【けいおん!】唯×梓スレ 22

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612名無しさん@お腹いっぱい。
教師モノのSS書いてみました


「うぅ……」
あ、頭が痛い……。
「気持ち悪い……」
私は中野梓。桜が丘高校の新任教師だ。
なんでこんなに気持ち悪いのかというと昨日は私の歓迎会があって、お酒を飲んで……。
さわ子先生にネコ耳なんてプレゼントされて、酔った勢いで付けたらあずにゃんなんてあだ名つけられたし。
そう言えばどうやって帰ってきたんだろう。あんまり覚えてないや。
ズキズキする頭をあげると、見なれない部屋が目に入った。
「あ、あれ……?」
よく見ると私の部屋じゃない。それに服も私のじゃなくて、なんだかぶかぶかだし……。
何がどうなっているの?
「う〜ん……」
「……!?」
隣を見ると、誰かがが隣で寝ていた。
「ゆ、唯先輩……!」
それは同じ学校の先輩教師である唯先輩だった。
唯先輩は私と同じようなぶかぶかの服を着て、気持ちよさそうにベッドに眠っている。
頭が真っ白になった。
この状況は誰が見ても……、その……!
「あ……、あずにゃん。おはよう」
「……」
ニコニコしながら唯先輩が私に抱きついてきた。
「……あずにゃん?」
「う……」
「う?」
「うわああああぁん! もうお嫁に行けなあああぁい!」
「わっ! 何、どうしたの!?」
「違うんです! これは一種の気の迷いと言いますか、場の流れと言いますか……!」
「お、落ち着いてあずにゃん! 何がどうしたの?」
「あああああぁ……!」




613名無しさん@お腹いっぱい。:2011/04/24(日) 22:11:43.31 ID:EggSYvzg0
数分後。

「取り乱して済みませんでした……」
「いいって。勝手に家に連れてきた私が悪かったし」
「そんな。酔い潰れた私を介抱してくれたのに勘違いしてしまって……」
「何を勘違いしたのかな〜?」
「べ、別にいいじゃないですか!」

唯先輩は同じクラスの担任で、私は副担任である。

こんなふうに頼りになるところはたくさんあるんだけど、いつもは……。

「スカートの中にジャージは穿いちゃダメだよ?」
「えぇ〜? だって今日寒いもん!」
「でもねぇ……」
「はいはい。あずにゃんはちょっと待ってね」
「唯先輩……」
制服を注意している私を見つけた唯先輩がニコニコしながらやってきた。
「寒いのはわかるけど、こうやって外ではしない方がいいよ。みっともないからね」
「……はぁーい」
「教育指導の先生に見つからないように教室に戻るんだよ!」
「わかってるって!」
そう言うと、唯先輩は生徒を教室に帰した。
「あんまり頭ごなしに怒ってもダメだよ」
「でも、やっぱり校則は守るべきです」
「そうだけど、それだけが全てじゃないでしょ?」
「そうですけど……」

……と、まぁこんな感じにルーズな感じで生徒に接している。

でも、怒る時は怒るし、ダメなものはダメだってしっかり言ういい先生だ。
614名無しさん@お腹いっぱい。:2011/04/24(日) 22:13:05.62 ID:EggSYvzg0
そんなこんなで私が来てから数カ月経ち、学校の仕事にも慣れてきた頃。

「あれ律先生。唯先生は?」
「あぁ、熱がでて休むって連絡が来たぞ?」
「風邪ですか?」
「そう。だから2年1組のほう、しっかしやれよ?」
「わ、わかりました」
まさかこうも早く担任の仕事をするとは思ってなかったな……。
でも、私も教師なんだから頑張らないと!
私は久しぶりにクラスの教壇に立った。
「はい、じゃあホームルーム始めますよ」
「あれ? 唯先生は?」
「今日は風邪でお休みです」
「えぇ〜? 先生、大丈夫なのかな……」
「はいはい、静かに。先生から連絡は来ているので大丈夫です」
「梓先生心配ですね〜」
「子どもじゃないんですから、明日になれば学校にきますよ」
私は名簿を開いて出席状況を確認し始めた。

それから音楽の授業に出て、プリントを印刷して、唯先輩の仕事をやって気がつけば放課後だった。

「つ、疲れた……」
「お疲れさん。はい、コーヒー」
澪先輩がカップを持って来てくれた。
「ありがとうございます」
すっと口に含むと、一日の疲れがどっと出ていくようで肩が重かった。
「唯先輩って毎日こんなことしていたんだ……」
「担任って授業もクラスも面倒見なくちゃいけないからな」
改めて唯先輩のすごさを体感した気がする。
そういえば、具合の方はよくなったのかな……。
「後のことは私達でやっておくから、梓は唯先生の見舞いに会ってあげてくれ」
それを察してのことなのか、澪先輩がこんなこと言った。
「えっ、でも……」
「あいつ、独り暮らしだから大変だと思うんだ。だから、な?」
律先輩がぐっと親指を立てて行って来いって言ってくれた。
「……わかりました。では、後のことよろしくお願いします」
「梓ちゃん。これ、唯先生に持って言ってあげて?」
ムギ先輩がちょっと高そうなケーキを持たせてくれた。
「ありがとうございます。それでは、お先に失礼します」
615名無しさん@お腹いっぱい。:2011/04/24(日) 22:14:12.22 ID:EggSYvzg0
───

