「男か?名前は・・・」
「松に助けると書いて・・・・松之助(しょうのすけ)だ」
「けったいな名前付けやがって・・・銀太郎とかで十分だろうによ」顔は笑っているのに。
安穏な空気が漂う。一種殺気のようなものを奴から感じる。
つ・・・と、また一歩高杉が静かに近寄ってきた。間合いを計っているかのように。
「そういや、お前さんにはでけえ貸しがあったっけなァ」
完全に奴の間合いに入った。
思わず、腰巻きの短刀を確かめる。奴の渡した刀だ。貴様はこの子供ごと、斬るつもりなのか。自分の子とは気づかずに?
いや、気づいた上で、邪魔な存在を消すつもりか?どちらにせよ、貴様はきっと知らずに殺したことにするのだろうな。それならそれで。
「貸しなど元からない」
「そうかい」
「それに、この子の名前とておかしくなかろう。縁の者から一文字づつ頂いたのだからな」
どうする?高杉。これで言い逃れは出来まいよ。
お前が今消そうとしている命は、間違いなくお前の血を引く者なのだ。
とたん、高杉の殺気が嘘のように消え、変わりに驚きと、とまどいを感じた。