【お肉壺】QB師匠の窪みを語るスレ【股間が竹の子】 3

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812いらちなきのこ
大垣夜行 @号車

この物語は不完全なフィクションであり、実在の人物、場所、事件は多分と関係ごさいません。

「183系。まだ国鉄型なだけマシか。」
尾野村辰也は思った。
東京駅は午後9時を過ぎたばかり。
辰也の立つホームに、ムーンライトながらが入線してきた。
ムーンライトながらは東京〜大垣を結ぶ夜行列車で別名、大垣夜行と呼ばれている。
この列車で午後9時過ぎに東京を発つと明日の午前5時過ぎに大垣に着き接続する大阪方面への電車に乗れば1時間足らずで辰也の実家のある近江八幡だ。
数少ない夜行列車が乗車券と指定券だけで乗れるのが鉄の辰也にはうれしい。
「大垣夜行はやっぱり165系だろ、大体、JR東海の373系なんて…」
180cmある大柄な辰也が意味不明の言葉をブツブツ呟くと周りの人にとって不気味である。
いつしか辰也の周りに人はいなくなっていた、が辰也は気にする様子もなく目の前の車両を見つめて何事か呟いている。

電車に乗り込んだ辰也は顔をしかめた。
座席が換えられている。
JRが車両の老朽化とサービス向上の為に新型の座席を導入したのだか辰也には気に入らない。
辰也に限らず、世間で鉄と呼ばれる人種は古いものを珍重し、原型を重んじる風潮があり、辰也も例外ではない。
JRが長旅を快適に過ごせるようにとの心遣いも辰也にとっては趣味性を損なう余計なお世話なのである。
以前より明らかにゆったりとした坐り心地のいい座席にブツブツ言いながら腰掛ける辰也に前の席の会話が耳に入った。
年配の女性と妙齢の女性、親子だろうか。
新幹線か夜行バスの方が良かったとか言い合っているようだ。
辰也は愕然とした。
こいつらは夜行列車の、数少ない生き残りの大垣夜行のことを全く分かっていない。
駄目だ。こんな不心得者がいるから銀河が、富士が、はやぶさがこの東海道線から姿を消したんだ。何とかしないと。
焦躁の念に駆られた辰也の脳裡に閃くものがあった。
コミュニケー−−ション。そうだ、ここ数年、MLPで磨いた俺の内面、バージョンアップを重ねたコミュニケーションスキル。
これで夜行列車の、俺の愛して止まない165系の魅力を伝えよう。
鉄道ジャーナル購読20年の、全国の路線8割踏破した俺が、あけぼのを、北陸を守るんだ。
カンバレ辰也!カンバレ自分!
辰也は席を立ち前に歩きだした。

何を言ってるんだろう。
いきなり私達の座席の横に立ったこの大柄な男は
私達に呼び掛けると何事かを急にまくし立て出したのだ。
どうやらこの電車についてらしいのは分かったがどうして?さっぱり分からないし、なにより気持ち悪い。
助けを呼んだ方がいいかも知れない。

辰也は焦っていた。
目の前の二人が辰也の意見に賛同していないのは明らかで辰也には心外なことにまるで不審者を見るかのような目でこちらを見ている。
40年の人生でずっとこうやって俺は受け入れて貰えなかったと辰也は思った。
それは辰也が他者を受け入れないことの裏返しに過ぎないのだが今年が本厄である辰也は分からない。
何とかしなきゃいけない。バージョンアップを重ねたコミュニケー−ション スキルで何とかしないと、日本海が、北斗星が…
そうだ、あれだ、「サルサで超絶体感コミュニケー−−ション!」
辰也は手前の妙齢の女性の手を取り、そして…

朝のニュースを見ていた澤井千恥は聞き覚えのある名前を耳にした。

昨日、午後9時過ぎJRの車内で乗客の男が乗客の女性に、無理矢理抱き着き、強制猥褻の現行犯で逮捕されました。…………………男は容疑を否認しており、
「コミュニケー−ション が… サルサで超絶体感コミュニケー−−ションを…… 」
と意味不明のことを話しており、警察は薬物使用の容疑も視野に入れ、慎重に捜査を……