話まで進んでも、枝葉にばかり
興味があるから、なにをしようとしているか見えないんですよ。僕が言いたいのは、若いうちから変化球ばかり
投げるな、っていうそれに尽きるんです。「もっとストレートを投げろよ」っていう。エウレカというヒロインの名前が
タイトルなら、 もっと演出がエウレカに惚れ込んで作れば、そのタイトル通りの作品になると思うんだけれどね。
吉:もちろん僕も参加しているわけですから、自分にも責任はあると思うんです。でもたとえば軍隊があって、
主人公のレントンは「ここでまともに生きていくためには軍に入るしかない」ってことを言っている。
じゃあ、そこで軍がどんな存在か描けているか。僕が描きたいのはそこなんですけれど、だからこそ、
僕自身が「出てこないじゃないか」とちゃんと指摘してきたか?と反省があるんです。
アニメーターとして監督と話し合いながら、かつ自分が描くに値すると思う世界を作品に投入したいときに、
どいういうスタンスでいればいいか、実は今は本当に迷いながらやっているというのが正直なところです。
安:演出って、ごく一部の演出家を除いてダメなんですよ。だからアニメーターがしっかりしないと。
僕がガンダムの時に作画監督とかではなくアニメーションディレクターって名乗ったのは、
演出でも何でも文句を言うよ、というつもりだったんですよ。コンテにも文句を言ったりしたし。
だからそう思うならば、絵描きの側から演出にもっと強いサジェスチョンを与えていいんだと思う。
だから「うるさいアニメーター」になるのが一番いいんじゃないですかね。
吉:ああ、そう言っていただけると、心強いです。
安彦 そういえば、そのころ、『エウレカセブン』の作監をやった吉田健一さんと対談する機会もあって、
何の先入観もなく観たんだけれど、醜悪だと思いましたよ。
あれもおじさんオタクが意味ありげに物を作るとこうなる、という典型的作品でしたね。
吉田さんとは作監同士ということで「あんたも大変だね」という話をしたんですが、
あまりにもつまらなくて腹が立ったんで、作品にはかなりひどいことを言いました。
―『エウレカセブン』は、僕も「大人のノスタルジーを子供に押しつけちゃいかんだろ」と
『Comic新現実』に書いて、角川書店からえらく怒られました。
安彦 僕も「演出なんて何もわかってないんだから」とか
「くだらないホンを渡されたら、作監は正直にいえばいいんだよ」
とか言ったら、ゲラ刷りで大幅に削ってきたんです。
「削るくらいなら最初から対談なんか組むな」と怒ったらかなり戻してくれたんですけど(笑)。
(略)
安彦 でも『エウレカセブン』で腹立たしかったのは、庵野さんや山賀さん、
貞本(義行)くんのような才能が彼らになかったことですね。
もっと巧妙に描かれていれば、それはそれで参ったと思ったんだろうけど、
過去のアニメの劣化コピーであることをカバーする技術もなかった。