ここはキチガイの収容所です
気違い同士仲良くせい
今後、SSの投下はこちらのスレで宜しいのでせうか?
こちらでお願いします。
11時前くらいにSS投下いたします。
殷賑の起爆剤になれば……。
たのしみ
皆様、こんばんは。
ただ今より投稿しますが、これまで以上に長いSSで且つ書き終わっていないことから、
投下は不定期になってしまいます。
それでは本日分、参ります。
9 :
麾く煉獄1:2009/08/21(金) 22:51:28 ID:ETWxvuWw
「ほな当番、号令頼むで」
ひとまず役目から解放されたためか、ななこの声には午前よりも覇気があった。
「起立」
当番がこの合図を出せば直後に、
「礼」
聞き飽きた指示が出、もはや陳規陋習でしかない心の宿らない挨拶をする。
「はい、ほな気ぃつけて帰りや」
との言葉がすんなり出るあたり、3年B組には部活動に勤しむ生徒はほとんどいないと見える。
一応は進学校であるから学生の本分は勉学に励むことにある、という姿勢を生徒が持つのは当然である。
程度の差はあっても基本的に誰にも学ぶ意欲があるから、その分だけ授業のペースも難易度も上がる。
出遅れた者や勉強が苦手な者は部活動に励むという手もある。
大きな記録を出せばスポーツ推薦を狙うことも可能だ。
現に日下部みさおはそこを意識してか、ますます脚力をつけて次の大会で優勝することを念頭に置いている。
「あ、お姉ちゃんっ!」
C組はいつもホームルームが終わるのが遅い。
あのやる気の全く感じられないひかるが何をくどくど話すのか。
つかさは少しだけ興味を持った。
教室に入ってきたかがみの表情は暗い。
いつものように自信に満ち溢れていて、やや攻撃的に見えるツリ目も心なしか意気を落としているようだ。
「どうかなさったのですか?」
いち早く変化に気付いたみゆきが訊ねる。
こうした心遣いが彼女は得意だ。
「あ、うん。別に大したことないわ」
そう言って笑うかがみは、みゆきの問いに対して否定はしない。
ということは彼女が訊ねたように、何かがあったのだとすぐに分かる。
「どしたの?」
今度はこなたが訊いた。
こちらは気遣ってというより、好奇心からの問いかけだ。
勝ち気なかがみが落ち込んでいるのであれば、その理由は何だろうか。
面白い理由ならお得意の方法で揶揄ってやろう。
思わず顔を赤くして恥ずかしがるかがみを想像し、こなたは人知れずニンマリと笑った。
だがこなたのあては見事にはずれ、
「何でもないって言ってるでしょ」
やや怒気を含んだ声に一蹴された。
何となく気まずい雰囲気になる。
「あ、ねえ! こないだ駅の近くに新しいレストランができたんだけど、どうかな?」
発案したのはつかさだ。
妙な空気を吹き飛ばしたくて、もとより落ち込んだ様子のかがみを元気づけたいがための提案だ。
「どんなお店?」
こなたが乗ってきた。
「うん、中華と洋食を合わせたようなメニューがあるんだって」
人伝に得た情報を伝える。
「ふーん、ちょっと変わってるね。じゃさ、そこ行こうよ。あ、でもかがみはやめたほうがいいかも」
したり顔で頷くこなたに、つかさはムッとした。
折角かがみのために振った話なのに、つまらない事を言うなという視線を向ける。
「な、なんでよ?」
案の定、かがみが口を尖らせた。
「だって食べた分だけ吸収しちゃうでしょ、このお腹は――」
スキンシップのつもりか、こなたが眠そうな目でかがみの腹部をまさぐる。
こうやっていつものように軽口を叩けば、沈んでいたかがみも調子を取り戻して反撃に……。
と踏んでいたこなただったが、いつまで経っても何の反応も示さない彼女にゆっくりと顔を上げる。
10 :
麾く煉獄2:2009/08/21(金) 22:52:48 ID:ETWxvuWw
――様子がおかしかった。
かがみは確かにこなたのちょっかいに怒ってはいるのだが、その怒気の表し方が平素と違う。
無言のままに、わずかに唇を噛んで辱めに耐えているような…………。
同じように頬を赤らめてはいても、宿す想いはこなたが考えていたのとはまるで違っているように思えた。
「あの……申し訳ないのですが……」
うまいタイミングでみゆきが割り込んでくる。
「今日はどうしてもはずせない用事がありまして、ご一緒できそうにありません」
頭を垂れるみゆきは言葉通り、すまなそうに語気まで弱々しくなる。
みゆきの思わぬ言葉につかさの表情が僅かに翳る。
大勢でいたほうがかがみを元気づけられると思っていたからだ。
その意味ではこのみゆきの断りは彼女にとっては痛手である。
ここまで頭を下げられてはさすがに責める気にはなれないが、もう少しかがみのことを考えてあげてほしい。
つかさはそう思い、みゆきを、次いでこなたを見やる。
こちらは本当に何も考えていなさそうだ。
つかさがレストランの話を持ち出した理由も、みゆきが卑屈なくらいの低姿勢で同行できないことを詫びた理由も分かるまい。
親しい間柄ではあるが彼女にとってのかがみは、いじりがいのある反応の面白い娘程度でしかないのかもしれない。
「用事があるんならしょうがないよ。ゆきちゃん、また今度いっしょに行こうね」
「え、ええ。次の機会に是非――」
淑女だな、とつかさは思った。
ぺこりと頭を下げるみゆきが僅かに視線をかがみに向けたのを彼女は見逃さなかった。
そういう気配りができるのだ。
この気品溢れる美少女はかがみの落ち込みようと、それを和らげようとするつかさの働きかけをちゃんと理解している。
その上でつかさの誘いを断らなければならないことを心底から申し訳ないと思っているのだ。
11 :
麾く煉獄3:2009/08/21(金) 22:54:04 ID:ETWxvuWw
みゆきと別れ、3人は件のレストランへと赴いた。
さすがに竣工したばかりとあって外装、内装ともに一点の汚れもない。
料理の良し悪しは食べた客が勝手に広めてくれるが、そもそも入店してくれなければ評価のされようがない。
経営者はそこを心得ているようで過度に華やかな外観にせず、間口を広く見せるように装飾を控えめにした。
こうすれば道行く人も入りやすい。
「ほら、ここだよ」
つかさが指差した先に、『ベストランテ』の看板が掲げられている。
よほど上質のものを食べさせてくれるのか、それともただ言葉遊びが好きなだけなのかは分からない。
「へえ、けっこう綺麗だね」
正面の看板を見上げてこなたが言った。
「なかなかいい感じじゃない」
美味しいものを食べられるとあって、先ほどまで沈みがちだったかがみも少し元気が出てきたようだ。
その様子に満足したつかさは普段は滅多にしないことをした。
こなたもかがみもそれに気付かない。
あまりにも自然で違和感がなく、またそこに気付くだけの十分な時間もなかったためだ。
「いらっしゃいませっ! 3名様ですか?」
店員の声が響く。
その声を一番に聞き取ったのはつかさだ。
普段滅多にしないこととは、つまり先頭に立って店に入ったことだ。
控え目なつかさは誰かと行動する時は常に人の横かやや後ろを歩く。
ちょっとした行動にも性格が表れてしまうのだ。
彼女にとっては一番に店に入るというのは、簡単そうに見えて実はなかなか勇気が要る行動だった。
今回は姉を元気づけたかったからできたのであって、こういう時でない限りはやはり人の陰に隠れてしまうだろう。
胸にちょっと熱いものを感じたつかさはそのまま2人を連れ立って奥の席に着く。
イスの座り心地も申し分ない。
「どれにする?」
メニュー片手につかさは当然、かがみに問うた。
こなたは既に別のメニューを食い入るように見つめている。
「けっこう種類あるわね……あ、これ……は、モーニングか――」
「このスタースープが人気あるんだって。ほら」
「ふーん、スターフルーツとオクラか……やめとくわ」
「じゃあこっちは? あんかけの――」
という具合に話が弾む。
他では見ない品書きが並んでいるからなのだが、つかさは珍しい料理への驚きはそこそこに、やはりかがみの様子を窺った。
表情は明るかった。
まだどこか翳があるようにも見えるが、それも間もなくなくなるだろう。
美味しいものを食べれば人は元気を取り戻す。
そのくらいのことはつかさにも分かっているのだ。
今はこうして誰かが作った料理をあてにしているが――。
いずれは自分で一から調理し、その料理でかがみを幸せにしたい。
つかさはそう思った。
「私はこれにするよ」
そう言ってこなたが指差したのは、鹿やら猪やらの肉がメインのオムライス。
「あ、そんなのもあるの? じゃあ私もそれにしよっかな」
品数は多いが今ひとつ食べたいものが見つからなかったかがみは、こなたと同じものを注文しようとする。
「う〜ん、かがみんはやめたほうがいいかもよ?」
「はっ? なんでよ?」
「だってほら」
こなたは指していた指を下に少しずらした。
卵・乳・小麦……とアレルギー物質が羅列されている、その横。
小さく”927kcal”と表示されている。
「ウソッ!? こんなにあるの!?」
かがみは思わず手にしたメニューを落とした。
ハーフサイズというのもあるが、それでも500kcal以上ある。
「い、いいんじゃないかな! その分、晩ごはん減らせばいいんだから、ねっ!?」
つかさが慌てて取り繕う。
「いや〜、でもやっぱ晩は晩でお腹が空くと思うよ?」
何も考えていないふうにこなたが言う。
(こなちゃん、余計なこと言わないでよ〜〜)
つかさにしては珍しく険しい表情でこなたを睥睨する。
12 :
麾く煉獄4:2009/08/21(金) 22:55:23 ID:ETWxvuWw
その視線の意味を遅れて理解したこなたは、
「カ、カロリーなんてさ、別に関係ないよね! かがみ、気にするほど肥(ふと)ってないじゃん!
それにさ、ダイエットやってもあんまり成果ないんでしょ? だったら逆に食べても体重増えないんじゃない?」
額に汗を浮かべてフォローする。
このオタク少女はつかさが半ば強引にこの店に引っ張ってきた理由をようやく得心したらしかった。
「………………」
つかさの力不足か、こなたの繕い方が下手だったのか、かがみはメニューに視線を落としたまま動かない。
やはり摂取カロリーを気にしているのだろうか。
「あ、あのね――」
堪らずつかさが声をあげようとしたところに、
「そうね。せっかく来たんだから、いちいち気にしてちゃ損よね。やっぱこれにするわ」
開き直ったようにかがみが言った。
頭の隅でカロリー計算こそしたが、彼女は食事を選んだ。
呼び鈴を鳴らし、小走りにやってきたウェイターに注文を出す。
つかさは50種類のキノコをふんだんに使った雑炊にした。
「いや〜、それにしてもこんなお店ができてるなんて知らなかったよ」
おしぼりで顔を拭きながらこなたが言う。
「学校帰りにけっこう寄り道してるけど、全然気がつかなかったな」
(そういう所しか行かないなら気付かないんじゃ…………?)
つかさは心の中で突っ込みをいれた。
「こなちゃんはこういうお店には来ないの?」
何でもいいから話題を引き延ばしてやれと、つかさが身を乗り出した。
他愛もない会話でも続けていれば、かがみの気も晴れるだろうとの考えだ。
もちろん、彼女が何を理由に落ち込んでいたのかが分からなければ根本的な解決には結びつかない。
ずっと妹であり続けたつかさはかがみの性格をちゃんと分かっている。
分かっているからこそ、不器用な彼女が心根を曝け出せるような空気を作るべきだと判断したのだ。
「う〜ん、外食はするけどシャレたところにはあまり行かないかも。ハンバーガーなら食べるけどね。
あ、でもお父さんとゆーちゃんと時々来たりするかな」
結局どっちなのかよく分からない答えが返ってきた。
「ふーん」
元より回答にこだわっていないつかさもまた、あまり興味なさそうに相槌を打つ。
質問した側の対応としてはあまりにぞんざいだが、こなたはそんな事は気にしない。
「まあ、そういうお店でバイトしてるから余計かも」
「あ〜、そういえばそうだったわね。やっぱり写真とか撮られたりすんの?」
かがみも乗ってきた。
いいぞ、とつかさは思った。
「最初はそういうお客さんもいたんだけどね。あんまり酷いから店内は撮影禁止にしたんだよ」
「ってことはそれまでは撮り放題だったわけね」
「うん。店長も最初は禁止にするか悩んだみたいだよ。それでお客さんが減っちゃ困るもんね」
「それでどうなったの?」
「何もならなかったよ。写真は撮らないで下さいって看板掲げたら、お客さんも大人しくなったんだ。
ごねたりしたらどうしようかと思ったけど、マナーが良くなってよかったよ」
こなたが眠そうな目で言った。
「なるほどね、オタクでもいちおう礼節っていうかルールは守るのね」
(………………??)
かがみが何気なく放ったその一言が、つかさにはなぜか妙に気にかかった。
こういうやりとりは日常よくある。
オタクであることを隠しもしないこなたの周囲を顧みない言動に、かがみが冷静に突っ込みを入れる。
いつもと何ら変わらない言葉のキャッチボールだ。
が、鈍感なつかさにも分かるくらいの違和感があるのだ。
その理由はかがみの口調が平素よりも低く冷たい印象を放っていたからかもしれないし、
よく聞くと棘のある単語が含まれていたからかもしれない。
(なんだろ…………)
判然とはしなかったが、いつもの和やかな感じとは明らかに違う。
言ったかがみも言われたこなたもその違和感に気付いていないようだった。
「……考えすぎかな…………」
「なにが?」
つかさが思わず呟いたのをかがみは聞き逃さなかった。
「あ、ううん、別に!」
慌ててはぐらかす様がまたおかしい。
13 :
麾く煉獄5:2009/08/21(金) 22:56:37 ID:ETWxvuWw
かがみは訝ったが、間もなく運ばれてきた料理に疑念はひとまず消え去った。
ソースの香りが食欲をそそる。
こんもりと盛り上がった卵にスプーンを当てると、そこからパックリふたつに分かれ半熟の黄身が流れ出してきた。
(あ、美味しそう……)
1人だけ雑炊にしたつかさは湯気を立ち昇らせるオムライスに興味が移った。
「ね、ね、一口もらっていい?」
かがみとは違った意味で食べ物に惹かれるつかさは、返事を聞くより早くかがみのオムライスに手を伸ばした。
「いいわよ」
苦笑混じりにかがみが皿をよこす。
控えめなつかさは先端のわずかな部分を口に含む。
甘いような苦いような味が口内に広がり、彼女はうっとりとその美味に溺れた。
じゃあ私も、と今度はかがみが雑炊に手を出す。
「美味しいね」
そう言ったのはつかさだ。
こなたもかがみも頷いて目の前の料理を口に運んだ。
しばらくした後、頃合いを見計らってつかさが、
「良かったぁ」
とわざと2人に聞こえるように言った。
「どうしたの?」
当然のごとくこなたが反応する。
この問いをかがみから聞きたかったつかさだが、いちおうキッカケを得たところで、
「だってお姉ちゃん、何だか元気なかったもん。心配だったんだ」
照れ笑いを浮かべながら言った。
こうして彼女が沈んでいた理由をさりげなく聞き出そうという作戦だ。
美味しい物を食べれば人は笑顔になり、自然と饒舌になる。
料理の道に進みたいと望むつかさはその点をよく心得ていた。
今はレストランでシェフが振る舞う料理の力を借りているが、いずれは自分の手で――。
かがみを家族を、もっと多くの人を幸せにしたい。
それがつかさの夢だった。
「あー、うん……その、ごめん、心配かけて…………」
かがみが困ったように頬を赤らめた。
こういう時、素直に感謝の言葉を述べられないのは彼女の癖だ。
その癖が表れたということはいつもの彼女に戻りつつあると証明しているようなものだ。
つかさはほっと胸を撫でおろした。
「でさ、何があったの?」
すでにオムライスを半分ほどにしたこなたが訊いた。
今も食べ続けてはいるが、視線は常にかがみに注いでいる。
その様子から単なる興味本位ではなく、つかさほどではないにしろ彼女もかがみを気にかけていると窺える。
「う〜ん……まあ大したことじゃないんだけどね」
もったいぶるようにかがみは明答を避けた。
「何でも言ってみたまへ、かがみんや。私は人生経験豊富だよ?」
「私と同い年だろうが。それに経験ったってどうせゲームの話だろ?」
「ゲームだっていろいろ学べるんだよ。ほれほれ、話してみなよ〜」
「………………」
ジト目でこなたを見ながらかがみは小さく息を吐き、
「成績がさ、ちょっと下がってきてるのよ」
「………………」
途端、拍子抜けたようにこなたはぽかんと口を開けた。
つかさはといえば彼女もどう声をかけてよいか分からず、視線をうろうろさせるばかりだ。
「な、なによ……?」
せっかく打ち明けたのに予想外の反応が返ってきたことでかがみは口を尖らせた。
「いやぁ、好きな人ができたとかそういうのかと思って――」
何を期待していたのかこなたが目を細めて言った。
「そりゃ悪かったわね。わた――」
”私にとっては深刻な問題なのよ”という言葉を呑み込む。
「…………?」
何か言いかけた彼女につかさは一瞬、怪訝そうな表情を見せた。
(本当なのかな?)
つかさは思った。
彼女がよく知る姉は凛々しくて勝ち気で真面目だ。
14 :
麾く煉獄6:2009/08/21(金) 22:58:52 ID:ETWxvuWw
それだけではない。
情に篤くてしっかり者だが、弱みを曝け出せない意固地なところもある。
簡単に言えば自分の気持ちに素直になれないのだが、姉のそういう性質につかさは幾度となく助けられてきた。
その点は率直に頼もしいと言える。
感謝してもし足りないほどだ。
しかしいつまでもそうしているわけにはいかない、とつかさは常々思っている。
かがみは双子の姉であって決して保護者ではないのだ。
つかさが弱くなればなるほど、かがみは彼女を守ろうとさらに強くなる。
かがみが強くなればなるほど、つかさはそれに甘えてさらに弱くなる。
この悪循環を断ち切るためには自分が行動する他ない。
自分を守ろうと強さを求めるあまり、今のかがみは弱みを晒すことを殊の外恐れているのではないか?
