魔法少女リリカルなのは XXXVIII(38)なの!

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330名無しさん@お腹いっぱい。
「ゆずれない願いなの」

 アルフは今日、オタクの聖地秋葉原をフェイトと一緒に訪れていた。プレシアの所望した書物、
小説版リリカルなのはを入手するためである。
 近所の本屋を全て探して回ったが、どこにも売ってなかった。
 もし今日、小説版なのはを手に入れられなかったら、フェイトがプレシアから厳しい折檻を
受けることは目に見えている。フェイトの後について歩くアルフはそれを心配していた。
「なんだろ、街中にポスターみたいなのがいっぱい貼ってある」
「フェイト、見ちゃ駄目だってば。それよりホラ、早く探そう」
 教育上よろしくないものを観察しようとするフェイトを急かし、アルフはとうとう目的の場所まで
来た。
 アニメイト秋葉原店である。ここを探してなければ、恐らくもうどこにも売っていないだろうという
確信があった。
 恥ずかしさに頬を赤らめ、俯いて自動ドアを潜るアルフとフェイト。
 文庫の売り場を目指し、階段を昇る。そてしとうとうメガミ文庫と書かれた帯を手に取る。
 隣でフェイトが大きく深呼吸をしているのが窺えた。
「待ってアルフ。よく確認しなきゃ。昨日は間違えてらいむ色戦記譚を買って母さんに叱られた
ばかりだもの」
「フェイト・・・・・・」
 脳裏にフェイトが鞭打たれる光景が浮かび、アルフは頭を振って想像を掻き消す。
 今一度、表紙確かめるフェイトとアルフ。そこに書かれた「舞HIME」の文字を見て硬直する。
 違った。なのはじゃない。すぐさま棚を見返しても「なのは」の文字は見当たらない。
 二人は愕然とした。
「もう駄目だ、逃げようフェイト。アニメイトにもないんじゃ日本中探したって見つかりっこないよ」
「そんなことない、諦めないで探せばきっと」
 失望感に膝から崩れ落ちそうになるフェイトを支えているのは、プレシアを喜ばせたいという
純粋な願いだった。

 二人は肩を落としてアニメイトを後にするが、最後の望みを断たれた今、進む足取りは定まらない。
 ふと、アルフはスクールランブルのコスプレをした女性とすれ違い、なにげなく振り返った。
 その瞳にひとつの看板が目に入る。『 と ら の あ な 』
「アルフ?」
 ふらふらと導かれるようにしてビルの中に消えたアルフの後を追い、フェイトも中へ入る。
 するとそこには、平積みで置かれている小説版リリカルなのはが!
 しかも、売れ筋とは言い難い富士ミスのROOM NO1301までもが平積みされている。
 自分の好みを知り尽くしたかのような、まさしく痒いところに手の届くラインナップ!
と ら の あ な !
と ら の あ な !
 とうとうフェイトは小説版リリカルなのはを発見した。
 落ち着いて深呼吸し、少ないお小遣いの入った小銭入れを小さな胸の前でぎゅっと抱きかかえる。
いよいよ本に手を伸ばそうとしたとき、別の誰かの手がそれを遮った。
 しかもあろうことか、その手は一冊しかない小説版なのはを奪い去ろうとする。
「ま、待って!」
 焦りを帯びたフェイトの制止に振り向く、白い服の女の子。
「なあに?」
「その本を・・・譲って欲しいんだ。どうしても買って帰らなきゃ駄目なの」
「残念だけど、こっちにも譲れない事情があるの。だから、どうしても欲しいなら闘うしかないよね。
互いの全てを懸けて、最初で最後の全力勝負!」

次週「決戦はとらのあなで・・・なの」