【ソードアート・オンライン】わいはキバオウや!かっこええやろ!
せやで!
キバオウさんってどのアニメに登場しても一定の地位を確保しそうだよな
んなわけないやろ!
そんなんチートや!チーターや!
うるせえキバなんとか
キバオウさん人気も朝霧の巫女回の後は…
実際キバオウってただのクズだしな
2話ではちょっと言い分に正当性があっただけで
「……もうずいぶん昔、一度だけギルドに入ってたことがあんねん……」
彼はゆっくりと言葉を紡ぎ出した。
「わいが無茶な狩りをしとる時にな、たまたま通りかかったそいつらに助けてもろたんや。」
彼は私を見ることなく言葉を続けた。
「みんなええ奴やってん。一人で無茶しとるわいをPTに誘うてくれてな……あないなところでソロ狩りやっとんのが珍しかったんや
ろう。見た感じ、装備もレベルもわいとは段違いの連中や。せやけど……わいの悪いクセでレベルもスキルもウソっぱちこいて……、
みんなにすごいすごいと囃し立てられて、ええ気になって――、気がついたらそのギルドの一員になっとったんや……」
いつもであれば彼は自分を大きく見せるために話を誇張して語る節がある。
彼は真実をそのまま口にしているのだ……、これまで誰にも明かすことのなかった胸中を。
「わいが前衛をやったらみんなのためにならん言うてな、丁度サチっちゅうおとなしい女の子を前衛にしたい言うもんやから、それな
らわいが後方から指示を出したる言うて……それからの狩りは一層のボス戦で――ディアベルはんの見よう見真似や、アスナはん
も知っとるやろ」
ディアベル――。
アインクラッド第一層ボス攻略戦において指揮を執り、その戦いの渦中でこの世界を去ってしまった……。
彼がこのディアベルという男性を慕っていたということは、当時傍から見ていてもよく分かった。
「サチっちゅう子はようやっとった。後ろにメンバーがおるいうても、でっかいモンスターの真正面に立つっちゅうのは怖いもんや。
わいなんかよりも全然度胸がある……そう思っとった」
「……思ってた?」
自分でも驚く程に優しい声が出ていた。
まるで泣きじゃくる子からその理由を聞き出す母親のような――
「度胸なんてなかったんや。ふつうに考えればそらそうや。奮闘しとったのもギルドのみんなを守るためでもない、いつかこのゲーム
がクリアされる日まで生き延びようとするわけでもない――、死ぬのが……死ぬのが怖いんやなって。ある夜、わいは思い切って
そうちゃうかと聞いてみたんや。したら――」
そんなことないよ。
そりゃ最初はちょっぴり不安だったけどさ、後ろにみんなもいるし、あなたが的確な指示をくれるじゃない。
大丈夫、何があってもしっかり守ってあげるから――、このサチ様に任せておきなさい。
彼は淡々と彼女の言葉を口にするが、肩は微かに震えていた。
「わいにはそれが信じられへんでな、毎晩毎晩、何かにつけては絶対死なせへんからなって言うようになってたんや」
冷たい風が頬をかすめていく。
東の空がぼんやりとオレンジ色を見せ始める中、彼は言葉を続けた。
「わいが加わってしばらくしてからや、リーダーのケイタはんを除く五人で迷宮に潜ることがあってな。ケイタはんはようやく貯まった
資金で家を購入するために売り手と交渉しに行っとったんや。ほいで迷宮に行ってそこそこ稼いだ帰りや、メンバーの一人がトレジ
ャーボックスを見つけてな、サチはんは帰ろう言うてたんやけど、わいら野郎どもはお宝に目がくらんでしもて――、何も気にせんと
それに手を出してしもたんや」
彼は私の様子を見ることなく淡々と語り続けた。
「――最悪な罠やった。部屋の全ての入り口から山ほどモンスターが湧き出してきよったんや。わいらは咄嗟に緊急転移で逃げよう
思たんやけど……最悪も最悪や、結晶が使えんダブルトラップやった。あないなモンスターの山、後にも先にも見たことあれへん……」
私は言葉が出なかった。
「みんなパニックや……ほいでみんなわいを見るんや。わいは……わいも慌ててしもうてなんも、なんも出来んまま、一人、また一人と
HPをゼロにして――」
「もう止めて」
そう、冷たく彼を制してしまった。
その先は私みたいな部外者が聞くには重過ぎる――、私はすっかり冷え込んだ彼の体を抱きしめることしか出来なかった。
そんな私の行動をもってしても彼は続けるのを止めなかった。
「サチはんは戦っとった。死の恐怖なんぞどこにもあれへん、わいを――へたりこんで動くことがでけへんわいを守るために……。
大丈夫だから、私が守るから――そう言うて、サチはんはわいの目の前で――」
「止めて!止めてって言ってるのよ、このバカ!」
感情的に制する私を他所に、彼はなおも……なおも止めようとはしなかった。
ただ彼の言葉に生気はなく、まるでシステムメッセージが無造作に流れるような――
「……気がついたらわいはボロボロな状態で街に帰ってきとった。不思議と足はケイタはんの待つ宿へと向いとった。宿屋の前や、
ケイタはんに会うなりわいは人目も気にせず土下座して事の顛末を……みんなに黙ってた事を洗いざらい吐き出した。ケイタはんが
どんな目でわいを見とったのか、哀れんでんのか軽蔑してたんか、それは知らん――。
顔を上げたときにはケイタはんの姿はどこにもなかった」
彼の言葉がようやく止んだ――、そう思った時、彼の冷えた手が私の肩を包んだ。
そして涙でボロボロになった私の顔を見つめ――
「これが……これがわいが血盟騎士団に入れん理由や。死んでしもたみんなに――そしてケイタはんに許してもらえる日が来るまで、
わいはギルドに入る資格なんぞあれへんのや」
そう言い残すと、彼が私の元を離れるのが分かった。
涙に溢れて止まない私の目に、彼の背中は誰かに許しを請うために生きる男のものとは思えない……。
まるで死に場所を探しているような――
そんな彼の背中を、私はただ見ているしか出来なかった。
東の山の輪郭がくっきりとオレンジ色のラインを描き草葉の朝露に陽の光を与える中、彼の足は七十四層の迷宮へと向いていた。
無駄に長い
ながいわ!
あなたがこれを聞いている時、わたしはもう死んでると思います。
あなたは気づいてたようだけど、ほんとのこと言うとね……、わたし始まりの町から出たくなかったの。
でもそんな気持ちで戦ってたらきっといつか死んでしまうよね。
それは誰のせいでもない、わたし本人の問題なんです。
あなたはあの夜からずっと毎晩毎晩、わたしに「絶対死なせない」って言ってくれたよね。
だからもしわたしが死んだら、あなたはすごく自分を責めるでしょう。
だからこれを録音することにしました。
それとわたし、あなたがわたしたちより一回りレベルが低いって知ってるんです。
前にね、偶然覗いちゃったの。
それでもあんなに指揮を執るのが上手いから、いつもの狩りが攻略組みたいな感じになったってみんな言ってました。
あなたが本当のレベルを隠してわたしたちと戦ってくれる訳は……一生懸命考えたんだけど、よく分かりませんでした。
でもね、どんなピンチの時もあなたが言う「勝とうぜ!」ってセリフ、嬉しかった。
すごく安心できたの。
だからもしわたしが死んでも、あなたはがんばって生きてね。
生きてこの世界の最期を見届けて、この世界が生まれた意味、わたしみたいな弱虫がここに来ちゃった意味を――
そしてあなたとわたしが出会った意味を見つけてください。
それが私の願いです。
じゃあねキバオウ――、あなたに会えて、一緒にいられて……ほんとによかった――
ありがとう
さよなら
213 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2012/08/16(木) 03:02:26.68 ID:2RVsxv9A0
2話にしか出てないのに乱用多い
二○動のキバオウMADの多さにワロタ
なんでやねん!
レギュラー確定や!
なんでや!なんでわいはIFですらレベル低くて足引っ張るって設定なんや!
キバオウだからや!
なんでや!
220 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2012/08/18(土) 20:47:04.56 ID:PVSElUc6O
キバオウのくせに生意気なんだよ!
そんなんチートや!チーターや!
このスレまだあったんか!
さっさと潰せ!
なんでや!
なんでもや!
225 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2012/08/19(日) 12:25:48.51 ID:h+UNDKrVO
こいつが出世した後の話はカットされるんだろうな。
なんでや!なんでわいの出番をカットしはったんや!
魔将キバオウ
99階層のボス
アインクラッド解放軍在籍時代に築いた物資の備蓄を津波の如く撒き散らす奥義
「ビーターは死ね」を繰り返す難敵
対峙するだけでアイテムストレージを満杯にしてくれる宝箱キャラであるが対戦場が結晶無効空間であるがため逃げられず
ストレージが満杯になると同時に物資の津波は死の怒涛となる
キバオウ「奴の行動からもてる秘訣は理解したで」
女の子「きゃー、モンスターにやられちゃうー」
キバオウ「どっせーい、モンスターはワイが倒した。早くワイとイチャイチャしてーな」
女の子「きゃー、変態よー」
キバオウ「昼寝や!昼寝で女の子ゲットや!」
女の子「きゃー、この人仰向けになりながら移動してスカートの中覗いてくるわー」
キバオウ「武器屋でフラグたてや!」
リズ「予算はあるんですか?」
キバオウ「これくらいや!」
リズ「そんなんじゃうちの武器は買えませんからでてってください」
キバオウ「なんでや…なんでワイがやると失敗するんや!」
やっぱりビーターじゃないと駄目だな
なんでや!