ピンポーン
「……あれ? 出ないな」
何回か呼び鈴を押しても反応がない。
「すみません、中野ですけど唯先輩いらっしゃいますか?」
……反応なし。どうしたんだろう。
「け、携帯に連絡してみよう……!」
プルルル……、プルルル……。
「で、出ない……!」
嫌な予感が頭をよぎって、私はドアを叩いた。
「唯先輩! いるんですか? 大丈夫ですか!?」
ガチャッ……。
「ゆ、唯先輩!」
ゆっくりとドアが開くと、ふらふらとした唯先輩が出て来た。
「あ、あず……、にゃん……」
「大丈夫ですか!?」
「う、うん……。だいじょーぶ」
口ではそう言っているけど立っているのもやっとな感じで、私は慌てて唯先輩をベッドに運んだ。
「うぅ……、頭痛い……」
「こんなに酷いとは……。すみません、無理に起こしちゃって」
「そんなことないよ……。来てくれてありがとう、あずにゃん」
部屋の中は少々散らかっていて、何とか動いた形跡がところどころ残っていた。
「ご飯食べました?」
「いや、つくる元気無くって……」
「おかゆ作りますから、ゆっくりしていてくださいね?」
「ありがとう……」
唯先輩をベッドに寝かせて、私は台所から食材を見つくろっておかゆをつくり始めた。
616名無しさん@お腹いっぱい。:2011/04/24(日) 22:15:30.23 ID:EggSYvzg0
───

