海外流出続くアニメ産業 無策が生んだ若手不足
エイケン制作部の田中洋一次長は「海外で制作すると、微妙な色合いが日本と異なることがある。
だから日本での制作を守りたいのだが、ゲーム産業などに取られ若手はアニメ産業になかなか入ってこない。
国内でいつまで人材が確保できるだろうか」と嘆く。
新入社員が月給数万円しか受け取れない
ところが、特別番組で放送回数が増えたりすると、一部の協力会社がまれに海外の業者を使う。納期を守るために、
エイケンはその動きを黙認せざるを得ないという。このままでは関係者の高齢化が進み、国内での制作に支障が生じる
ことを危惧し、昨年エイケンは採用活動に本腰を入れ、若手7人をやっと新入社員として迎えた。
こうした人材確保の障害になるのは、「アニメ業界は賃金が安い」という偏見にも近い既成概念だ。確かに出来高払いの
制作会社で、不慣れな新入社員が月給数万円しか受け取れないケースがあり、そればかりが目立っている。
日本動画協会の山口事務局長は「この業界でも1000万円以上稼ぐ人材がいるのだが、残酷話ばかりが広まり、
人材確保や育成などの対策は進んでいない。このままでは国を挙げて振興を図っている中国や韓国に
逆転されかねない」と危機感をあらわにする。
次世代産業と持ち上げながら具体的な人材育成策を打ち出せない政府、劣悪な労働条件で若手を使う一部の業者、
それを放置する業界など、問題は複雑に絡み合う。ただ、このままアニメ業界に入る若者が減り続ければ、
いつか国内のアニメ業界は衰退し、この美術館でもセル画のプレゼントがなくなるかもしれない。
http://business.nikkeibp.co.jp/article/topics/20060828/108714/?P=2