バリン!握っていたグラスが砕けた。
「・・・・っつタマ来た??????!!!!なにあいつ、何様???」
「アハハハ、こりゃ一本捕られたのう」なんてのんきに笑う坂本。キャサリンも嫌な笑い方をする。お登勢のババアもにやにやしやがって。俺の怒りは収まらない。でもって、
「ヅラ君??、あの夜って何??どの夜??!!何したの?変態プレイ???」
「そんなわけなかろう!!!」
「金時、そりゃ、野暮ってもんじゃ??アハハハハ」
「アハハじゃねえ!モジャ!!」
もう、俺は桂につかみかかる寸前だ。なにしろ、気にくわないのは、桂が貌を紅くしたまま俯いてこっちを見ようともしないことだ。
くっそ??????!!てめえって奴は・・・
「気障な男だねえ。・・・だけど不器用だ。だからいい女を逃がしちまうんだろうね・・・」
ふーーと、お登勢が煙を吐いた。
ああ、どうせこうやって俺をやきもきさせて楽しんでんだろうな。あいつ。趣味悪い・・・腹立たしいけど、それもこれも奴の思うつぼかと思うとこれ以上険悪になるものばかばかしい。
「ま??、最後に勝てば官軍なわけだから」
「あら、大人になったじゃないか、銀時」
「ふん」
外に出てみると、確かに満月だ。
白くぽっかりと光り輝いている。
江戸の空に・・・
そして、満月にくっきりと浮かぶ一艘の船の輪郭。あの船は・・・あの形は。
・・・鬼兵隊。
となりの桂が、はっと息をのんだ。
お前、一体どういう状況で奴と月なんか見てたんだよ。
問いつめたいけど、もうやめだ。
過去は過去。消したくても消えない。変えたくても変えれない。
それは、俺たちが一番よく分かっていることだ。
あのころから、
分かりすぎるくらいに。
やり直せないことも。
だから、お前のことだけは、
これからだけを見ていく。・・・・つもり。
・・・多分。