354 :
ss リレー:
「それでね? すっごい長い時間だったから真っ赤になってたんだって、でも身体は冷えちゃ
ってたんだって、あれ? でも冷えてたなら何で赤いのかな? 後ね、お風呂は怖いんだって」
喋る台詞と丸で合致しないボディーランゲージを繰り広げつつ、我が妹の熱弁は続く。
時々思う、こいつは本当に相手と意思疎通する気があるのだろうか、と。
玄関を出たらばったりあったらしいハルヒの母親から聞いた話を、我が妹は興奮気味に語っ
ている。ただひたすらに長く難解な話だが――結果だけを言えば。
「つまり、あいつは風邪で休みだって事か」
「うん!」
解った、お前は学校に行け。
「はーい!」
妹を送り出しつつ、俺も外に出て玄関の鍵をかけた。
ったく、出掛けに無駄に疲れちまったな……。
こってしまった気がする首を回しつつ、ふと見上げる隣の家。そこに見えるカーテンのかか
った部屋の中で、ハルヒは今眠っているのだろうか。
暫くの間その部屋の窓を眺めた後、俺は自転車を道路に運び出し軽い鞄を籠に入れた。
相手が風邪じゃ、俺に出来る事はない……か。
何となく、落ち着かない。とはいえ時間は迫っている。
ようやく漕ぎ出した自転車は妙に軽く、まるで何かを忘れているみたいに感じられた。