MUSASHI -GUN道-　6段

『MUSASHI』がいかにして有名になったかを背景から振り返ってみよう。

TVアニメ飽和状況はここ数年で特に顕著になり、2006年春は
（時間帯変更分を除いても）新番組が50本以上ある、という
異常な状況を生み出した。あまりの多さに放送前に番組概要を
把握することを放棄する人間が少なくなかったほどだ。
それでも放送日が近づけば生粋のアニメファンは公式サイトや
2chスレなどを覗いてチェックしたものだが、その中でも
『MUSASHI』は異端だった。アニメ誌に露出がまるで無く
放送前の時点では公式サイトすら無かったからだ。

一応、モンキーパンチ原作という情報に辿りついた人間も
いたのだがそうなれば尚更、あまり興味を持たなかった。
モンキーパンチといえば『ルパン三世』のイメージしかなく、
それなりに詳しい者なら『アリス』やら『セイバーキッズ』やら
『モンキーパンチ 漫画活動大写真』やらが浮かぶこともあった
ろうが、それはますますモンキーパンチの『ルパン』一発屋を
裏付けるものでしかなかった。第一その『ルパン』も
TVスペシャルを重ねる度に劣化していたし、はっきり言って
モンキーパンチはすでに過去の人扱いだった。
放送前の時点で『MUSASHI』など誰も注目していなかった。

そのような状況下、2006年4月9日『MUSASHI』はBS-iで放送を開始する。
時間は日曜朝9時30分。よりによって『おねがいマイメロディ』の裏だ。
しかも4月9日放送分といえばあの「ウサミミ仮面」が初登場の回。
2chスレは閑古鳥。第1回目はまるで話題にならなかった。

しかし、世の中には奇特な人種もいるもので『MUSASHI』を
見ていた人間も少なからずいた。彼らが見たのは
チープなOP・デッサン崩れまくりのキャラクター・音声とまるで
あってない絵・カットごとにキャラの顔が変わる作画・物理法則
無視の空中浮遊・同じカットをループさせる戦闘シーン、etc.
と想像を絶する酷い代物だった。

しかも回を重ねても改善されるどころかますます酷くなっていく。
しかしこの状態を面白いと思った一部の人間が目をつけ、キャプ画像を
ふたば掲示板などに貼り付けるなどしてじょじょに話題になっていった。
（ムサシのビーム画像やそれらのコラージュ画像などはこの時期に
有名になったものと思われる。）

さらに別の意味で話題になっていた『涼宮ハルヒの憂鬱』と
急速に有名になっていた動画配信サイト「Youtube」の波に乗って
『ハルヒ』EDと『MUSASHI』本編を組み合わせたMAD
『GUNDOU no Mai』 http://www.youtube.com/watch?v=rpCL092EPSA
が作られ、なんかトンデモなく酷いアニメがある、という
認識がようやくアニオタ全体に広がりはじめた。

BS-i放送だったため誰でも見れるわけではなかったのだが、5月になり
何をとち狂ったのか無料動画配信サイトGyaOが『MUSASHI』の放送を開始。
しかも、BS-iで放送されてから一ヶ月も経っているのに何も修正が
加えられていないそのままのもの。日本全国の誰でも『MUSASHI』を
見れることになり、『MUSASHI』はその凄さを全国に知らしめる
ことになる。

すでに酷いクオリティの代名詞だった『ヤシガニ』に匹敵する
新たな基準として認識されるまでになった『MUSASHI』。
現時点でも第6話に総集編を挟んだにも関わらず第7話以降も
相変わらずのクオリティのまま突っ走っているという状態。
この『MUSASHI』の快（怪？）進撃はいつまで続くのか。

あなたは現在進行形の伝説の目撃者なのだ。