どんな些細なことでも、それがかがみにとっての弱点になるならそれを覆い隠そうとするのではないか?
つかさは思った。
だとすれば、”成績が落ちた”というのは本当の理由ではないのかもしれない。
2人の手前そう言っているだけで、別な理由があるのかもしれない。
そう思いつかさは勘繰ってみるのだが、そういうのが苦手な彼女には答えは出てこない。
(どうなんだろう…………)
姉を想っての当て推量は空回りに終わり、却って不安になるという皮肉な結果のみが残されてしまった。
「ふ〜ん、かがみでもそゆことあるんだ」
反対にこなたは妙にニヤけた表情である。
スプーンを置き、顎に手を当ててしたり顔で頷いている。
「運にもよるんじゃない? たまたま苦手な分野が続いたって思えばさ――」
「そうも言ってられないわよ。この時期に成績下がるなんてあり得ないわ」
楽観的なこなたの陳腐な慰めをかがみは一蹴する。
「物理だって80点台をキープしてたのに……」
吐き捨てるように言う。
2人にとってはそれでも十分羨ましい話だ。
つかさなどは80点など自分の答案用紙では見たことがない。
夜遅くまでかがみに付き合ってもらって勉強しても、70点あたりがせいぜいだった。
もちろんそれも一度きり。
次のテストでは出題範囲も広くなり、それに伴ってモチベーションも保てなくなり結果……。
(私なんてギリギリ30点だったけど)
80点を下回っただけで落ち込むかがみの気持ちは、不出来な妹には理解できないのである。
「じゃさ、甘いもの食べればいいんじゃない?」
最後の一口を嚥下し、こなたがメニュー片手に言った。
「頭使うと糖分消費するっていうじゃん? だったら逆に甘いものたくさん食べたら頭良くなるかもよ?」
本気なのか冗談なのかよく分からない口調だ。
が、その話を聞いた覚えのあるつかさは敢えて口を挟まないことにした。
「糖分摂ったからって頭が良くなると思えないけどな」
いかにも楽したがりのこなたが考えつきそうなことだ、とかがみは思った。
摂取した栄養がいちいちどう作用するかなど知らないかがみだが、さすがにこれは甘すぎると分かる。
甘い物を食べただけで頭が良くなるなら、自分はとうに天才になっているハズだ。
残念なことに彼女が摂取した栄養分は頭脳にではなく、体重に表れてしまうのだ。
「あ、そっか。かがみんの場合は糖分がお腹に行っちゃうんだよね?」
ここでまた言わなくてもいいことを言う。
案の定、
「うっさい」
頬を紅潮させることもしないでかがみがぴしゃりと言い捨てた。
「まあまあ……」
今のつかさにはこうして宥めるしかできない。
「でも私もデザート食べたいかも」
いつも一音多いこなただが、今回はそれを逆手にとってつかさがメニューをかがみに見せる。
「これなんてどうかな? 採れたてのキウィを凍らせたアイスキウィだって」
「へえ〜」
食欲には正直なかがみは目の前に並ぶ写真を眺めた。
デザートと言っても種類は様々だ。
「”伝説を再現! 不老不死セット”なんてのもあるね」
「どれどれ?」
こなたが呟いた品をやや遅れて2人も見つける。
大量の実芭蕉(バナナ)と橘が絹袋に包まれている。
15 :
麾く煉獄7:2009/08/21(金) 22:59:46 ID:ETWxvuWw
「これのどこが不老不死なんだろう?」
つかさが首を傾げた。
妹の可愛い仕草を横目に、かがみはできるだけカロリーの少ないものを探した。
生クリームや卵を使っているだけでアウトだ。
できればフルーツの盛り合わせなど、必要以上に味付けをしていない品がいい。
・
・
・
・
・
「あぁ〜〜もうお腹いっぱい」
こなたが満足そうに息を吐いて言う。
「晩ごはん食べられなくなっちゃうかもね」
空になった器を見てつかさも恥ずかしそうに言った。
「私、今日は晩ごはんはやめとくわ……」
美味しい物を食べて確かに満足なのだが、後のことを考えてちょっと憂えた様子のかがみである。
結局、彼女はパフェを注文してしまった。
写真の撮り方が巧いのか、かがみはパフェの放つ魔力に負けてしまったのだ。
「あはは……」
つかさが困ったように笑う。
軽く1000kcalは摂取している。
肥りにくい体質のつかさでさえ、今日は食べ過ぎてしまったと思っているくらいだ。
「でも美味しかったよね」
必要以上に体重を気にするかがみを気遣うように、こなたが味の評価に話をすり替えた。
「そうね。ちょっと変わってるけど、また来ようかな」
そう答えるかがみは満足そうだ。
つかさは連れて来て良かったと思った。
姉の嬉しそうな顔を見られただけでも十分だ。
成績云々は浅学な彼女にはどうすることもできないが、こうして気を紛らすくらいはできる。
つかさはかがみの満足そうな笑顔を見られたことより、自分が役に立てたことに安堵した。
「時々思うんだけどさ――」
生クリームがべったりついた空の器に向かってかがみが言う。
「普通の料理って頼んでから割とすぐに来るのに、なんでデザートって遅いのかな」
「あ〜そういえばそうだよねぇ〜」
素朴な疑問につかさがすかさず乗った。
確かに彼女の言うように、3人のデザートが全て卓上に揃ったのは注文して10分ほど経ってからだった。
「パフェとかフルーツの盛り合わせとかってさ、別に火を使うわけじゃないじゃない?
だったら作るのにそんなに時間はかからないと思うんだけど」
とかがみは付け足したが、彼女ならその火を使わない料理にも苦戦しそうだ。
「それはね…………」
こなたが人差し指を立てた。
「大きいレストランはそうとは限らないけど、デザートっていうのはウェイターやウェイトレスが作ってるからだよ」
「そうなの?」
身を乗り出したのはかがみではなくつかさだ。
「そだよ。食器洗ったり、サンドイッチとか作る場合もあるんだ。お店にもよるけどね。それにバッシングもするわけだからさ、
その分だけ遅くなるんだよね。デザートが遅くなるのはだいたいそういうのが重なった時だろうね」
「へえ、なるほどね」
かがみも頻りに頷く。
「知らなかった?」
こなたが問うた。
普段こういう役はみゆきの担うところだが、思わぬところで知識を披露できたことに彼女は気分を良くした。
「初めて聞いたわ」
かがみが素直にそう答え、こなたはますます舞い上がり、
「ぷぷ、これだから社会に労働貢献したことない人は――」
決して驕慢になったわけではないが、揶揄うように口の端に笑みを作った。
――その時だった。
かがみが突然、持っていたグラスをどんと勢いよく卓上に叩きつけた。
ビクリとしてつかさが顔を向けると、かがみが刺すような目でこなたを睥睨している。
怒っている。
つかさはそう理解したのだが、こういう怒り方をしたのは初めて見た。
16 :
麾く煉獄8:2009/08/21(金) 23:01:27 ID:ETWxvuWw
「………………」
動作とは対照的に、かがみの睚眥(がいさい)は静かに怒りを孕んでいて不気味だ。
彼女は何も言わずグラス越しにこなたを睨み続けた。
「ど、どしたの……?」
ただならぬ様子にこなたがおずおずと訊ねる。
それを待っていたように、
「あんた……前にもそんなこと言ったわよね……?」
ほとんど唇を動かさずにゆっくりゆっくりとかがみが問い返した。
(お、おねえちゃん…………?)
妹として止めるべきかつかさが迷う。
が、何に対して怒っているのかも分からないのでは宥めようがない。
「い、言った……っけ…………?」
普段、意図的にかがみを怒らせてその反応を楽しむこなただが、今ばかりは歯切れが悪い。
いつもの軽口の叩き合いではなく、理由は分からないが本当に怒らせてしまったのだとこなたは悟った。
戸惑いを隠せないこなたを一瞥し、かがみはすっと席を立った。
「誰のお陰でそれができてると思ってるのよ」
去り際、憎悪のこもった低い声で吐き捨て、かがみはそのまま店を出て行ってしまった。
「あっ、お姉ちゃん!!」
つかさが慌てて立ち上がった時には、かがみはすでに通りの向こうに消えていた。
彼女は彼女で足を何かに掴まれたようにその場から動けなかったのだ。
「………………」
どうすることもできず、つかさは力なく椅子に腰をおろす。
追いかけるという選択もあったハズなのにそれができない。
かがみが放つ威圧感が妹すらも遠ざけていたようだ。
「……怒っちゃったね…………」
ぽつり、こなたが呟く。
「うん……」
相槌を打つも、つかさはこなたのその一言に苛立ちを覚えた。
(”怒っちゃった”じゃなくて”怒らせちゃった”でしょ?)
正直なところ、今でもつかさはかがみが憤怒した理由が分からない。
よくあるいつもの掛け合いの中、突然にキレた、と言っても不自然でない状況ではあった。
が、去り際のセリフからもその原因がこなたにあることは明白だ。
「………………」
重苦しい沈黙が続く。
互いに言葉を発せずにただ俯くばかりだった。
数分してどちらからともなく席を立つ。
「あ、いいよ。私が払うから」
こなたがつかさの手から伝票をひったくるようにして言った。
「え、でも……」
3人分の食費といえばそこそこの額だ。
それを払わずにいられるほどつかさは厚顔ではない。
「いいっていいって。私、いちおうバイトしてるし」
半分は罪滅ぼしのつもりでこなたが財布を取り出す。
こうでもしなければいたたまれない。
かがみへの謝罪はそのままつかさへの気遣いという恰好にシフトした。
当然といえば当然のこのこなたの行動には暗に、
”私の代わりにかがみに謝っておいてほしい”
という気持ちが含まれている。
姑息な手段ではあるが、今のこなたにはこうするしかできない。
何度かの押し問答の末についにつかさが折れ、飲食代はこなたが全額支払った。
今回はここまでです。
次の投下日は未定ですができるだけ間隔を空けないようにしたいと思います。
それでは。
乙!
リアルタイムで書きながら、っていうのは初めてかな?
避難所に中尉が復活してた
まぁ殷賑とはいかずとも、こそこそ穏やかにやっててもいいんじゃない?
こなた「核融合炉にさ、飛び込んでみたい」
かがみ「やれよ?」
みゆき「青白い光に包まれて綺麗?いえいえ、泉さんでは綺麗とはいかないでしょう」
つかさ「またこなちゃん口だけかー」
こなた「…」
アナウンサー「先日起きた、イスラム勢力による国内同時多発テロ、その内の実行犯の一人に
日本人が含まれている事が分かりました。
名前が…未成年…なので伏せます。
確かに旅客機ジャックして原発に突っ込むような、いつぞやの米国多発テロを
超えるほどのインパクトを与えた事件ですが、我々にも倫理規定がありますので…」
かがみ「あーあ、こなた本当にやったのね。にしても、放射能ばらまいてくれたお陰で、
日本中に癌が蔓延して、奇形児が大量に生まれてるわ。
私も、いつ癌が発生してもおかしくないわ。やるときゃやるじゃない、こなた」
皆さん、こんばんは。
本日分の投下です。
23 :
麾く煉獄9:2009/08/23(日) 22:01:44 ID:om3iKMKp
「ただいま」
声や表情に今の心情を出すまいと努めながら、こなたは妙に甲高い声で家の戸を開けた。
「おう、おかえり」
あらかじめ寄り道すると聞いていたそうじろうは、娘の遅い帰宅に何の反応も示さない。
玄関には小さな革靴が一足。
ゆたかが帰ってきている証拠だ。
「晩ごはんはどうするんだ?」
「外で食べてきたからいいよ。お腹いっぱいだし」
「そうか…………こなた、何かあったのか?」
「へっ?」
一瞬、分からない顔をする。
(あ〜、やっぱ顔に出てたか……)
しかしすぐに問いの意味を理解したこなたは不自然にならないように、
「何もないよ。人がいっぱいでちょっと疲れたけど」
無難な受け答えで躱した。
こう言えばそうじろうもそれ以上は追及できなくなる。
案の定、彼は、
「そうか」
という一言だけを残して自室に引っ込んだ。
これはこなたが普段から寄り道を頻繁に繰り返しているからこそ使える手である。
そうでなければ母親を喪った愛娘を父親が放っておくハズがない。
「………………」
自分に向けられる目が無くなった途端、こなたは小さく息を吐いて部屋へ向かう。
”疲れた”という部分だけはウソではない。
ただし肉体的にではなく精神的にだ。
鞄を投げ捨て、着替えもせずにベッドに転がる。
考えるのはかがみのことだけ。
自分の不用意な発言で彼女を怒らせてしまった、という悔いがあった。
かがみは優しいからついそこに甘え、後で考えれば失礼だと思うような発言を繰り返してきた自分に気付く。
(でも、あんなに怒るとは思わなかったな……)
怒りにまかせて席を立つなど、かがみの生真面目さからは到底想像のつかない行動だ。
「明日……ちゃんと謝ろう……」
ポケットから取り出した携帯をまじまじと見つめ、こなたは思った。
(メールで……は駄目だね。やっぱり直接言葉で謝らないと)
アドレス帳から”柊かがみ”を選択しかけた彼女は慌てて携帯を閉じた。
翌日。
登校の際、いつもの場所で2人を待っていたこなたは頭の中でシミュレートしていた。
昨夜、いろいろと言葉を考えたのだが結局最善と思うものが浮かばずに寝てしまっていた。
フレンドリーにごめんと伝えるか。
それとも心底から反省していることをアピールして顔を伏せるか。
そもそもあのかがみのことだから、怒りを引きずってはいないハズだ、という楽観的な考えも浮かんでくる。
「おはよう、こなちゃん」
「うわおぅ!!」
思考の沼に溺れていたところに背後から声をかけられ、こなたはビクンと体を震わせる。
そういう呼び方をするのは1人しかいないのだが、なぜか緊張の面持ちで振り返る。
「お、おはよう……あれ、つかさだけ?」
かがみの姿がない。
「う、うん……あのね……」
そう問われることをあらかじめ考慮していたつかさが遠慮がちに、
「お姉ちゃん、その……先に行っちゃったんだ」
手短に事実を告げた。
すまなそうに言う彼女の様子から、こなたはその理由をすぐに悟る。
「やっぱり怒ってるんだね?」
というこなたの問いにつかさは頷く。
「謝ろうと思って待ってたんだけど、ちゃんと時間をとったほうがいいよね」
言い訳がましく呟きながら己の軽率さを愧(は)じる。
24 :
麾く煉獄10:2009/08/23(日) 22:02:51 ID:om3iKMKp
どうせ登校時に会うだろうからその時に謝ればよい、というのは謝罪する側の考えとしては些か誠意に欠ける。
それだとどうしても、”ついでに”という感が付きまとってしまう。
「ふぅ…………」
そこに思い至り、当初の目論見とは異なったが、かがみとここで会わなくて良かったとこなたは思った。
・
・
・
・
・
謝る決心こそしたもののなかなかそれが行動に移せないまま、あっという間に3時間余りが経過した。
その間の休み時間、かがみは一度もB組を訪れなかった。
彼女は彼女でみさおやあやのがいるから、過ごし方には特に困らない。
それにこなたとの仲もある。
かがみが来ないのもある意味では必然である。
「かがみさん、どうされたのでしょう?」
さすがにこうなるとみゆきも訝しむ。
彼女は彼女でかがみとの掛け合いを楽しんでいた節がある。
みゆきにすれば2人で直接話すというよりも、3人のやりとりを見て楽しむことが多かったかもしれない。
それが昼休みになっても現れないのでは、何かあったのかと疑うのも当然ではある。
「さ、さあ。いろいろ忙しいんじゃない?」
「うん」
こなたに同意を求められ、つかさが曖昧に頷いた。
昨日の一件はみゆきには話していない。
さして打ち明けるほどの事でもないし、それによってみゆきにいらぬ心配をかけたくない、というのが2人の考えだ。
「はあ…………」
ぎこちない返答にみゆきは首を傾げるばかりだった。
一方、かがみは久しぶりに自分のクラスで昼食をとっていた。
あやのの机に3人が頭を交える。
「やっと柊もウチらの仲間入りかー。思えば長かったよなー」
ブリックパックのストローをチュウチュウ言わせながら、みさおが間延びした声で言う。
「まあ、たまにはね」
かがみはそれには軽く返す。
「久しぶりよね。こうやって3人で食べるのって」
年齢にしては小さめの弁当箱をつつきながらあやの。
彼女の場合は他意はなく、その言葉通りに今の状況を楽しんでいるようだ。
「チビッ子とケンカでもしたのか?」
「………………」
何の脈絡もなく問うてくるみさおにかがみは無視を決め込んだ。
「なーなー柊ぃ〜〜」
「………………」
「ケンカしたのかよぅ〜?」
「うっさいわね。そんなんじゃないわよ」
「いはっ!? 痛いって!!」
しつこく食い下がるみさおの頬を抓る。
「まあまあ柊ちゃん……」
とあやのは言葉では宥めるのだが、割り込んでまで止めようとはしない。
ふん、と鼻を鳴らしてかがみは弁当箱をつつく。
今日の当番はつかさだったようで、いろいろと手の込んだおかずが詰まっている。
彩りは豊かに、しかも栄養面でもバランスがとれている模範的な組み合わせだった。
「ケンカしたんでしょ?」
同じ質問でもあやのがすると、これは無視しづらくなる。
「そんなんじゃないって」
あくまで素っ気ない態度を貫くかがみ。
「…………」
「…………」
あしらい方からして、この話題には触れられたくないようだ。
2人は考えを改め、それ以上の追及はやめることにした。
25 :
麾く煉獄11:2009/08/23(日) 22:04:37 ID:om3iKMKp
「あ、そだ。借りてたゲームだけどさ。ちょっと分かんねーところがあるんだよな」
みさおが咄嗟に話題を変えた。
気まずい沈黙を打ち破るように、且つかがみが乗ってきそうな話題を選ぶ。
「秋芳洞で迷ってるんだろ?」
うまい具合にかがみが食いついてきた。
「そうなんだよ。入口が8個くらいあってさ、どこから入ったらいいのか」
「あれは中で繋がってるからどこから入ってもボスのところに行けるわよ?」
「そうなのか!?」
大仰に驚くみさお。
もちろんこれも演出だと分かっているあやのは、2人のやりとりを見て微笑んだ。
誰だって友人の塞ぎ込んでいる姿を見たくはない。
互いに口にこそしないものの、みさおとあやの、想っていることは同じようだ。
そこにあってかがみも少し心を落ち着けた。
同時に2人を蔑ろにしてきた自分を憎む。
5年近い付き合いをしながら、苗字で呼び合う仲になってしまっている今が呪わしい。
離れた友人にばかり気を向けていて気がつかなかったが、すぐ傍にこんなにも素晴らしい級友がいるではないか。
(そうよね。もともとつかさを通じて知り合ったってだけだし……)
かがみは自分を恨んだ。
足しげく隣のクラスに通っていた時間は無駄だった、とさえ思った。
「日下部、峰岸」
本人には聞こえないように囁くように名を呼び、
「ありがと」
そこに小さく付けたした。
放課後。
チャイムが鳴り、ホームルームが終わると同時にこなたは教室を飛び出した。
呆気にとられた様子のつかさとみゆきには、用事があるからとだけ伝えてある。
みゆきは分からない顔をしたが、つかさは知っている。
彼女は敢えてこなたにはついていかなかった。
つかさにすれば1対1で話し合って欲しかっただけなのだ。
昨夜、柊家でも2人はほとんど言葉を交わしていない。
怒りをひきずっている様子のかがみに声をかけづらかったのだ。
だからこなただけでなく、つかさもまたかがみの怒りの理由を知らないままだった。
あれは偶々だったのか。
それとも以前から溜まっていた何かが発散されたものだったのか。
双子でさえそこまでは分からないのだ。
「かがみ――」
幸いなことにC組もホームルームが終わっており、生徒の半分はすでに教室を去っている。
入ってすぐにかがみの姿を認め、こなたは普段なかなか見せない真剣な顔つきで迫る。
「お、チビッ子じゃん」
先に声をかけたのはみさおだった。
「うん」
みさおに声をかけられ、こなたは彼女に顔を向けて軽く頷いた。
かがみはといえば、聞こえていないように机から教材を取り出し鞄に詰めなおしている。
聞こえていないハズはない。
その証拠に彼女はチラッと蔑視するようにこなたを見た。
……が、すぐに目前の作業を再開する。
「柊、チビッ子が来てるぞ?」
取り持つようにみさおが言った。
こういう時はあやのもいたほうがいいのだが、彼女はひかるに呼ばれて職員室に去ってしまった。
「………………」
かがみは無言のままに教材を詰め終え、鞄の口を閉じた。
流れるような動作で荷物を手にすると、そしらぬ顔で教室を出ようとする。
「ちょっと待てって」
みさおが腕を掴む。
26 :
麾く煉獄12:2009/08/23(日) 22:07:33 ID:om3iKMKp
「離してよ。今日はまっすぐ帰るのよ」
「そうじゃなくって、チビッ子が――」
「話すことなんて何もないわよ」
「柊はなくても向こうはあるんじゃねーのか?」
「………………」
「………………」
2人はしばらく沈黙を保ったが、やがて観念したようにかがみが踵を返した。
が、その表情には僅かだがみさおに対する敵意が含まれている。
(なんであんたが引き留めるのよ。このまま帰ったほうが好都合なんじゃないの?)