231 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2012/08/23(木) 06:01:07.54 ID:ODHBoBaqO
キバオウもやっぱりホモなんだ。
ちょい待ってんかー!
おう
なんでや!
>>227 「誰や……わいは――わいは――」
アインクラッド第九十九層――、その階層のボス部屋へと続く扉の向こうに彼は静かに鎮座していた。
「おかしいんや……この世界はおかしいんや――」
おそらく彼が次層への道を塞ぐ者、九十九層ボスであろう。
彼は俺が何を言うでもなく口を開き始めた。
「このゲームが始まってぎょうさん人が死によった……。せやけどや――。なんでや……なんで女とイチャコラしとるような奴がのうのうと生き続けて、ディア――」
彼は――、いや冷たく暗い部屋で淡い紫色のオーラを放つ九十九層ボスは大きく首を振った。
「なんや……誰や!誰なんや……なんでそないな目でわいを見るんや――」
彼の言葉は俺に向けられているのではない。
そんな感じがした。
彼の言葉はなお続く。
「百層のボスを倒したらこんゲームは終わる……それがみなの目的やったはずや……。死んでいったもんの願いでもあったはずや……それがなんや!何が女と仲良うなってリアルでも会おうや――」
唯一の光源である彼の纏うオーラは、彼の頬を伝う涙を俺に見せた。
彼はおそらく俺と同じく一人のプレイヤー。
この世界を築いた茅場晶彦自身かとも思ったが、彼から溢れ出る感情は開発者のそれではない。
そしてこの九十九層ボスとして設定された彼は――。
怨念――。
生き残った者、志半ばで散っていった者……このアインクラッドに渦巻く負の感情の集合体ではないだろうか。
俺の目に映る彼は最も強烈にそれを発するプレイヤーの姿、俺にはそう思えた。
「ぐぁあああ!何やお前はんは……?わいにはもう何も思いだせへん……何も見えへん――。しかし何をせなアカンかは……お前ら――ニンゲンドモヲ ネダヤシニ――」
プレイヤーを阻むことが彼本来の≪役目≫であろうが、それとは違う異質な何かが彼から発せられていた。
彼の頭上には≪The Kibaou≫の文字。
百層へと到達するには彼を――、多くのプレイヤーの執念や悔いを背負う必要がある。
プレイヤーからプレイヤーに向けられた牙、その頂点に君臨する王――。
「なんでや……」
隣で眠る彼から寝言のようなものが聞き取れた。
きっとまた楽しい夢でもみているのだろう、そう思うと彼に毛布を掛け直し……再び眠りへと落ちていった。
なんでや!なんでワイはそんな役回りなんや!
>>228 『導かれし者たち』
死のうと思っとった。
あてもなくフラフラとしとったわいは、気付けばどこぞの層の外壁から雲を見下ろしとった。
デスゲームが始まってからいうもの、こないな場所から身を投げる奴は後を絶たんかった。
聞けば≪蘇生者の間≫に設置してある全てのプレイヤーの名が刻まれた碑に、身を投げた奴の名前には打ち消し線が引かれとると。
現実ではどうなっとるかは知らんが、確実にこのクソみたいな世界からおさらば出来たっちゅうこっちゃ。
あるプレイヤーがおった。
そいつとは第一層のボス戦で一緒やったんやが、ディアベルはんを見殺しにしたそいつは……わいら初心者やβテスターをさんざん
馬鹿にした挙句、ボスのドロップアイテムを独り占めしてどこかに行ってしもうた。
その後もそいつの噂はよう耳にした。
黒の剣士、ソロのビーター、低層狩場の独占野郎……あまりええ響きやないもんばっかりや。
せやけどわいが耳にした中で強烈なもんがあった。
『毎日連れている女の違うナンパ野郎』
『倫理コード解除のプロ』
『歩く誘女灯』
耳にする度、はらわたが煮えくりかえるような思いをした。
何でこないな奴がのうのうと生き続けて、皆を導いてこの世界を抜け出そうとした人間が死ななアカンのかと。
せやけど……少しばかり羨ましい気持ちもあった。
温もりが欲しかったんや。
そらようつるむ連中とかもおったが、わいの心は孤独やった。
そいつの噂を頼りにあれこれ試してみたりもした。
そいつはモンスターから追われる女の子を手に入れよった。
「いきなり横から何するんだい?あれかい、この≪タイタンズ・ハンド≫にケンカ売ろうってのかい?」
なんでや。
そいつは昼寝しとっただけで美人さんを手にいれよった。
「きゃー、この人仰向けになりながら移動してスカートの中覗いてくるわー」
なんでや。
そいつは武器屋で買い物したついでに、そこの若い女店主を手に入れよった。
「そんなんじゃうちの武器は買えませんからでてってください」
なんでや。
世の中は冷たいもんやと身に染みて分かった。
報われんモンは一生報われん。
こないな世界でみじめなまま飼い殺しにされるくらいやったら、いっそのこと自ら別れを告げた方が楽や。
ゲーム中で死んだら現実のわいがどうなるかなんぞ知ったことか……そう外壁に手をついたその時やった。
「何をするつもりかね?」
落ち着きのある低い声がわいの背中に当てられるように感じた。
「関係あれへんやろ、放っといてんか」
振り向くこともなくそう言い放つ。
しかし……わいは外壁についた手に力を入れることも、どけることも出来へんかった。
これから無様に散ろうとしとる姿を見られることに対する恥ずかしさやろうか、ここから飛び降りればそないなこと関係あれへん、そんなことを考えとった。
わいがこれからやろうとしとることを止めてくれる安心感も……正直なところ僅かながら感じとった。
せやけど、その男の口から出た言葉は意外やった。
「私は止めはしない。それもプレイヤーの判断に任せるべき選択だ」
振り向いた先には学者はんを思わせるような、長身で痩せ気味の真っ赤なローブに身を包んだ男がおった。
そのローブには白い十字架を象った……どこかで見たことのある紋章が刺繍されとった。
わいは険しい顔をしとったんやろう、その男の笑みでも非難するでもない表情、そして不思議な真鍮色の瞳に捕らわれるばかりやった。
「止めはしない。しかし君がそうするに至った理由には興味がある。一つ、聞かせてはもらえないだろうか?」
いけ好かん男やった。
こんな惨めな男を上から目線で説教か――。
「ええやろ、じっくり聞かせたるわ!耳ん中かっぽじいてよう聞くんやな!」
腰の高さ程度しかない外壁の上にどすんとあぐらを掻くと、吐き散らかすようにデスゲームが始まったあの日からのことを語った。
不思議な感じやった。
最初こそ敵意剥き出しの攻撃的な口調やったが……うん、うん、なるほど、その男の相槌はわいのそれを少しずつ解していくかのように思えた。
終いには……わいは俯いてしもうて、隠すことなく――、洗いざらい吐露した。
不安、焦燥、絶望……孤独。
何もかも吐き出した、というよりもつぶやくような感じで聞いてもろうた。
わいは一通りを話し終えるとその男の言葉を待つように、わいらの間に沈黙が流れた。
「ディアベル――」
男はわいが何度も口にした名前をつぶやくと、目を閉じ空を仰いだ。
「2022年12月3日19時42分――、第一層ボス戦の終盤にて≪戦闘不能≫。そうか、彼も――」
なんでそないな細かいことを……しかしわいはその男が口にする言葉を聞きとうて、口を挟まんかった。
「君は彼を支えに今日まで生き延びて来たと見える。それは亡き彼にとっても誇りであろう」
胸を打つとはこういうことを言うんやろうな、こないな感覚は産まれて初めてとさえ思えた。
「君は彼の志を継ごうとは思わなかったのかね?」
突然、大それたこと言い始めよった。
わいはそないに大きな人間やない、そんなことは自分がよう分かっとる、焦るように言うた。
しかし男はわいから目を放すとこう続けた。
「第一層には今だ多くのプレイヤーが存在する、誰に導かれることなく踏み出す勇気を振るえない者が。今の君のように」
「わいのように……」
全てを見透かされとる感じやった。
わいには……わいにはここから飛び降りる度胸なんぞ最初からなかった。
「君にはもう一つ選択肢があったのだ。それを選ぶも蹴るも君の自由だ。しかし……私には少し興味がある。導かれし者が、今度は他者を導くという展開にね――」
顔を上げるとその男の姿はどこにもなかった。
わいの胸はここから見える空のように、どこか晴れきったようなもんがあった。
日はまだ高く、風は草を揺らし、微かに鳥のさえずりも聞こえる。
普段当たり前のようにあるもんがいやに新鮮で心地好いもんやとさえ思うた。
アインクラッド第一層――。
わいがこれからやるべきことはそこにある。
それがわいのためでもあり、ディアベルはんへの恩返しでもあり、わいをそこへ導いてくれたあの男への礼にもなる。
そしていつか、このゲームを終わらせることが出来るんやったら――。
この先に何が待ちうけとるかは知らん。
しかしわいの足は何に臆することもなく、街へと――転移門の先にある第一層、はじまりの街へと踏み出しとった。
なんでや!
http://www.dotup.org/uploda/www.dotup.org3361252.jpg 川原
キバオウ(笑)。2話にだけ出てくる、エセ関西弁のうっとおしい男。関智一さんが熱演してくれて、とてもおもしろく見られました。
しかし残念、もう二度と出てきません。
>もう二度と出てきません。
>もう二度と出てきません。
>もう二度と出てきません。
>もう二度と出てきません。
>もう二度と出てきません。
あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ
ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ
まだや!ガンダム00ではスタッフに愛されたパトリック・コカコーラとかいう奴は出番増えよった!
二期にも映画にも出てきよった!わいにもまだ、わいにもまだ光はあるはずや!
