>>476 余談 慰安旅行3
【万斎】
拙者が、一人になってから割とすぐに、月子は意識を取り戻した。
「あ。・・・???!!」
「気付いたでござるか」
ぱっと、拙者の腕から起きて、何事か、と言う顔をする。
「先程、意識のない月子殿をこの男が抱えているのを見て、晋助が助けたでござるよ」
「た、高杉が????」
足下の男を指し示すと、あからさまに驚く。
「うわっ!」
「立てるでござるか?長居は無用。速く白夜叉殿の部屋に戻るが良いかと」
こくこくと頷く桂。
支えながら、廊下に戻る。
売店の前を通った時、あっと何かを思い出したように桂が立ち止まった。
「高杉はどうした?」
「晋助なら、部屋に戻ったでござるよ」
「そ、そうか・・・また世話になってしまったな」
「まあ、貴方に対しては、特別でござるよ」
と、言えば、不思議そうな顔でこちらを見る。・・・なんとも、きれいなお方だ。桂だけど。
しかし、心なしかやはり顔色が悪い。速く部屋に戻さねば。
「歩けなければ、抱えるでござるが・・」
「いや、いい!・・・そうじゃなくて、これを」
ごそごそと、拙者が持っていた桂の袋から、一つの包みを取り出した。
「奴に・・・誕生日だろう」
「晋助にでござるか?」
「ああ・・・色々と世話になっているしな・・・あの、あれだぞ。そんな深い意味はないからな。
ただ、まあ、思いつきだ。たいしたものでもない」
などと、あたふたしながら渡してくる。なかなかこの表情は可愛い。
「では、確かに。引き受けたでござる」
桂が、ちょっと、はにかんで嬉しそうな顔をした。