灼眼のシャナV-Final- メロンパン272個目
「その、今さらだが……交渉などはできないのか?」
「交渉? [仮装舞踏会]とか!?」
「創造神と、だ。彼の神は、元人間の“ミステス”を代行体としていると聞く。事の経緯から見て、その“ミステス”は話して分からない相手では決してない、と思うのだが」
「冗談ではない!経緯を調べたのなら分かっているだろう、その怪物は、先の戦いで兵団主力に致命的な打撃を与えた当人なんだぞ!!」
「それは戦場でのことではないか!それに彼は、自らの思うところを述べただけに過ぎない。彼の側からの主張としては、おおよその事実に違いあるまい!?」
「む、う……!」
「それに、何も止めろとまで言うつもりはない。ただ、創造に新たな項目を付け加えるだけだ。人間を喰らえない世界に、いや、いっそ決して歪むことのない完璧な世界を作っ――」
「残念ながら、それは無理です」
「――えっ?」
「彼の神は、あくまで我々“徒”の神なのですよ。先の『大縛鎖』も、今度の新世界も、実際のところ本人の意志から思いついたわけではありません。
大多数の“徒”が抱いている願いの反映、願いの確信を集約して決まった、機能の結果に過ぎないのです」
「ということは、まさか」
「ええ。彼の神は、大多数の“徒”が、その完璧な世界なるものを心から望まなければ、なにもできません。
目的に沿った行動であれば、それこそ“存在の力”が続く限り幾らでも可能ですが、都合が悪いから修正を、
と融通が利くものではないのです……神たる存在の仕組みとして。もちろん、その代行体に過ぎない“ミステス”との折衝も、無意味です」
「そんな……」
「万能に見える創造神の、それが神としての制約なのですよ」
「ちぇっ、意表を突いた名案だと思ったのにな。やっぱ代行体っていうくらいだし、操り人形なんだな。ま、そうでなきゃ、知り合いの加わってる軍を叩き潰したりできないよね」