D.C.S.S. 〜ダ・カーポセカンドシーズン〜104

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188名無しさん@お腹いっぱい。
 私は、おはようのキスがしたくて――その欲求が抑えきれずに――彼の口枷を外そうと手を伸ばした。
彼だってもう、私がどんな風に彼のことを思っているか理解してくれたはず。無闇に声を上げたりはしないと思う。
口枷に手が掛かる。なぜか彼の顔は怯えているように見えた。そんなわけないのに。
口枷が外れて、
「朝倉くん――」
「このキチガイッ! 近寄るな、触るんじゃねえ!縄をほどいて俺を家に帰せよっ!」
朝倉くんは絶叫した。
「キチガイ?」
無意識に、私は朝倉くんを平手で殴っていた。無意識なのだから、加減なんかできるはずもない。
パンッ、という甲高い音が七、八回もしただろうか。気が付くと、両の頬を真っ赤に腫らした朝倉くんが倒れていた。
酷いことをしてしまったと思う。
今の彼はあの女の影響を受けているから、私を受け入れてくれるに時間がかかるのはしかたがないのに。
私は謝ろうと口を開いて、
「ごめん――」
けれどそれは、朝倉くんのさっき以上の大音量の叫び声にかき消されてしまう。
「助けて! 助けてくれっ! 音夢っ!」

 一瞬、目の前が白くなったような気がした。
顔面を膝で蹴った。
なんで、なんで私の気持ちを分かってくれないんだろう。こんなに大切に思っているのに。
馬乗りになって、握った拳を無茶苦茶に叩き付けた。
どうして、あの女の名前なんて呼ぶんだろう。よりによって、あの女の名前を。
拳が痛くなって叩くのをやめると、両手を拘束してあるせいで顔を庇うこともできない朝倉くんは、
ぼろぼろになって鼻からは血を流していた。
「やめて……やめてくれよ……」
弱々しく呻く彼にまた口枷をはめて、手足の拘束を確認してからクローゼットに押し込める。
一緒に朝食を摂ろうと思ったのに――。

 まあいい。私が学校にいってる間、ひとりでいれば頭を冷やしてくれるだろう。
そうすれば、誰が本当に朝倉くんをかけがえなく思っているか理解してくれるはず。