「嫌いな男に」と言いかけて、さて、なんて切り出したものかと迷う。
考えをまとめようと煙管を一口。すると、桂が部屋を出て行こうとするので、呼び止めた。回りくどい聞き方はこいつに通用しねえ。
「何で責めねぇんだ?」
「気にしていないと言ったろう。昨日のこと、俺は別に怒っていない。ただ、不思議に思っていただけだ」
桂が振り向いたとき、今日初めて目があった。
「貴様は、昔から、派手で一見して無茶な戦い方をする男だ。だが、それは無鉄砲で考えなしというわけではない。貴様なりの緻密な計算合ってのものだったことを俺は知っている。
お前は、無謀に見えて、その実誰よりも計算高い。だから、俺とは戦略方法で衝突することも多かったが、半面、高杉のすることに間違いないと信頼もしていた。
けれど、一方で貴様は目的のためには手段を選ばない男だ。ひどく言えば、自分の目的、計画のために仲間をも平気で捨て駒に出来る奴だ。
俺は、貴様の、そう言うところが本当に嫌いだ」