>>235-236>>301-302>>322 があんまり綺麗だったし、くんか絵師やサボリーや999に触発されて、
返歌というにはあれだけど、視点を変えたのを書いてみた。
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「やめろバカ! 親父が」
こいつ、目がマジだ。だけど……おまえが怒るなんて筋違いじゃねえか! そりゃ、俺とお前は仲良く
なんかねえかもしれない。けど……だけどさ、俺は、俺が思ってたよりおまえに嫌われてないって――
そう思えるようになって――
「うるさい!」
今度は右蹴り、流石にこれを食らうほど騒げば親父たちだって気付くぞ!
特に親父は仕事柄、騒ぎに敏感――これ以上は! ……と半ば反射的に後に下がる。
ガッ!
あ……っクソっ! 桐乃の蹴りをかわした拍子に、後ろ足がテーブルにひっかかっ……!
その衝撃でノートパソコンが床に落ちて、ガシャッと鈍い音を立てる。
……大丈夫……か? 絨毯の上に落ちたから、壊れてなければ……とにかく、これ以上はいくらなんでもまずい。
「死ね! 死ね! 死ねぇっ!」
いい加減にしろ! おかしいだろおまえっ……! 桐乃の腕をつかんで押さえ込む。
「なんだよてめえ! 俺にどうしろって言うんだよ?」
俺も、おまえが何が言いたいのかなんてさっぱり分からねえ、うまく……言葉にならない。
ただ、ムカムカと正体の分からない怒りがこみ上げてくる。桐乃も怒りの余りか、目じりに涙すら浮かべているが……
泣きてぇのはこっちの方だ!
『行くなって言ってよお兄ちゃん……』
「あ……」
「あっ……」
俺の心配をよそに、パソコンからはさっきと同じようにエロゲーの台詞が流れてきた。
壊れてなかったみたいだけどよ……この期に及んで、緊張感のない話ってもんだ。何もかもブチ壊し。
ああもう、とにかくむかつくんだよ! ……俺は――おまえのことを――なのに……なんで何も言わずに
決めちまうんだよ! 「人生相談」 ってのは、そういう時にこそ使えよ! エロゲー買いに行けだぁ?
……ふざけるな!
『お兄ちゃんが止めてくれたら、私、どこにも行かないよ?』
「……」
「……」
……開いたままの押入れに大小無数にズラリと並んだメルルフィギュア……積み上げられたエロゲー
の箱……おまえ、あれだけ大事だって言ったこいつらを置いていくのかよ……あやせや……黒猫や……
沙織も、加奈子も…… ……そして俺も。俺たちは、その程度の存在だったのか?
『夢はどこでも叶えられるけど、お兄ちゃんはここにしかいないから……』
『ありがとうお兄ちゃん、これからもずっと一緒だね』
……仕方ねえよな、おまえにとって、俺なんておまえからしたらウザイだけの存在なんだろうしさ――
それでも、俺はお前の……兄貴なんだ。……だから、嘘でもこう言ってやるよ。
「行けよ。……………………せいせいすらあ」
桐乃の腕を離す。……そうだ、こいつが行くと決めたんなら、覚悟があってのことだ。俺のことはともかく
――友達思いのコイツが、何もかもを捨ててアメリカへ行こうって言うんだ。前に進もうとしているこいつを、
俺が認めてやらずに誰が認めてやれるんだよ? それに……足踏みしているだけの俺には、おまえを
止める権利なんてないだろ?
「……っ……いっ!」
……んなっ……
「ぃっ!」
ガツンッ!
あ…… …… ……