名残惜しいが、体を離した後、
奴にざっと着物を着せると、煙管片手に窓へ向かった。
どうにも、さめない熱を風に晒して落ち着かせたい。
頭を冷やしたい。明るい月夜に、あいつの肌がやけに白く光る。奇麗だ、と思った。
今宵は満月。
満月は人を狂わせると言うが、じゃあ狂ってしまうのは人だという証か。
寝ているのか、起きているのか、桂は身動きひとつしない。そのうち、
「ずるいやつだ、貴様は・・・」
小さく呟いた。その言葉は、やけに響いた。部屋にも、心にも。
そんなことは、言われなくても知っている。
だが、今、この行為に理由を付けられないのと同じように、
この感情に、名前を付けることは出来ない。