>>364 「…………和ちゃん」
名前を呼んでも俯いたままの人影。
けど、私はずっとこの時を待っていたんだ。
俯いたままの彼女に背中を向けて、両手を差し出す。
無言のままガチャリ、と音がして、私の手首に手錠が嵌められた。
両手首に金属の輪がきつく食い込む。これでもう抵抗もできない。けど、構わなかった。
「……いいよ。私、和ちゃんになら攫われたっていい」
振り返って向き合おうとした矢先、そのままぎゅっと抱きしめられてしまった。
和ちゃんの体は温かくて、でも小刻みに震えていた。
手錠のせいで抱き返してあげられないのが凄く切ない。
「ずっと待ってたんだ。和ちゃんが迎えに来てくれるのを」
お腹押し当てられたスタンガンの感触。
それもやっぱり震えていた。
「私、和ちゃんの言うことならどんな事だって聞くよ。だから……可愛がってね?」
バチリ、とスタンガンの電極から音が響く。
最後に見た和ちゃんの顔は、涙を流していた。