化物語 第33話

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202風の谷の名無しさん@実況は実況板で
>>182をひらがなにしてみた

此処らでそろそろ、春休みの話。
春休みのことだった。
僕は吸血鬼に襲われた。
美しい鬼に。
血も凍るような、美しい鬼に――襲われた。
体内の血液を――絞り取られた。
其の結果、僕は吸血鬼に成った。
其の地獄から僕を救い出して呉れたのは、通りすがりのおっさん、もとい、忍野メメだった。
そして――僕は人間に戻った。
まぁ、大した話ではない。
めでたしとめでたしと云うほどのこともない。
既に解決した、終わった話題である。いくつか残っている問題らしきものは、月一で血を飲まれ続け、
其のたびに視力やらが人間のレベルを越えてしまうくらいの問題らしきものは、
其れはもう僕が所有する個人的なものと云うことに成っていて、
僕が残りの一生をかけて、向き合えばいい程度のこと許りなのだから。
其れに――
僕の場合は、まだ幸運だった。其の期間は、所詮、春休みの間だけだったから。
たとえば、戦場ヶ原は違う。
彼女は――二年以上、身体に不都合を抱えていた。自由の大半を阻害される、不都合を。
二年以上の地獄――どんな気分だっただろう。
だから戦場箇原が、らしくもなく僕に対し、殊勝にも必要以上の恩義を感じてしまっているのも、
或は仕方がない事なのかもしれなかった――
身体に抱えた不都合に就いてはともかく、心に抱えていた不都合が解消できたと云う成果は、
彼女にとって、恐らく何物にも代え難い、得難い成果だったはずなのだから。