という顔をみさおに向けるのだが、当の本人はかがみの思考を読めない。
(ちょっと前に私を物みたいに言って、所有権を争ってたくせに……)
ウンザリした様子で視線をこなたに向ける。
もともと幼い体躯の少女は申し訳なさもあってか、さらに小さく見える。
「で、何なのよ?」
わざわざ走ってきた理由は分かっているが、敢えて問いかける。
ようやく発言権を得たこなたは一歩進み出、
「あ、あのさ、昨日のこと……謝ろうと思って……」
用意していたハズの言葉を詰まらせながら発した。
なかなかに勇気の要る発言だった。
かがみとは違う意味でこなたも素直になれないところがある。
相手に感謝や謝罪の意を伝える難しさを感じながら、それでもこなたは、
「ごめん……私のせいで怒らせちゃったみたいで……ほんとにごめん」
それをきちんと口にした。
言えた。
ちゃんと言えた。
許しを得られるかどうかよりも、謝罪の言葉を口にできたことにこなたは安堵した。
だがその気の緩みが無意識に表情に表れてしまい、運の悪いことにかがみもそれに気付いてしまった。
「………………」
彼女は沈黙を返した。
ここで許さないのは同級生として間違っているのだろうか。
素直に謝ってきているのだから、いつまでも根に持っているような態度は改めるべきだろうか。
一瞬だけかがみは迷った。
が、そもそも怒りの根源は昨日の出来事だけではないと思いなおし、
「ふぅん」
一応は受け止めた、という意味をこめて息を吐いた。
「ふぅん……って、そりゃないだろ。こうやって謝りに来てるんだからさ、許してやれよ」
どことなく雰囲気の悪さを感じてみさおが助け船を出す。
殷賑だった教室は静まり返っている。
生徒は全員出て行ったようだ。
みさおのとりなしも虚しく、かがみはやはり無言のままだった。
「ほんとに悪かったってば。だからそんなに怒んないでよ」
すでに謝ったとあって、こなたの舌もいくらか滑るようになった。
「よく言うわね。これで怒らないほうが不思議よ」
ようやく口を開いたかがみは、やはりそう簡単には許せない様子だ。
みさおが宥めようとしたが、ケンカの理由が分からないのではどちらの肩の持ちようもない。
「こなた、あんた昨日自分が言ったこと憶えてるわよね?」
「う、うん……かがみがその、働いたことないっていうような事言って……それで……」
「そうよ」
冷たい視線がこなたを射抜く。
直接その目に睨まれていないみさおでさえ、背に冷たいものを感じた。
「誰のおかげでそれができてると思ってるのよ?」
あの時、去り際に吐いた台詞をかがみはもう一度言った。
「な、なあ……どういうことなんだ? チビッ子が何か――」
「日下部は黙ってて」
「はぃ…………」
かがみに一蹴され、みさおは威圧された振りをしてもう少し成り行きを見守ることにした。
「あんたさ、自分で宿題やったことあったっけ?」
かがみが腕を組んでこなたを圧倒する。
攻勢に竦みながら、しかしいつもの調子を取り戻しつつあるこなたは、
「し、失礼な! 子供じゃないんだから宿題くらいやるよ!」
27 :
麾く煉獄13:2009/08/23(日) 22:08:24 ID:om3iKMKp
必死の抵抗を見せる。
「数えるくらいしかやってないでしょ?」
「………………」
「宿題だけじゃないわ。普通の授業で出される課題だって、これまでちゃんと取り組んできたか?」
「………………」
「”宿題見せて””課題写させて”……もう何度も聞いてきたわ」
「………………」
今度はこなたが沈黙を守る番だった。
的確すぎるかがみの追及に何も言い返せない。
「それで何? 私が社会に労働貢献したことないだって? そりゃそうよ。
私はあんたと違って出された課題はちゃんとやってるからね。バイトなんてやってる暇ないのよ」
「そ、それは…………」
「メイド喫茶だかで働いてるみたいだけど、誰のおかげでその時間が作れてると思ってんの?
宿題も課題もちゃんとやってたら、そうそう自由にできる時間なんてないわよ」
横で聞いていたみさおも大分、事情を掴めてきた。
掴めているだけにこなたの肩を持つのが難しくなってくる。
かがみの言い分に正当性があるからだ。
「やらなきゃいけない事を私に頼ってるくせに、よくあんな台詞が吐けたものよね?」
「わ、悪いと思ってるよ……そりゃさ、自分でやらないといけな――」
「そう思いながらもう3年よね? なあ、こなた……あんた私のことバカにしてないか?」
「し、してないよっ! するわけないじゃん!!」
「してるわよ。普段のあんた見てたら分かるわ」
「なんで……そんなこと…………」
「私が風邪で寝てた時もそういう感じだったよな?」
言いながら沸々と怒りが湧いて来るのを彼女は感じた。
「お見舞いに来るなら可愛げもあるのに、わざわざ私をバカにしに来たわよね?」
「………………」
「私はあんたに宿題を見せてやった。課題も写させてやったし、買い物にも付き合ってやった。
じゃああんたは私に何をしてくれたっていうのよ? 恩を仇で返すだけか?」
ここまで一気に畳みかけたかがみは、一度気分を落ち着けようと間を置いた。
言いたいことは山ほどある。
利発な彼女はその中から優先順位をつけ、ぶつけたい事柄を選び抜く。
「なあ、柊。もうそのくらいにしてやれって。チビッ子だって反省してるんだからさ」
今がチャンスだとみさおが容喙した。
「なんでこいつを庇うのよ?」
面倒くさそうにかがみが吐いた。
こなたに対する呼称は”あんた”に続いて”こいつ”となり、彼女の怒りは一層強くなっている。
「いや、だってさ。だんだん昨日のケンカか? ……から離れてきてる感じだからさ」
「日下部だって本当は怒るべきなのよ? あんただってこいつに侮られてるんだから」
「そ、そうかあ…………?」
こなたは自分の足が震えているのに気付いた。
この場に於いてみさおは頼りになる第三者だ。
先ほどから何度かかがみを窘めようとしているが、それは回りまわってこなたの庇護に繋がっている。
彼女の仲裁の仕方次第では仲直りもありえるのだ。
ところがかがみがそのみさおを自分の味方につけようとしている。
下手を打てば2対1になりかねない事態に、こなたは逃げ出したくなった。
「あんたのこと、ガキっぽいだのバカキャラだの言ってただろ?」
こなたは臍を噛んだ。
いつもの軽口がこんなところで自分を窮地に追いやるとは思いもしなかったのだ。
言葉の持つ力は恐ろしい。
今になってこなたはそう思ったが、時はすでに遅い。
「へっ? あ、ああ、そういやそんな事もあったか。忘れちったぜ」
苦笑いするみさおだが、もちろん憶えている。
取り繕おうとする彼女をよそに、かがみは再び向きなおり、
「あんたはそうやって人をバカにしてるけど自分はどうなのよ?」
こなたを詰った。
「そんなに責めるなって。それにほら、宿題とかだって私も似たようなもんだし」
みさおは尚もこなたを庇おうとする。
「あんたは……全然違うでしょ?」
28 :
麾く煉獄14:2009/08/23(日) 22:12:26 ID:om3iKMKp
かがみの、こなたに対する口調とみさおに対するそれとには雲泥万里の開きがある。
呆れたような物言いではあるが、少なくとも鋭さは感じられない。
「勉強できないのは同じかもしれないけど、それは成績だけの話でしょ?
日下部は勉強会開いたらちゃんと参加するし、分からないところがあったら訊くじゃない」
これはみさおを持ち上げつつ、こなたを貶めるなかなかの手だ。
「こいつはそうじゃないのよ。難しいこと、面倒くさいこと全部丸投げにして、遊んでるだけ。
テストの点が悪いのもこれじゃ当たり前よ」
「いや、だからさ、成績悪いのは私も同じだって――」
「あんたは部活やってるだろ? 時間の使い方が違うのよ、こいつとは。
この前だって県大会で上位に入ったって言ってたじゃない。日下部はそういうのを頑張ってるっていうのよ。
私はね、日下部が多少成績悪くても何とも思わないわ。あんたは部活に励んでるから、ある意味当たり前かもしれない。
そのせいで勉強が疎かになっても、大会に出てしかも上位に入れるくらい努力してる日下部はカッコイイと思う。
あんたの個性、立派な長所よ。そういう才能を伸ばそうとしてるのが偉いって言ってんのよ。
でもこいつは違う。やるべき事をやらないでアニメだのゲームだの遊んでるだけなのよ。
なにひとつ頑張ってない。頑張ってるのは遊ぶことだけね」
もはやかがみは、”こなた”とは呼ばない。
当の本人はかがみの強い責めと、それを和らげようとするみさおの容喙を黙って聞いていた。
が、膨れ上がる不安が小さな疑問も生んだ。
(大会……かがみはみさきちの応援に行ったのかな……?)
「日下部との違いはね、他人をバカにするところよ。こいつもあんたも似たような雰囲気かもしれないけど、
日下部は絶対に他人をバカにしたりはしないわ。峰岸に訊いたってそう答えるハズよ」
「でもだからってさ――」
「殆んど初対面同然なのにバカだのガキだの言ってたけど、あんたはそんなに偉いのか?
徹夜でゲームしたり待ち合わせに平気で遅刻したりするくせに、よくそこまで言えたわね。
大体あんた、日下部の事どれだけ知ってたのよ? っていうか何様のつもりよ。
日下部が大らかな性格だからって、それに付け込んで好き放題評してたんでしょ?」
「ひ、柊さあ……私は別に気にして――」
「この際言っとくけど、あんたなんか日下部に到底及ばないわ。成績の話じゃないわよ。
努力するところとかそういうところ。バカでガキなのはあんたの方だって自覚しなさいよ」
「…………」
淀みのないかがみの言葉に、みさおも下手に口を挟むことができない。
「どうせあんたの事だから分かってないと思うけど、あの時、日下部を虚仮(こけ)にした事が私に対する
裏切りだって認識してる? してないわよね?」
「ど、どういうこと……?」
やっぱり分かってないわね、という意味を込めてかがみが大袈裟にため息をつく。
「私は別に考えがあってお互いを紹介したわけじゃない。学校にいれば顔を合わせることもあるだろうから、
遅いとは思うけど改めて紹介したまでよ」
「うん……」
「でもあんたはとんでもない事をしでかしてくれたわ」
「そ、それは私が悪かったよ……」
こなたは頭で考えるより先に謝罪の言葉を口にした。
”裏切り”の意味は殆んど理解できていなかったが、ここは滑稽なほど卑屈にならなければ収まらない。
「初対面同然の日下部をバカにしたことで、私の信用を失墜させたのよ?」
それまで滔々と述べていたかがみは、”信用”という言葉を強調した。
「日下部が私のこと、どれだけ信用してくれてるかなんて分からない。
でもね、”会ったばかりの相手にこんな失礼な事を平気で言う奴と友だちなのか”――私はそう思われたのよ」
「…………ッ!?」
これに驚いたのはこなたではなく、みさおの方だった。
「私の人間性もきっと疑われたと思うわ。あんたとの付き合いも長かったから、私の感覚もあんたに近い。
そう思われても不思議じゃないのよ」
「ちょ、ちょっと待てよ、柊。私はそんな風に思ってないって。そこまで考え――」
「みゆきやつかさの事もいろいろ言ってたけど、それは気の置けない間柄だから出た軽口だと思ってた。
でもまさか、それと同じ感覚で日下部にまで言うとは思わなかったわよ」
「…………」
かがみの鋭い目つきに押され、こなたは唇を噛んだ。
自業自得とはいえ執拗な責め苦による精神的苦痛を、唇という敏感な部分に痛みを与えることで紛らす。
この痛みがあるお陰で彼女は泣き出さずに済んだ。
しかしこれは単なる一時しのぎだ。
29 :
麾く煉獄15:2009/08/23(日) 22:15:04 ID:om3iKMKp
「だいたいあんたと日下部はあれが初顔合わせだったハズよね?
互いの事も全然分からない癖に日下部のどこを見て”バカでガキだ”と思ったのよ?」
口調こそ疑問形だが、かがみは元よりこなたの回答など待ってはいない。
「どれだけ私が恥かいたか……あんたを知り合いに紹介しないって決めたのはその時よ」
「柊……もうやめろって。ちょっと言い過ぎだぜ」
静かに怒るかがみを刺激しないよう、みさおは諭すように言った。
「それだけじゃない。こいつはつかさの事もバカにしたわ」
「冗談のつもりなんだろ?」
「冗談で何でも片づけられないわよ。そんな言い訳が通るのは子供のうちだけよ」
「私らまだ子供じゃん」
かがみの理路整然とした指摘に、直情的なみさおが抵抗するのは難しい。
こなたを庇おうとしながらも、みさおはかがみの弁が正しいと頭では分かっている。
それだけに擁護が困難だった。
「私はあんたのこと、友だちだと思ってたわ。恥ずかしいけど親友って言ってもいいくらい……」
再度、冷たい視線をこなたにぶつける。
「でもどうせあんたの事だから、私なんて愛すべきイジリキャラとか思ってたんでしょ?
