>>554 余談 異父兄弟
スナックお登勢。
今日は、祝い酒だ。
何でかって??!そりゃ、あれだ。ご懐妊祝いって奴???俺の子供の!!!
「金時、ちょっと飲み過ぎじゃ??」
「にやけちゃって、どうしようもないねえ。こいつは」
ふうとお登勢が煙を吐く。
「い??よ、い??よ、今日は何でも言ってよ。なんかさ、世界中に言いふらしたい気分なんだよね??!!」
「フン」
といって、お登勢がにやっと笑う。
ガラガラ・・・そこへ、桂がやってきた。
「そろそろ、帰るぞ銀時」
「ああ???もうちょっとくれえいいだろうが。お前もつき合えよ」
「困った奴だ」
「良いじゃねーか、俺は今、幸せにひたってんの」
あ、言っちゃった。
「月子、旦那の横にすわんな。今お茶入れてやるから」
いそいそと用意するお登勢。
「すまない、お登勢殿。・・・坂本も、忙しいのにこやつの戯言につき合わせてすまんな」
「い??きに??!めでたいことはみんなで分かち合うもんじゃ!わしも、お亮ちゃんとの結婚の暁にはみんなにつき合ってもらうぜよ」
アハハハハと、明るく笑う。いつだよ、それ。
「松坊も、お兄ちゃんになるんだねえ」
「ビンボーコダクサン」
「猫耳、てめえ!!」
ふと、そういや、兄弟になるんだよなって思った。あいつの子と、俺の子が・・・。何か複雑??。あ、そういやこのことあいつしらねえよな。
教える気もね??けど。いや、まてよ。俺の子をヅラが身ごもったって知ったらあいつはどうするだろう。焦るかな?焦るよね!嫉妬するよね!!
この幸せなムードを教えてやったら悔しがるよね!!!
なんか、暗い考えが浮かんだ。
「坂本・・・電話かしてくんねえ?」
「ん?いいけど、どうしたが?」
「高杉に報告する」
「!!!!」
桂が猛反対したが、お登勢が味方に付いてくれた。
あああ・・・
あぼーんとあぼ〜んだけになった・・・
>>559 「まあ、松坊に関係のあることだからね。一言言うのは良いと思うよ。だけど、余計なこと言うんじゃないよ、銀時」
「へ??いへい」
ケケケ。今に見てろ、高杉。てめえの焦る面が目に浮かぶようだぜ。
TULLLLL・・・・
でた相手に、坂本がまた名前を告げて、総督・・・と言っている。俺は、さて、なんて切り出してやろうかと考えていた。ニヤニヤが止まらない。
「今、みんなで飲んでたぜよ??。ん??ああ、そうそう。金時が・・・え?」
なんだなんだ。
「・・・分かったぜよ」
と、携帯を俺じゃなく、ヅラに渡す。
「なんか、おまんに替わってくれって」
!!!!!はあ??高杉いいい??????!!!!てっめえ!!
「坂本、スピーカー!」
「いや??それはどうかのう??」
なんでか今回だけは渋り倒す。
「偉く深刻そうじゃき」
は?
桂も、電話にでるかでないか悩んでいるかのようだ。じゃ、でんなよ!!
とりあえず、その隙にピッと、スピーカーのボタンを押してやった。仕方なしに、桂は電話を耳にあてた。
「あ・・・俺だが」
桂がでる。なんでか、わざと低い声を出しているようだ。
「やっぱりな」
間髪言わず、奴の声が聞こえた。
「・・・」
「おかしいと思ったぜ。最近、連絡をよこさねえ。こっちが掛けてもでやしねえ」
「・・・」
はああ??!!なにそれ。衝撃発言!ちょっと、浮気発覚??!!
「大丈夫なのか、身体」
「ああ、大事ない」
「・・・なるほど、じゃあ、そういうことか」
奴がひときわ低い声を出す。
「・・・高杉」
心なしか、桂の声は震えている。
「素直に言えばいいじゃねえか。それとも、俺がてめえの腹をぶったたきに行くとでも思ったのか?」
「そ、そんなことは・・・」
お、オイオイオイオイ!!!言うに事欠いて、何恐ろしいこと言ってンだよ、てめえ??????!!
