今の桂は、見ず知らずの女だと思えば、確かに美しい。
今まで見たどんな芸子よりも艶やかだ。だが、桂だ。かつて共に闘った仲間だった奴。幼なじみ。
自分は元来性的には淡泊なものだ。あのとき、男として、飢えていたわけでもない。別に女に不自由しているわけでも。
それに、何より、勢いだけで行為に及ぶほど、若くはないのだ。自分も桂も。
それなのに。
机の上に置いておいたはずの紅い簪がないことに気づく。いやに大切にするんだな。
銀時にもらったという簪を俺に触らせることすらいやがる。
昨日は、そんな奴の仕草が妙に頭に来た。昔から、あいつは銀時と共にある。どんな混乱の中も、信頼して、背を預けるのは決まって奴だ。
まあ、彼奴に着いていけるのは銀時くらいだったろうが。