ツンデレだか何だか知らないけど、私を揶揄ってそんなに面白いか?」
かがみの憎悪混じりの声が教室中に響き渡る。
「うっ…………」
その時、こなたの足もとに小さな水溜まりができた。
「……ひくっ…………ぅ…………」
2人がほぼ同時にそれを認めた。
胸の辺りで拳を握り、時々体を震わせるようにして――。
こなたは泣いていた。
小さな体をさらに小さくして。
「チビッ子…………」
みさおが申し訳なさそうに名前を呼んだ。
小学生くらいならケンカをして泣くことはあるが、18歳にもなってこういう涙を流す人間はそうはいない。
「ひ、柊のせいだぞ。チビッ子、泣いちゃったじゃんか。とりあえず謝っとけって……」
こなたに聞こえないように囁く。
「はあっ!? なんで私が謝んなきゃいけないのよ? 私は何も悪くないじゃない」
かがみは態とこなたに聞こえるように声を張り上げた。
「悪いのはこいつでしょ? それにほら、泣いてこの場を収めようと思ってるに決まってるわ。
いっつもそうなのよ。調子の良いこと言って誤魔化してさ。だいたい自業自得なの――――」
言い終わらないうちにかがみの頬に激しい痛みが走った。
そのすぐ後をじわりと熱が追いかけてくる。
鈍い音がし、こなたが驚いたように顔をあげた。
「――――――ッッ!?」
突然の衝撃に蹌踉(よろ)めいたかがみは、何とか体勢を立て直すとキッとみさおを睨みつけた。
頬がうっすらと赤くなっている。
「……なに……すんのよ…………?」
みさおの拳もまたわずかに赤く染まっていた。
「見損なったぞ、柊!」
妙に甲高い声でみさおが吼えた。
「反省してんじゃんか! わざわざ謝りに来てんだぞ!? なんで許してやんねーんだよ!?」
「………………」
「そんなに責めることかよ? そりゃ柊にだって言い分はあるかもしんねーけどよ。
謝りに来てんのに遮ってまで文句言うことないだろ? チビッ子にだって言いたい事があ――」
「こなたにどんな言い分があるっていうのよ? 日下部、私の話聞いてただろ?
聞いてて私に悪いところがあったか? こなたの方が正しいと思うところがあったか?」
「そ、それは…………」
勢いでかがみを殴りつけてしまったものの、その後の展開が続かずみさおは口篭もってしまう。
「あんたがヘンに肩持ったら、またこいつが調子に乗るだろ。ハッキリ言ってやったほうがいいのよ。
自分がどれだけ他人に不愉快な想いさせてるか、迷惑かけてるかをね!」
「何もそこまで言わなくてもいいじゃんかよ。友だちだったらそれくら――」
「もういい! もういいよっ!」
みさおの弁を遮るようにこなたが叫んだ。
「私が悪かったんだから! だからケンカしないでよ……お願いだよ……。
みさきち……もういいから……私が悪いから――だからもうやめて」
目に涙をいっぱいに溜めて間に割り込む。
支援
31 :
麾く煉獄16:2009/08/23(日) 22:16:38 ID:om3iKMKp
(私がかがみを怒らせたんだ。後先考えないで口にするから…………!!)
いままで我慢を強いてきた自分にも厭気がさす。
彼女の性格を知っているこなたには分かっているのだ。
この一連の発言が突発的なものではなく、長いこと抑え込んでいたものだということ。
「ほんとにゴメン。私の所為だね、かがみ…………でももっと早く言って欲しかったよ。なら私も改めたのに」
他意はなかった。
これはこなたの心からの謝罪。
いつも受け流してくれるかがみがここまで怒りを露にしているのだ。
度を越えてかがみを揶揄いすぎた自分にこなたは気付く。
「あんたには無理よ。何度も指摘したのに何も直らなかったじゃない。っていうか、”もっと早く”って何?
私の所為だって言いたいの? ふん。あんたお得意の開き直りよね、それって」
しかしかがみは攻撃の手を緩めない。
むしろ罪悪を感じているこなたの弱みにつけこんで、さらに衝こうとさえしている。
「開き直りなんかじゃないよ! ……ほんとに悪かったって思ってる。ほんとだよ。
バカにするつもりなんてなかった。甘えてたのは……そう……だと思う。甘えてた、うん……」
かがみの更なる攻勢に抗う事もなく、こなたは素直に自身の非を認めた。
「……………………」
こなたが意外なほど低頭の姿勢で答えたため、かがみは毒気を抜かれて立ち尽くした。
しかし怒りが収まったわけでもなければ、許そうという気になったわけでもない。
こなたから受けた屈辱はたった一度の謝罪で拭い去れるほど易しいものではなかった。
だから彼女は無言のままにこなたを睨み続けた。
自分だけではない、愛しいつかさの分まで。
(柊さあ、もう許してやれよ。こいつのこんな顔見てて平気なのかよ?)
みさおがちらりとかがみを見やる。
彼女はその視線に気付きながら敢えて無視した。
「……だから……ごめん…………ほんとにごめん…………ッッ!!」
無言の圧力に耐えきれず、こなたは何度も言った謝罪の言葉を残して走り去ってしまった。
後に残るのは重圧。
かがみもみさおも開け放たれたドアをじっと見ていた。
「いいのかよ?」
充分に間をおいてからみさおが言う。
「なにがよ?」
分かっていて訊き返す。
「チビッ子のことだよ」
突慳貪(つっけんどん)なみさおの態度に、
「だからなんで日下部がいちいち口挟むのよ?」
かがみは些か苛立って言った。
言外に”あんたには関係ない”という意味を含ませる。
「だってケンカはよくないじゃんか。チビッ子だって自分が悪いと思ってるから謝ってるんだろ?
見ててけっこうヘコんでた感じだったぜ? いつまでも意地張ってないでさ――」
「ただのケンカじゃないわよっ!!」
何も知らない癖に利いた風な口を叩くみさおに、かがみはついに怒りの矛先を彼女にまで向けた。
凄まじい剣幕ではあったが、みさおは退かなかった。
「誰がどう見たってケンカだろ!? 柊は当事者だから冷静になってないんだよっ!」
「私は冷静よ! それに普通のケンカと一緒にされたくないわよ! 私がどんな気持ちか日下部に分かるのか!?」
「…………………」
「前からムカついてたのよ! 人を食ったような態度で顧みない! 最低よっ!」
「だったらなんで休み時間ごとに隣に行ったりしたんだよ? チビッ子に会いに行ってたんじゃないのかよ?」
「あれは……あれは…………つかさ! つかさに会うためよ! 決まってるでしょっ!!」
その答えがウソだとみさおはすぐに見抜いた。
もちろん、”つかさに会うため”も行動の理由には含まれているだろう。
しかし肝心の答えとは違う。
(素直になれって。あの3人といるのが楽しいって思ってんだろ?)
憐れむような目でかがみを見る。
それが気に入らなかったのか、
「何も知らないくせにッ!!」
そう吐き捨ててかがみは教室を飛び出した。
「あっ、おい! 待てって…………!!」
慌てて踏み出そうとしたみさおは、かがみと入れ替わりに教室にやって来た人物に動きを止めた。
32 :
麾く煉獄17:2009/08/23(日) 22:17:55 ID:om3iKMKp
「あやの…………?」
「みさちゃん…………」
・
・
・
・
・
ひかるに頼まれた用事を片づけたあやのは、最後に施錠を託されて教室の鍵を手に戻って来た。
しかしドアの前でかがみたちの声が聞こえ、その内容が芳しくなかったので聞き耳を立てていたというのだ。
「うん……だいたい分かったわ」
自分が盗み聞きした話と併せてみさおからも状況を説明され、あやのはようやく全体が見えてきた。
「やっぱりケンカしてたのね」
「あ、ああ……まぁ、そうだな」
確かにキッカケはケンカなのだが、それでは済まないくらいに拗(こじ)れてしまっている。
どうしたらいい、とみさおが問う。
彼女は顎に手を当ててしばらく黙っていたが、
「柊ちゃんの言う事もよく分かるの。泉ちゃんのことはよく知らないけど、柊ちゃんが言うような感じなのかな。
だったら怒って当然だと思うし、許してやれって言うのも無理な話だと思う」
憚るように答える。
「でもよ、だからってわざわざ謝りに来たチビッ子にあそこまで言わなくてもいいと思うけどな」
かがみを尊重しつつも、彼女はやはりこなたの肩を持つ発言をする。
その気持ちもよく分かるあやのは、
「今は私たちがどうこうできるとは思えないわ。柊ちゃんと泉ちゃんの問題だから。
でも柊ちゃんだって理不尽な怒り方はしてないし、それに――」
若干の間をおいて、
「いつまでも根に持つような性格じゃないわ」
そう言い、にこりと笑う。
つまりは様子を見ろ、という意味である。
言い争いの当事者は客観的にものを見ることはできないし、冷静にもなれない。
嵐が過ぎ去るのを待ち、落ち着いてから間を取り持てばいい、とあやのは言った。
「やっぱそうするしかねーか」
みさおが腕を組んで唸った。
最終的に辿り着くところは同じだが、彼女はあやのの言う”待つ”という行為が苦手だ。
拱手傍観しているようで落ち着かない。
待っている間は無関係を装っているような気がしてならない。
「焦っちゃ駄目よ。私だって早く仲直りしてほしいと思ってるの。だからもう少しだけ我慢、ね?」
さすがはあやの。納得していない様子のみさおの扱いにも慣れている。
強請(ねだ)るような視線にみさおもついに根負けし、
「分かったよ。もうちっとだけ待ってみっか」
一応は肯(がえん)じることにした。
ここで話は終わりそうなものなのに、あやのはやけに神妙な顔つきで、
「ねえ、みさちゃん」
と改めて名前を呼ぶ。
「ん?」
「みさちゃんはどう思うの?」
「何がだ?」
もちろん分かっている。みさおは敢えて問い返した。
「泉ちゃんが悪いと思う? それともいつまでも許せない柊ちゃんが悪いと思う?」
この質問は鋭い。
単純に二極を明らかにするだけでなく、みさおに様々な思考を巡らさせるとともに疑惑の種をも蒔く。
彼女はしばらく考えた後、
「なんでそんな事訊くんだ?」
こちらもまた鋭い切り返しを見せた。
「ケンカ両成敗って言うけど、やっぱりどっちかがキッカケを作るものだと思うのね。
それでキッカケを作られた方はムキになってやり返す……その繰り返しを見兼ねてできた言葉だと思うんだけど」
しかしこの答えを想定していたあやのは、表情だけは困ったように呟く。
「長引けば本人も周りも、何が原因でケンカしてるのか忘れちゃうんだと思うわ。それこそケンカ両成敗かもしれない。
でも元を糺せば原因は必ずある。それが泉ちゃんなのか柊ちゃんなのかってだけで……」
「あ〜言いたいことはなんとなく分かった」
みさおが遮る。
33 :
麾く煉獄18:2009/08/23(日) 22:21:55 ID:om3iKMKp
「最初の原因……っつったらやっぱチビッ子なんじゃないか? 柊を怒らせたのは事実なんだしな。
それに本人もそれが悪いって分かって謝ったんだ。やっぱそうなると思うけど」
「みさちゃんもそう思う?」
後から同調するあやのは卑怯かも知れない。
先にみさおに意見を言わせ、自分の意に沿うものであれば肯う。
彼女にしては遠まわしなやり方だ。
「私もね、立ち聞きしながら考えてたの。どっちが悪いんだろうって」
「うん」
「すぐに教室に入らなかったのは、柊ちゃんが何を言うか聞くためだったの。
私が割り込んだらそこで流れが断たれちゃう感じがしたから。すぐに止めた方がよかったかな……」
「いや、あやのの気持ちも分かるぜ」
「ありがとう。それでね、柊ちゃん、怒るには怒ってたけどすごく冷静だった気がするのね。
なんていうか……自分が怒ってる理由をひとつずつ確かめてるような感じだった」
「まあ……まあ、そう言われりゃそうだったかもな」
でも、とみさおは付け足す。
「そんなに冷静だったんなら、なんでチビッ子が素直に謝ってるのに許せなかったんだろうな?
あいつ、ひねくれてる感じだけどああいう時はちゃんと”ごめん”って言える奴だったんだな」
今になってみさおの中のこなたは評が上がった。
あれで言うべき事をきちんと言えないのであれば、ただの厭味な女でしかない。
「やっぱりそう簡単には許せないと思うわ。昨日今日に始まったことじゃなさそうだし。
でも泉ちゃんが仲直りしたいって気持ちを持ち続けていれば、柊ちゃんもきっと受け容れると思う。
柊ちゃん、あれですごく優しいから。すぐに折り合いをつけると思うの」
その様子があやのには手にとるように分かる。
彼女の知っている柊かがみは勇ましくて努力家で、ちょっと怒りっぽいところがあるが情に脆い性格だ。
いつまでも怒りを引きずるような性質ではない。
「あやのってさ、柊のことよく見てんだな」
何気なくみさおが放ったその一言に、あやのは頬を朱に染めて俯いた。
「そ、そんなことないよ……! ただ、そう思っただけで……」
「ふーん」
あやのの急な態度の変化に、みさおは興味なさそうに相槌をひとつ打つだけだった。
「あ〜でも、私も柊に謝んねーとな……」
思い出したようにみさおが頭を抱えた。
「どうして?」
「いやさ、あんまり柊がしつこいからってつい殴っちまったんだよ……チビッ子がかわいそうでさ……」
「な、殴ったって……その……グーで……?」
「そう、グーで……」
驚いたあやのは息をひとつ吐くと、呆れたように、
「みさちゃん、それはいくらなんでもやりすぎよ。柊ぎゃん、怒ってたでしょ?」
行動的すぎるみさおを窘めた。
「すっげー怒ってた……」
「そんな音が聞こえた気がしたけど、あれはみさちゃんだったのね」
少し恨みがましい目でみさおを見る。
仲を取り持つべき彼女がかえって火に油を注いだようなものだ。
「泉ちゃんもそうしたように、みさちゃんもちゃんと謝らないとね?」
「だよなぁ…………」
意気消沈するみさおにあやのは、
「大丈夫よ。その時は私もついていてあげるから」
こういうフォローも忘れない。
「なあ、あやの」
「なに?」
「うちらって友だちだよな?」
「えっ? なに言ってるのよ、いまさら」
思いもよらない言葉にあやのは困惑した。
34 :
麾く煉獄19:2009/08/23(日) 22:25:02 ID:om3iKMKp
「友達でしょ、私たち」
「柊と、だぜ?」
「…………?」
こう言うみさおがあやのには分からない。
なぜわざわざ”柊と”と付け足すのか。
「3人ずっと同じクラスだったじゃん? だから友だちだって思ってたけど、柊はそうじゃないのかなって思ってさ」
「どうしてそう思うの?」
「いや、私のほうかもな。友だちじゃないって思ってるのは」
(みさちゃん…………?)
あやのは相槌を打つでもなく、問い返すでもなく、ただ様子の違うみさおの横顔を見つめていた。
その視線を感じながら、
「だってよ、理由はどうあれ殴っちまったんだぜ? ちゃんと言葉で言えばよかったのにさ」
心底から悔いたように吐きだす。
「私が叩かれたこともあったよな。憶えてるか? 私が冗談で柊の脇腹つまんだ時」
「あ、うん、憶えてるよ」
「思いっきり叩かれたよな。でさ、あの後でチビッ子が同じことしたのに柊の奴、何もしなかったじゃん?
付き合いの長さの違いかなって。なんとなく寂しい感じがしたんだよな、あの時は」
(あの時は?)
みさおがそこを強調したのをあやのは聞き逃さなかった。
「でもさ、柊と仲がいいからこそ叩かれたんじゃないかってな。逆に考えてみたんだよ。
叩きやすい……って言やヘンだけどさ、なんつーかさ、柊にとってざっくばらんに付き合えるのは私たちかなって」
「うーん……うん、みさちゃんの言いたいこと、分かるよ」
同じ揶揄いでも反応が違うのは相手が違うからだ。
かがみがみさおの頬を張ったのは嫌っているからではない。
”そういう手段に出ても許される相手”だとかがみ自身が認めているからだ。
とりもなおさずそれは、かがみがみさおに心を許している証拠でもある。
換言すればかがみはこなたに対して一歩退いた付き合いをしているということになる。
(みさちゃん…………)
おそらくみさおが言いたいのはこういう事だろうと推察し、あやのは感服した。
「だってさ、そんなに親しくない奴を叩いたりできねーじゃん?」
あやのの推測を裏付けるようにみさおが続けた。
確かにそのとおりだ。
気心の知れた友人だからできるのであって、さして親しくない相手に対してすれば禍根を残すばかりである。
「だからさ、今だから言うけどちょっとだけ嬉しかったんだよな。柊とは友だちなんだって思えてさ。
あ、これは内緒だかんな! 柊には絶対言わないでくれよ?」
「分かってる」
あやのは微苦笑した。
同時に可愛いとも思った。
自分と同い年なのに行動や発想を見ていると、妹を持っている気分にさせられる。
「でも、みさちゃん?」
おそらくこの快活な少女はここに気付いていないだろう。
そう思い、あやのはゆっくりと本質を述べた。
「それでいくと、みさちゃんと柊ちゃんはやっぱり仲の良い友だちよ」
「そ、そうか……?」
「自分で言ったじゃない。親しくない奴は叩けないって。叩くのと殴るの、どっちの方が難しい?」
「え? ええっと…………あっ!!」
「柊ちゃんがみさちゃんを叩いたのが仲のいい証拠なら、同じ事がみさちゃんにも言えるでしょ?
意味なく殴ったんじゃない。柊ちゃんのことを考えて手を上げたのよね?」
「………………」
こういう諭し方をするあやのにみさおは一瞬、母親をダブらせた。
おっとりしていてあまり自己を主張するタイプに見えないが、ここぞという時にはずばりと核心を突いてくる。
自己嫌悪に陥るみさおの理論の穴を探り、暗闇に沈みかけた彼女の手をしっかりと掴んで引き上げる。
あやのの得意とするところだ。
「みさちゃんらしくないわ。私たちは友だちよ?」
その天使のような微笑みに、みさおは何度救われたか分からない。
今日はここまで。
支援下さった方、ありがとうございます。
そういえば書きながら……はこれが初めてですね。
いつもは完成してから毎夜投下してましたから。
ではまた。
長げぇな〜おいw
もうSSちゃうやん!
と言うのはさておき、とりあえず書きました感があって内容ともかく読みにくい。
未完成みたいなんで、全部書き終わってから乗せれば?
プロットは出来てますとかは無しよw
JEDI氏のはいつも長い
っていうかSS=サイドストーリーだから長短は問題ないのでは?
と言うより内容云々に関して言えば氏は何時もこんな感じだし完成してるしてないはあんまり関係無いと思う。
まぁなんにせよもう少しスレの現状見てから書き込みしたほうがいいよ。
改めてここまで読んだが読みにくいか?
