【涼宮ハルヒの憂鬱】涼宮ハルヒを語れ その137

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俺の中で疑問が湧き上がった。果たして本当にハルヒは洗脳されているのだろうか。
もしハルヒが蒼い銃によって洗脳されたのであれば、同じく撃たれた長門も朝比奈さんも古泉も洗脳されているべきだ。
それなのに三人とも、俺との会話を普段通りスムーズに進めている。殊更にサンタクロースの存在を肯定するでも否定するでもない。
だとしたら自称サンタクロースのジジイが嘘を吐いている事になるのか。それともこの三人が嘘を吐いていることになるのか。
一つ質問を試してみることにした。
サンタクロースはいると思っているか、と。
「いる」「いますね」「いると思います」
三人が同時に答えた。ただこれだけで、三人とも洗脳されているという判断を下すのは難しい。なぜなら目の前の赤服を指して、
あれがサンタクロースだと言えば済む話だからだ。
したがって洗脳されているかどうかを確認するには、さらに質問が必要だった。
あいつは本物のサンタクロースか、と訊ねてみると。
「わからない」「もしかしたら本物かもしれないけど」「偽物である可能性も否定できませんしね」
たしかに洗脳はされていないだろう。だが洗脳とは言わないまでも、ジジイのいった教化とやらは成功しているかもしれん。
それに俺の中で引っかかることがもう一つだけあった。ジジイに銃で撃たれた時、みんな撃たれた振りをしていたじゃないか。
あれはジジイの影響下に入った証だったのではないか。
「違う」「違うわ」「違います」
三人が口を揃えて否定する。これは怪しい。だったら何で皆、銃で撃たれた時に撃たれた振りをしたんだ。相手は初対面だったはずなのに。
俺が訊くと、三人は互いに顔を合わせた。朝比奈さんと古泉が「やれやれ」と溜息を吐く。長門は一ミリも表情を変えなかったものの、
俺に向けた眼差しは残りの二人と全く同質のものだった。
「撃たれたらやられる、というのがこの国、特にこの地方でのお約束」
「えっと、みなさんが倒れてたので空気を読んでみました」
「意外かもしれませんけど、僕はこのノリが大好きなんですよ」
そういう事か。古泉お前の話は意外でも何でもなかったけどな。
つまり蒼い銃による教化ってのはデマなんだな。別にハルヒは洗脳されている訳でもなんでもない、いつもと同じハルヒなんだな。
念には念を入れて確認を取ろうとする俺に向けて視線が飛ぶ。間違いなくあいつの視線だ。
「キョン、ちょっと話があるんだけど」
三人から背中を蹴り押されるような格好でハルヒの前に辿りつくと、ハルヒの奴は正座で俺を待ちかまえていた。