____
/ ___\ ここまでネタキャラとしてよくやった
/ | ´・ω・| \ もうお前に用はない
/  ̄ ̄ ̄ |
| i /
L二ヽ  ̄ ̄ \
〉 ,、_/⌒\ノ
/ / / ̄ ̄ ̄\ ∩
/__/´ ∩ /___ ヽ/ ノ
_,,..-―'"⌒"~⌒"~ ゙̄"~ ゙̄"~ ゙̄"~ ゙゙̄"'''ョ \ ヽ|・ω・` | /
゙~,,,....-=-‐√"゙゙T"~ ̄Y"゙=ミ"~ ̄Y"゙=ミ""゙=ミ ヽ  ̄ ̄ ̄ _/ そんな〜
T | l,_,,/\ ,,/l l,_,,/\ ,,/l | キバオウ
動かなくても喋らなくてもせめてあれやこれやの説明する時に一枚絵くらい必要やろ!
なんでや!なんでなんやああああああああああ
キバオウ「なんでや!なんでキリトはんばっかりモテるんや!」
キバオウ「もうジゴロどころやない!チーターや!ジゴロのチーターでジーターや!」
キリト「ジーターか、いい呼び名だなそれ」
落ちてないとは
やっぱりキバオウさんは最高や
「ンッ――!ンッ――!」
迷い込んで来ることはあれど一般のプレイヤーは滅多に立ち寄らない、ノーマルゾーンにあたるダンジョンの一画――
耐久値を失った防具はとうに消滅し、哀れにも下着姿で吊るされている男の体にロザリアの振るう鞭がその跡を刻みつける。
『金目のものは持っていない、煮るなり焼くなり好きにしろ』、さっさと殺して別の獲物を探せばいいものの、団を仕切るロザリア
の意向でアジトに連れてくることとなった。
「んふふ――。屈強な男が情けない鳴き声を上げるのも好きだけど、情けない男の鳴き声ってのもゾクゾクするわぁ――」
「ンゥンッ――!ンッ――!」
口には猿ぐつわを、目には目隠しをされ、男は悲鳴を上げる以外のことは出来ない。
「しかし女を逃がして投降するなんざ、なかなか泣かせる野郎じゃないの」
「まったくだ――」
鞭を振るい愉悦に浸るロザリアをよそに、俺と相棒は道行く商人から分けてもらったローストビーフをワインで胃に流し込む。
「こないだ襲った奴はよぉ、女置いて逃げちまいやがったってのによ。ま、泣き叫ぶ女を抱くってのは悪かなかったがね」
「悪い趣味だ」
「そう言うなよ」
相棒はワインを片手に肩をすくめてみせる。
ロザリアも俺の相棒も――、いや俺以外の≪タイタンズ・ハンド≫のメンバーが日頃からこうしてプレイヤーを襲う理由――
それは≪欲の解放≫に他ならない。
現実世界の俺たちはどうなっているかも分からず、いつこの電脳世界から解放されるかも分からない。
娯楽と言えば飯と酒……それだけでは解消されないストレスが日々確実に募るばかりだ。
俺はどうなのだろう……。
元々俺はどのMMOにおいてものめり込みがが強く、更には対人志向も強かった。
過去には他のプレイヤーから≪疾風迅雷≫と称され、多くのプレイヤーから慕われたこともある。
それが今では――
ロザリアは地面に転がっているポーション瓶を手に取ると、おもむろに男に浴びせかけた。
男の体力ゲージは緩やかに回復していくが、それを遮るようにロザリアの鞭が再び乾いた音を響かせる。
俺は立ち上がると、手元に置いてあった≪ダークソード≫と≪フレイムブレード≫を左右の手にぶら下げ――
寝息を立てる相棒には目もくれず、恍惚な笑みを浮かべるロザリアにゆっくりと歩み寄った。
なんやで!
「ああッ――!」
私がそこに辿り着くと、一人の女性が『なぜ?』という顔のまま、悲鳴と耳障りな音と共に飛散した。
三十五層の主街地であるミーシェに立ち寄った際に宿屋の前で泣いている女の子と出会った。
理由を聞くと四十七層でオレンジマーカーに襲われ帰還したものの、相方である男性が帰ってこないのだと。
四十七層で暗躍するオレンジギルドの情報は、私の属するギルド≪血盟騎士団≫にもいくらか集まっていた。
そしてその根城が四十七層の中心地から遠く離れた、各種クエストにも関係しなければボスがいるわけでもない、
そういうダンジョンにあるということも。
迷宮調査とボスを倒す攻略組はこの層より上に、≪軍≫と称される組織は主に低層を活動の場としている。
現状、中層地帯が一番治安の悪い状態にあるのだ。
女の子を宿に残し、数名のギルドメンバーを引き連れ……こうして彼らの住まうダンジョンへと赴いたのである。
私が直々に出向くことになったのも、女の子の言う男性の名前に僅かながら聞き覚えがあったからだ。
しかし道中は迷路のように入り組み、同胞クラディールの意見もあって各個別れて事態にあたることになった。
そして……私の進む道が≪当たり≫であった――
「ひっ――」
あのエフェクトの発する音にはどうしても慣れず、抑えるつもりであった悲鳴が少しばかり漏れた。
飛散した女性の傍らには、下着姿で吊るされた男性と、攻略会議でよく意見の対立する少年と同じような……。
いや、彼よりも背が高く、憂いを帯びた眼の青年がそこにいた。
二本の刃――、女性を切り裂いたそれを手に下げた青年は私を一瞥するとこちらに向き直った。
「あんたは……≪血盟騎士団≫の副団長――」
殺人者に顔を知られているというのはあまりいい気分ではない。
しかし――
「あなたは≪タイタンズ・ハンド≫のメンバーなの?」
恐れを見抜かれぬよう気丈に問う。
彼は何も答えなかった。
代わりに、私の目の前に一つのウインドウパネルが展開される。
【ナイトハルト から1vs1デュエルを申し込まれました。受諾しますか?】
デュエルに勝てば教えてやる……そう言わんばかりの眼で私を見ていた。
249 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2012/09/02(日) 17:14:34.51 ID:wHIGBGogO
今回はキバオウさん大活躍だったな!キバオウが副軍団長を務める解放軍の雑魚がキリトきゅんに助けられて大活躍!
250 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2012/09/03(月) 08:22:52.49 ID:QBQ1MW8HO
キバオウさんの栄光と没落話で三話連続スペシャルやったらDVDとか馬鹿売れだぞ。きっと。
おめーのせきはねーです
\ _______
\ r'´ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄`、::. ___
l} 、:: \ヘ,___,_ ______/::.__| .|___________
|l \:: | | |、:.. |[], _ .|:[ニ]:::::
|l'-,、イ\: | | ∧,,,∧ . |::.. ヘ ̄ ̄,/:::(__)::
|l ´ヽ,ノ: | | (´・ω・`) ,l、:::  ̄ ̄::::::::::::::::
|l | :| | |,r'",´ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄`ヽ、l:::::
|l.,\\| :| | ,' :::::... ..::ll:::: 精鋭が敗退するなんてそうや
|l | :| | | :::::::... . .:::|l:::: これは夢なんや
|l__,,| :| | | ::::.... ..:::|l:::: ワイは今、夢を見ているんや
|l ̄`~~| :| | | |l:::: 目が覚めたとき、
|l | :| | | |l:::: ワイの精鋭はまだ攻略に出てない
|l | :| | | ''"´ |l:::: 起きたら閲兵に行って、
|l \\[]:| | | |l:::: 串謎カツを食べて、涼しい午前中に謎ホットドックを食べながら実務して、
|l ィ'´~ヽ | | ``' |l:::: 午後から部下連れて町を練り歩くんや・・・
|l-''´ヽ,/:: | | ''"´ |l::::
|l /:: | \,'´____..:::::::::::::::_`l__,イ::::
なんだこのスレwwww
254 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2012/09/04(火) 17:46:26.48 ID:LiQOYn7CO
キバオウさんまじ半端ねぇす。漢の中の漢っすね!次の登場心待にしてます!
決着はあっさりと着いた。
最初こそ様子を見ようとスキルを使わず立ち回っていたのだが、≪血盟騎士団≫の副団長である彼女はそのまま体力ゲージを減らし――
もう一振りでも当てようものなら――ロザリア同様、光の欠片となり飛散するまでになっていた。
「くっ――」
地べたにへたり込んだ彼女の厳しい目が俺を捕らえる。
彼女は今、何を感じているのだろうか。
死の寸前まで体力を削られ、恐怖なのか……それとも俺が何もしないこの状況に安堵すらついているのか――
彼女の放つ多彩なスキルは、ついに一度も俺にかすることすらなかった。
勝ち目の無さに絶望でも感じているのだろうか?