文法的におかしいところもないし、特別読みにくいとは思えないが
SSってのは短いほうが好まれるのかね
SS=ショートストーリーで短いものを指すと勝手に思い込んでたぜ!
サイドストーリーだったんか、勉強になった
内容の割りには冗長とは思うがな
42 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/25(火) 07:59:12 ID:fMvYRtI8
「うひょひょひょ、W触区面白いな〜ヽ(≡∀≡.)ノ
んっメールが来ている・・・(≡ω≡.;)」
『後、五分後で、ノストラダムスの予言のように人類が滅亡します。
しかし、今から出されるクイズをとくか、あなたが自殺するかを
すれば滅亡の危機は救われるでしょう。では問題です。
マイユアに八代菜々香というヒロインがいます。別名ナージャ版と
言われています。ではキュアブラック版菜々香は誰のことをさす
でしょう?』
「う〜ん、あきらかに声優つながりだな(≡ω≡.;)
キュアブラックの本名さんはあんまアニメに出ないし・・・、ゲッ!あと
三十秒しかないじゃんΣ(≡皿≡.)
しょうがない人類のためだ・・・死のう・・・ヽ(≡∀≡.)ノ」
ブス
みwiki「うふふふふ・・・どうやら泉さんは死んだようですね・・・
私のクイズが解けないなんて・・・やはり口先だけのおたくだった
ようです・・・さて、皆さんにお願いです。このクイズの答えを
出してください・・・じゃないと泉さんみたいになりますよ・・・
うふふふふ・・・・」
てかSSがショートストーリーの略だったとしても、何の問題もないけどな。
別にSS以外の読み物だって投下していいわけだし。
かがみってこんな激情家だっけ?
何にしろ、すごい迫力で文章なのにビビる
>>35 乙
空気読まずにここまで読んだ感想。
俺的にはかがみが正論言ってるとは到底思えんな。
そこまで溜め込む程我慢してる様な関係が友達関係だとは到底思えん。
こなたをそんな風に思ってるなら溜め込む前に注意し、反省する気が無いならその後縁を切るのが普通。
増してやそんな風に思ってる奴を友人(みさお)に紹介するなんて神経を疑う。
そんな人間と付き合いたくもないわ。
しかし、JEDI氏の作品に限らず、こなた自殺スレに投下されるSSはやたらとかがみが人間的に許せんタイプの話が多い。俺的に。
>>45 そんな風にまだ思ってない時に紹介したから、そこはおかしくないんじゃない?
、人間性が嫌なのは同意だけど
それにしても、らき☆すたって、本編とSSが、(これ系は特にそうだけど)
あまりにギャップがありすぎて、そこに惹かれる所が俺的にあるのかも
しかし、アニメ絵が脳内で再生できん
みなさん、こんばんは。
本日分の投下です。
48 :
麾く煉獄20:2009/08/26(水) 21:31:29 ID:4Z2YjTqh
「やっぱりまだ怒ってる……?」
「え、う、うん……。あのね――」
翌朝、こなたがつかさに声をかける。
訊くまでもなく分かっている。
かがみは今日も先に家を出、待ち合わせの場所にはつかさが遅れてやって来ている。
その事からも彼女はまだ、こなたとは顔を合わせたくないと思っているのは明白だ。
「あの時、お姉ちゃんの元気がなかったのって、実力テストの成績があまり良くなかったからみたい」
「テスト?」
こなたが首を傾げる。
成績が下がっているという話はかがみ自身が言っていた事だが、具体的にテストという言葉は出ていない。
彼女には元気がなくなる理由に”成績が悪い”が挙がるのが理解できない。
かがみと違って勉学に勤しもうという意志もないし、将来なりたいものも特にない。
従って目標意識がなく、それ故に学業を疎かにしてきているのだ。
「うん。志望する大学の合格ラインは越えてるんだけど。お姉ちゃん、自分を追いこんじゃうタイプだから。
前に比べて成績が落ちてるのがすごくショックだったみたいなの」
「…………そう、なんだ……でも一応合格点なんでしょ?」
「それはそうなんだけどね。ただ時期とか科目とかも問題だったみたいで、先生にもいろいろ言われたみたい。
ハッキリとは聞いてないけど、この調子じゃ危ないかもしれないって――」
と説明するつかさも、やはり姉の衝撃の半分くらいしか共感できていない。
だがそこに来て、こなたは漸く悟る。
(最悪じゃん。よりによってそんな時に私が”働いたことがない”なんて言ったら、そりゃ怒るに決まってるよ。
かがみの言うとおり、私にバイトする時間があるのは宿題とか写させてもらってるからだし…………)
思い至り、こなたは恥じ入る想いだった。
「あの、どうかされたのですか?」
2人、落ち込んでいる様子を見かねてみゆきが割って入ってきた。
こなたはどう誤魔化そうかと思案していたが、
「お姉ちゃんとこなちゃんがケンカしちゃって――」
つかさがあっさりと吐露した。
なんでわざわざ……という視線を向けたこなただったが、その相手は聡明な高良みゆきだ。
もしかしたら適切な助言をくれるかもしれない。
「そう……そうですか……」
つかさが状況を説明している。
彼女の褒めるべき点はここでこなたを貶さないところだ。
それをしていれば姉の体面は保てるのだが、敢えて友人を陥れる必要はない。
「難しいですね」
小さく唸るみゆきだが、これも妥当な反応である。
「でも泉さんは放課後に謝罪されたんですよね?」
「え、うん。一応、ね……でも許してもらえなかったよ」
放課後の一件についてもつかさは知っている。
昨夜かがみから聞いた話だ。
「………………」
思案するフリをしながら、みゆきはかがみの言い分も尤もだと思った。
4人でいる場面でもこなたは度々彼女を怒らせている。
それが溜まりに溜まって……という爆発の理由が分からないみゆきではない。
「他人に謝るのは難しいことですが、他人の罪を赦すのはもっと難しいことです」
みゆきはさりげなくこなたを罪人と評した。
「うん……分かってるよ」
今回ばかりはこなたも飄々と構えることはできない。
トレードマークのアホ毛も今だけは萎れている。
「しばらく様子を見た方がいいかもしれませんね。かがみさんだっていつまでもこんな雰囲気でいたくはないでしょうし」
「私もそう思う。だってこのままじゃ嫌だもん」
「つかささん、それではかがみさんにお料理を作って差し上げてはいかがでしょう?」
「料理?」
「ええ。かがみさんの好きな甘い物などです。美味しい物を食べれば心も和らぐかと」
彼女の提案は見事であるが、それを聞いているこなたには厭な思い出しかない。
その策は一昨日にやっている。
引っ張ったのはつかさだが、美味しい物を食べて――という案を台無しにしたのは他ならないこなただ。
49 :
麾く煉獄21:2009/08/26(水) 21:32:53 ID:4Z2YjTqh
「………………」
傍であれがいい、これがいいと話し合う2人を見て、こなたは小さく息を吐いた。
全て自分が引き起こした問題だ。
責任は悉く自分にある。
そう分かっているこなただったが、かといって妙案を思いつくこともなく、時間は無為に過ぎていった。
その日の昼休み。
「あ、あのさ…………」
視線を落ち着きなく彷徨わせながらみさお。
「昨日は殴ったりしてごめん。きょ、今日すぐに言おうと思ったんだけど、なかなかタイミングがさ……」
言葉通り朝一番に謝ろうとしたみさおだったが、かがみが殺気立っていたためにずるずると引き延ばしてしまっていた。
歯切れの悪いその言葉を補うように、
「みさちゃんも悪気があってやったんじゃないと思うわ。柊ちゃんと泉ちゃんのためについ叩いたんだと思う。
ほら、みさちゃんってあまり頭良くないから……それで考えるより先に手が出ちゃったのよ」
あやのが容喙する。
「あやの……フォロー嬉しいけど……なんか悲しくなってきたぜ……」
馬鹿とハッキリ言われるよりマシだが、みさおは複雑な想いであやのを見やった。
かがみは冷たい視線を2人に向けたが、
「――もういいわよ。私もムキになってたところあるし」
そっぽを向いて言を紡いだ。
「じゃ、じゃあ……!」
みさおがパッと顔をあげた。
「あんたに叩かれても仕方なかったかもね」
ツンデレと揶揄されそうなほどに顔を赤らめ、口を尖らせて自分の非を認めた。
「でも――」
ふっとその赤みが別の種類のものに変わる。
「めちゃくちゃ痛かったわよっ!」
言うが早いか両手を伸ばし、みさおの頬を抓る。
「あひっ!?」
あまりの速さにみさおが無防備のまま情けない声をあげた。
「いへっ! いはいっへっ!!」
「こっちはもっと痛かったのよ」
半分怒り、半分笑い、かがみが指に力を入れた。
そのまま左右に引っ張る。
その様子を冷や汗を流しながらも、微苦笑して眺めるあやの。
(痛み分けってところね……)
かがみの仕返しはその後、数秒続いた。
・
・
・
・
・
「うぅ……いへーよ…………」
両頬を真っ赤にしたみさおは口を大きく開けられないのか、ミートボールを半分に千切って食べた。
目尻に濡れた跡を認めたかがみは、
「当たり前よ」
憤然とした様子でお茶を流し込む。
「私は片方だけなのによぅ……」
恨みがましくかがみに視線を注いだが、彼女は素知らぬ顔だ。
そのかがみの頬もまたうっすらと赤い。
「あまり蒸し返したくないけど柊ちゃん、まだ泉ちゃんのことは許せない?」
みさおのお陰で話しやすい雰囲気ができたと悟ったあやのは、すかさずあの話題を持ち出した。
食べる手を止め、かがみはしばらく考えた後、
「……やっぱまだ無理だわ。いろいろあるから」
ちょっとだけ不機嫌そうに言った。
2人はちらりと視線を交わす。
かがみの怒りはまだ治まっていないが、昨日ほどの憎悪は感じられない。
50 :
麾く煉獄22:2009/08/26(水) 21:33:43 ID:4Z2YjTqh
(根は深いみたいだけど、そこまで嫌ってるわけじゃないのね)
あやのは安堵した。
これなら関係の修復にも時間はかかるまい。
「うう…………」
涙目のみさおは頬をさすりながら食事をとっている。
「柊のせいでタイム落ちたらどうしてくれんだよ」
「その時はアイスでも奢ってあげるわよ」
「とか言って、ちゃっかり自分も食べたりして」
「ほう……まだ痛みが足りなかったか」
「じょ、冗談だってヴぁっ! んなに怒んなって……」
まだ激痛の記憶が鮮明に残っているみさおは慌てて手を振った。
「では私は委員会での用事がありますので……」
その日の終わり。
ななこが解散を告げた直後、仕事があるからとみゆきはさっさと教室を出て行った。
残されたこなたとつかさは互いに顔を見合わせる。
しかしこの後の行動は2人とも同じように描いていたか、
「私、お姉ちゃんと帰るよ」
つかさがそう口にし、こなたは無言で頷いた。
雰囲気は良くないから、仲直りを急くより間を置いた方がよいと考えてのことだ。
「ん〜……じゃあ私は本屋にでも寄って行こうかな」
こなたは強がりを言う。
そんな予定はないのだがつかさの手前、ついそう言ってしまうのだ。
「私も頑張るから」
何を頑張るのか、つかさがあどけない笑顔で言った。
(悪いのは私だよ……つかさが何かする必要はないって)
申し訳ないと思いながら、しかしこなたはそれを言葉にできない。
代わって、
「うん、ありがと」
軽くお礼を述べる始末だ。
つかさはそれにも笑顔で応えC組へと急いだ。
「はぁ〜〜」
長大息がひとつ。
お調子者の招いた諍いがここまで延びるとはこなたも予想していなかった。
孤独ではないのだ。
みゆきもいるし、つかさもいる。
家に帰ればそうじろうもゆたかも笑顔で迎えてくれる。
だから極端に言えば、かがみ1人と仲違いしようがそれが即、こなたを追い込むことにはならないのだ。
「でも…………」
このままでいいハズがない。
悪いのは自分だから。
やはり誠意を込めた謝罪を繰り返していくしかないのだ。
「お、いたいた。おーい、チビッ子〜」
舌足らずの声が自分に対してのものだと、こなたはすぐに気付いた。
「みさきち……」
声の主はよく知っている人物。
だが今はあまり会いたくない。
「かがみと一緒じゃないの?」
自嘲の意味も込めてそう問う。
「妹と先に帰ったぜ。あやのは……まあ年頃の女子やってる」
みさおは珍しく婉曲な言い回しで”デート”を表現した。
「そう、なんだ…………」
こなたの口からはそれくらいしか出てこない。
この時点でみさおがここにいる意味はなくなっている。
51 :
麾く煉獄23:2009/08/26(水) 21:35:37 ID:4Z2YjTqh
にもかかわらず彼女は、
「たまにはさ、一緒に帰ろうぜ」
まるでずっと前から知り合いだったように声をかけてくる。
傍から見れば親密さを漂わせる彼女の所作が、今のこなたには痛い。
何か断る方法はないかと探ったこなたは、
「え、でも部活は?」
ごく自然な手を思いつき訊ねる。
「ん〜……ま、一日ぐらいいいんじゃね?」
つまりはサボるということである。
ほとんど開き直りに近いみさおの答えに、こなたはふっと小さく笑む。
「な、いいだろ?」
「う、うん…………」
快活なみさおに押されてこなたはほとんど無意識的に頷いた。
・
・
・
・
・
陵桜から少し離れたところにあるファミレスである。
前につかさに連れられた店とは違うが、こういうところはどこも似たような内装だ。
みさおとこなた。
2人は円テーブルに向かい合い、片方はメロンソーダで、片方はアイスココアで喉を潤す。
「そういやチビッ子と2人ってのは初めてだよな」
ストローをくるくる回しながらみさおが言う。
その度にカランカランと氷が音を立てるのを楽しんでいるらしい。
「そうだね」
素っ気なく、しかし無愛想にならないよう気をつけながらこなたが相槌を打った。
「…………」
「………………」
会話が弾まない。
共通点がないのだからこれは仕方がない。
インドア派とアウトドア派という両極端な組み合わせでは、のぼる話題はスポーツかゲームといった具合になる。
これでは弾む会話などできない。
互いにそこを心得ているからこそ、不用意に自分の得意とする話を持ち出そうとしない。
結果、奇妙な沈黙を守り続けるという、ファミレスには不釣り合いな雰囲気を作り出してしまっているのである。
「あ、あのさ……」
それを先に打ち破ったのはこなただった。
「なんで私を誘ってくれたの?」
”誘ったの”ではなく”誘ってくれた”という言葉を選んだところに、今の心境が少なからず表れている。
みさおはさして考える風でもなく、
「別に理由なんてねーよ」
さらりと受け流す。
竹を割ったような性格の彼女からは、それが本音なのか秘密事を孕んでいるのかを探るのは容易い。
だがこなたにはどちらか分からなかった。
本当に理由なくなのか、何か含みがあってのことなのか。
じっと顔を見てみるが、みさおはそれに気付かないのかソーダを喉奥に流し込むだけである。
「…………」
「…………」
「………………」
「………………」
「…………ごめん」
「なんで謝んだよ?」
「だって、みさきちに酷いこと言ったから」
ストローを弄ぶ手を止め、みさおが徐(おもむろ)に顔をあげた。
「バカキャラだとか……初対面で言うことじゃなかったよ。ほんとにごめん……」
今にも泣き出しそうな顔のこなた。
52 :
麾く煉獄24:2009/08/26(水) 21:37:14 ID:4Z2YjTqh
「かがみを通してだったから、つい同じ感覚で言っちゃったんだ。あ、でもこれ、言い訳だよね」
「気にすんなって。実際そうだしさ」
「そんなことないよ」
「…………………」
「ごめんなさい」
こなたは謝罪の言葉をハッキリと、みさおに聞こえるように通る声で言った。
余計なことはベラベラと喋るくせに、肝心なことを言えないのは許せない。
自分自身が納得できないし、人として許されない姿勢だ、と彼女は思っている。
こなたにはこなたの矜持があった。
自分に足りないのは人格……突き詰めて言えば良識だ。
人をおちょくり、揶揄い、嬲り、欠点を論ってはまたその反応を愉しむ。
そのくせ自分がやらなければならない事をその人に任せて肩代わりさせ、恃みにする。
それではいけない、とこなたも分かっている。
分かってはいるがついそうしてしまうのは単なる甘えによるものだ。
つい楽をしてしまう、遊蕩怠惰な性格。
しかしそこに浸かりきっているわけではない。
みゆきにもかがみにもなれっこないが、それでも彼女たちくらいになりたいという気持ちがこの少女にはある。
「なんかチビッ子に謝られるとヘンな感じだよな」
落ち着かないのかみさおは視線を彷徨わせている。
(相当こたえてるな)
すっかり小さくなっているこなたがなぜか可愛く見え、みさおは微苦笑した。
同時に不憫にも思う。
かがみを取り合うライバルのハズが、今ばかりは憐れむべき弱者に映ってしまうのは彼女の度量の大きさゆえかもしれない。
「大丈夫なの? その……昨日、かがみを殴ったの……」
「ああ、あれか……」
みさおが気恥ずかしそうに鼻を掻いた。
「一応謝ったぜ。理由はどうあれ手をあげちゃまずいよな」
「ごめん……私のせいだよね……」
「だから気にすんなっての。あれは私が悪いんだからさ」
苦笑交じりにそう答え、みさおは頬を擦った。
赤みは引いたが抓られたところにはまだ痛みが残っているらしい。
「でもなんで? かがみの言う事、何も間違ってなかったよ? 100%私が悪いのに――」
なぜ自分を庇ったりしたのか、とこなたは問うた。
こういう質問が来るとは思ってなかったのか、みさおは暫く口を噤んでいたが、
「んー、なんていうかさ、見てられなかったんだよな。私が勝手に割って入るべきじゃなかったかもしれないけど。
柊の言い分が正しいにしても、チビッ子の言葉遮ってまで責めるのって違う気がしてさ」
真剣な顔つきで答える。
「言っとくけど別にチビッ子の肩持ったわけじゃないぜ? 柊怒らせたのは間違いないみたいだしな。
だからって放っておいていい話じゃない。……ま、それだけだ。あくまで公平に見てるんだぜ?
