>>633 気づいたら、自分のいいように動いていた。限界が近い。
俺が目を細めると、承知したかのように手を沿えた。
「・・・・ぅっ・・・」
は・・・
最後まで、手も口もはなさず、飲み下す。
出来た女だ。
その赤らんだ頬をなでた時、
トントントン・・・と階段を上る音が。
何となく、その音に聞き覚えがある気がする。
「高杉はン」
女が何か言ったが、構わず立ち上がり、
ふすまをあけた。
思わず、くるりと、向きを変える、妓ではない女。
紅い簪で結い上げた、黒髪。細い項。あの匂い。
気づいたら、奴の髪のかんざしを抜き取っていた。
バサ・・・っと、髪が堕ちる。ああ、奇麗だ。
俺を振り向いて、
!!!!!!
驚愕の表情。
静かに奴の腕を掴むと、無言で部屋に連れ入る。
奴はつったったまま。「座れ」と言えば。
部屋の隅、俺と離れたところに座る。
手を腹に載せて、警戒している。そんなにそいつが大事なのか。
「高杉はん、一体、どういうわけですのん」
とろりとした女がすり寄ってきた。忘れていた。
「気が変わった。出ていってくれ」
「そんな・・・今日は偉く気が変わる日どすなあ・・・」
「金は払うから、頼む」出ていく女を、桂が目で追う。その様子がおかしくて、
「たまに来ては、舐めてもらうんだ」といえば、あからさまに顔を赤らめる。面白い。
そうだな。てめえは昔から、こういうところ嫌がったなあ。潔癖性なのか。だから、
「傷を」と、つづけて言った。それだけで、なぜか納得したような顔をする。おいおい、信じるのか。
「お前さん、その様子だと銀時に会わなかったようだな」
「あ、ああ・・・高杉、ここから電話をくれたのか?」
「まあな。下でちょっとばかり奴と飲んでいたからな」
「!!!!二人でか・・・めずらしい」
「まさか。たまたま会ったんだよ。俺は違うツレがいる」
思わず、癖で煙管に火を入れるところだった。その動作を隠すためにくるくる煙管を回す。と、桂がそれを目で追っているので、
「俺は、もうちっと派手な色が好みだが」と言えば、
「貴様は何もかもが派手なのだから、ひとつくらい落ち着いたモノがあった方が良い。ちょっとはおとなしくしろ・・・その方が、世の女のためだ」などといいやがる。
ああ、いつぞやの電話の女の件かとは思ったが、別段蒸し返すこともない。
それより、
「なんで銀時がこんなところにいるんだろうなァ」
「おおかた・・・不満なのだろう」
「相手してやってないのか」
「・・・子供がいるのに」まただ。桂は腹をさすっている。
「へえ。随分大切にしているんだな」面白くねえ。
「子供が出来た時の、銀時の喜び方は普通じゃなかった。貴様も分かるだろう。・・・あいつは・・・」
「一人もんだからな。血のつながりを欲してやまないんだろうよ」
「ああ。・・・じゃ、俺は帰る」