「いい、女だ、・・・・綾乃サン、あんたは」
わざと、区切って囁くように言う。
なんて顔するんだ・・・お登勢は目を細めた。
「ごめんだね。あたしの相手しようなんざ100年早いよ、若造が」
「クク・・・そうかい。残念だ」
ああ、でも。この男に、女が惹かれるのも無理はないと思う。長年女をやってきて思うが、こんなに闇を抱えて、傷を抱えて生きているこの男が、手をさしだしたら拒めない。
その手を、振り払うことなんか出来ない。きっと、掴んでしまう。
そして、掴んだが最後、放したくないと思ってしまう。そう言う気持ちにさせる男だ、この男は。
「たちの悪い男に掴まったもんだよ、あの子も。」
「はっ、わかってねえなあ。あいつの方が俺よりよっぼどたちがわりい」
月子の話題が出たことで、男がすっかり毒気を抜かれたような顔をした。