殺してしまうことは容易い。
これまで何人ものプレイヤーにやってきたことと同じように、どちらかの刃を振り下ろせば――
このアインクラッドで最初に殺しをやったのは、当時所属していたギルドでデュエルをした時だった。
その時俺は新入りで、相手はギルド結成メンバーの一人だった。
ほんの腕試しのはずだったが……両者白熱し、結果的に一人の命を失うという形でデュエルは決した。
ギルドに加入して数日と経たず俺は追放処分になり、≪キルカウント 1≫というステータスとオレンジマーカーを得た。
それからは≪キルカウント≫が増えるばかりだった。
進んでPKを働いたわけではない、ダンジョンへ向かう道中や狩場でも俺を狙うプレイヤーが絶えなかったのだ。
初めの頃は俺を追放したギルドのメンバーが俺を襲った。
それが次第に腕試しのプレイヤーや≪軍≫と呼ばれる連中も襲ってきた。
全て返り討ちにしたせいもあって、気付けば俺の≪キルカウント≫の数字は優に三桁を越えていた。
俺はいつしか止めを刺す前に相手を観察するようになっていた。
いつも伺えるのは死に対する恐怖であった。
中には泣いて土下座をする者、俺と組まないかと言い始める者、仲間に入れてくれと申し出る者――、生に対する執着……そればかりだった。
しかし彼女の目は何か違う。
死の淵にいてなお屈しないとでも言おうか、戦っている相手は俺ではないと言おうか……。
「アイ、リザイン――」
俺は自ら負けを宣言しデュエルを放棄すると、彼女の制止も聞かずその場を後にした。
負けたつもりはない……気になったのだ、彼女の目が……彼女が俺の向こう側に見ていたものが。
俺もいつしか強者に屈し、あのような目をする日が来るのであろうか……新しい楽しみをくれた礼のつもりだった。
彼はなぜ負けを宣言しこの場を去ったのだろうか――
彼が去った後……私は仲間に連絡をすることなく、気の抜けたようにその場にへたり込むしか出来なかった。
彼の強さは次元が違った。
自分で言うのもあれだが、私は精鋭の集う攻略組の中でも上位クラスに部類する腕があると自負している。
そんな私がまるで赤子の手を捻るかのように……何も出来ないまま死の淵まで追いやられたのだ。
恐怖があった……と思う。
私を見つめる彼の顔が不気味な笑顔に変わって、手にした刃が私に振り下ろされる――
そんなイメージが――、ほらもうすぐ来るぞ、いやまだだ、ほら来るぞと私を煽っていたかのように。
それは私にもう一つの感覚を与えたようにも思えた。
このデスゲームが始まった日……最初の街の宿屋で腐るよりも……最期まで生き抜く、それがここで砕けるのかと――
死を受け入れることは、彼に、自分に――そしてこの世界に負けたと認めることになる。
それは誰に向けるでもない歯痒さへとなり――
考えるよりも先にやることがあると、私は同行してくれたメンバーに位置を知らせると、裸で吊るされている男性――キバオウさんを解放し、恥ずかしそうにする彼に適当な防具を装備させた。
裸のまま同性に合わせるのはあまりにも哀れだったからだ。
そして隅のテーブルで酔いつぶれている男性を軽く拘束すると……キバオウさんに向き直った。
宿屋で待つ女の子の話をすると、彼はもじもじと口を開いた。
転移結晶という高価なものは元々一つしか持っておらず、それを彼女に渡したのだと。
そして残った自分は敏捷度も高くなく、逃げても追いつかれるだけだと……オレンジギルドの興味が自分に向いていれば彼女は安全だと――
「殺されるとは思わなかったんですか!」
思わず怒鳴ってしまった。
すると彼は、誰かの為に死ねるのであればそれでいい、嘘じゃない、そう口にした。
呆れたものである。
と同時に……私はそれまで強張っていた頬が緩むのを確かに感じた。
他者を生かすために自身の生を犠牲にする……体力ゲージがゼロになれば終わりのこのゲームでそういう行動を取る人はいない。
それを実践してみせた彼が少しばかり新鮮に思えたのだ。
≪ナイトハルト≫という人物の存在はギルドには報告しなかった。
彼とは私個人が決着をつけなければならない……そして、そんな私を生かしておいた――せめてもの礼のつもりだった。
キバオウは死んだ、もういない
うそだ><
ある意味キバオウ改変ssスレ見に来てるようなものだし
「わいや、ヒースクリフはん!殺されるのは、わいや!」
かすれた声で精一杯に叫びながら、ついに磔台に昇り、釣り上げられてゆく友の両足に齧りついた。
群衆は、どよめいた。
ワロタ、もう許した、と口々にわめいた。
ディアベルの縄は、ほどかれたのである。
「ディアベルはん――」
キバオウは眼に涙を浮かべて言った。
「わいを殴ってくれ。ちから一ぱいに頬を殴れ。わいは……途中で一度、逃げ出そう思うた。ディアベルはんがわいを殴ってくれなんだら、わいはディアベルはんを抱擁でけへん」
ディアベルは、すべてを察した様子でうなずき、刑場一ぱいに鳴り響くほどの音高くキバオウの右頬を殴った。
殴ってから優しく微笑み、
「キバオウ……俺を殴れ。俺はこの三日間、たった一度だけ、お前を疑った。出会ってから初めてお前を疑った。お前が俺を殴ってくれなければ、俺はお前と抱擁できない」
キバオウは腕に唸りをつけてディアベルの頬を殴った。
「ありがとう、友よ――」
二人同時に言い、ひしと抱き合い、それから嬉し泣きにおいおい声を放って泣いた。
群衆も沸いた。
暴君ヒースクリフは、群集の背後から二人の様を、まじまじと見つめていたが、やがて静かに二人に近づき、顔をあからめてこう言った。
「君たちの目的は達成せしめられた。ゲームクリアおめでとう、キバオウ君、ディアベル君。信実とは、決して空虚な妄想ではなかった。どうか、私も仲間に入れてくれないだろうか。君たちの仲間の一人にしてほしい」
ヒースクリフは、身に纏っていた真紅のローブと下着を脱ぎ捨て、二人に歩み寄った。
どっと群衆の間に、歓声が起った。
「万歳、ヒースクリフ王万歳」
黒いマントを纏ったひとりの少年が、そのマントをキバオウに捧げた。
キバオウは、まごついた。
友は、気をきかせて教えてやった。
「キバオウ、お前は、真っ裸じゃないか。早くそのマントを着るがいい。この少年は、お前の裸体を皆に見られるのが、たまらなく口惜しいのだ」
友は、言った。
「そないなもんいらへん。おまはんも早う、その服を脱ぐんや。わいらは……わいらは仲間や」
少年は、ひどく赤面した。
なんやこのホモスレは
キバオウさん出てきたらBDDVD売れるから再登場はよ
はよ
いえ、出番ありません。これは仕様です。
265 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2012/09/09(日) 11:47:49.31 ID:er5M+CJu0
なんでや!?
なんでクラディールはんが死ななアカンのや!
おかしいわ!絶対におかしいわ!
なんでゴドフリーはん見殺しにしたんや!?
夏のある日、キバオウ率いる≪アインクラッド解放軍≫は食料や資材を確保するために奔走していました。
第二十五層攻略時に多大な犠牲を出し、しばらくは力を蓄えることにしたのです。
奔走といってもモンスターを倒したりNPCから購入するわけではありません。
同団体に所属する三千名を超えるプレイヤーからの徴収が主でした。
プレイヤーの保有する資産に関係なくせっせせっせと声をかけ、一層はじまりの街の中央広場に面する≪黒鉄宮≫に収めるよう言って回っていました。
特に副リーダーを務めるキバオウは一層で志半ばに散った≪友≫のこともあり、これ以上仲間を死なせたくないと今後の準備を入念に行うよう行動に移したのです。
食事や睡眠もろくにとらず、資材を蓄え、それを用いて集団でレベリングする……自身は狩りもせず、ただひたすらに物資を集める日々でした。
しかし≪軍≫に所属……というよりも行き場がなく名だけ連ねているプレイヤーにとってはキバオウの行動を快く思っていない人もいました。
「あれはていのいい略奪だ」
「あれで私腹を肥やしているに違いない」
「≪血盟騎士団≫にくれてやる方がましだ」
と、無責任な悪い噂はあっという間に広がり、キバオウの努力も虚しく、彼の立場は日に日に悪くなる一方でした。
ある日、一層の中央広場に人だかりができていました。
「成果を示せ、これ以上の略奪には応じない」
そう、プレイヤーたちは声を荒げていました。
ことの責任を感じたキバオウは、自身を筆頭に、忠臣であるコーバッツと名うての精鋭十余名による七十四層ボス攻略を企画しました。
しかしコーバッツは言います。
「キバオウ殿自らが出る幕ではない。指導者を支えることが我々下の者の務め」
苦い顔で承諾したものの、キバオウは納得していませんでした。
そしてコーバッツが七十四層に向かう当日、彼らを見送ることなく、早朝先回りするかのように、一人七十四層へと向かいました。
迷宮の入り口に、丁度キバオウの目の前にプレイヤーの姿がありました。
わずか二名ではありますが、彼のよく知る二人でした。
彼らの後をこっそりと追い、ボスの情報をコーバッツに届けよう……そう思っていました。
しかし――。
>>188 キバオウが最期に口にしようとした言葉は、彼を孤高へと追いやった贖罪でした。
しかし、それは誰の耳にも届くことはなく……。
いかに努力を重ねようとも、報われない者は一生報われないというお話です。
268 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2012/09/10(月) 08:58:36.75 ID:0mu4GSNu0
“征服王”ゴドフリーはんが死んでしまうやなんて、どうなっとるんや!
”二刀流の悪魔”は詫び入れなあかんやろ?!
なにちゃっかり結婚しとんねん!
