魔法少女まどか☆マギカ 第513話

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350同人版Fate/Zero1巻あとがき
虚淵玄は、心温まる物語を書きたい。
過去の私の芸歴を知る人ならば、笑えない冗談だよと眉を顰めることだろう。
だって他でもない私自身がそう思う。この指がキーボードを叩くたび、現れ出るのは狂気と絶望の物語ばかりなのだから。
昔は、それでも、まだマシだったと思う。
手放しで喜べるようなエンディングではないにせよ、劇終のシーンに立つ登場人物には、『まぁ今後も色々と大変だろうが、頑張れや』
と背中を叩いて送り出してやれるような、そういう結末を描けた頃が、私にも、あるにはあったのだ。
それがいつの頃からか、出来なくなった。
ヒトの幸福という概念にどうしようもない嘘臭さを感じ、心血を注いで愛したキャラたちを悲劇の緑に突き落とすことでしか決着をつけられなくなった。

物事というのは、まぁ総じて放っておけば悪い方向に転がっていく。どう転んだところで宇宙が冷めていくことは止められない。
”理に敵った展開”だけを積み上げて構築された世界は、どうあってもエントロビーの支配から逃れられないのである。
故に、物語にハッピーエンドをもたらすという行為は、条理をねじ曲げ、黒を白と言い張って、宇宙の法則に逆行する途方もない力を要求されるのだ。
そこまでして人間賛歌を謳い上げる高潔な魂があってこそ、はじめて物語を救済できる。
ハッピーエンドへの誘導は、それほどの力業と体力勝負を作者に要求するのである。

虚淵玄は、その力を失った。今もまだ取り戻せない。
この『バッドエンド異存症』との闘病は現在進行形で続いている。
もしかしたらこれは不治の病なのかもしれないし、もう私は潔く『愛の戦士』への憧れに見切りをつけ、
青白い馬に跨って病原菌を撒き散らす側に転身した方がいいのかもしれないが……諦めがつかないのだ。
未だに私は往生際悪く、人々に勇気と希望を与える物語を作りたいと願望して止まないのだ。
(これを書いている今現在、『勇気』を『幽鬼』と誤変換するような、そんなIMEを使ってる時点で……
あ、今『IME』が『忌め』になった――もうどうしようもないとは思うのだが)