機動天使エンジェリックレイヤー Part7

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466凪の谷の名無しさん
楓に「お母さんに怒られてるみたいでした」と言うみさきだが、あの
セリフは、かなり唐突で、かつ欺瞞的だった。

みさきは幼稚園の頃に母親と別れ別れになって、母娘関係を自分の中に
リアルに構築できていないのかと思ってた。彼女にとっては、今までの
人生で「母親のいない時期」の方が、いた時期よりよほど長いのだ。その
幼稚園児の時でさえ、母親に対して「物分かりの良い子」として振る舞って
いることからも、ちゃんと叱って「もらう」ような、母娘としてのきちんと
した関係性が造られていなかったことが予想される。

それは萩子側も同様であったはずで、あの支離滅裂な、みさきに会わない
理屈付けは、理屈を超越する、本当の母性の欲求(それは後天的なものだ)を
彼女が持っていないためだとしか思えない。「自分と同じ病気の人のために」
云々という飛躍した理由を持ってくるあたりからも伺えるが、彼女は、本当は
「娘に会いたくない」のだ。「病気で母親の努めを放棄した可哀相な自分」の
方が、みさきよりも大切なのだ。

従って、この作品における母と娘は、関係を取り戻すために紆余曲折している
わけではない。萩子とみさきが再会することで、母娘の幸福な日々がダイレクト
に還ってくる筈もない。そんな日々は「はじめからなかった」のだ。
二人は、とりあえず、まず、自分たちが母娘の関係性など持っていなかった
ことを確認し、自覚するために、そうして絶望するために、ALのタイトル
マッチという「破滅の日」へ向かって進んでいる。
その破滅の先に、新たな絆があり得るのか、それとも母娘の絆など無しに、
みさきは大人にならねばならないのか。それがこの作品の、後半最大の
ポイントではないだろうか。