「ようこそ、人の子よ。ここはアインクラッド第八十層、バルハラ宮殿……。戦いに敗れた者が、死後ここへ来るのだ」
気がついたら、わいは真っ白な部屋につっ立っとった。
部屋というよりも神殿というか……どこまでも伸びる通路の脇には、立派な柱が遥か遠くまで生えており、足元には雲のようなものが当たり一面に広がっとった。
ここがどういう場で、わいがなぜこないなところにおるんか……それとなく理解出来た。
「じゃあわいは……死んでしもたんか……」
背後からした声に別段驚きはせんかった。
わいを見下ろしつつ、オーディンと名乗った巨体で角の生えたおっちゃんが口を開く。
「まあ、そういうことだ。だがわしにはお前を生き返らせる力がある。純粋な戦闘で敗れたのであればこうはいかないが、お前がいつの日かわしと戦うことを誓うなら、今一度、その勇気に敬して生き返らせてやろう」
生き返る――。
「ちゅうことは……死んでいった他のモンもみんな生き返っとるいうんか?」
オーディンのおっちゃんは表情を陰らせた。
「わしの役目は死者の最期を見届けることだ。これまでに多くの人の子の最期を見送ってきた」
「せやったら何で……」
「わしはアインクラッドにいる全てのプレイヤーを見ている。他者を生かすために命を投げ出す者を死なせるにはあまりにも惜しい」
ふと、振り返りたくはないある光景が脳裏をよぎった――。
「サチはんは――、サチはんはどうなったんや!」
「彼女にもお前と同じ機会を与えてやった。しかし――」
おっちゃんは言葉を続けた。
「彼女は死を受け入れた。いつしかわしの前に、自分にはない強さを持った男が現れる、そう言い残してな」
「サチはん……」
不意にどうしようもない悔いが込み上げてきた。
「見てたんなら分かるやろ……サチはんが死んだんはわいのせいや!わいが弱いせいであないなことになったんや!それだけやない――」
「グリームアイズの奴に一撃で葬られたのも、お前が弱いせいだと言えるか?」
「当たり前や!」
わいの怒声は響くことなく、風に誘われるよう……柱の向こうに覗く澄み切った青空へと飛散していった。
「……もう戦う気力はないと?」
長い沈黙を破ったのはおっちゃんやった。
その場にどかっと座り込んだわいは、不思議と冷静やった。
「……わいみたいなのが生き返ったところで何が出来るわけでもないやろ」
「ふむ……ここで剣を置く、それも良いだろう」
おっちゃんの優しい声は身に突き刺さるようやった。
これから自分は消えてしまう……かやなんとかが言うとったように、ヘルメットのどうのこうのがわいの脳を――。
恐怖は……ないと言えば嘘や、せやけど一瞬で、一思いにやってくれるんやったら……なるようになればええ。
「せや、キリトはんとアスナはんは――」
「お前が身を挺して守った二人なら……見てみるかね?」
おっちゃんは手にした巨大な槍を掲げると――、わいの目の前に二人の姿が映し出された。
二人はどうやら逃げ果せたようで、通路にへたり込むように俯いとった。
そして数名の男がその二人を取り囲むようにしとった。
「無事やったか……コーバッツは?わいの部下らもあそこへ向かっとるはずなんや」
「彼らなら――」
おっちゃんは槍の尻で地面をカツンと鳴らすと、わいの目の前にある映像が瞬時に切り換わった。
「なっ――」
わいの目の前には……グリームアイズに為すすべなく打ち払われる、コーバッツらの姿が映し出された。
「無茶や――、引き返すんや!」
「彼らは……彼らは何のために戦っているのであろうな」
元より死ぬつもりやった。
攻略組がボスに挑む際、限界ギリギリの三十余名で編成する。
しかしわいが募ったのはその半分にも満たん……形だけの十余名や。
わいがボスにやられた後、コーバッツらを帰還させ……連中をわいやのうてリーダー派の傘下に編入させるっちゅう筋書きやった。
「彼らもまた、守るために戦っておるのだ。それが何か分かるか?」
あいつらは……あいつらはわいなんかのために――。
「お前がこれまでそうしてきたように、彼らもまた、同じなのだ。勇気ある者の姿なのだ」
ヘマばかりやらかすわいなんかのために――。
「おっちゃん!さっき言うたんは取り消しや!わいを――」
「その言葉を待っていたぞ」
おっちゃんは手にした槍をわいの方へと差し出し――、わいはその槍をぐいと掴む。
体の中に消沈していた何かが息を吹き返すような、みずみずしく溢れ出るような感覚がわいの中を駆け巡る――。
「アインクラッド第八十層の迷宮を攻略し、再び我が前に立ちはだかることを誓うがよい」
「お前がいつの日か、わしと戦うことを誓うなら、今一度、その勇気に敬して生き返らせてやろう」
「勇者よ。戦いを続ける勇気はあるか?」
>>270 なんでや!なんでこんなええ所で終わってはるんや
続きはよう!
273 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2012/09/12(水) 16:45:56.77 ID:Iv51F7zv0
あげ
274 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2012/09/13(木) 19:53:38.70 ID:OX4HaPJH0
/ ̄ ̄\
/ _ノ ヽ そしてキバオウさんがビーストテイマーとどう関係してくるか・・・
. | ( ●)(●) ____
| (__人__) / \ いったい誰が殺人ギルドなんだろうね・・・
. | ` ⌒´ノ / ─ ─\
| } / (●) (●) \
ヽ } | (__人__) | ___________
/⌒ヽ、 ノ \ ∩ノ ⊃ / | | |
___/ , ィ ´ ∫ ___( ` 、 _/ _ノ \ | | |
| | / / } ∬ | | \ “ / ___l || | |
| | / / |i ┌‐┐ | | | \ / ____/| | |
| | ( 〆⌒ ──r─≒、 .| =| | | |  ̄ |_|___________|
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄└‐┘ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄("二) ̄ ̄ ̄l二二l二二 _|_|__|_..]
275 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2012/09/16(日) 00:18:40.50 ID:ixVkAjRx0
今日キバオウさんが出ると聞いて
気のせい
なんでや!
キバオウって2話の関西弁クズ悪役キャラだったのか。
名前が牙王とかカッコイイから、話題にチラッとのぼる度に、
「まだアニメ未登場だけど、原作では後半大活躍する、
強くて偉くて人間じゃなかったりする大物敵キャラ」かなんかだと
と思ってました。だまされた
279 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2012/09/18(火) 00:21:21.64 ID:TanYgiz50
キバオウ「なんや?」(なに見てんだ)
関西人A「なんやねん」(なんだよ)
キバオウ「なんやと?」(やるんか?)
関西人A「なんやこら!」(なんだと)
キバオウ「なんや!」(かかってこい!)
関西人A「なんやとはなんや?」(なんだとはなんだ)
キバオウ「なんや!」(やんのか?)
関西人A「なんやねん!」(やんのか?)
関西人B「なんやなんや?」(どうしたどうした?)
関西人C「なんやなんや?」(なんだなんだ?)
キバオウ「なんや!」(うるさい)
関西人A「なんや!」(黙ってろ)
関西人B「なんやなんや」(落ち着いて落ち着いて)
関西人C「なんやったんや?」(なんだったんですか?)
――有り得ない。
それがコーバッツ中佐と名乗った男の……最期の言葉だった。
それをきっかけに先ほどまで怯えていたアスナは、何を思ったのか雄叫びを上げつつグリームアイズに突撃した。
俺やクラインも『もうどうにでもなれ』と、半ばやけっぱちにその後を追う。
目の前にそびえるのは、圧倒的な絶望。
牙を剥き出すような俺たちの怒りの――渾身の一撃は、ことごとくグリームアイズの手にした大剣によって為すすべなく打ち振るわれる。
世はかくも無情なもの……数字が全てであるこのソードアートオンラインにおいて、人間のもつ感情など、何の役にも立たないのだ。
むしろ怒りは冷静な判断力を失わせ、俺たちを窮地に追いやるばかりであった。
――判断を誤った。
巨体から振るわれる大剣の一太刀を避けるものの、それが発する衝撃波で俺の体力ゲージがまた僅かながらも削られる。
それは皆も同じであった。
アスナの後を追う前に、装備とスキルの変更をしておけば……。
≪二刀流≫――。
おそらく現状において、この武器スキルを習得しているのは俺だけである。
片手剣を左右の手に一本づつ装備できるこのスキルは、ある日忽然と俺のスキルウインドウに表示されていた。
発見から一年ほど経つが……あまりにもクセのあるスキルだった。
≪二刀流≫のソードスキルは連撃を主にするため、発生から打ち終わるまでの時間が使用するスキルによって非常にまちまちなのだ。
連撃の発動中も敵の行動は続き、それをかい潜る慣れがなければまともに運用するのは厳しい。
ヒットアンドアウェイのソロですら手を焼くこの特性は、ボス攻略では不向きであると、そんな理由で人目に晒すことはなかった。
火力こそあるが……集団戦において≪スイッチ≫のタイミングを見誤ると、無駄な被弾を誰かが受けることになる――。
考えている時間は無駄だ。
この戦局をひっくり返そうというのではない。
今は……やれることをやるしかないのだ。
「アスナ!クライン!十秒だ、十秒だけ持ちこたえてくれ!」
俺は叫ぶと、二人の応答に耳を貸すことなく悪魔の放つ一撃を弾き、無理やりブレイクポイントを作って横に転がり距離を取る。
ワンミスすら許されないメニュー操作……剣の練習はすれど、このような早さが求められる操作は初めてだった。
武器とスキルを解除し、その空欄に武器をセット――、そしてスキルの再配置――。
しかし≪二刀流≫をもって、どう奴に立ち向かうかは……いまだに暗雲の中だ。
ミスなく終え、OKボタンにタッチしウインドウを消すと、背に新たな重みが加わったのを確認しながら俺は顔を上げた。
俺の影に、それを覆い隠す程の影が重なっていた。
全てがゆっくりと動くように見えた。
俺の前に立ちはだかった……俺を見下ろすグリームアイズの目が暗闇で不気味に輝き――、巨体の悪魔が手にした大剣がゆっくりと俺に振り下ろされる――。
そして投げ捨てられた剣の音と共に――、俺が最も信頼する男の背中が目に入り――。
俺の前に捨て身で割って入ったクラインに――。
グリームアイズの大剣が為すすべなく振り下ろされる――。
それはまるで俺とアスナを庇った……あの男のように――。
「クライン――!」
全てがスローに映る世界で……叫びも虚しく、俺の視界は光によって包まれた。
クラインが死んだ。
俺が判断を誤ったばかりに。
目の前に広がる光とは対照的に、俺の胸中には後悔の念による闇が広がった。
一層のはじまりの街で初心者である彼を見捨てた。
一層のボス戦後には一人で≪ビーター≫という名を背負い、誰を助けることもなく……ソロプレイヤーとして生きてきた。
そんな負い目を背負う俺を……ギルド≪風林火山≫のリーダーを務めるクラインは――。
わずか一瞬の間に、人はこれだけの強い悔いを感じるものだと思い知らされた。
しかし――。
金属と金属がぶつかり合う乾いた音が耳に入って来ると同時に、光は消え……俺の目の前には先ほどと変わらない光景が映っていた。
そう……目の前にはクラインの背中が――。
「な、なんだ――」
クラインは生きていた。
俺もそうだが、彼自身、何が起こったのか分からないようだった。
いや――。
クラインの前に≪人影≫があるのが分かった。
グリームアイズではない、人間の――。
彼は大きな槍を横にし、柄の部分でグリームアイズの大剣を受け止めていた。
ボス部屋の周囲に退避している≪軍≫の連中が口々にその男の名を漏らした。
彼がなぜここに……というように聞こえた。
俺も同じだった。
彼は……間違いなく俺の目の前で――。
「キ、キバオウ――」
あの体格に髪型……間違いなく彼だ。
「こ、こんならぁ――!」
キバオウは威勢良く槍を振り上げると、受け止めていたグリームアイズの大剣を大きく弾いた。
それと同時に――。
「キリト!」
「ああ!」
クラインの声に瞬時に応じ、俺は右に、クラインは左へと抜け――、二人同時に無防備になったグリームアイズの横腹に襲い掛かる。
≪スイッチ≫――、それも阿吽の呼吸の。
俺はクラインの使うスキルと状況を瞬時に判断し、手数は少ないものの瞬発力のある二刀流突撃技≪ダブルサーキュラー≫を選択する。
クラインと俺の武器が光を帯び、各々のソードスキルが発動する。
「オオオオオ――!」
雄叫びが響き渡る。
しかしそれは……両脇を薙がれたグリームアイズのそれではない。
突きのレイピアで奴の背中を『斬りつけた』……目は紅く輝き、牙を剥いた――。
まるで獣のような……アスナ自身のそれであった。
こん中に、小説改変を投下せなアカン奴がおるやろ!
