217 :
ナナシ:
今から一年と一か月前。五月の初め。
富士見のドラゴンマガジン、DMを見ていた、読んでいた私は、ふと、DM編集部へ
の電話を、ほんの冗談半分に思い立った。
こちらの素性を隠し、DMへの電話の最初に出たのは、明らかに声から、男の編集
子、それも、ほんの若いものだった。
すみません。こちら、十年前に貴誌に原稿を送って、何の音沙汰も無かったものなん
ですけど。(これ本当)
そしたら、
そんなの知らん。編集部は今、大変に忙しい。そんな原稿読んでいる暇無い。うちの
ファンタジア大賞に送ったら、二年か三年後には誰かが読むだろう。
そんなことを言われてしまった。
さすがに、何故そんなことを言われにゃならん。その無情さに泣いた。
そして、なんか収まりがつかなかったので、また再び、DM編集部に電話をかけた。
今度は、女の人だった。
すみません。先ほど電話をしたのですが、出られた方に、原稿を見る暇ない。もし
送ってくれたら、二年か三年後には誰かが読む。そういわれたのですが・・・。
そういった。
そしたら、電話の向こうの女性編集子は、ええ!?、ええ!?、と驚いていた。
そして、こちらは、
そんな態度とるくらいなら、もう小説雑誌なんかするな、ぼけ、そう言って電話を叩
ききった。
少し胸がすっとなった。
そしたら、この家の前で、大騒動になっていた。
富士見のあほ!。よりによって、道代の前で言いやがって!。
東京が捕まえたと!。
角川と菅沼が必死になって走り回りゆう!!。
そしてそれから二時間も経ったろうか、また、この家の前で警察の人がいいよった。
角川、せめて遺骨だけは返して欲しい、やと。
私はそれを聞いて、十日ほどの前のことを思い出した。