【お肉壺】QB師匠の窪みを語るスレ【股間が竹の子】 2

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476ウホッ!いい名無し…
ありがとうございます!
自分的には悲劇への序章っていう感覚で書きました。
以下、お目汚し失礼します。
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──こんなはずじゃなかった。

重くカーテンを閉め切った六畳間はエアコンを除湿設定にしていても空気がじっとりと重く、安い一人暮らしの家具が陰鬱な影を落としている。
苦募はシングルベッドのふちに背をもたせ、身をちぢめて膝を抱えるように座りこんでいた。
朝にぼんやりと目を覚ましてしまい、それからはもう寝直す気になれず、かといって何をする気にもならず──いや、何をすればいいのか思いつかず、ただ時がすぎて眠るべき夜が訪れてくれるのを待っていた。
濁った目を壁にかけた時計に向ける。時計は心の時間に反映することなく、先ほど見上げたときから数分しか経っていないことを示していた。
もう何度見てきただろうか。時が経てばどうなるというわけでもないことは、今自分がこうして蟄居するしかなくなっている現状が告げている。
それでも、今日一日がせめて何もなく終わってくれることを望み、すがるように時計を見上げるのだ。
──あんな早くに目を覚まさなければよかった。
どうせ職場を追われ、世間の目にさらされて外出もままならない生活だ。一日のほとんどを眠っていられたらどんなにいいか。
けれど苦募は学生時代を体育会系で過ごしてきた習慣のために、朝がくればすぐに目を覚ましてしまう。
477ウホッ!いい名無し…:2009/08/08(土) 12:33:05 ID:YV7nwHsm
学生、時代。苦募は終わったその時を口のなかで呟いた。
あのときはただ、学生という立場に守られ、部活の枠のなかに生きて、それが自由だった。
苦募は学生という立場に制約されていても部活という枠の上下関係に縛られても、生きることは自由だったのだ。
──なぜ、自分の代ではうまくいかなかった。
今までは皆うまくいっていただろう。学生という立場からは許されないことをしても、すぐ後にある卒業が逃がしてくれていた。
なのに、なぜ、よりによって自分のときに。
卒業を利用して犯した罪は卒業をすませて逃げ出し、社会人として着々と駒を進められたと思われたそのとき、いきなり背後から迫ってきた。
おかげで今、苦募は小さな町の住人たち全ての眼差しに囲まれ、この六畳の穴蔵に身をひそめ、息をつめて生きている。
──いつまで、こんな毎日が続く?
社会生活は失った。学生生活はとっくに終わってしまった。先にあるのは刑罰か。今の状態以上の刑罰があるのか。それはどうやって、どこまで続くというのか。
いっそのこと、と思わないわけではない。
だが、死んだからといって何が救われる? 死んだ後に自分などという思惟は存在しない。周囲の反応などを見る目も残らない。
今さら罪を認めて表に出ることはできない八方塞がりのなかでも、あるかもしれない未来を諦める勇気はなかった。
478ウホッ!いい名無し…:2009/08/08(土) 12:34:34 ID:YV7nwHsm
──やりすごすしかないのか。
他に何も思い浮かばない。
苦募は残り少なくなった煙草の箱に手を伸ばして一本くわえ、ライターの幽かな炎で火をつけて煙を深く吸い込んだ。

「ノノ先輩、俺ですけど」

肺に送った煙をゆっくりと吐き出したそのとき、玄関から控えめな声が聞こえてきた。
その声は学生時代に身近で聞き馴れていた、九二の声だった。九二の声だと玄関のドア越しに信じられるほど、当時から変わらない声だった。

苦募は無言のままゆっくりと立ち上がり、玄関への狭い廊下を歩いた。ドアのレンズから外を窺う。確かに九二だ。一人で来たらしく、他の人間の姿は見えない。
こつこつ、とドアをノックする軽い音が響く。それもまた控えめだ。
ドアの鍵をひねり、ドアノブをそろそろと掴んでドアを開ける。鮮烈な外気が顔を撫で、肺を満たす。
「あ、居たんすね。よかった。先輩どうしてるかなと思って、そこのコンビニで煙草とか買ってきたんすけど、──」
どれだけ、我が身をとりまくもの全ての声音が変わっても。眼差しが変わっても。
「──お前、何で──お前だって今は大変じゃないか」
「俺は大丈夫っすよ。先輩外に出てないって聞いたから、それじゃ何かできないかと思って」
何か、偉そうなこと言ってすみません。そう付け足し、こめかみのあたりを掻いて九二がはにかむように笑った。
479ウホッ!いい名無し…:2009/08/08(土) 12:37:25 ID:YV7nwHsm
九二の求めるのに任せ、体を任せる。
嗅ぎ馴れた髪の匂い。汗の匂い。手のひらの感触、愛撫。
部室で何度となく重ねた情交の記憶を蘇らせ、自らの内から快楽を引き出してゆく。
「──先輩、よかった」
耳朶に吸いついて甘く歯をあてながら九二が囁く。
「──何が」
「変わってない。こうしてると、変わってない先輩がいる」
「──馬鹿」
急に泣きたいような気持ちになって、苦募はそれだけをようやく呟いた。
変わらない九二の全てが、苦募の胸にせまった。

***続く***

本当に続くかは不明ですがw
投稿させて下さってありがとうございました!