.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:., '´ , '´.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:。.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:。.:.:
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+ ' . '! '! ∧,,∧ みんなキバオウにな〜れ!
. o '、 .'、 (`・ω・)つ━☆ ・ * 。 , , 。 ゚
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.。 ヽ、 ヽ し'´J ノi * ・ °。 。
. .。 `'-、, `ー−--‐'" ,ノ ゚ ・ ☆ ゚. , ,。
`゙''ー‐- ---‐'''" * ・ * ☆
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ジョウダンヤナイデ カメヘンガナ
ナルカッチュウネン ドナイヤユウネン セヤナ エエンチャウ?
,ハ,,,ハ (ヽ_/) ∩w∩ ∧,,∧ γ''""ヽ ヘ⌒ヽフ
( ・ω・) (・ω・)( ・ω・)( ・ω・) U ・ω・U ・ω・)
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Y l: :λ: :|:斥 /' / 、
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》==t、ヽクヽ:::::::ヽ、r‐</ ヽ__/:{: {: : : :,z.,__: :〉=
{i:::::::{i≫≪|ヽ:::::ヾll>ィ Y:z―ヽ/ _〈: :/ 。 ゚
ヾK>iY==彡ヾ、::::/;;;ヽ____ _|:.| j /__ }:ハ , i ゚ 。
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r<ヽ__:::::::::::::::/::-f\j ヽ;;;;;;,,;ァ.__ ミニ=-...._ 。{ 、~ 〈 「{ ヽ 。゜。
|MORE>r‐''"´:.:| ヽ;;;;;;;;ソ \ ', r ⌒>} / {
| DEBAN |. ,ィテ| |:: `"´ \ \ Π´ / `
r≦>--....._|/:;イ_:Li::::
ヽ≧ニニニニニ彡::::::::::::
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覚醒スキル≪バーサーク≫――。
プレイヤーに備わる回避と防御の性能を大幅にダウンさせ、攻撃力を飛躍的に上昇させるというスキルだ。
しかしこれを発動させると……指定した対象の体力ゲージがゼロになるか、スキル使用者が≪気絶状態≫にならないと解除されない。
βテストの時点では好んで使うプレイヤーもいたが、一旦使用すると制御不能に近い状態になるせいもあって、体力ゲージがゼロになれば現実の命も同時に消えるこのデスゲームでは使用する奴はいない。
プレイヤーの残り体力が10%を切った状態で、自身よりレベルが10以上高いモンスターの体力をソロで満タンからゼロにする――。
これが≪バーサーク≫の習得条件だ。
さらに攻撃力の上昇を望むのであれば、同様のことを繰り返し行いスキルレベルを上げる必要がある。
死にながら習熟度を上げるスキル……言わば死に上げスキルの代表だ。
彼女が≪血盟騎士団≫の副団長である所以はこれにあったのか、そう思った。
狂気の沙汰……それこそが強さの証明でもあるかのような――。
「アアアア――!」
アスナは悲鳴にも近い咆哮を放ちつつ、彼女の方へと向き直ったグリームアイズに正面から突進する。
「アスナ!下がるんだ!」
咄嗟に口から出たものの、この状態のアスナに俺の声が届くはずもない。
グリームアイズの獲物がアスナに襲い掛かる。
ッギィン――
「ぐ、ぐっ――」
再びキバオウがそれを受け止める。
考えることは無駄だ。
無茶でもなんでもいい……こいつを倒さない限り、俺たちに明日はない。
俺がダッシュを掛けるとほぼ同時に、クラインも仕掛ける。
打ち合わせも何もなく、俺とクラインは先ほどと同じスキルでグリームアイズに突撃する。
このまま押し通せば安定して倒すことが出来る。
そう思っていた。
「アスナッ――!」
巨体の悪魔はタンクであるキバオウに背を向け、背後から斬りつけたアスナの方へとその大きな体を向ける。
一見安定しているように見えるが、≪バーサーク≫状態にあるアスナの猛攻に皆が追いつけなくなるまで……そう時間を要しなかった。
不規則なアスナの攻めからグリームアイズの攻撃を誘発させ、それをキバオウがタンクとして受け、その隙を狙って俺やクライン、風林火山のメンバーがダメージソースとなるアタッカーの役割をこなす。
少数人数ながらも戦闘に参加しているメンバーは、突如現れたキバオウ以外、みな攻略組だ。
俺も火力のあるスキルは控えめに、≪ダブルサーキュラー≫を主体に隙を突く。
しかし不規則なアスナの動きに完全に対応出来るはずもなく、タンク役のキバオウ、そしてアタッカーの俺たちも攻撃の余波や不意の一撃で体力を大きく減らしていた。
結晶の使えないこの部屋では体力の回復はままならず、ポーションを飲むにもその隙さえ伺い難い。
この七十四層のボスモンスターのAIは……雑魚モンスターに搭載されているフィードバックされないそれとは違う。
プレイヤーによってこれまで攻略されたボスの情報がフィードバックされている、そう思わせる動きが目立った。
俺たちの弱い部分を徹底的に突いてくる――、しかしそれを撹乱する要因がアスナにあった。
だがそれすらも俺たちの弱い部分であるということはまるで見抜かれているかのようだった。
半分近く削ったグリームアイズの体力、その内の半分はアスナの攻撃によるものだ。
それも『ソードスキルを使用しない素殴り』でだ。
アスナの攻撃は、ソードスキルを使用している俺やクラインの一撃よりも、多くのダメージを与えている。
≪バーサーク≫のスキルレベルが異様に高い……誰もがそう思っていただろう。
地面を蹴ってグリームアイズに飛び掛ったアスナを、その巨体から振るわれる一撃が完全にそれを捕らえた。
獣が発するような悲鳴を上げ、アスナは壁面に打ちつけられた。
「アスナさん――!」
咄嗟にアスナに駆け寄るクラインに、巨体の悪魔は狙ったかのように容赦のない蹴りを叩き込む。
「クライン――!」
もう自分が何をしているかも分からなかった。
「うおおおおおあああ!」
エクストラスキル≪二刀流≫、その上位剣技、連続十六回攻撃を放つ≪スターバースト・ストリーム≫――。
俺は絶叫を上げながら左右の剣を次々に敵の体に叩き込み続けた。
八連撃目だった。
グリームアイズの腕がスキル発動中の無防備な俺の体を打ち――。
俺は地に伏すことをやむなくされた。
次に巨体は俺の体にその大剣を突き立てるだろう。
せめて思い切り睨みつけてやろう、そう顔を上げると――。
その足は俺ではなく――。
倒れたアスナとクライン……それを介抱する為に駆け寄ったであろう≪軍≫の連中へと向けられていた。
終わった。
コーバッツ中佐殿が倒れ、突如現れたキバオウ殿も奮戦虚しく片膝をついて荒々しく息を吐いている。
圧倒的な立ち回りを見せた≪血盟騎士団≫の≪閃光≫も倒れ、攻略組の≪風林火山≫の連中もひどく消耗している。
そして二本の片手剣を振るった≪黒の剣士≫と称される少年も倒れ……。
風林火山の団長は僅かながら意識もあり、我々のポーションを少量づつ口にすることが出来た。
しかし≪閃光≫のアスナは意識を失っており……レッドゾーンまで減った体力を戻すことが出来ない。
ふと、我々を一つの影が覆った。
悪い予感というものは的中するもので……意を決して振り向くと、そこには輝く目をした化け物の姿があった。
「ひっ――!」
皆、同じように悲鳴を上げた。
手練の連中ですら太刀打ち出来ない相手に、攻略の一線から一時的ではあるが身を引いた我々に何が出来ようか!