「ごめんね……? 学校の仕事押し付けちゃって……」
「そんなことより早く風邪治してくださいね。私だけじゃクラスの仕事できませんから」
「はーい」
おかゆを横に置いで台所の片づけをしようと思ったら、唯先輩が私の裾を掴んでくいくいと引っ張る。
「……ねぇ、あずにゃん」
「何ですか?」
「食べさせてくれる?」
「……はい?」
「体の関節が痛くって……、手が震えちゃうの。お願い……」
「……しょうがないですね」
私はおかゆを掬って、唯先輩の口に持って行ってあげた。
「あ、あーん……」
「あーん……」
こういうことをするのは初めてだから何だか照れくさいなぁ……。
でも、おいしそうにおかゆを頬張る唯先輩の顔を見ると、まぁいいかなって思える。
「おいしいよ。あずにゃん」
「お口に合ったようでよかったです」
「あずにゃんはいいお嫁さんになるよ」
それからそろそろとおかゆを食べさせてあげて、食器を洗い、部屋の片づけをして、一息ついた。
「ムギ先輩からケーキ貰っているんですけど、食べますか?」
「ケーキ? 食べる食べる!」
風邪を引いているのにケーキとか甘い物の単語には元気に反応する。
中のケーキをお皿に移して持っていくと、まるで子どものように目をキラキラを輝かせた。
「わぁ、おいしそう」
そして、目を閉じて口を開ける。
「ま、またですか?」
「だって震えているからケーキ落としちゃうよ」
「もう……、特別ですよ?」
唯先輩が風邪人なんだから仕方ないよね。そう言い聞かせつつ私はケーキを少し切って口まで持って行ってあげた。
「あーん……」
もくもくと口を動かして、唯先輩は嬉しそうに唸った。
「おいしいよぉ……!」
「よかったですね」
「あずにゃんのおかゆの次ぐらいにおいしい!」
「そんな大げさな……」
「本当だもん」
本当に子どものようにこんなことをしらっと言いのけるのが唯先輩なのだ。
けど、そう言われて悪い気はしない。むしろ嬉しい。
「あずにゃん、あーん」
「はいはい。ちょっと待ってくださいね」
こんな感じにケーキも食べさせてから、私は片付けに戻った。
617名無しさん@お腹いっぱい。:2011/04/24(日) 22:16:26.25 ID:EggSYvzg0
「熱も下がってきていますね」
「うん。あずにゃんのおかげだよ」
頭のひえピタシートを変えようと手をやると、唯先輩の体はしっとりと濡れていて冷え切っていた。
「あぁ、汗だくじゃないですか。着替えたんですか?」
「体がだるくて起きられなかったから着替えてない……」
「冷えちゃいますから汗を拭くついでに着替えましょうか。ちょっと待っていてください」
私はタンスの中からシャツと下着を取り出し、洗面器にお湯を入れてタオルを用意した。
「じゃあ、脱がしますね」
「や、優しくしてね……」
「何言っているんですか、もう……」
私は体を拭くためにパジャマを脱がそうとして、ボタンを外し始めた。
ガチャッ。
「失礼しまーす。唯先生、元気?」
「「あ……」」
声が聞こえたので後ろを振り向くと、生徒が2人ぽかんと口を開けて私達を見つめていた。
「……ご、ごゆっくり!」
「失礼しました!」
早口で言うと顔を真っ赤にして、2人の生徒は部屋から出て行ってしまった。
「ち、違うの! これは……!」
慌てて説明しようと追いかけたけど、もう2人はいなかった。
「はぁ……。絶対何か勘違いしているよ……」
「あ、あずにゃん……。寒いよ……」
「あっ、ごめんなさい。すぐ着替えさせますから」
服を脱がしたままの唯先輩に慌てて戻ると、私はパジャマを脱がせて体を拭いてあげた。
「あずにゃんくすぐったいよ……!」
「ご、ごめんなさい」
「ふふふ。でも、気持ちいいよ」
「どうも」
それから素早く汗を拭きとると、パジャマと下着を変えてあげた。
「朝ごはんは冷蔵庫の中につくっておいてありますから元気になったら食べてください」
「うん。ありがとう……」
「じゃあ私帰りますね」
「あ、あずにゃん……」
帰ろうとする私を唯先輩が切ない声で呼び止める。
「何ですか?」
「これ、あげるね?」
そういって、唯先輩がこの家のスペアキーを渡した。
「な、何でですか?」
「鍵閉めてもらいたくてね」
そう言うと優しく私の手にスペアキーを握らせた。
「それに、今後もお世話になるかもしれないし」
「もう、私の家遠いんですからね?」
「あずにゃんが風邪ひいたときは私が行くからさ。ね?」
「……もう、しょうがないですね」
私は唯先輩の家のスペアキーを受け取ってその日は帰った。
618名無しさん@お腹いっぱい。:2011/04/24(日) 22:18:27.78 ID:EggSYvzg0
次の日。
「はい、みんな席についてー」
「あ、唯先生! 元気になったんだね」
「うん。もう元気いっぱいだよ!」
ふんす! と唯先輩が強く意気込んで腕を振り上げて見せた。
「梓先生の愛の看護が効いたんだね」
「あ、愛!?」
クラス中がひゅーひゅー! なんてはやし立ててお幸せに! なんて声も聞こえてくる。
「な、何言っているの。私と唯先生とは何もありません!」
「昨日唯先生の家に行っていちゃいちゃしていたそうじゃん」
「いちゃいちゃなんてしていません!」
「服脱がせていたって聞いたんですけどー?」
「あれは下着を変えてあげようと……」
「下着まで変えてあげたの!? きゃー!」
「いや、だから唯先生が大変そうだったから手伝ってあげただけで……」
必死に説明しようとするけど、もう聞く耳を持っていない。
「家の鍵なんて渡しあっていたりしてねー!」
「なっ!? 何でそれを……」
「えっ!? 2人ともそんな関係まで行ったの!?」
し、しまった! 私の言葉を聞いてクラスがまた一層とうるさくなってしまった。
「冗談で言ったのに本当だったんだ!」
「通い妻ですね、先生!」
「先生! 結婚式には呼んでくださーい!」
あぁ、喋れば喋るほど墓穴を掘っていく……。
このまま穴を掘って入りたいよ……。
「はいはい! みんな静かに! 私と梓先生はそんな浮ついた関係じゃないです」
唯先輩が何とか助け船を出してくれて、クラスみんながぶーぶー文句を言いながらもテンションは下がり始めた。
よかった。何とか収まりそうだ。
「私は梓先生と、真剣にお付き合いを考えています!」
「えっ!?」
……と思った矢先、唯先輩がこんな爆弾発言をするものだから私も含めてみんなが驚いた顔で固まってしまった。
「……なんてね?」
てへっ! なんて言ってごまかすと、唯先輩はホームルームを終わらせた。
「はぁ……。まさかあんなに広まっているとは」
「ごめんね、私のせいで」
「いいえ。もともと鍵をかけ忘れた私がいけないんですから」
でも、しばらくこれでからかわれるのは覚悟しておいた方がいいかもなぁ。
「でもね、梓先生」
「はい?」
先を歩いていた唯先輩が立ち止まると、くるっと私の方に振り向いた。
「その気があるのなら、またあの鍵で来てほしいな」
「……へ?」
「……待ってるよ」
そう言い残すと、唯先輩は頬を赤く染めて足早に去って行った。

そんなことを言われた私はどうしていいかわからず、唯先輩と同じように頬を赤く染めることしかできなかった。

また、この数年後に生徒にやっぱり2人の結婚式に呼んでくれたねってからかわれるのはまた別の話。