>>332 まくし立てても、聞いていない。
こっちを見もせず松之助と遊んでる。
だから、貴様はもてないんだ、この天パー。
歯がみしながら、でももう仕方がないので、夕食の支度に向かう。
「なあ、桂」
桂じゃない、坂田だ。いや、いや、それより何より、何で俺をちゃんと呼ぶんだ。
怖い怖い。
「・・・なんだ?」
思わず、身構える。
「お前と俺ってどういう関係?」
は?何かと思ったら、そんなことか。何だというのだ、決まり切ったことを聞いて。
「夫婦にきまってるだろ」
「期限付きの?」
「・・・決まっている」
「でもさあ、」
まったくこいつは。何が言いたいのか分からない。と、突然。
「俺、お前のこと好きだよ」
「!!!!!」はああああ?????
何だ、その発言???何だ、この展開????何処のドラマを見たのだ??今度レンタル屋に行かねばああ!!ってそんなことじゃなくて。
「もちろん、月子が、だけどね」と、付け加える。
何を言っている。
「俺は、俺だ」
「そうなんだけどね??・・・」う??んと頭をかしげる銀時。
お前・・・俺だって、お前が嫌いではないに決まっている。
だからこそ、戦争が終わった後だって、遊びに来ていたし、なにかと協力したり、してもらったり。
・・・できたら、また共に攘夷活動をしたいと考えているのだ。かなわぬ事と知っていても。
「今更だな・・・」
「ん?」
「俺だって、好きだぞ。知らなかったのか?」
「マジ・・・!!!!」
あり?今、ものすごく紅くなってるぞ。お前。俺変なこと言ったか。
「ただいまある????!!」リーダーが帰ってきた。
「あれ、銀さん、顔赤いですよ。熱でもあるんじゃないですか?」
新八君も。ああ、食事の支度しなければ。
なんだか慌てる銀時を横目に、
こんな時間が、もう少し長く続くといいな、・・・などと不覚にも思ってしまった。
余談: 父親
幾月か過ぎて、江戸にとある目的でぶらりと立ち寄ったら。
本当に偶然、桂に会った。
買い物かえりか。何だか買い物袋をぶら下げて、
胸に、生まれた子供を抱いていた。
そう言えば、銀時が“弟になった”だのと抜かしていやがったな。
笑わせる。
ままごとのような芝居夫婦も伊達じゃなかったのか。
名を聞けば「松之助」だとか。
偉く上等な名をやったもんだ。
あの人の名を付けるなんて、
何だか無性に苛立った。
一瞬、切り捨ててやろうかとも思ったが、
そんなことに意味はねえ。
だが、俺の一瞬はなった殺気に、
ちゃんと桂は反応していた。
まだ、一応錆び付いちゃいないようだな。
それが、何だか妙に楽しい。
あいつが、「縁のものに名をもらった」と言ったので
ああ、こいつは俺の子だったのか、ということを知った。
驚かなかったと言えば嘘になるが、疑惑が確信に変わっただけの話だ。
そっと、まだ毛の生えそろってないような頭をなでれば、
ガキがぽっかりと目を開けて俺をみやがる。
きりっと髪を結い上げて、あの紅い簪を付けて、なんだか得意げな桂の様子に、
面白くなくて
そっと抱き寄せれば、抵抗しない。ふんわりと、懐かしい匂いがした。
だから、
相変わらずの白い項に吸い付いてやった。
案の定、簡単に跡が付く。
・・・
ざまあみろ。
悔しがるであろう、銀髪頭の男を思い浮かべた。
あいつの独占欲は半端じゃねえ。
そっと桂の耳元で、
言おうか言うまいか迷っていた言葉を告げた。
そのあとは、とてもじゃないがお前の顔が見れない。
桂、
次にお前に会う時が、
俺が死ぬときだったらいい。
そうだ、
有言実行のお前のこと。
宣言したとおり、俺をぶった切ってくれよ。
お前の剣で一寸違わず、心臓を突き刺して、
熱くて熱くて仕方ない、この熱を
一滴も漏らさず流してくれ。
そうしたら俺は
・・・きっと。