私にとっちゃ柊もチビッ子も大事な友だちだからさ」
「…………ッ!?」
その言葉にこなたははっとなって顔を上げた。
「う、うん…………あ…ありがと……」
紅潮した頬を見られまいと、こなたはすぐに顔を伏せた。
”ごめん”か”ありがとう”かで迷った彼女は結局、後者を選択した。
「柊って前はあんな感じじゃなかったんだけどな」
こなたよりも、”前の柊かがみ”を知っていることをアピールしつつ、みさおが呟く。
特にこれといって特別な効果を狙ったわけではないこの言葉が、こなたの心を僅か揺さぶった。
「あいつさ、怒りっぽいイメージあるけど理不尽な怒り方はしねーんだよな。理に適ってるっていうかさ。
だから私なんかは耳が痛いんだけどな。基本的にすっごく優しい奴だと思うぜ? あやのとはちと違うけど」
「うん…………」
それはこなたも分かっている事だ。
その優しさのために甘え切った結果、招いた災禍を存分に身に浴びている。
「受験でピリピリしてんだろうな。よく3人で勉強会やってるけど、取り組み方が違うもんな」
「そういえば法学部って言ってた」
「ああ、チビッ子も知ってたのか」
みさおがテーブル横のスイッチを押してウェイターを呼ぶ。
「メロンソーダと…………アイスココアもお願いします」
自分の飲み物だけ注文しかけたみさおは、もうひとつ空になったグラスに気付いて追加した。
53 :
麾く煉獄25:2009/08/26(水) 21:40:02 ID:4Z2YjTqh
飲み終えたグラスを手にウェイターが足早に厨房に消える。
「なんで法学部か知ってるか?」
「えっ…………?」
みさおの問いに、こなたは即答できなかった。
問われた内容もそうだが、この訊き方ではみさおはその理由を知っているということになる。
そこに惑い、彼女は数秒の間を置いてかぶりを振る。
「………………」
みさおは難しい顔をして目をそらした。
ここはこなたよりも優位に立っているから、かがみ争奪戦に有利に傾いているのを喜んでもよい場面である。
が、基本が竹を割ったような性格の彼女はいちいち厭らしい勝敗にはこだわらない。
やるならもっと正々堂々。
弱っているこなたにつけ込んでまで勝ちを得るような争いではない。
「知りたいか?」
みさおは選択を迫る。
こなたにはイエス・ノーを平等に答える権利があるが、少しでもかがみを知りたい近づきたいと思う彼女は、
「うん」
しばし逡巡した末に頷いた。
「柊には黙ってろよ?」
と前置きし、みさおは身を乗り出した。
「中学ん時にさ、妹がちょっとした事件に遭ったんだ」
「つかさが?」
「ああ、その……電車に乗ってた時に……痴漢に遭ってさ。傍にいた柊が犯人捕まえて警察に行ったんだよ」
信じられない話である。
2人とは3年近い付き合いをしてきたが、この話は端的にすら触れた事はない。
「強いんだね、かがみ」
「あの時から強かったな。でさ、いざ警察に行ったら、犯人は何のお咎めもなしに終わったって話なんだ」
「なんで?」
「よく分からないけど、証拠不十分っていうのか? 柊は現行犯逮捕は警察でなくてもできるとか言ってたけど。
痴漢したって証拠がないから逮捕はできない、っていうのが警察の説明らしいんだよ」
「なんでよ? 実際つかさに痴漢したところをかがみが捕まえたんでしょ?」
「その証拠がないんだよ。もう電車を降りた後だから見た人に話を聞くこともできねえだろ?
2人が被害に遭ったって言い張るだけじゃダメらしいんだよ」
「そんなのおかしいよ」
こなたは理不尽な話に憤った。
「危険を冒して犯人を捕まえたのにどうして……」
「私もそれ聞いて腹が立ったよ。しかもその犯人がさ、冤罪だって主張したんだ。
挙句に自分を痴漢に仕立て上げて、柊たちが示談金を奪るつもりだなんて言い出したらしい」
「ひどい…………」
先ほど抱いた怒りにつかさたちへの憐れみが入り混じり、彼女は複雑な想いと思考に苦しんだ。
痴漢、特に電車内でのこの事件の取り扱いの難しさは報道のとおりである。
立証できず泣き寝入りする女性もいる。
一方で無辜の男性を痴漢に仕立て上げ、示談金をぶんどろうとする悪辣な女性もいる。
「そのショックで妹さ、しばらく塞ぎ込んでたんだよ。おまけに犯人がそんな具合だろ? 柊もむちゃくちゃ怒ったんだ」
「私だって怒るよ。腹が立つし悔しい」
「直截には言ってないけど、それが弁護士を目指すキッカケだったみたいだぜ。世の中にはそういう女の人、いっぱいいるもんな。
女の人ってのはまだまだ弱者なんだよ。そういう人たちの役に立ちたいって言ってたぜ」
自分のことのように誇らしげに語るみさお。
極めて尊い志である。
身内の受けた屈辱から視野を広げて、つかさと同じ立場に立たされる女性を手助けしたいという信念だ。
生半可な気持ちではない。
いい加減な考えでは決してここには辿り着けなかっただろう。
ウェイターがジュースを持ってきた。
「そんなかがみを揶揄いながら、私はずっと甘えてたんだね…………」
自分を嘲るようにこなた。
かがみが憤怒するのも当然だ。
54 :
麾く煉獄26:2009/08/26(水) 21:44:02 ID:4Z2YjTqh
「まあそれでも今の柊はちょっと怒りすぎだと思うぜ?」
「そんなことないよ。かがみはずっと我慢してたんだよ。つかさの手前、抑えてたんじゃないかな」
「んー、分かんねえよな。っていうか、これはあやのが言ってたんだけどさ……あ、これも内緒だぞ?」
「うん」
「柊の奴、チビッ子とは別のことで怒ってる感じらしいんだ」
「別の……?」
「私はよく分からないんだけど、あやのはそう言ってる」
だからといってこなたが許されたわけではない。
が、自分と関係ない事柄に怒り、そのせいで自分が許されないのだとしたら堪ったものではない。
「だから、さ……今は柊に何言っても無理かもしれないな」
「………………」
「心配すんなって。あいつだってチビッ子とケンカしたままなんて嫌に決まってんだからさ。
ちょっと様子見て、機嫌よさそうな時に改めて謝っちゃえばいいんだよ。案外すんなりいくと思うぜ?」
「うん…………」
「そん時は私もついててやるからさ」
「ううん、みさきちの気持ちはありがたいけど、それは駄目だよ。私がちゃんと謝らないと……」
献身的ともとれるみさおの言葉に、こなたは自分がいかに小さな人間かを思い知らされた。
知り合ってすぐに彼女を嘲弄するような発言をし、かがみを巡っては何かと張り合っていた。
決して険悪な仲ではないのだが、最近ではつかさとあやの、どちらの料理の腕が上かというつまらない争いもしている。
(………………)
そういう小競り合いを先にしかけていたのはいつもこなただった。
みさおも自分と同じく子供っぽい性格だと思っていたが、彼女はそうではなかったようだ。
かがみを気遣い、今またこなたを気遣うこともできる度量の大きさがある。
これ以上、自分とみさおとの差を広げないためには……。
「ありがと、日下部さん……」
こうして素直に礼を述べることだ。
「んあ? どした、チビッ子? いきなり”日下部さん”なんて」
みさおは目を白黒させる。
「いやぁ、お礼言うんならちゃんと名前で呼ばないと」
言ってから恥ずかしくなったのか、柄にもなくこなたは赤くなった顔をわずかにそむけた。
かがみに失言を詫びた時も、彼女は”かがみん”という呼び方はしなかった。
せめて真摯さが伝わるようにと配慮した結果である。
「だって私、日下部さんのことバカにしたのに、今日だってこうやって連れ出してくれたじゃん」
「あ、ああ…………」
「だから、その、ちゃんとお礼は言っとかないと、って……」
今のこなたを見れば、お前こそツンデレじゃないかとかがみが指摘しただろう。
彼女は耳まで真っ赤にして俯いた。
「気にすんなって。別に深い考えがあったわけじゃないし」
みさおが八重歯を見せて笑った。
まるで悪戯好きな子供のような笑みだ。
「………………」
「………………」
「それと、みさきち。もうひとつ」
呼称はもう元に戻っている。
「…………?」
「伝票、私にちょうだい」
こなたがすっと手を出した。
「えっ?」
みさおは惚けようとしたが、こなたの視線が自分の胸ポケットに注がれているのに気づき、
観念したように伝票を取り出した。
「私が見てないところでこっそり払うつもりだったんでしょ?」
こなたはその瞬間を視界に捉えていた。
2杯目の飲み物が運ばれた際、みさおが移動させたコップで隠すように伝票をポケットにしまったのだ。
(けっこう鋭いよな……)
照れたようにみさおが苦笑する。
(チビッ子がもうちょっと明るくなってきたら、トイレに立つ振りして会計済ませるつもりだったんだけどな)
小さく息を吐き、みさおは目の前の幼躯を眺めた。
思った以上に性格はいいらしい。
今回はたまたま悪ふざけがすぎたのだろう。
55 :
麾く煉獄27:2009/08/26(水) 21:47:41 ID:4Z2YjTqh
「私が払うよ。バイトしてるし」
「気遣いすぎだぜ? 誘ったのは私なんだからさ」
「でも…………」
「いいってヴぁ。ちょっと前に宝籤当たったし」
「………………」
つい最近、似たようなやりとりをしたこなたはそれ以上は何も言えず、とうとうみさおに代金を払わせてしまった。
「ごめんね、みさきち…………じゃなくて日下部さん」
「チビッ子ぉ、ちょっちしつこいぜ? 私のことは”みさきち”でいいし、いちいち謝るなっての」
「うん…………」
みさおがこう言えば言うほど、自分の短矮さが際立つようでこなたは気が萎えてくる。
しかしこれも自らが招いたものだ。
みさおに勝とうとする姿勢がそもそも間違っていたのだ、と彼女は思い至る。
「あ、そだ」
店を出たところでみさおが携帯を取り出した。
「番号、教えてくれよ」
携帯の、という意味だとすぐに分かる。
こなたは躊躇なく自分の携帯を開いた。
普段使わないツールに、自分の番号を表示させるのに手間取る。
「ん……よしっと。じゃあうちのも教えとくぜ」
こなたの番号を登録し終え、今度はみさおがディスプレイをこなたに向ける。
『 登録NO.57 日下部 みさきち 』
ディスプレイの表示を見て、こなたはしばし茫然となる。
まさかここに来てみさおと番号を交換し合うなどとは予想もしなかった。
「なんかあったらいつでも連絡くれていいぜ」
そう言って屈託なく笑うみさおは、凛々しくて清々しい。
裏表のない厚意にこなたは僅かに瞳を濡らしたが、それを見られまいと慌てて俯いた。
(………………)
こなたが涙を零しかけたのに気づいたみさおはクスッと笑った。
実に単純で分かりやすい。
まるで子供のような所作に、
(チビッ子――言葉どおりだよな)
落ち込んでいるこなたが妙に可愛く思えてしまう。
「じゃあ私はこっちだから」
「うん、みさきち。今日はいろいろありがとね」
「ん?」
「おかげで少し楽になったよ」
「じゃあチビッ子に貸し1コだな〜」
みさおがしたり顔で笑む。
「そこは泉こなた、ちゃんと借りは返すよ」
みさおが明るく振る舞ってくれるおかげで、こなたも必要以上に気負いせずにすむ。
もちろんこれもみさおがほとんど無意識的にしている配慮だ。
「じゃな〜〜」
「うん……」
雑踏の向こうにみさおが消えるまで、こなたはじっと彼女が去った方向を眺めていた。
今日はここまでです。
冗長なのは自覚しているのですが、自覚しておきながら短く纏められないのは、
僕の物書きとしての限界なのかもしれません。
このスタイルが許されるならば今後も続けますし、もちろんそぐわないとあれば、
スレに相応しい体裁のものにします。
ではまた。
58 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/27(木) 00:41:29 ID:Q4++7bkJ
結局かがみはこなたを親友と思ってたのにその性格にだんだんイライラしてきて
でもこなたと縁切るにはこなたが友達すぎるから未練があって
んでだんだん受験とかの時期になってきて情緒不安定になってついにブチギレたんだろ?
そしたら意外とこなたが反発してこないでおとなしく萎縮してるから調子に乗ってドエス根性垂れ流ししてんだろ?
かなり醜い人間だな
>>56 乙。
続き楽しみにしてるよ。
>>36は気にしなくて良いよ。
長くて読み難いと思うなら読まなければ良いだけなんだし。
かがみぼっちスレってなくなったの?
