「旗揚げやっかぁ」
黒のショートタイツに着替えると、贅肉でブヨブヨのメスカブトボディーを整えた。鏡の前で右手を挙げる。
既に記者が集まり、奴らは俺の会見を待つ。
会見場を前にして周りを見渡すと、頭からゴマ塩をかけたような、永島がそこにあった。
「俺のプロレス界のど真ん中団体の旗揚げだぜ」声に出していう。
「男はやっぱど真ん中」
やおら新日の選手から、会社不信状態の佐々木健介を引き抜く、旗揚げ資金10億を用意し、タニマチの福田を社長に据える、
「(ホークウォリアー)きたか」音が俺の旗揚げ中枢を更に刺激する。
「天龍たまんねぇ」シングル六連戦をメインに決め、身体を上下させる。
「新団体の旗揚げにゃあ武道館じゃ入りきらないよ」横アリを押さえる。
「アレ、アレ、アレ、アレ」顔から熱くなり、やがて頭の中が真っ白になる。
「健想、保永」「越中の入団」
頃合いをみて選手を引き抜く。俺は自分のこのアングルが好きだ。
しょっぱい選手だけがWJに入り、意味不明の世界日本の団体名に、LOCK-UPグッズ垂らして、腰を振り、裏で大物格闘家と交渉、表ではマスコミの興味を引く。
旗揚げの前のの俺は、日本一の革命戦士になっていた。
「ちきしょうもっと選手をアレしテェよ」3.1が近付くと、いつもそう思った。大森を説得して、フリーでの参戦を発表すると、目を泳がせながら会見だ。
「ど真ん中になってやる」「目ん玉飛び出るストロングスタイル」
「うりゃ、そりゃ」「マグマ、マグマ」しぶきを飛ばしながら、長州式トレーニングで身体を作る。
「チケット売れねぇよ」きんたまの奥から、激しいうねりが起こった。やがて奔流となり、俺を悩ます。
―旗揚げ延期してぇ――とっとと旗揚げ戦してぇ―相反する気持ちがせめぎあい、俺はど真ん中に立つ。
「きたっ」俺は膝を直角に曲げ、それに備える。奔流は堰を切ろうとしていた。
「WJ旗揚げ ! 」「ぶちっ」
暗闇を押し分けて、ガラガラの客席がしゃくり出される。
白けた時間が過ぎ、目の前が現実に戻る。