【俺妹】高坂桐乃『私が17いと兄貴が寂しくて死ぬ』

このエントリーをはてなブックマークに追加
235名無しさん@お腹いっぱい。
『行くなって言ってよお兄ちゃん……』
『お兄ちゃんが止めてくれたら、私、どこにも行かないよ?』
『夢はどこでも叶えられるけど、お兄ちゃんはここにしかいないから……』
『ありがとうお兄ちゃん、これからもずっと一緒だね。』

アイツがあたしの腕を離す。
なのに、アイツの口から出た言葉は――

「行けよ。せいせいすらあ」
どうして、どうして……!
怒りが込み上げてくる。
ガツンッ!
「バカ! バカバカ! そんなのアンタに言われなくたって――」
アイツの反応がない。それどころか起きあがってもこない。
よく見ると血がたくさん出て……。

サッと血の気が引くのが分かった。
ど、どうしよう。どうしよう……。
急いで止血を、いや部屋に運ぶのが先だろうか?
こんな事になるなんて思ってなかった。


とりあえずアイツの部屋のベッドまで運んで、今は血をティッシュで拭っているところだ。
最初は驚いたけど、もう血は止まりかけているし、大丈夫だと思う。
新しいティッシュを引き出しながら、どうしてもさっきのやりとりが頭に浮かんでくる。

結局、止めてはくれなかった。
やっぱりコイツは、あたしの事なんてなんとも――

『行くなって言ってよお兄ちゃん……』
どうして言ってくれないの。

『お兄ちゃんが止めてくれたら、私、どこにも行かないよ?』
アンタが止めてくれたら、あたしは、あたしは……!
236名無しさん@お腹いっぱい。:2010/12/20(月) 10:18:02 ID:M/WZWDTu0
「桐乃……」

はっとして顔を見る。
アイツの目はきつく閉じられていて、起きているような様子はない。
寝言だろうか?

「俺は、お前が……」

お前が、何?
息を呑んで続きを待つ。
もしかしたら……。
でも、いつまで待っても続きは言ってくれなかった。

「はぁ……」
思わず溜息が出る。
寝言くらい最後まで言いなさいよ。
こんなんじゃ、続きが気になってしまう。

気付くと、もう血は止まっていた。
ホッとすると同時に、他の事を二の次にしていたのに気付く。
陸上も、モデルも、趣味も、友達も大事。
でもやっぱり、あたしにとっての一番は――

『夢はどこでも叶えられるけど、お兄ちゃんはここにしかいないから……』
あたしがずっとここに居たら、いつか続きを聞かせてくれる?
そうしたらあたしも、あと一歩踏み出せる気がする。


――決めた。
あたし待ってるから。
どこにも行かないで、待ってるから。

だから早く、続きを聞かせて。

『ありがとうお兄ちゃん、これからもずっと一緒だね。』