我々を見下ろした化け物の顔に不気味な笑みのようなものが浮かぶのが分かった。
これまで目にしてきたモンスターとは違う、何か意思を持っているかのような――。
『どうした人間どもよ、ここで終わりか?』、無力な我々にまるでそのようなことを感じさせるようでもあった。
満足したのか、グリームアイズは手にした大剣を大きく振り上げ――。
刹那――。
「グォオオオオ!」
化け物が吠えた。
勢いをつけて振り下ろされる――。
身の毛もよだつとは正にこの事。
誰もが一瞬死を覚悟した。
「……わいはまだやれるで」
化け物の咆哮の原因は……奴の背中を薙いだ、キバオウ殿の一閃にあった。
肩で大きく息をするキバオウ殿は、肉体的にも精神的にも限界のはず……。
それでもなお――。
我々を覆っていた巨大な影は退き、ゆっくりとキバオウ殿の方へと向きを変えると……地を蹴り駆け出した。
彼と初めて出会ったのは、アインクラッド第一層はじまりの街の主街区にある一軒の飲み屋だった。
当時の俺はギルドには所属していないものの、即席の野良PTでのハントを主にしていた。
多くの仲間を慕え、理想を熱く語るキバオウ殿の姿は最初こそ青臭いと思っていたが……その熱弁に耳を傾けている内に、俺に一つの関心が沸いた。
「レベルが高いモンも、低いモンも関係あれへん!皆一丸となってゲームをクリアするんや!」
俺はこの一年半近く何をしていたのだろうと。
時折手にする情報誌で攻略組の成果は聞きに及んでいた。
この調子で攻略が進めば、いつかはこの世界から抜け出せるであろう……他人の為す努力や成果に関心はなかった。
危険な攻略は他人に任せて現実世界に帰れる日を待つ、キバオウ殿を前にそんな自分がとても小さく、ちっぽけで哀れに思えたのだ。
「なんや兄ちゃん……えらい強そうやなぁ。ま、座りぃや!――お姉ちゃん、この兄ちゃんにビールや!」
気がつけば自分から声を掛けていた。
テーブルに着いていた十数名は三十代前後の年そこそこの連中で、皆ここで知り合ったのだと。
俺もその一員になれたということは、恥ずかしながらも幸福に思えた。
≪アインクラッド解放軍≫の副リーダー派に身を置いて慣れ始めた頃、俺は最も信頼を置いているコーバッツ中佐殿に胸中を明かした。
……キバオウ殿は理想こそ高いが、自身は安全なところで高みの見物をやっているだけではないのか、と。
第一層にそびえる≪黒鉄宮≫の屋上で……コーバッツ中佐殿は雲一つない空を仰いでこう答えた。
人間というものには役割がある。
攻略の一線から引いた我々が、再び最前線の皆と合流出来るようレベリングに勤しむ、それが私やお前の役割だ。
そして狩場の統制や物資の確保、それらを提案し実行に移すのがキバオウ殿の買って出た役割だ。
ゆえに我々は効率よく、懐具合を気にせず存分に強くなれる。
しかしその強さは己を誇示するためのものではない。
我々の強さも、裏で奔走する者も……全てはこのアインクラッドを制覇するためなのだ。
今の今になって、ようやくコーバッツ殿の真意が見えた。
彼がなぜキバオウ殿にああまで忠誠を置いていたのかということに。
キバオウ殿は自ら選んだのだ……汚れ役という役割を。
我々や、ひいては全てのプレイヤーを現実世界に戻すために。
行き過ぎた物資の徴収も、全てのプレイヤーが一丸となるべく――。
全てはプレイヤーを守るべく――。
「俺はこれからキバオウ殿を援護しつつ、奴の注意を引く。その間にあの少年の介抱するのだ」
真っ直ぐに化け物の背中を見つめ立ち上がったものの……何とも情けないことに腰は引け、足も震えていた。
「無茶だ――、俺たちに敵う相手じゃないぞ!」
「そんなことは分かっている!……今奴はキバオウ殿に夢中だ。何としても守るのだ。我々が、あの少年を」
震える体とは裏腹に、胸中に熱い活気が生じる。
恐怖を打ち払う自己暗示……一種の現実逃避なのかもしれん。
恐る恐るではあるが――、武器を手に皆立ち上がった。
「俺がグリームアイズの気を引こう。二名ほどで気づかれぬよう少年を頼む。後は≪風林火山≫のメンバーと戦闘を交代、アスナ殿とクライン殿を何としてでも守り通すのだ」
私は、俺は、いやそれは俺がと皆、役割を買って出た。
指揮官を失いどうすることも出来なかった我々に、熱と活気が息を吹き返すが如く蘇った。
指揮官は生きていた。
俺の……我々の胸の中に。
「――うわっ!」
ぼんやりと目を開けると、黒い鉄の塊が目の前にあった。
「気がついたか、少年よ」
と、そこそこ高価なポーションの瓶を数本渡された。
そうか……こいつは≪軍≫の――。
差し出されたものを何となく受け取り、その内の一本を口にする。
と――。
「何分だ!どれくらい気を失っていた!?」
意識は一瞬の内に元に戻った。
俺は≪スターバースト・ストリーム≫の途中で奴に薙ぎ払われ……。
「ほんの数分だ。だが今は……僅かの間だが、出番に備えて少しでも体を休めるのだ。我々もそう長くはもたん――」
いつしか耳には怒号が届いていた。
目の前にいる≪軍≫の男の後ろには、グリームアイズに散らされながらも剣を振るう≪軍≫の連中が、そしてキバオウと荒れ狂う化け物の姿。
それらが発する数々の雄叫びが。
立ち上がろうとしたが肩に手をやられ制されてしまった。
「放せ!じっとしていられる場合じゃないだろ!」
部屋に目をやると、十数名いた軍の人間は……両手の指で数えても何本か余る程度にまで減っていた。
「そうであれば尚のこと、あの男のように黙って見ておるのだ!……我が同志らは貴君らに、あの化け物の最終段階の情報を提供することしか出来ん」
「仲間が死んでいってるんだろう!何で黙って見て――」
「キリトォ!」
俺の怒声は、少し離れて壁に寄り掛かっているクラインの更なる怒声によって打ち消された。
しかし……その目は俺ではなく、グリームアイズに向けられていた。
大粒の涙を流しながら。
「……じっくりと見ておくんだ。確実にあいつをぶっ倒すためによぅ……」
「すまんな――」
男の兜の隙間から光るものが見えた。
本来ならばこの男も仲間の元へ、今すぐにでも駆け出したいのだろう。
その気持ちをぐっと堪えて、俺やクラインを介抱してくれていたのか……。
傍らには体力ゲージが僅かしか残っていない、気を失ったアスナの姿があった。
「あんたは……俺たちを守って……」
「……それが我々、≪アインクラッド解放軍≫の務めだ」
男はそう言うと、落ち着きを取り戻した俺に安心したのか、剣を手にグリームアイズに向き直った。
「我らの生き様、とくと目に焼き付けておいてくれよ」
「死ぬなよ――」
こんな言葉しか出てこなかった。
しかしこれが、その男の背中に向かって放てる精一杯の一言だった。
「健闘する」
俺たちを守っていた男はその言葉を最後に、グリームアイズへと駆け出した。
「ルォオオオオオ!!」
グリームアイズが天井を仰いで咆哮すると、周囲に衝撃波が生まれ、それによってアタッカーが吹き飛ばされる。
タンクのキバオウはノックバック程度、攻撃の準備態勢であった者はバックステップなりで直撃だけは避けていた。
巨大な悪魔の残り体力ゲージは五本ある内の最後の一本を残すのみ。
≪軍≫の奮闘もありその一本も三割程度削られていた。
今日まで何十体とアインクラッドのボスを見てきたが、こいつもそれらと同じく、残り体力が25%前後以下になると凶暴化するといったところだ。
まず特徴的なのはこの衝撃波だ。
十六連撃の≪スターバースト・ストリーム≫なんぞやろうものなら、発動中にそれをやられると直撃は免れない。
やはり主体とするのは二刀流の≪ダブルサーキュラー≫か、それとも堅実性を狙って片手剣スキルか――。
次に攻撃のパターン。
最初こそあの巨大な剣を片手で振り下ろす動作が目立ったが、凶暴化にあたっては切り上げや両手持ち、剣を地面に突き立てての地響きと……なかなか筋が読めない。
そして敏捷性。
全体的にグリームアイズの攻撃モーションの速度が上がっている。
攻撃速度が上昇して威力も数段増したというところだろうか、直撃を受けようものならひとたまりもないだろう……。
またグリームアイズはキバオウの≪パリィ≫後、アタッカーの攻撃を避けるというシーンも何度か見られた。
避けられることを前提にアタックしないと、その隙を突かれることは必至。
しかし――。
「キバオウ、えらくタフだな……」
クラインや控えにまわっている≪風林火山≫のメンバーと情報を参照している中、誰かがぽつりとそれを口にした。
聞けば俺の前に再び現れて以来、ずっとグリームアイズに張り付いたままらしい。
最前線で戦ってきた俺たちですらこの体なのに、まさかキバオウは俺よりももっとレベルが――。
「奴の槍の先端を見てみろ……あいつ、喰ってやがるんだよ――」
≪軍≫の奮闘を見据えたまま、クラインが静かに呟いた。
キバオウはタンクとして攻撃を受けるのみでなく、グリームアイズの背中にリーチを活かした突きを放つこともあった。
しかし、その槍は元々の青白い光を放っていたくらいで、ソードスキル特有のエフェクトは見られなかった。
苦し紛れの素殴り程度にしか見えなかったが――。
グリームアイズがキバオウに背を向ける格好になった。
その背中をキバオウは関西弁の奇声を上げつつ槍を突く構えをとる。
じっくり見て初めて分かった。
彼の持つ青白い光を放つその槍の刃が……まるでドラゴンの顔のような形になり――。
グリームアイズの背中に噛み付いた。
すると三割程度しか残っていなかったキバオウの体力ゲージは半分近くまで――。
「あれは……≪ドレイン≫なのか……?いや、しかし――」
俺はこのソードアートオンラインにおいて、武具の、特に武器にはかなり詳しい方だ。
武器の種類は多岐に渡り、それを手にそれぞれ応じたスキルで攻撃をする……基本的にはこれが全てだ。
中には麻痺効果をもつ短剣なども存在するが……威力はお察しと言ったところである。
すると……あれは言うなら≪ユニーク・ウェポン≫か?
