>>650 「あの子が・・・これくらいの時には断った」
・・は?
「あの子も・・・大切だ。この子と同じくらい、いとおしい」
・・な・・
「安心しろ。前にも言ったが子供には平等に接するつもりだ。俺も、銀時も」
・・この状態で、他の男の名前なんざ呼ぶんじゃねえよ。
「銀時の話なんざしてねえよ。俺と繋がってる時に余計なことばっかり考えてんじゃ・・」つい、かっとなって、ガキみたいな事を口ばしっちまった。しまったと思ってももう遅い。
今日の俺はどうかしてる。
なんだってんだ。おもしろくねえ。
「・・・」
突然。本当に突然、桂がそら恐ろしいことを言った。
「・・・今日のお前は、なんか、少し、好きかも・・・」
「・・・・・!!!!」
天然もここまで来たら、終わりだぜ・・・。
「気持ちわりいこと言ってンじゃねえ・・・」
これ以上、何か言われたらたまらない。冗談じゃない。桂の口をふさぐ。
萎えていた、心に灯がともる。俺も存外、単純だ。
「は・・・」
サービスが過ぎるぜ、てめえ。
じゃあ、俺も、お前の言葉の代価を、払ってやらなきゃなぁ。
覚えてる、お前の良いところ。
・・・忘れられるはずもない。
そこばかりを、丹念に優しく、深く突けば、
「!!」顔色を変えて焦り出す。クク・・・最初に言ったはずだぜ。なあ。
「言ったろ・・・声だせって」耳元で、偉く低くささやく。
「や・・・!!」
ああ、熱い。心も体も。
気持ちいい。・・・溶けてしまいそうだ。心も体も。
そう、俺はずっとこれを望んでいた。
無くした日から、
熱をもてあまして。
だけど、おまえ以外に熱を分かち合ってくれる奴には出会えない。
どんなにさめた身体に自分の荒ぶる熱を突き刺しても、
この熱は引かず、燃えず。燻るだけ。
どうしたらいいか分からない。
だけど、
桂。
俺は、お前の中でなら。
お前と一緒なら。
こうして燃えることが出来るんだ。
熱く、熱く、命ごと燃えて。
・・・・
早く男にもどってくれ。
そして、俺をぶった切ってくれよ。
ああ、だけど。
この身体も離れられない。
どうしたら良いんだろうなァ・・・
お前が喘ぐたび、声を上げるたび、
俺も声を上げているんじゃないか。
音にはならないけど、
魂が、悲鳴を上げている。
ああ、どうして
こういう形でしか
俺たちは繋がることが出来ないのかと。
ああ、・・・もし、許されるのならば。
こいつの
心の一部くらいは、俺に譲ってくれ・・・
俺が、この先も燃え続けていけるように。
・・・事が終わって、
一服したいところだが、こいつの前で吸うことは出来ない。
でも、そんなことはかまわねえ。そんな時間はもったいねえ。
今のこいつを、目に焼き付けておきたい。もう一生、会うこともないかもしれない。
そう。俺はそれを知っている。
「今日は、変態って言わねえんだな」
「貴様はぁ・・・・」
コホコホ。ひどくかすれた声で咳き込む桂。水を持ってきて飲ませる。
「身体、大丈夫か?」
「貴様が言うな」
「どうにも、初めての経験なんでねえ」
「・・・今日の貴様は、しつこい」そうきたか。
まあ、一回抜いてるからな」と言えば、
「貴様は・・・っ!」その焦り方。俺はお前の亭主じゃあるまいに。
「ん?嫉妬か?」そういえば、随分あの妓を気にしていたようだが。
「そんなわけあるまい。あきれているんだ」まさかな。
「へえ・・・でも、てめえは、そんな俺が好きなんだろ」嗤えば、紅くなって。
「あほか・・・・・・」とそっぽを向く。・・・なんだい。
これじゃ、まるで・・・
・・・やめてくれ、期待させるのは。
俺が煙草を吸いたいと思っているとでも勘違いしたか、
早く出たいための口実か、
「帰るから、存分に吸え」と言って、着物を取りに立つ。
その近くにある鏡台に、移った自分の姿を見て、絶句してる。
一面に紅い跡。
鏡越しに、よく見える。白い肌に黒い髪、紅い花。・・・奇麗だ。ああ、お前は奇麗だよ。
「たかすぎいいいいい!!!!」
「奇麗だろ。・・・いいじゃねえか。どうせしないんだろ。ばれねえよ」
「そう言う問題じゃない!」
「やはり、お前は嫌いだ」と言う桂が、本当にすねているようで、面白い。
ああ、お前のそう言うところ、俺は好きだぜ。
「そういえば、てめえ最近、銀時の喜んで銜えているらしいな。まるで本当の女みてえに」
「は??」
「銀時が自慢してたぜ」思い当たったのか、カアアーーと、真っ赤になって、言う。
「あ、・・あれは、やつが・・・どうしてもと言って、土下座して頼み込むから、仕方なく、一回だけしただけだ・・・。喜んでなど、断じて、いない!」ぴしゃりと言う。
なんだい。そんなこったろうとは思ったが。
「へえ、じゃ、俺も同じことして頼み込んだら、銜えてくれんのかなぁ」嗤って言えば、
「どうかな。試してみただろうだ」と、偉そうに言う。こりゃ意外だ。
「フン・・遠慮しとくぜ」
俺がそんなことしないと踏んで言ったな。だが、いやだ、とは言わなかった。
どうかしてるぜ、今日のお前。俺もか・・・。