61 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/29(土) 19:38:14 ID:rVWA5pBK
こなたん
かなり面白い。続き期待
みなさん、こんばんは。
本日分の投下、参ります。
64 :
麾く煉獄28:2009/08/29(土) 22:40:12 ID:K/0h4/dk
ここ数日と違って、こなたの顔にはいくらか元気が戻った。
生活を共にしているそうじろうやゆたかもそこに気付いたようで、
「お帰り、こなた」
「お帰りなさい、お姉ちゃん」
こちらも明るく出迎える。
「ただいま〜」
久しぶりに聞く弾んだ声。
こなたは部屋に荷物を置くとすぐに居間に向かった。
その途中、ゆたかとすれ違う。
「あ、今日はゆーちゃんが当番だっけ。私も手伝おうか?」
「ううん、いいよ。最近はちょっと腕が上がってきたかなって思ってるから。練習のつもりで」
ゆたかが来てからは夕食の用意のローテーションが少し変わった。
基本的にはこなたとそうじろうが交互に、そのうちの何回かに一度をゆたかが受け持つことになっている。
「お姉ちゃんはおじさんと待っててよ」
とにこやかに言うゆたかは今日は体調が良さそうである。
こなたはその言葉に素直に甘えることにした。
「ああそうか、今日はゆーちゃんだったな」
こなたが居間にやって来たところで、そうじろうは執筆の手を止めた。
いつもはPCに書き溜めるのだが、思いついた内容をすぐにメモすることにかけてはまだまだ筆記には及ばない。
「手伝うって言ったんだけどね」
テレビニュースを見るとはなしに見ながら、こなたは父の呟きに答える。
この時間帯のニュースはよく分からない。
政治もスポーツもバラエティも一括りにしたような番組構成は、意外と見ていて疲れるものだ。
「友だちとケンカでもしたのか?」
視線はこなたに向けず、そうじろうが原稿用紙に目を落としたまま訊く。
突然の問いに彼女は不覚にも小さく体を震わせ、
「ま、まあね……」
と曖昧に濁して答えた。
文字通り親子であるから、互いに機微に敏感である。
誤魔化したつもりだったが、その誤魔化し方のために父の疑念が図星を突いたことを自ら晒してしまう。
「仲がいいんだろ。たまにはケンカもするさ」
そうじろうはさして深刻には考えていない様子である。
こなたも18歳。
いちいち親が関わるような問題ではない。
が、といって無視もできない彼は、
「そういえば、つかさちゃんは遊びに来ないのか?」
間の悪いことにその名前を出してしまう。
「いろいろ忙しいみたいだから、しばらくは無理じゃないかな」
こなたもこう切り返すより他ない。
かがみとの仲が修復できていないのに、どうやってつかさを家に招くことができよう。
基本的につかさとかがみはセットだ。
彼女ひとりを家に誘うのは不自然極まりない。
「そのうち、ね」
こなたは笑って取り繕う。
そうか、とそうじろうも憮然として頷く。
「たまには家に呼んでやれよ? 遊ぶって言ったら、いつもこなたが向こうにお邪魔してるんだろ?」
「ん〜、そういやそだね…………って、お父さん、もしかして巫女娘萌えだから呼べって言ってるの?」
「そ、そんなことはないぞ! 断じてない!」
そうじろうは慌てて否定する。
だがあからさまな狼狽振りに、こなたはジト目で父を見つめるだけである。
「お父さんは純粋な気持ちで呼んであげなさいって言ってるだけだぞ。決してつかさちゃんに会いたいからじゃないんだぞ」
よせばいいのに、彼は勢い込んでそう付け足す。
(やれやれ、なんでお父さんってこうなんだろ……)
自分もそれと大差ない性質の持ち主だというのに、こなたは呆れてしまう。
今はゆたかがいるから控えめになっているものの、以前のそうじろうはもっとオタクとしての側面を外に出していた。
「………………」
65 :
麾く煉獄29:2009/08/29(土) 22:41:00 ID:K/0h4/dk
娘と仲の良い父親。
それがそうじろうなのであるが、今も必死で下心を否定している彼を見て、こなたはなぜか違和感を覚えた。
いつものやりとりである。
おかしなところは何もない。
(あ〜いろいろあったから疲れてるのかな……)
と、考えていた最中にゆたかが夕食を持ってきた。
数日が経った。
「心配ですね……」
すっかり落魄した様子のこなたを見て、みゆきが頬に手をあてた。
その呟きに、
「そうだね」
と搾り出すように相槌を打つのはつかさだ。
2人の仲はいまだ修復されていない。
かがみはこなたを避けてB組には来なくなり、こなたもまた謝る機会を窺ったまま何のアクションも起こしていない。
こうなるとつかさはともかくも、みゆきまでかがみとの接点がなくなってしまい次第に疎遠になる。
勉強会を開くにしても向こうにはあやのとみさおがいるから、その方面からキッカケを作るのも難しい。
このままでは良くない、と誰もが思っているのに誰もが思い切った行動を起こせない。
元々はこなたとかがみの問題であり、従ってつかさやみゆきが口出しすることではない。
「かがみさんはやはりまだお怒りなのですか?」
こなたに聞こえないようにみゆきが問うた。
「うん……怒ってるのは怒ってるんだけど……」
つかさは歯切れの悪い答え方をした。
「…………?」
含みのある回答にみゆきは首を傾げた。
つかさが何かを隠しているように見えたのだ。
「どうかされましたか?」
「えっ? う、ううん! なにもないよ!」
やや虚心になっていたところにみゆきの不安げな顔が迫り、我に返ったつかさは大仰にかぶりを振った。
このやりとりをこなたは聞くとはなしに聞いていた。
同じ教室にいるのだから、声は嫌でも届く。
ただし意識の大半はポケットに忍ばせてある携帯電話に向いている。
(………………)
今日に至るまで、何度かみさおと話をしている。
かがみの顔色はどうか。まだ怒っているのか。話を聞いてくれそうな雰囲気か。
卑怯な気がしたがみさおを通して彼女の様子を探り、チャンスが来ればもう一度、誠意を持って謝るつもりだった。
だがその度にみさおは首を横に振る。
自分たちとは自然な付き合いをしているという。
ところがみさおが気を利かせてさりげなくこなたの名を出すと、かがみは途端に不機嫌になるというのだ。
そう簡単にはいきそうもない。
何とかするからしばらく待っていろ、とみさおはこなたに言った。
上手く話をしやすい雰囲気を作ってくれるという意味である。
こなたも一度はそれに甘えようとしたが、後になってそれが単なる他人任せの怠慢であることに気付く。
みさおに用意させた舞台で謝意を示しても虚しくなるばかりで、却ってかがみの気分を害してしまうかもしれない。
それでは謝ることにならない。
「………………」
こなたはそっと携帯を取り出した。
66 :
麾く煉獄30:2009/08/29(土) 22:42:43 ID:K/0h4/dk
宛先:かがみ
件名:
本文:このあいだの事は本当にごめん。
改めて話したいからよかったら放課後、体育館裏に来てくれないかな
たったこれだけの文を打つのに5分ちかくかかってしまった。
逡巡しながらも彼女は送信ボタンを押す。
紙飛行機の絵が手前から奥に飛んで行き、メールが確かに送信されたことを告げた。
「ふぅ…………」
大仕事を終えたようにこなたは大きく息を吐き、いそいそと携帯をポケットにしまう。
送ってから人を呼びつけるにしては失礼すぎる文章ではなかったかと後悔する。
あまりに簡素ではあった。
良識のあるかがみが読めば、素っ気ない呼び出し状に憤りを感じるかもしれない。
が、だからといって前口上をくどくど並べ立てるのもおかしな話だ。
こちらは非礼を詫びる立場だから、本番に入る前に言い訳がましい事を羅列したくない。
もちろん、”本番”とは”体育館裏で直接話をすること”である。
美辞麗句の乱立や虚飾で誤魔化す必要はないのだ。
「やっと終わったな〜。柊、カラオケ行こうぜ、カラオケ!」
この明朗快活元気娘は、この時間帯が最も活動的になる。
根っから勉強を嫌うみさおにかがみは、
「ごめん、今日はちょっと予定あるからパス」
よく陵桜に合格したなと思いながら誘いを断った。
「え〜なんでだよ〜? いいじゃん、たまには行こうぜ」
一度拒否されたくらいでは引き下がらないのがみさおの強さだ。
が、ここは互いに我の強い2人。
しつこく誘うみさおと、妥協を許さないかがみのやりとりは何度か続いた。
「また今度付き合うから」
という折衷案に最後はみさおが折れる。
みさおとしてはもちろん寄り道したいという気持ちはある。
カラオケと言ったのはただの口実で、実際はどこだっていいのだ。
とにかくかがみを連れ出すこと。
楽しい時間を過ごさせて陰鬱としている彼女を元気付けようという、友人ならごく当然の考えからくるものである。
あやのもそこは同じようで、みさおのように口には出さないもののかがみの動向を窺っているようだ。
「約束だかんな」
どうやら決着したらしい2人を見て、あやのが小さく笑った。
誘い出すのには失敗したが掛け合いの様子は以前のそれと変わらない。
「付き合い悪いよな〜」
鞄を手に早々と出て行ったかがみの背中を見送り、みさおが口を尖らせる。
微苦笑しながら不満げな彼女の気持ちを和らげるのは、毎度ながらあやのの役どころだ。
「柊ちゃんとはいつでも遊べるでしょ?」
「んー、まあそうだけどさ……」
「ワガママ言わないの」
「分かったよ。じゃあさ、あやの。一緒に――」
「今日は彼と大事な約束があるの」
「………………」
最新の受信メールを開き、その内容を何度も確認したかがみは申し出の場所にやや遅れて現れた。
体育館裏にはすでにこなたがいる。
学園の敷地内でありながら、ほとんど人の目が届かないのはここくらいだ。
呼び出した本人はもちろんそれを心得てこの場所を指定している。
足音に振り向いたこなたは、目の前にいる少女の姿を認めるとほっと息を吐いた。
67 :
麾く煉獄31:2009/08/29(土) 22:44:02 ID:K/0h4/dk
「来てくれなかったらどうしようかと思ったよ…………」
ヘンに律儀なかがみはたとえこなたの呼び出しであっても、とりあえずはそれに応えるようである。
ただ相変わらずの厳しい目つき。
ツンデレ特有の、とはもはや表現できないツリ目はしっかりと眼前の少女を睥睨している。
「話って何?」
一切の余談を許さないかがみの問い。
早々に本旨のみを求め、ヘタな誤魔化しや麗句を挟(さしはさ)ませない強気の姿勢だ。
「………………」
いまだ収まらない怒りに触れ、こなたは気圧されてしまう。
「何よ?」
「うん……あのさ……」
「………………」
「………………」
「ハッキリ言いなさいよ。あんたが呼んだんだろ?」
「うん…………」
どうもこの怒気にあてられると発言のキッカケを失ってしまう。
こなたは先ほどよりもさらに委縮したが、ここで黙っていても何もならないと思いなおし、
「この間のこと、ほんとにごめん。私が悪かったよ」
直截に今の気持ちを伝えた。
謝る以外の方法はない。
言葉そのものは同じだが、タイミングや口調、場所などが前回とは異なるためにかがみにはまた違った印象を与える。
もちろんこなたはそういう効果を狙ったわけではない。
そこまで頭が回らないというのもあるし、何より姑息なやり方は彼女の望むところではない。
「かがみのこと、全然考えもしないであんな……」
「………………」
「私バカだからさ、つい余計なこと喋っちゃうんだよね……。ほんとに悪かったと思ってるよ……かがみ……」
「………………」
かがみの神経を逆撫でないように言葉を選び選びこなたが意を伝えようとする。
聞き手に回ったかがみは、今が真剣勝負の彼女をただ黙って見ているだけだ。
「だから、ごめん……ごめんなさい…………」
「………………」
深く頭を垂れるこなたからわずかに目を逸らせ、かがみはギュッと拳を握った。
(やっぱり駄目だよね……こんなのじゃ……)
こなたは自分を恨んだ。
今のこなたにはかがみへの謝罪の念しかない。
だがそれを伝える術があまりに少なすぎた。
”申し訳ない””悪かった””ごめんなさい”
こんなありきたりで使い古された言葉しか出てこない。
彼女がやっているのはこの数少ないキーワードを順列を変えてまくし立てているだけだ。
「いいわよ…………」
ほとんど聞き取れない声でかがみが言う。
「もういい…………」
それがこなたに届いていなかったかもしれないと、彼女はもう一度、今度は少し大きな声で言った。
「か……がみ……?」
「私も悪かったわ。いつまでも怒ったりして大人げなかったかもね」
とは言っているのだが、かがみはまだこなたと目を合わそうとはしない。
意図的に視線を交わすことを避けているようにも思える。
が、こなたはこれでも十分に満足だった。
拒絶の姿勢を一貫させていたかがみが一転、聞く耳を持ってくれたのだ。
態度だけ見ればまだ完全に赦すには至っていないだろう。
しかし仲直りの糸口を見つけたこなたは安堵し、
「ありがと、かがみ……」
偽らざる自分の想いを口にする。
「私もごめん。あの時はちょっとテストの出来が悪くてイライラしてて……それでついあんたに…………」
当たってしまった、とかがみは言った。
しかしこの柊かがみという少女は弾みでこなたに当たったことを認めながらも、自分の言そのものが間違っているとは思っていない。
勉強家で努力家の彼女はやはり遊蕩怠惰なこなたに対しては許せない部分も多いようである。
(私もかがみみたいになれらたらいいのに……)
こなたは思った。
68 :
麾く煉獄32:2009/08/29(土) 22:45:04 ID:K/0h4/dk
自分の至らなさがかがみを怒らせたことを身を以って痛感した彼女は、同時に自身の矮小さも味わった。
同い年でつかさを通じてできた友人であっても、どうしてもそこに垣根を作ってしまうのだ。
背伸びしても届かない高み。
そこにかがみやみゆきはいる。
「もう揶揄(からか)ったりしないよ。かがみの邪魔したくないし」
という言葉が自然に出てくる。
かがみは呆気にとられたように、
「邪魔って?」
意味は分かっていて敢えて問うた。
「もちろん勉強のだよ。かがみ、弁護士になるんでしょ?」
「あ〜、そういえばそう言ったっけ」
相槌を打ちながら、かがみは内心にひっかかるものがあった。
いつか法学部への進学を考えているとは言ったが、弁護士とまでは言っていないハズだ。
(………………)
記憶の中から当時の会話を引き出す。
こなたが確かめるように”弁護士?”と訊ねてきた時、彼女は特に否定はしなかった。
法学部=弁護士という図式も一般的には誰もが成り立たせるものであろう。
特に気になるような事柄でもない。
かがみはそう思いなおしたが直後の、
「かがみは女の人の味方だもんね。私も応援するよ」
こなたのこの発言に体を震わせた。
「女の人の味方って何? どういうこと?」
かがみの体がかぁっと熱くなる。
こなたは惚けたように、
「え? かがみが弁護士になるのってつかさの事がキッカケなんでしょ?」
さらりと問い返す。
彼女には油断があった。
かがみに全て許されたと勘違いし、本来ならば慎まなければならない態度を軟化させてしまった。
そこから気の緩みが生じ、言うべきではない言葉を吐き出してしまう。
「どういうこと?」
同じ問いをもう一度。
ただし今度はより深い答えを引き出すための手続きだ。
「つかさが痴漢に遭ったから……それで犯人が無罪だったからでしょ?」
そこまで言ってしまい、こなたもようやく気付く。
が、彼女がそれについて後悔するより早く、
「…………どういうことよ? っていうかそれ、誰に聞いたの?」
静かに怒気を孕むかがみの質問が飛んだ。
「…………」
「誰に聞いたのよ?」
「……み…………日下部さんに…………」
追及からは逃れられないと悟ったこなたは、簡潔に問いに答える。
(私バカだ……! みさきちに内緒だって言われてたのにっ!)
また後悔をする。
かがみとみさお、かがみとこなた。
付き合いの深さは決してその長さに比例するものではない。
彼女が弁護士を目指した理由をみさおは知っていたが、こなたは知らなかった。
閉鎖された空間で妹が痴漢に遭うなど、少女にとっては耐えがたい屈辱だろう。
同時に羞恥心も伴う。
普通ならその類の経験は胸の内深くにしまいこみ、誰にも曝け出さないものだ。
が、かがみは少なくともみさおには打ち明けた。
それを境に弁護士を目指していることも告白した。
かがみにとってみさおが信頼するに足る親友だったからだ。
敢えて恥辱を晒すことで自身の信念をより揺るぎないものにするためだ。
しかしこなたには教えなかった。
これが付き合いの”深さ”だ。
「あ、いや、聞いたっていってもたまたまそういう話になって、その時にちょっと聞いただけでさ!
だから別にそういう意味じゃ…………うん!!」
何が”そういう意味”なのかは分からないが、こういう場合のお決まりの言い繕いだ。
「とにかくさ! 私はもうかがみの邪魔しないから!!」
かがみに口を挟ませないようにこなたは思いついた言葉を思いついた順番に発した。
69 :
麾く煉獄33:2009/08/29(土) 22:47:10 ID:K/0h4/dk
「で、でもかがみも凄いよね!! つかさがそんな目に遭ったってだけで弁護士なんてさ!
ふ、普通なかなかできないよ! うん! やっぱりかがみは凄い!!」
明らかにこなたは狼狽していた。
またもや聞き手に回るかがみから、ハッキリと怒気が感じられたからだ。
「いやあ……妹想いのお姉さんっていいよねっ! ほんとに仲のいい双子って感じで――」
かがみはついさっき収めたばかりの怒りを再燃させた。
「……よく言うわね…………!!」
今までとは感情の表し方が少し違う。
彼女の目は怒りのために滾り、ほんの僅かな弾みさえあれば今すぐにでもこなたに飛びかかりそうな勢いがある。
「ずっと我慢してたけど……もう限界だわ…………」
「………………ッッ!?」
その一言にこなたは戦慄する。
尋常ではない憎悪の念を感じる。
少なくともこれから仲直りをしたいと思う相手に向ける言葉ではない。
「つかさには黙っててって言われたけど…………!!」
「………………?」
「ハッキリ言わせてもらうわ。あんた、気付いてなさそうだしね」
かがみの敵愾心に満ちた視線と口調はこなたを突き放すのではない。
突き落とすのだ。
こなたがかろうじて保っている”自分”を粉々に打ち砕くだけの辛辣な言葉を――。
かがみは愈々容赦なく解き放つのである。
「あんた、つかさが痴漢に襲われたって話、知ってるのよね?」
「…………うん」
「日下部から聞いたのよね?」
「…………うん」
「じゃあさ、その痴漢の正体って誰だか知ってる?」
「えっ…………?」
かがみは”痴漢”という単語を躊躇いなく出す。
年頃の娘なら憚りたくなる名詞を遠慮なくこなたに叩きつける。
「知らない…………」
知っているハズがない。
みさおはそこまで言わなかったし、そもそも痴漢というのは卑劣な行為に及んだ者への差別化を図るための言葉だ。
特定の誰かを指し示すものではない。
僅かな沈黙の後、かがみはやっぱりね、とため息混じりに言った。
続いて、
「――あんたのおじさんよ」
あっさりと言い捨てた。
「えっ…………?」
その意味を理解するのに10秒はかかった。
”おじさん=そうじろう”に辿り着くまで、ずいぶんと理性が邪魔をしたようである。
「お父さんのこと……じゃないよね……?」
暗中に光明を見出そうとこなたが問う。
「あんたのおじさんよ」
かがみの短い答えはそんな彼女の一縷の望みを撃砕した。
「やっぱり知らなかったみたいね」
やけに挑戦的な視線のかがみ。
これは彼女の勇ましさからくるものとは少し異なる。
主にこなたへの敵対心と憎悪がある。
「あんたのおじさんはね、中学の時につかさのスカートの中に手を入れたのよ」
「ウソ…………」
「満員電車だったからバレないと思ったんだろうけど、私はちゃんと見てたわ」
「………………」
「だから捕まえたわ。痴漢なんて許せないからね。警察に突き出して罪を認めさせてやりたかった!
でも痴漢なんてやる奴はやっぱり卑劣よね。あいつは自分はやってないって言いやがったのよ!」
「ウソだよ……そんな……」
「それどころか言いがかりをつけてきたわ。示談金を踏んだくるつもりだろうってね! 許せなかった!
許せなかったけどどうにもならなかったのよ…………!!」
「ウソだッッ!!」
こなたが声を限りに叫んだ。
70 :
麾く煉獄34:2009/08/29(土) 22:48:55 ID:K/0h4/dk
あるハズがない。
みさおの発言と内容は一致しているが、それが父親だとはこなたにはどうしても信じられない。
「ウソじゃないわよ! 私もつかさもハッキリ憶えてるんだからっ!」
かがみも叫んだ。
こなたを呪うように、憎むように。
「初めてあんたの家に遊びに行った時はビックリしたわ。まさか痴漢魔がいるなんて思わないもの」
「それは……そんな……」
「でも向こうは私たちのことなんて憶えてないみたいね? 普通に接してきたもの。
もしかしたらしょっちゅう痴漢してるのかもね。だからいちいち顔を覚えてないんじゃないの?
っていうかあいつの第一声、”神社で巫女やってるんだろ?”だったっけ?
相変わらず下劣だわ。やっぱあの時のあいつと何ひとつ変わってないわね」
「お父さんはそんなことしないよ! かがみの勘違いだって!」
「ふん! で、あんたはあんたで父親がそんな下劣な奴だって知らなかったわけね。
いい身分よね! 親が犯罪者なのに何も知らないあんたはのうのうと暮らしてて!!」
「違う! ……ちがう…………」
「まあ普通、自分は痴漢です、なんて娘に言う親はいないわよね」
腕を組んだかがみは目を瞋(いから)せてこなたを睥睨する。
「あんたと付き合うなんてできない。私はそう思ってたけど、つかさは優しいのよ。
”こなちゃんは関係ないから友だちでいてあげて”だって。そう言うのよ? 凄いと思わない?
私だったら絶対に厭よ。気持ち悪い痴漢の娘なんて。ましてや自分に痴漢してきた奴の娘なのよ?
