余談5*ギャグ 月の姫
(松之助が生まれて間もない頃)
1.
スナックお登勢。
坂本とちょっと一杯飲んでいるときだった。
酒の勢いとは恐ろしい。
俺は、何でか奴なんかに犬も喰わない話を相談してしまったのか。
悪夢はここから始まる。
「奥さんにこの間言われた一言がショックで・・・「しつこい」ってさあ・・・言うのよ」
坂本が、なんだかんだと慰めてくれるのがまたキツイ。
「元気出しい。あっさりしてるって言われるより、いいぜよ」
「そこじゃねえんだよ??。なんつーかさあ・・・絶対誰かと比べての発言だと思うのね。それが、へこむって言うかさあ・・・気になるって言うかさあ・・・」
お登勢とキャサリンが何げに聞き耳(猫耳)をたてているのが分かるが止まらない。
「フツー言うかなあ。ああいうこと・・」
「まあ、月子さんには月子さんの考えがあるぜよ。深く考えちゃいけんきに」
アハハと、坂本が明るく笑う。酔ってもTPOはしっかりしている。
ヅラのことは暗黙の了解で外では“月子”と呼んでいた。
「あんたもたいがい甲斐性なしだねえ。こんなとこで愚だ巻いてないで、夫婦の問題は夫婦で解決するもんだよ」
「ババアにはわかんねーんだよ!男のナイーブなところなんざ。だーってろィ!」
はあーと、お登勢がため息を吐く。おれは、ぐいっと一杯飲んで、
「ちょっと、これからおね??ちゃんのいるお店いかねえ?確かめてみる!」
坂本を連れて出ようとする。
「確かめるって何をじゃ?浮気はいかんぜよ、金時」
「浮気じゃねえよ!!調査!!!調査です!!!」
「んな??に気になるなら、本人に聞いてみればいいじゃろおが」
「聞けねえよ!!!だから、他の人の意見を聞いてみようと思ってるんだろーがアアア!」
「じゃあ、高杉に聞いてみればいいきに」
「出来るかアアア!!!っつーか、何処にいるかしらねーーっつの」
「今は、会いにいかんでも、話すだけなら、これがあるっちゃろ。」
キラン、と、最新型携帯を取り出す。
こ、こいつ、・・・高杉の番号知ってるのか・・・あなどれねえ!スザっと後ずさる。
あ、そういや商人だったもんな。お得意先か。
「それ、職権乱用じゃねえの・・・」
「別に、元々友達なんだから、電話くらいよかろ!おんしを鬼兵隊に届けたときの方がギリギリじゃ。」
そりゃそうか。確かに、会ったらぶった切ると言ったけど、話すくらいなら。
TULLLLL・・・・マジか!うわ??なんでか、緊張する。
しばしの沈黙。どうやら、他の部下が出たらしい。総督お願いしますって。快援隊・坂本・・・って名乗ると、あっさり承諾したようだ。こいつの人脈、すげえな、おい。頭空だけど。
「あ??!高杉か!元気にしとるかの!毎度おおきに??。あ、いま、金時と飲んでるんじゃけど・・・」アハハハといつもの調子だ。
つーか、俺は銀時だ、銀時!まあいいや。耳を近づけて、話を聞いてやれ。
ああ??、『は?銀時?』むかつく例の低い声が聞こえる。
「あ??用事?ああ、何か金時が聞きたいことがあるって・・・ちょっと待って、替わるきに」えっっ???!!
そう言って、受話器を俺に差し出す。
ちょっと、なんて言えばいいの!!心の準備できてないんだけど!!!
「あ・・・あ??あ??、ど??も」と言えば、
「なんだ」実に素っ気ない返事。
「あのさ??、お兄ちゃん」プツッ。ツーツーツー・・・って、オイオイオイオイ!!!!
「切れたんだけどぉ!!!!」
「おんしが変なこと言うからじゃろ。どれ、もう一回かけてやるきに」
あいつのことだから、もう出ない気がする。気付けに一杯ぐいっと飲み干した。
TULLLLL・・・・
「あ、すまんのう。」でた!!!!!
どうやら、そのまま携帯持ってたらしい。坂本が何とか話を聞いてくれるように取りつくろってくれるが・・・
「じゃ、かわるきに」
オホン。
「あの・・・ヅラの話なんだけど」
「興味ねえ」
「まっっ待て待て待て!切るな!!」さすがに弐度目には切る気配を察知した。
「・・・なんだ」ホッ。
とはいえ、なんて切り出したらいいものか。つーか。何で俺がこんなに焦ってるわけ。
「あのさ??、最近ちょっとHがさ・・・」さすがにダイレクトすぎたか。
「他人の情事に興味ねえ」
「待て待て待て!お前に関係あるんだって!!」
「はあ?」お、ちょっと食いついた?
「ん??。なんつ??の・・・」俺がしつこいって思うって事は、こいつがあっさりしてるって事で、・・・てことは。
「お前って、もしかして早いの?」
「はあ?」
ぁ、言っちゃった。・・・沈黙。ごめん、これはないよなあ。
「あ、別にヅラが言った訳じゃないから」あわててフォローする。
「何か良くわからねえな。何が言いたいんだ、てめぇは」
「ヅラってさ、あんま何も言わないじゃん?」探りを入れてみる。
「・・・?」
「ん??、何か静かじゃんか」
多分、俺の言わんとしたことが分かったはずだ。どうだ、思い当たることがあるんだろ!!!ああ、みたいな感じだったよね!!
「そうか?」
!!!!!なんですと???!!!!
「あの・・・」
「結構うるさいと思うけどな」ククク・・・と、低く笑った。
「嘘つけ!」
「ヅラに聞いてみろよ。・・・なんだ、そんなことか。くだらねえ」
カチ??????ン!!!
何かあったまきた。だって、てめえの息子は俺が育てんだぞ。恩を仇で返すつもりか、この野郎!
「くだらなくねえ!!てめえの所為で俺はマダオにされてんだから、てめえには応える義務がある!!」と息巻けば、なるほど、子供のこととぴんと来たか。
「・・・そうかい」殊勝な声だすじゃないの。
「ああ、一度言おうと思ったんだけどな、お前はこっちがどんだけ大変な思いしてるかしらね??で、いい気なもんだよ。お陰でこっちはいつも金欠で・・・いや、別に困ってないけど!!!」
「何だ、金の相談だったのか。金なら出すぜ」
「!!いらね??よ!!困ってねえっつってんだろ!!」
なんだこいつ。むかつく!!何でこんなに上から目線なんだあああ!!
「金時、何の話してるんじゃあ??」と、坂本が横から入ってきたので、はっとする。
そうだった・・・
「あ、いやいや。ヅラの話なんだけど。あいつさぁ・・・」
この会話に夢中になってる俺は、お登勢の引き戸が開いたのも知らずにいた。
「その話はもういいだろ。てめえの未熟さ棚に上げてヅラの所為にしてんじゃねえよ」
がはああ!!!
「あのな・・・・っ!俺だって、すげー、鳴かしてんだかんな!!!そりゃも??ヅラうるさいくらいにアンアン言って・・・もう大変・・」
??????ドゴアアア!!!
脳天に強烈な衝撃を感じた。
ぐはっ。
振り向くと、青筋たてた月子さん・・・