>>641 ああ、行くのか。そんなに、俺といたくないのか。そいつに、何かすると思っているのか。
「待てよ」
手首を捕んで、引き寄せる。
「はなせ」ありったけのすごみをきかせたつもりだろうが、全然効かねえ。
「一度この部屋に入って、何もしないなんて野暮じゃねえか」
「は・・・貴様」
そんなにこいつが大事なら。お望みのこと、してやろうか。奴の腹に手を当てる。何も聞こえないし感じねえが、ここには、奴の宿した命がある。
今、俺はお前の大切な命を握っているんだぜ、桂。さあどうする。
「・・・・!!!」桂が息をのむのが分かる。
「こいつ、いなくなったら困るよなあ。銀時、狂っちまうかもしれねえな。クク・・それもそれで又面白えかもな。また、あの白夜叉に会えるんじゃあねえか」
「な・・・」その反応。たまらねえ。腹をゆっくりさする。
「桂・・・」低く耳元でささやく。
「・・・・高杉」
素早く桂を抱え上げると、隣の布団にゆっくり寝かせた。どう扱えばいいのか。
「フン・・・随分おとなしいじゃねえか」
「抵抗するだけ無駄なのだろう」
「・・・・」
やっぱり、お前は、そんな風に俺を見ているんだな。お前は銀時に俺のことを“強姦魔”って言ったようだが。・・・だったら、お望みのままの俺でいてやろう。
着物を脱がしては、何処までしたモノかと考える。
これで流れちまった日には、洒落になんねえ。
この腹に、俺以外の男の命が宿ってる。
不思議なもんだ。
女ってのは・・・。
我ながら変な愛撫をしていると思ったが、そのせいかなにか
桂が俺を見た。ふと、目を合わせると、それは女の顔じゃねえ。
・・・母親の顔だ。子供を案じる、母の顔。
てめえ、そんな顔するようになるとはな。
身体をなでながら、思うこと。この肌にはなんの乱れもない。
「奇麗な身体だな・・・本当に奴に触らせてないんだな」それに気分が高揚する。
同時に、この身体は、今、俺が支配しているんだという暗い満足がおそってくる。
「高杉、やめろ・・・」とがめるが、かまやしねえ。
俺の痕跡を付けてやるよ。今日が終わっても、この跡を見るたびに俺を思い出せばいい。俺と身体を重ねたことを、俺の熱を、思い出してくれ。
「そんなことばかりしていると、女にもてなくなるぞ・・・」
「フン・・・言うようになったじゃねえか」
生憎、こんなことすんのは、てめえにだけなんだよ。
こいつが感じてないのは分かってる。
もともと、全然乗り気じゃねえ。
俺と繋がっても、上の空。
大事な腹のことしか考えてねえ。
そんなにこいつが大事か?あいつの子だから大事か?わざとらしく腹の上に手を置いて
「声、出せよ」と言えば、心底困惑したように、俺を見る。
「高杉、手・・・」
「・・・さっきから、そればっかだな。つまらねえ」
「貴様が乱暴だから・・・」
「アァ?ずいぶんだな」てめえが集中しねえのが悪いんじゃねえか。・・・それとも何か、
もう、お前はあいつじゃないと、だめなのか。
あいつにしか、感じなくなってしまったのか。
この身体に、刻みつけた俺はもういないのか・・・・
ああ。それとも。
お前は、俺のことが嫌いなんだったな。あれは俺の独りよがりの勘違いで、お前はどうも思っていなかったんだ。元から。
「銀時相手はどうなんだ」
「は・・・」
「感じるのかよ」
「な・・・」
図星か。じゃあ、俺は俺のために、やらせてもらう。
ばかばかしい話だが、これじゃあの妓相手と変わらない。
身体(そっち)はよくても、心(こっち)が全然感じねえ。気持ちよくねえ。
たかぶる身体とは裏腹に、心が萎えていく。
その双極に、たまらなくなって、聞いた。
「・・・てめえが俺のガキ孕んでた時は、銀時とやってたんだろうが」
「な・・・」
「このガキに対してはえらい過保護じゃねえか・・・」
桂が、何か考ええてから、口を開く。