41 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/04/30(日) 19:22:44.92 ID:m0gc1V5k0
久子は、清太の尻と椅子がくっついているのではないかと時々本気で心配になる。
足もすっかり良くなり、皆で回復を祝っていた場で「奨学金で大学に行って、警官になります」と宣言した日からこっち、清太が外出するするところを、学校に行くとき以外で見たことがない。
夕飯だと部屋に呼びに行くと、例外なく学校帰りに買ってくる問題集を解いているのだ。問題集を買う金は、久子が出していた。小遣いだといって渡しても、清太は「必ず返します」といって問題集を買ってくる。清太の部屋に漫画はなかった。
今日も久子は清太を夕飯に呼びに、部屋の前に居た。今日も清太はわき目もふらず勉強しているのだろう。ひとつため息をついて襖を開ける。
「清太さん、ご飯出来たで」
「はい」振り返りもせずにそう言った。鉛筆を持つ手は動かしたままだ。
5分もすれば来るだろう。久子は襖を閉めた。
何故あの子はあそこまで必死になっているのだろうか。確かに目指しているものはそう簡単ではないが、何が彼をそうさせるのだろう。
あのとても仲のよかった妹――節子ちゃん、だったろうか。あの子の死――栄養失調といっていた――を自分のせいだと思っているのではないだろうか。
それならば自分にも責任はあると、久子は思っていた。そして自分はその分まで清太を養う義務があると、そう思っていた。