【涼宮ハルヒの憂鬱】涼宮ハルヒを語れ その137

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352ss リレー
>>330の続き あれじゃ次の人が書きにくいかもなので


 視界のぼやけた浴室の中は考え事にはちょうどよくて、湯船に浮かんだアヒルに視線を合わ
せたまま、あたしはじっと自分の事を考えていた。
 それは、キョンに言われなくても、自分でも解っていた事。
 最近のあたしは……前みたいに不思議な事を求めていないって。
 なんでだろ、前はあんなに夢中だったのに。
 休みの日に不思議探索をする時だって、いつも真剣だった――けど。
 認めなくてはいけない、ここ最近のあたしはふと気が付くと目で追っている相手が居るって
事を。そいつが誰かと話していたら妙に気になって、いったい今何を考えているのか知りたく
なってしまう。
 緩やかに接近してきたアヒルを吐息で追い返しつつ、あたしは辿り着いた結論に無言で首を
振った。
 無いわ、無い。
 このあたしがは、初……恋なんてありえるはずないわ。それに、その相手があのキョンだな
んてそれこそ絶対ありえない。
 たまたま近所に引っ越してきたから、そうよ、状況がちょっと変わったから気になってるだ
けなのよ、これは。
 あいつと一緒に引越し傍を準備したり、買い物に行ったのもご近所さんだから、それだけ。
 ――結論は出たはずなのに、ここ一ヶ月ほどの間の出来事を思い出していく間に、自然と顔
が赤くなるのが解る。
 浴室の温度より明らかに熱い自分の顔。多分、今みたいに真っ赤だった自分の顔を見られる
のが恥かしくて、今日はついキョンの背中に抱きついてしまった。
 思ったより広かったなぁ……あいつの背中。
 自転車の荷台で揺られながら、あいつの体温を感じていた時間は、思い出すだけで何だか落
ち着かなくなる。
 なんなのよ……これ。絶対無いんだからね? あ、あいつがその……。
「す、好きなんかじゃないんだからぁ! ――ひゃぁっ!」
 湯船の底は不意に立ち上がったあたしの体を支えきれなかったらしく、反転する視界の中で
黄色いアヒルが空を飛んでいた。