「・・・まあ、それも面白そうだがよ」
ブチッ・・・俺の中の何かが切れた。気づいたときには、受話器を奪っていた。
「てめえええ!!!何、人様の子供たたきに行くだとかふざけたこと抜かしてんだ!!」
「・・・銀時・・・・・・よかったじゃねえか」
は??あ、あれ???何か調子狂うんですけど。
「あ、ああ」
何とも、応えあぐねていると、信じられないくらい殊勝な声が聞こえた。
「すまねえが・・・ヅラに替わってくれねえか・・・あと、人の話を横聞きするのはいい加減辞めろ」
くう??????!!お見通しかよ!!ってか、なんか。悔しい。こいつは分かってたんだ。分かった上で、・・・
「替わりません????????!!!!人ン家の奥さんとコソコソ連絡取り合うような間男野郎になんか!!!替わって欲しかったら三べん回ってワンて言え!!!」
「銀時、子供っぽいことするんじゃないよ」
「金時??、回っても見えないぜよ。ちゅうか、そりゃマナー違反ぜよ??かわいそうじゃ」
「アホの坂田はソコデオドッテロヨ」
なんでか俺が悪者何ですけどォォォォォ!!!
「・・・そうか。仕方ねぇな。どうせこれをヅラは聞いてるんだろう」
「あーあーあー、聞こえません??」
「ヅラ、後で電話する。・・・・・でてくれ」
プッ・・・ツーツーツ・・・
って、何それ???!!!
・・・で、
「ヅラくん・・・いつからあいつと浮気してるわけ?」
ヅラは、仕方ない、と言う表情で、話し出した。
「浮気などしていない。ただ、松之助のことでたまに連絡しただけだ。・・・坂本から番号を聞いてな」
「そんなの初耳なんだけど?!!」
「お前に言うとうるさいと思ったからだ」
「何それ!!!っつーか、どんだけ頻繁に連絡してるの?!」
「ほら、うるさい。・・・そんなに頻繁ではない。それに」
ヅラは、お茶を一口飲んでから言った。
「妊娠が分かってからは一回も連絡していない」
は・・・。てことは、4ヶ月はしてないって事か。なんで・・・
「できれば、このまま、この子が生まれるまでは話さないでおこうと思っていた」
「・・・月子、前にも言ったがね。少しは信用してやりなよ。人の親になった男は、了見が広くなるんだよ、あんな男でもね」
なんだ。ババア、何か知っていやがるな。でもよ、・・・
俺は、坂本と目を合わせる。いいや、奴ならやりかねない。人の親であろうとなかろうと、あいつは自分の野望のためなら、何が犠牲になっても構わない奴だ。
たとえ、自分の子だとしても同じだろう。だから、俺は奴に松坊を渡さない。
それに。そうか。だから連絡しなかったのは、この時期になってもヅラが男に戻っていないのを不審に思われないためか。
・・・察しの良い高杉のこと、知ればきっと答えにたどり着く。子供を守るために、ヅラは連絡を絶ったんだ。
そう思うと、さっきヅラに怒った自分が馬鹿みたいだ。ごめん。
「お登勢殿・・・何度も言うようだが、世間一般の男はそうかもしれぬが、あいつは・・・高杉は違うのだ」
「そうかねえ」
「さっきは、ああ言っていたが・・・何をやるか、何を考えているか計りしれん」
「好きあって、子供作った相手に言う言葉じゃないねえ」
「ババア!!!!何言ってンだアアア!!気色悪りいこと言うんじゃねえよ!!」
「本当のことだろ?」
「いや、俺は奴を好きではない。奴は・・・ただの戯れだろう」
「そう思うんなら、あんたはまだ若いね。あたしはどう見ても、あの男はあんたに惚れてるように見えるよ。未だにね。ただ、素直じゃないだけさね。
それか、言えない事情があるんだろ」
何かを思い出すそぶりでそう言った。
!!!!!!
「ババア、いい加減にしねえと・・・・」
俺はきっと殺気を放っていたんだろう。
坂本が、さっと俺の前に立つ。まあまあ??などと良いながらも目は真剣だ。
「あんただって・・・」
と、お登勢は続けようとしたが、ヅラの顔見て、やめた。俺に気を遣ったのかもしれない。
「まあ、でも今は銀時がいるんだから、守ってもらえばいいじゃないか」
「言われなくたって守ってやらあ!!あいつなんかには指一本、触れさせねえ」どかっとイスに座り直す。
「お前、あいつから電話来たらどうすんの?」
「・・・・出る・・・かもしれない」
「かもしれないって何??????かもしれない運転ですかアアア??」
「銀時。俺は子供達が大事なんだ。お前も分かるだろう。俺がどうなろうと構わぬが、子供に手を出そうとする奴は許さない。
お前に守ってもらうまでもなく、何かするつもりなら、俺があいつを斬るつもりだ」
いつもの目だ。
いつもの桂の目。
・・・・
夢か、それとも願望か。
俺が本当は本当に女で、
こうやって一生送っていくのも悪くない・・・なんて思った気もする。
それはそれで気持ち悪いか・・・やっぱナシ。
***数ヶ月後***
子供が生まれて、三ヶ月くらい経った頃。
高杉にあった。
久しぶりにあったあいつは全く変わっていなかった。見かけは。
本当のところはどうなんだろう、計りかねている。