そこへ、いつものメンバーが揃ったところで、いつものメンバーの欠けていた一人が現れた。「済まない、寝坊してしまってな・・・」
と、偉くこぎれいな月子がやってきたのだ。だが、違和感があるのは、いつも結い上げている髪が下ろされて、後ろで結ばれているところか。
男の時の桂を思わせる髪型だ。とたん、「大丈夫っすか??寝室にいなかったみたいっすけど?」のぞき込むように来島が駆け寄る。
やんわり曖昧な笑みで「嫌な夢を見て寝汗を掻いたので風呂を借りていたのだ。心配させて済まない」と月子が軽くお辞儀をした。
そのとき、あっと来島が声を上げた。首筋にぎりぎり紅い出血斑がみえた。
「虫に刺されたっすか?この時期、もうでるんすね。かゆいっすか?薬あるっすよ」
その言葉に、月子ははっとして首に手をやり、
「ああ、そういえば悪い虫に刺されたようだ。痛くも痒くもないがな」と笑った。
納得したのか、来島は話を変えた。晋助様が大変なんっすよ??と青タンのある高杉を示す。「転んだっていうんですけどね」と。
月子は、高杉の方をちらりと見た程度で、「おおかた、奴の部屋にも虫がでて、格闘して転んだんじゃないか」とさらりと言った。
その日の朝食ほど、重苦しい雰囲気だったことはない。高杉の苛立ちが半端ではないからだ。ひしひしとその不機嫌なオーラを感じた万斎は、
はてどうしたものか、とかんがえていた。これは、思っているより早く桂を売った方が良いのではないかと。