巴里はメトロに…【ノワール】VoL10

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また、老人の過去を探るうち、その老人自身が子供時代に家族を含めた民族虐殺を
経験しており、KGB時代の虐殺はその復讐のためであったことが判明する。
放っておいても病気で先行き短い老人、死ねば子供を含めた村人は悲しみ、さらに
は子猫も行き場をなくす。
しかし、仕事放棄を促すミレイユに反対し、霧香は自らの手で殺すことを決意した。
‥‥そして雪の降りしきる中、霧香は老人を射殺した。
銃声に驚き、霧香になついていた子猫もまた、雪の中へ逃げ出していくのだった。

‥‥というように、今回は殺人者としての業を感じさせるような、どこかやりきれないスト
ーリーで、自分的にはこういった展開を本作に望んでいただけに、かなり満足度の高
い内容でした。
殺す側殺される側双方にそれぞれの「罪」がある。また「必殺」の話で恐縮だけど、仕
掛人の藤枝梅安は自分たちの仕事について「もっと恨みの深い仕事」と語っている。
人道的道徳的見地からは、殺人行為などは断じて認められないものではあるだろうけ
ど、現実に殺人は横行し、そんな血にまみれた闇の世界は厳然として存在する。
それは人の心の闇であり、それこそが暗黒=ノワール、ということかもしれない。

もっとも、本作の主題はそういった殺人者の業などではなく、失われた霧香の記憶だと
か、ミレイユの過去だとか、それに絡む組織「ソルダ」等の展開がメインなのだろうけ
ど、でもやっぱり自分などは、アニメにおける殺人の是非なんてものを考えてしまいま
す。
忘れがちかも知れないけど、例えば戦争を描いたアニメなどでは、当然その登場人物
たちは殺人者であるのだし、ましてやそれを稼業とする人間を主人公に置いた本作な
らなおさら、ということで。

惜しむらくは、もう一人のノワール、ミレイユのキャラクター像。自分にとっては、ただの
「綺麗なお姉さん」の域を脱していません。
殺しのキャリアは霧香より長いのだから、その辺りの「凄み」のようなものを時折でも見
せてくれればなあ、と思うのだけど。
それは今後の展開で、ということでしょうか??