節子…それ、ドロップやない、オハジキや
1 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/04/30(日) 16:32:29.31 ID:m0gc1V5k0
「知ってる」節子はそう呟くと、銃口を清太の胸へ向けた。その表情は、「この距離ならば外さない」そういっているように見えた。
「どうして」
「どうして?」下らない質問に苦笑する。元々自分の兄はあまり頭がよくないことは節子自身よく知っていたが、ここまで愚かだったとは。
「誰のせいでこうなったと思ってるんや」
「――それは」
「あんたのせいや」清太の言葉を遮って断言した。「あんた以外誰がおるん」
8 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/04/30(日) 16:37:48.88 ID:m0gc1V5k0
さっと清太の顔色が変わった。本当に愚かな兄だ。自分の妹だけは自分を頼ってくれていると信じきっていたのだろう。
「ちゃう」
搾り出すように、そして消え入りそうな声でそういった。それでさらに節子は苦笑してしまう。ああ、こんな人間が自分の兄だったとは。
「ちゃう? じゃあ誰や。おばさんとでもいうつもりか?」
「……そうや」
「待遇はよくなかったかもしれへん。でもよう面倒見てくれてた。それなのに勝手に出て行ったのは誰や?」
12 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/04/30(日) 16:43:56.79 ID:m0gc1V5k0
「お前も、賛成しとった」
「考えがあると思っとったわ」節子は言いながら自分も愚かだったことを悔やんだ。こんな人間を少しでも信じた暢気さを。
「あそこまで先を見とらんと知っとったら、ついていかへん」
「うそや」
「そうやって逃げるつもりか? まさかこの状況が悪い夢や思っとるのか?」
「……ちゃう」
清太の声は少しずつ、しかし確実に小さくなっていった。
13 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/04/30(日) 16:50:03.45 ID:m0gc1V5k0
「だとしたら、どうするんや。俺を殺すんか?」
「そうや」即座に答えた。「お前の肉でも食えば、少しは長生きできるやろ」
言いながら自分でも笑みが零れているのがわかった。ロクなことをしなかった兄を、血が繋がっていると考えるだけで怖気がした人間を、やっと殺すことが出来ると。
しばらく俯いて震えていた清太が、突然後ろを向き走り出した。しかし恐怖からか足元がもつれ、無様にも転げて言葉にならない声をあげている。
「本当に、どうしようもないな、お前は」そういうと、節子は清太の足を「オハジキ」――お笑いだ。ピストルで打ち抜いた。