>>490 「先程は・・・拙者が邪魔をしてしまったようで、申し訳ない」
と言えば、困惑したように、拙者を見つめる。
「いえ・・・別にノックされたわけでもないし、貴方のせいじゃ・・・でも、あの人の友達ですか」
「友達というか・・・まあ、仲間でござるが」
「あの人、どういう人なんですか?彼女とか居るんですか?なんで私に・・・」
と言って、また泣き出してしまった。
ちょっとおおお????。晋助。拙者面倒ごとはお断りと言ったはずでござるよ??。
なんかすごい修羅場的になってるんだけどおお????。と、突然。
「泣くな、娘さん。何があったかは知らぬが・・・可愛い顔が台無しだぞ」
桂!!!何を男前なことを言ってるでござる!!というか、そういやこの人男だった。
なんと、そんな桂に、三人組の女はあることないこと(かは知らないが、)泣いている娘が晋助に受けたひどい仕打ちについてとくとくと語り出した。
ああ、これが女の連帯感なのか。
“ひどい奴の仲間”=拙者 と、一緒にいる桂を味方に付けて、“ひどい奴”=晋助 を、懲らしめに行くつもりらしい。恐ろしいことを・・・
桂は、先程の弱弱しさはどこへやら、すっかり頼れるお姉さん的存在に。
「こんな若い娘をたぶらかすなんて、大人として最低だ!」だとか、「男の風上にも置けぬ」だとか。・・・・そして、一言。
「全く・・・なんてひどい奴だ!!!よし、俺が行って殴り殺してきてやろう!!」
などと言い出す始末。鬼退治の桃太郎か、あんたは。
勘弁して下され。
「いやいや、ひとまず、こちらの話は拙者が何とかする故、月子殿は部屋にお帰り下され。身体も本調子ではないことですし」
と言って、とりあえずなだめる。
そして、桂の部屋に行くと、血相変えて白夜叉が飛び出してきた。
「んもおおお??????!!!!心配したでしょオオオ!!!電話かけまくっちゃったよ!!」
と言って、月子に抱きつく。
「大丈夫?」「大丈夫」などと、ああ、バカップルぶりを発揮だ。それで、今までのいきさつを説明する。しぶしぶながら、白夜叉が御礼を言った。意外だ。
で、桂が、まだ「これから高杉を殴りに行く」なんて言うと、
「はあ?あいつのとこに行くって??だめに決まってるでしょオオオオ!!!大体、あいつは女にだらしないの!!!だから自業自得!!!ほっとけ!!!」と言って聞かない。
「そうでござる。こちらの問題はこちらで片を付けますよ。では、お休みなさいお二人とも」
と、202号室を後にした。
はああ??にしても、気が重いでござるなあ・・・
女の子三人は、ずっと後を付いてくる。
その間にも“ひどい奴”について、色々聞かれたが、適当にあしらうことにした。
まあ、悪いのは拙者もだが、晋助も。とりあえず、会わせるくらいはしておくか。あとは、晋助がどう出るかにまかせればいい。
部屋の前に立つと、案の定、まだ起きていたらしい晋助が「なんだ」と出てきた。
だが、その姿に、みんな息をのむ。
なんともまあ・・・煽情的だ。
水でも浴びたのか、濡れた髪。大きくあわせの開いた着流しの浴衣。
厚い胸板と、隆々とついた奇麗な筋肉が垣間見える。ところどころに、刀傷があるが、それがまた妙に男らしさを感じさせる。
そして、熱を帯びた熱い隻眼。
吐息までが、色を含んでいるようだ。
おおかた、先程桂の肌に触れ、口づけた余韻が残っているのだろう。この人は男なのに、たまに驚くほど艶っぽい時がある。
斜に構えた顎を上げて、見下すように、女三人と、拙者を見て、
「アァ?なんだ、誕生日パーティでもはじまんのかあ」
と言った。
その言葉に、雰囲気に飲まれていた女の子達の中の、一番血気盛んな子が、顔を赤らめながらも、気丈に言った。
「この子をもてあそんだこと、謝って下さい!」
「・・・あぁ?」