対象の体力を吸収するという≪ドレイン≫効果のある……。
「みんな、ちょっと聞いてくれ!」
勝ち筋が、見えた。
「次の咆哮が来るまで攻撃を止めて距離を取るんだ!衝撃波の発生中にアタッカーとタンクを入れ替える!」
こういったことは不慣れも不慣れだが、俺は部屋中に響き渡る程の大きな声で≪軍≫のメンバーとキバオウに指示を飛ばす。
不安はあった。
連中が≪ビーター≫と称される俺なんかの指示を聞き入れてくれるだろうかという――。
「オオオオオオ!!」
咆哮は衝撃波発生のモーションかと思ったが……あまりにも耳に響くそれは思わず体ごと竦ませる。
この状況下、≪軍≫の連中はこんな中で死闘を演じていたのかと思うと、それはまさに畏怖にすら値する。
それまで戦っていた連中はバックステップなり踵を返すなりでグリームアイズから距離を取った。
俺は愚かだった。
彼らは俺たちに、確実にこの怪物を仕留めるための手立てを探らせていたのにだ。
……命を掛けて。
奮闘していた≪軍≫の三名は離脱し、クラインが彼らと入れ替わる。
そして俺は――。
――ッギイン
「キ、キリトはん――!」
キバオウに向かって振り下ろされる大剣を、左右に装備した剣をクロスさせ受け止める。
その衝撃のあまりに思わず力む声が漏れそうになったが、なんとか堪え――。
「俺がタンクをやる――!……それから、もう一仕事頼めるか?」
「なんや!何でも言うてくれ!」
大剣の重みとグリームアイズの腕力に耐えられなくなり、気合の一声と共に交差させた両腕を思い切り開く。
そして――。
大剣と共に打ち上げられ、のけ反るようになったその無防備な脇腹を、クラインが一閃する。
脇腹を薙がれたグリームアイズはクラインの方へと向き、彼に向かって太い豪腕が振り下ろされる。
しかしその豪腕すらも――。
俺とクラインは打ち合わせ通りに、互いの位置を交代し先ほどと同じように剣をクロスさせ受ける。
「俺の後ろに張り付くんだ!奴の衝撃波がギリギリ届かない程度に距離を取って――」
重みのある豪腕の力が一瞬抜ける、腕を戻そうとするその瞬間を感じると、俺はその腕を思い切り弾く。
「キバオウ!今だ、その槍で突け――、≪スイッチ≫!」
俺はバックステップで距離を取ると……俺が立っていた位置にキバオウが陣取り――。
「ぬりゃぁああ!」
威勢の良い怒声を発すると、その槍をグリームアイズの腹に向かって突き出した。
槍の先端は先ほど目にした光景と同じように、竜が大きな口を開けるかのように形を変えその腹に齧りつく。
「ルグォオオオオオ――!!」
巨体の悪魔はのけ反りながら数歩後退しつつ、悲鳴とも取れる叫び声を上げた。
今、グリームアイズと対峙しているのは……俺とクライン、そしてキバオウの三人だけだ。
三人に絞ったことには理由がある。
まずグリームアイズがターゲットとして捉える相手を判断しやすくするためだ。
凶暴化を観察した結果、タンクの≪パリィ≫後、こいつは一番ダメージを与えたアタッカーをターゲットとして捉える節がある。
次に戦術面の問題。
俺の装備やスキルはタンク向けのそれではない。
全てを受けきれるかと言われると、そんな自信は毛ほどもない。
上から下に繰り出される攻撃は、二本の片手剣の耐久値を大きく削ることにはなるが、凌いでチャンスに繋げるしかない。
横からの薙ぎ払いや蹴り、そういった攻撃は全て避ける。
状況に応じて、俺は奴の背後からのみ≪ダブルサーキュラー≫で攻撃し、俺を捉えるように促す。
クラインはアタッカーであると同時に、そのための餌役でもある。
それらも全ては、退避しているアスナや疲弊した≪軍≫の連中を奴の視界に入れないようにするためだ。
凶暴化以降はどうにも分からないが、こいつにはプレイヤーの弱みを突く、どこか人間臭い性質がある。
万が一に備えて≪風林火山≫のメンバーを彼らの警護に当て、クラインの計らいもあり隙を伺ってボス部屋からの離脱を指示した。
そして――。
「≪スイッチ≫――!」
確か四度目であろうか……奴の体力を大きく削ることの出来るチャンスが生まれた。
俺は奴から振り下ろされた大剣を弾くと、大きく後方へと飛び……完璧なタイミングでキバオウの槍が巨体の腹に食らいつく。
≪ダメージディーラー≫としてこれほど優秀な武器は初めて目にする。
観察した結果、あの≪ドレイン≫はおそらく使用者の最大HPの10%程度を回復する……つまり相手の防御力に関係なく、キバオウ自身の最大HPの10%が追加ダメージとなっているはずだ。
そして俺の剣の耐久力が尽きた時には、体力を温存したままタンク役を交代出来る――。
「……グッジョブ」
多くの衝撃を受け、俺の意識は朦朧としていた。
絶望に近い状況の中ではあるが、俺の脳裏にはある光景が過ぎった。
アインクラッド第一層、そのボス戦――、当時のアスナが見せた俊敏なレイピア捌き、そして……ディアベルという男の姿を。
この終盤において初めて指揮の声を上げた時に微かに感じたものは、まさにそれであった。
俺と同じくβテスターであり、俺とは違って他のプレイヤーのために指揮を執ったその男が背負っていたものが――。
今のこの俺の――。
「キリト――!」
俺を呼ぶ声に、脳裏に掛かっていた霞のようなものが一瞬にして晴れた。
思わず俺は大きく後ろに飛び退くが……奴から放たれた剣の振りを完全には回避出来ず――。
俺が左手に装備していた、リズベット工房渾身の一作である≪ダークリパルサー≫が――。
乾いた音と共に光の粒となり……飛散した。
「ルォオオオオオ!!」
着地と受け身に失敗し、地面に転げ落ちる形になった俺を……グリームアイズの咆哮は俺を立ち上がらせまいと地べたに縛り付けにした。
体が……体が動かない――。
このままじゃ衝撃波の直撃を――。
誰かが俺の横を抜け、グリームアイズに駆けた。
「こんならぁああああ!」
「キバオウ――!」
彼は槍の届くとは思えない距離で、手にしたそれをグリームアイズに向かって突き出し――。
いや――。
投げ放った。
投げ放たれたそれは槍自身が発する青白い光の軌跡を残し、一匹の青き竜を思わせるかのような形に変化し――。
咆哮を発するグリームアイズの首元へと食らいついた。
苦しみもがく巨体は、今まさに『弱み』を見せた。
その後方から突撃するクラインの姿が――。
俺は急いでメニューウインドウを開くと、スキルウインドウを開き、すぐ視界に入った片手剣スキルを選択しOKボタンを押す。
先ほどの≪二刀流≫ように武器自体を変更する必要がないため、操作は一瞬で完了した。
「食らいやがれ――!」
クラインの渾身の一撃がグリームアイズの背中を捕らえた。
そして俺の目の前には……クラインへと向きを変えようとする巨体のモーションが目に入る。
精魂尽き、膝を着いたキバオウの横を抜け――。
「うおおおおおおおおおお!」
絶叫と共に、突きの構えを取り……残った力を脚力に注ぎ、その背中を目掛けて突っ込んだ。
右手に握った愛剣≪エリュシデータ≫が黄緑色の光を帯びる。
片手剣突進技≪ソニックリープ≫――。
『ゴァァァアアアアアアアアア!』
絶叫しているのは俺だけではなかった。
天を振り仰いだ巨大な悪魔が、口と鼻から盛大に噴気を撒き散らしながら咆哮している。
更にここぞとばかりに、クラインの二撃目、そして俺の追撃が容赦なく叩き込まれる。
俺とクラインは右へ左へ――、動きを止めたその悪魔に、ソードスキルの光を浴びせ続けた。
そして連撃の果てに――。
グリームアイズは、膨大な青い欠片となって爆散し……部屋中にキラキラと輝く光の粒を撒き散らした。
296 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2012/09/19(水) 18:32:52.42 ID:7eNqPMDX0
来週の予告冒頭でキバオウキタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!!
予告にキバオウさん
なん・・・でや・・・
このグリームアイズ戦は原作に対する強烈なアンチテーゼのようなものを感じる
2話見返したらキバオウさん一番槍でワロタ
ノブリスオブリージュを理解するキバオウさんは、ナイトの心得をディアベルはんから継いだんやな…