【涼宮ハルヒの憂鬱】涼宮ハルヒを語れ その137

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 適切なタイミングを見計らっているのか、それとも適当なのかは謎だが、何時もの様に長門
が読んでいた文庫本を閉じた事で
「じゃあ、今日はこれで解散!」
 放課後の部室にハルヒの声が響き、本日の活動も無事何の成果もなく終了した。
 さて、と。帰るとしますかね。
 空の湯飲みを片付けつつ立ち上がった俺の視界の隅で、ハルヒは朝比奈さんと何やら話をし
ている。
 最近のハルヒは大人しく……といっても、一般人から見れば元気すぎてはいるのだが、以前
の様に無意味なイベントを乱発しなくなった気がする。
 宇宙人や未来人、超能力者といったフレーズも、ここ一ヶ月ほど耳にした覚えが無い。
 現に今朝比奈さんと話してる会話の内容も、最近の服だとか髪型だのと、昔のハルヒからす
れば興味がなかったであろうジャンルの話ばかりだ。
「――でねー? 雑誌で見たんだけど、今はこうやって頭の上に髪を乗せるのが」
「え? え? あの、これって本当に流行ってるんですか?」
「もちろんよ! ほら、この雑誌に――」
 人間誰しも大人になる、それはハルヒも例外じゃない。
 多分、それだけの事――
「涼宮さんの変化が寂しいんですか」
 古泉。いきなり意味不明な発言は止めてくれ。
 ついでに、俺の耳元で話しかけるのもな!
 鞄越しに押し返された古泉は、何やら声を殺して笑っている。
 何がおかしい。
「いえ、貴方は以前、涼宮さんにもっと常識をと口癖の様に言っていたのを思い出しまして」
 それは今でも変わってねぇよ。
 誰でもいいから、あいつに私生活におけるプライバシーの概念を教えてやってくれ。
「それにしては、さっきの貴方は寂しそうに見えましたが」
 否定しても無駄ですよ、古泉はそんな顔で俺を見ている。
「……さあな」
 自分でもよく解らん。これが寂しいって感情なのかどうかもな。
 でもまあ、
「あいつだって人の子で、時間の経過が大人にしたって事だろ」
 それだけの事だ。
「僕はきっと、時間ではない違う要素が彼女を変えたんだと思いますよ」
 違う要素だと?
「はい。彼女が大人しくなったと感じたのは、僕の感覚からすると今から一ヶ月程前だったと
記憶しています。その頃、彼女の大きなイベントがありませんでしたか」
 わざとらしい口調の質問を無視しつつ、俺は綺麗になった湯飲みを茶器棚へとしまった。