ふと、考えるそぶりを見せ、真ん中の涙目の女の子を見つめて言った。
「ああ、さっきはすまなかったな。ちと急用を思い出しちまったんでねぇ・・・詫びに行こうにも、部屋を知らなかったもんで」
さらりと心にもないことを言ったよ、この男・・・。しかし、ことのほか、女の子には効いているようで、その後、誰も何も言わない。
「俺も、あんたにはもう一度会いたいと思ってたんだ。来てくれてうれしいぜ」
低い、響きのある声で言う。そして、じっと、その娘を見つめる。
他の二人にはいっさい目をやらない。じっと、ただ、その子だけを熱い目で見つめ続ける。一瞬たりともそらさない。
ああ、これは、勝負あったな。この男に、こういわれて、見つめられて、悪い気がする女はいない。
「もし、許してくれるなら、部屋で一緒に一杯やろうや???????????? その気がないなら、俺のことは忘れてくれ」
もう、彼女は泣いていない。嬉しそうに顔を赤らめている。
心は決まっているだろうに、隣の二人と顔を見会わせる。二人の手前、素直に行けないのだろう。
さっき息巻いていた一人の子が、「どうするの、すず」と言った。ああ、鈴という名前だったのか。初めて知った。
そのやり取りを、高杉はややつまらなそうにちらっと見て、こちらに視線を送る。・・・お前、面倒ごと嫌だって言ってなかったっけ?
俺は言いつけ守って部屋にいたのによう・・・と、若干すねているように、拙者は感じた。それが、あっているかどうかは分からないが。
すこしして、「ごめんね、みんな」と言って、高杉のところに鈴が歩み寄る。
「来な、すずサン」と、その腕を捕る。あ、晋助、主も今、その名前知っただろう!
それから、拙者の方をちらっと向いた。
「部屋聞いて、払っとけ」
「承知したでござるよ」
「それから」
「は」
「万斎、てめえは、もう、寝ろ」
と言って扉を閉めた。
まいったな・・・。
あの人は、この後も、自分がこの部屋の前に立てば間違いなく、また途中でも部屋から出てくるだろう。
だが、できれば、急用がない限り来て欲しくない、と言っている。
そりゃそうだろう。いくらなんでも、二度はあの子もかわいそうだ。
まあ、きっと晋助は自分が面倒だからそう言ったのだろうが。
そんなの、釘を刺されるまでもなく、分かってるでござるよ。
さて、女の子達に、
「部屋番号教えてもらってもいいでござるか?迷惑かけたお詫びに、この宿代は拙者達で払わせてもらうでござる」
といえば、とたん。
「え・・いいんですか」
などと、好意的になる。まったく、女という奴は。さっきまであんなに不満を言って息巻いていたというのに。
ここの宿代は安くはない。きっと、あの子達も“ラッキー”程度に思っているだろう。
しかし、この単純さを差し引いても、丸く収めるコツを良く心得ていらっしゃる。
笑顔で、二人の娘を見送って、
拙者も自分の部屋にはいる。
それにしても・・・
ちょっと意外だった。
三人の娘に、怒鳴って、すごんで黙らせればそれはそれで良かったのに。
官能的な雰囲気の晋助を思い出す。
桂に会ったからか。身体に熱をもってしまったから。
一人で処理するよりはましだと思ったのだろう。
明日は早くに出発する。
拙者も、マジに寝させてもらうでござる。
【高杉】
娘の身体を味わいながら、桂の姿を重ねて思う。
今頃、桂は銀時と・・・
ああ・・・あいつの肌にもう一度、触れたい。唇を重ねたい。
もう一度でいいから、抱きたい。
ただ、一度で良いから・・・
そんなことを考えていたら、急激に身体の熱が上がり、苦しくなった。
うっかり娘の中に出してしまいそうだった。
「は・・・」
瞬間、引き抜き、腹の上に吐精する。
それを確認して、娘は、幸せそうに笑った。
「あ?」
その顔を見て、案外この娘、若いのかもしれない、と思った。