余談 5 端午の節句
(松之助 生後11ヶ月頃)
【高杉】
最近の万斎は・・・嫌がらせなのか、タイミングが悪い。
この間もそうだったが、今日もまた。
今日は、割といい女だった。肌が白くて吸い付くようだ。
おまけに、腰の動きが尋常じゃねえ。
かすれた声を上げながら、女の腰がくねるたびに、限界に近くなる。
「う・・・っ」
めずらしく、声がでる。
熱い吐息が女に掛かる。
何とも言えない快感に襲われる。
ああ、・・・
・・・・ん?
・・・!もうちっと・・・なのに・・・なァ。
ちっ。
はあ。
身体を離す。珍しく、名残惜しい。
「すまねえ、ちょっと待っててもらえるか。それとも、帰るか?」
聞けば、女は怪訝な顔。
だが、「もちろん、待つわ」と言った。「でもすぐ戻ってね」と付け加える。
「じゃ、ちょっと待っててくれ」と女を待たせる。
部屋を出ると、案の定奴が居る。
「おや、珍しく、息が粗いでござるな」しれっと、言う。
「なんだ」
「月子殿から、お電話でござる」
「ああ」
思い出したように掛かってくる電話。
ふう。息を整える。それを見て、さも楽しそうに。
「部屋の中でかけないでござるか」
じろりと、万斎を見る。てめえ、黙ってろ。分かってるくせによく言うぜ。
俺が電話する間、大抵こいつもいる。別に気にしたこともないが。
「なんだ、どうした」
出れば、
「あ、あの・・元気か?こちらは変わりないのだが」
「おう」
久しぶりの、奴の声。
「そう言えば、松之助の誕生日、お前、知らぬのではないかと思って・・・」
「ああ。そうだな」そういえば。
「五月五日だ。・・・端午の節句」
「こりゃずいぶんと・・・出来た日だな。めでてぇもんだ・・・」
などと、話し込んでいると。
(ヅラは大抵、話しが長い。話し始めると止まらない。まるで本物の女のようだ)
ん・・・
本物の女と言えば・・
【万斉】
晋助は、必ずこの気配に反応する。
まるで、獣のように。
拙者が扉の前に立つと必ず出てくる。
それは、一人の時も、そうじゃない時も全く同じだ。
例え、女と繋がっていようと、中断してでも出てくるのが常。
そして、出てきても、乱れもなく、割と平然としている。
だが、今日は珍しく、息が上がっていた。
ああ、丁度良いところだったでござろうか・・・。
拙者の所為ではないとしても、同じ男として若干同情した。
まあ、晋助にとってはそんなに重要ではないはずだろうが。
桂の電話を取り次がなかった方が、何を言われるか分からない。
電話を横でなんとなしに聞いていると、だいぶ晋助がつまらなそうになってきた。
おおかた、エリザベスとやらの話にでも脱線したのか。