つかさは優しいわよね。あんたみたいなのと友だちでいられるなんて」
殊更につかさの優しさをかがみは強調した。
そこをアピールすればするほど、逆にかがみがこなたを心根では毛嫌いしていることが浮き彫りになる。
才媛かがみはその効果を狙って敢えてつかさを持ち上げた。
「だから我慢したわよ。つかさやみゆきの手前、露骨にあんたを避けるわけにもいかないしね。
つかさ見てたら、あんたを許せない私のほうが間違ってるんじゃないか、なんて思ったりもしたわ。
とんだ迷惑よね。悩むのは私でもつかさでもない。私たちは被害者なんだから」
にこやかな笑顔の裏で、この柊かがみは悪辣な爪を研いでいたようである。
友だち付き合いをする振りをしながら、ずっとあんたを蔑んでいた、とかがみは言った。
衝撃的すぎる告白にこなたは言葉を返せない。
敵意に満ちたかがみの念はもはや修復できないほどに激しく、強く、そして深い。
「休み時間ごとにB組に行ってたのは、別にあんたやみゆきに会いに行ってたんじゃない。
つかさが心配だったからよ。痴漢の娘だから私が見てないところで何しでかすか分からないからね」
鋭い刃のようなあてこすりはこなたの心を容赦なく剔(えぐ)る。
「表向き友だちを装ってきたけど……あんたは私たちの気も知らないでずいぶん好き勝手やってきたわよね?」
「………………」
「つかさをバカにして、私を揶揄って、みゆきにセクハラまがいの発言して――いったい何様のつもりよ?」
「………………」
「自分ひとりじゃ何もしない……何もできない癖してエラそうな態度ばっかり……ムカつくのよ」
彼女は感情をストレートに表す性質だが、ここまで露骨に示した試しはない。
「かがみ…………」
小さな躯(からだ)をさらに小さくして、こなたは掠れた声で呼んだ。
「知らなかったよ……そんなの……私なにも……」
「知らなきゃ何しても許されるってのか? あんたのそういうところが気に入らないのよ」
必死に言葉を紡ごうとするこなたに、かがみはもう容赦はしない。
溜まりに溜まった鬱憤はひとたび外出してしまえば、それを内包していた本人にすら止められなくなる。
しかも今のかがみの言には誰が聞いても肯えるだけの正当性が味方している。
「ほんとに……お父さんなの…………?」
問いかけるこなたの目はすでにかがみの向こうの虚空を眺めている。
「ウソなんでしょ? タチの悪い冗談やめてよ、ねえ……謝るから……謝るからさ…………」
望みはもはや断たれたというのに、それでもなおこなたは見えない糸にしがみつく。
71 :
麾く煉獄35:2009/08/29(土) 22:50:03 ID:K/0h4/dk
冷やかな笑みを浮かべたかがみはこの傍若無人で厚顔無恥な少女を蔑視して、
「しつこいわよ。ウソだと思うんならあいつに直接聞けばいいでしょ?」
くるりと踵を返した。
この所作は完全なる決別。
押し込めていた秘密を打ち明けた以上、かがみがここにいる理由はもうない。
後は可愛いつかさを守ることに全力を注ぐ。
あの汚らわしい親娘が自分や妹に寄り付かないように対策を講じるのみだ。
(かがみぃ………………!!)
こなたは心の中で何度も何度も呼びかけた。
だが背を向け、去りゆくかがみはとうとう一度も振り返ることはなかった。
今日はここまでです。
喧嘩の場面ではかがみのキャラを苛烈にしましたが、こういう背景があったからでした。
それではまた。
あちゃあー、これはこれは 無理ないわぁ
しかしなんて痛々しい設定を思いつくんだ
そうじろう、まともにみれないじゃないか
>>72 乙
又途中の感想で失礼。
今回の話って少し矛盾が出てきてる気がするのは気の所為かな…。
そうじろうがつかさに痴漢をしたのが事実だとしても、やはりかがみは最低だな。
最初からこなたを友達とも思っていない所か憎悪の対象なのに、そんな人間を態々友人(みさお)に紹介するのはやはり不自然な気が。
つかさもつかさで、もし痴漢してきた奴が友達の親だろうと何だろうと目の前に現れたら、とてもじゃないが平静を装えない筈。(特に原作つかさのキャラ設定なら)
普通なら理由を付けてこなたの家から逃げ出す。とてもじゃないが泊まるなんて怖くて出来ない筈。
こなたはそうじろうを疑う前につかさに確認すべきだな。かがみの嘘かも知れん。
途中の感想は余りすべきじゃないのは分かってるんだけど、痴漢された事のある被害者を知ってる自分としてはこの展開はとても納得出来ない。
長文はともかく自分語りはやめとけよ
>>72 続き期待
つーか、そこまでリアリティ求めなくても…
JEDIたんのプライドが寸襤褸にされちゃうよぉ;;
こんな背景あって空気読めんこと言われたら切れるだろくらいでいいだろうに
いえいえ、こういった感想を戴けるのは有り難いことですよ。
深く読んでもらっている故ですから。
途中だからこそのこの感想ですし、既に結末を知っている僕からすればある意味では
狙い通りではあります。
(その点ではいつものように纏めての投下よりも効果的だったかもしれません)
>>76 リアリティを求められるのは僕にその才があると期待されているから……。
という至極尊大不遜な思い込みをしてみました。
僕は基本的に謙虚に努めてますが最近、厚顔さも必要なのかと思ったり。
ちなみにプライド云々は現実世界でのジョック共に対してのものです。
(その種の話題はいずれDiaryにでも)
僕にとりこのスレはオアシスですから。
79 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/30(日) 12:38:07 ID:44VmLFli
思ったんだが、そうじろうが痴漢なんかやってたら、ゆい姉さん、警察クビに
なってしまうんじゃないか?つか小早川家とは絶縁状態になりそう。
80 :
デフォ北:2009/08/30(日) 13:10:38 ID:uXhTvXFO
>>78 お久しぶりです、そしてお疲れ様です。
なるほど…以前のSSにさり気無く書かれてあった
『そうじろうの痴漢』という伏線をここに持って来ましたか。
常に読者にとって興味をそそる展開に持っていくのは流石ですね。
続きがとても楽しみです。
このスレに初めて訪れるよりも前、興味本位でJEDIさんの難読漢字のページに訪れていたことがあったのですが、
あれがJEDIさんのページだったとは思わず完全スルーしていましたorz
81 :
名無しさん@そうだ選挙に行こう:2009/08/30(日) 13:48:52 ID:lSUVSxQW
まあ俺はちょっと納得したかも
ただこいつうぜえってだけでこの仕打ちだったら柊打ち首もんだけど
そういう背景があるなら
ただそんなんだったらもとからこなたと友達づきあいすんなよって気はやっぱすんなー
それも本人曰く、中学以来の親友に紹介するほどの友人づきあいしといてこの仕打ちはねーわ
>>75 自分語りしなくとも痴漢がどんなに酷い行為か知ってる人(特に女性)なら74と同じ感想を持つんじゃないかな。
>>75 自分語りは止めておけ?
何故お前にそんな事を言われなければいけないのか分からんわ。
>>76 別にリアリティを求めたつもりは無い。
ここまで読んだ単なる俺の感想。
>>78 貴方は大人ですな、色々な意味で。
>リアリティを求められるのは僕にその才があると期待されているから
勿論期待も含めての感想です。続きを楽しみにしています。
ここの連中は何か勘違いをしているんじゃないか?
このスレが自分達の憩いの場だとでも思っているのかな?
ここは単なる掲示板。しかも2ちゃんねるの。
自分の書いた作品に対して酷いレス(評価も含めて)が来たら嫌だ、とか思うのなら最初から作品を投稿すべきでは無い(特に2ちゃんに)、と俺は思う。
>>83 別に、皆、そこまであんたのレスに過敏に反応してる訳じゃないんだから、そうカッカすんなよ
言いたい事はわかるからよ
85 :
名無しさん@そうだ選挙に行こう:2009/08/30(日) 17:20:17 ID:lrHrOSh7
悪いのはそうじろう本人で、娘のこなたは関係ないだろうに。
このSSのかがみは、旧日本軍がやった事を、関係ない子や孫の世代の日本人に
いつまでも根に持って恨んでる朝鮮人や中国人と同レベルだな。
到底、こんな性格じゃ裁判官になれないよ。
なったとしても、金を積まれて不当な判決をだす悪徳裁判官になるのが目に見えてる。
>>85 理屈じゃねぇつーの
何とかって小説で、ある女の子が、自分が幼児の時、親を殺した殺人犯の息子と大きくなって付き合うんだけど、
その兄弟が猛烈に反対するっつう話しがある
それといっしょ
最初は嫌だったが、つかさの言葉でとりあえず受けいれてきたけど、だんだんいらつく事言ってきたから、思いが振り返してきてこうなったんだろ
別におかしくない
バス通勤であることもあり、また警察密着物や一般的な報道でしか痴漢の実態を知りませんので、
被害者の心理に係る描写には些か非現実的なところもあるかもしれません。
ここでは全ての犠牲者が一様に同じ気持ちを抱くわけではない、という程度に流して下されば幸いです。
>>80 お久しぶりです。
あれ書いた時点で、かみさまタウンと痴漢の話は一応できあがっておりました。
漢字にはまっていた時期がありまして(今もですが)、元々あのページは受験用の
メモ代わりのようなものです。
>>83 僕は子供ですよ。
7300日過ぎれば誰でもなれるのが大人ではないんです。
ここでのやりとりは研鑚の具がたくさんあって嬉しい限りです。
痴漢問題か。
痴漢冤罪の問題とかあっからねぇ。
しかしアレだね、痴漢冤罪や痴漢でっち上げによる恐喝事件があるからと言って、
全ての痴漢事件が冤罪やでっち上げであるワケもない。
ましてや、痴漢が許されるワケでもなし。
まぁ黒が白になる、有罪が無罪になるってんならいいんだ。まだ。
問題は、有罪がでっち上げになるケースや、
錯誤まででっち上げとして扱われるケースだ。
これは女性にしてみりゃ堪ったもんじゃないだろーね。
そういやゲームの話、まだまとめに上がってないな
90 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/31(月) 19:11:41 ID:xpX2JgqI
そういや、神奈川版「私のお父さん」読んで疑問に思ったことがあるんだけど
@ なんで、かがみたちがこなたを避けるようになったのか?
A 小早川家の目的は復讐なのか遺産目当てなのか、そこがよく分からなかった。
B なぜ、保険金の受取人がこなたでなく、ゆたかなのか?
C 小早川家と泉家は絶縁状態なのにゆたかを泉家に預けたのか?
というのが疑問に残った。誰か教えてくれ
>>90 1、ゆたかが過去の泉家の悪い噂を流したから
2、金目的だがそうじろうへは復讐
3、小早川家が手を回して遺言書を偽造した
4、ゆたかにそうじろうを殺させる為
俺の解釈はこんな感じ
まぁあれはギャグだからそんな深読みしなくともネタで流せば良くね?
大体あれは矛盾だらけだろ
かがみに殺されそうになったのに銃で反撃しないとか…etc
悪いが考えて読む作品じゃない
94 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/31(月) 20:27:58 ID:xpX2JgqI
竜崎の「友達?何を冗談を?欲におぼれているあいつは僕の友達ではありませんよw」は
こなたが金に目がくらんだからなんだよな・・・それまでは竜崎とこなたは親友だったわけだし。
あと、竜崎が差し入れに酒を未成年のこなたに飲ませたのか分からん。
これに関しては牛丼屋にシャブが置いてあったのと同じ笑いをとるためだったかもしれん。
つかさがシャブはあきらかにVIPのSSから拝借しただろw
何の話しかおしえてくれ〜
96 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/31(月) 21:40:54 ID:xpX2JgqI
>>90 俺は竜崎が何者なのか気になった(ゆいや大石と知り合いだということは警察官かもしれないが・・・)。
98 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2009/09/01(火) 12:05:49 ID:sWI92bRA
こなたを自殺させようとするここのスレッドスタイルって嫌いじゃないよ
でもさ
それって楽しい?
>>93 あと、神奈川版「審判」も矛盾と突っ込みだらけだったな。
例をあげるとすれば
1、かがみが2歳上の伸恵のことを呼び捨てにしている。普通なら伸恵さんと呼ぶはず。
2、つかさの親友である伸恵に対しての矛盾している発言。「口封じで事故死に見せかけて殺す」等
3、死体にこなたの学生証を入れればこなたが犯人扱いされる件。指紋とかでバレルでしょ・・・
4、事故死に見せかければいいのにそうじろうをバラバラにして、山中に捨てるという不可解な行動
5、放火したのは伸恵なのにこなたを犯人扱いして兄沢と桜庭の矛盾だらけの行動。普通、警察に
任せるんだけどな・・・
6、財産を手に入れるためには手段を選ばない、ゆいの心理状態。
みんなはどう解釈している?
みなさん、こんばんは。
本日分の投下参ります。
101 :
麾く煉獄36:2009/09/01(火) 21:27:49 ID:Sn1nC9Kk
その後、こなたは気がつくと家の前にいた。
ここに至るまでの記憶はない。
思考が働かなくても3年の間、通い続けた道は体が勝手に記憶しているものらしい。
「ただいま……」
この決まり文句も口が勝手に言ったことだ。
ほとんど機能していない脳に、
「おかえり」
聞き慣れた父親の声が届く。
”帰ってきた”という感覚はない。
ここは自分の家ではない、と。
こなたはそう思い始めていた。
そうじろうはいつもと何ひとつ変わらない様子で玄関まで出迎えにくる。
「うん、ただいま……」
無視するのも気が引け、とりあえずその挨拶をもう一度発すると、こなたはそうじろうの脇をすり抜け部屋に向かう。
その途中、彼女はゆっくりと振り返り、
「ゆーちゃんは?」
愛想にもならない声をかけた。
「ああ、えっと、みなみちゃんだったかな? その子の家にお泊りだって言ってたぞ。もうひとりいたんだがな……。
名前が出てこないな。た……た……何とかって子だ」
「ひよりん……田村さんだね」
「ああ、そうそう! その子だ」
溜飲が下がった様子のそうじろうに一瞥をくれ、こなたは今度こそ部屋に向かう。
後ろ手にドアを閉めてため息ひとつ。
(ウソだよ……)
かがみを疑っているわけではない。
彼女をウソつき呼ばわりするつもりもない。
だがこの事実を受け入れてしまえば、こなたは唯一の肉親までも失うことになる。
こなたはそれをただ恐れた。
父は父であればいい。
言動に問題があっても、世間に恥じることのない最低限の体を保っていればそれだけでいい。
小説家という響きのいい肩書きなどなくても構わない。
ただ悪事に手を染めてほしくない。
そんな父親はいらない。
(……………………)
彼女は何事かを決心したように部屋を出た。
・
・
・
・
・
ゆたかがいない夕餉はこんなにも寂しいものなのだろうか。
テレビの音と咀嚼音だけが響く食間で、こなたは段々と陰鬱になっていく自分に気付く。
味噌汁にサラダ、豚肉の生姜焼き。
どれもそこそこに味付けの濃い品書きなのに、今のこなたにはどれもが砂のように感じられる。
「ねえ、お父さん」
食後のお茶を堪能していたそうじろうは、妙に艶っぽい娘の声に、
「ん、どした?」
湯呑みを置いて向きなおった。
「明後日さ、友だちが来るんだけどいいかな?」
その時の父そうじろうの表情を、こなたは生涯忘れないだろう。
今までどこかつまらなさそうだった彼の顔は俄かに明るくなり、
「もしかしてつかさちゃんか?」
身を乗り出してそう訊ねた。
「うん…………」
小さく頷く。
これはそうじろうの問いに対する答えではなく、彼女が何かしらの確信を得たという合図。
またそれを自分自身に言い聞かせる意味も含んでいる。
「嬉しい?」
「そりゃ嬉しいさ。こなた、ここのところ元気なかったしな。つかさちゃんが来てくれるなら大歓迎だ」
そうじろうが破顔する。
102 :
麾く煉獄37:2009/09/01(火) 21:29:50 ID:Sn1nC9Kk
満面の笑みを湛える父が今は煩わしい。
「かがみも来るんだよ」
こなたはそう付け足したが、
「あ、そうなのか」
今度はほとんど興味を示さない。
この態度の違いでようやくこなたは確信を持つ。
受け容れたくない真実に近づいた彼女は、しかしそうしなければならないと言い聞かせ、
「ねえ、お父さん。ヘンなこと訊いていい?」
震える声でそう問いかける。
「どした?」
気分が浮ついているのか彼は上機嫌で娘を見た。
こなたはわざと視線を逸らす。
「お父さん、昔さ……その……痴漢とかしたこと……ある……?」
「うっ…………」
瞬間、そうじろうの顔は驚愕に彩られた。
逸らした視線を再び父に向けたこなたは、危うく泣きそうになった。
明らかに動揺している。
全く身に覚えのない事柄であれば呆気にとられることはあっても、今のように体を小刻みに動かしたりはしない。
「きゅ、急に何を言い出すんだ!」
彼は不自然にならないように言葉少なく言い返したが、額に浮かぶ汗がこなたの懐疑をさらに強くした。
「したんでしょ…………?」
(してないって言ってよ!!)
想いと全く逆の言葉を投げかける。
そうじろうは――否定しなかった。
何事かを考え込むように彼は俯いたまま、視線だけを落ち着きなく彷徨わせている。
(お父さん…………?)
こなたの頭の中は真っ白になった。
何秒か経った時、そうじろうは娘の期待を裏切るように、
「なんで知ってるんだ?」
小さな小さな声で問い返した。
「誰かに聞いたのか?」
畳みかけるように質問。
「したんだね…………」
今のこなたにはもうこれしか言えない。
彼女が知っている人間の中で最も信頼していたのは父と母。
信頼の度合いは次いでゆたか、ゆい……と続き、順列においては他人であるかがみたちはずいぶん後に回っている。
だからこなたの中では父そうじろうがまず正しい、という前提があった。
証拠があろうとなかろうと、彼が一笑に付して取り合わなければそれで良かったのだ。
だがそれは叶わなかった。
「落ち着いて聞いてくれよ、こなた。痴漢って言っても、電車の中で手が当たったくらいなんだ。
それがまあ……そういう風に見えてしまったってだけなんだ。なあ、こなた?」
だったらなんでもっと強く否定しないんだ、とこなたは思った。
「言いがかりをつけられただけなんだ」
一応認めたものの、そうじろうは正当化しようと詭弁を弄する。
だがまだ肝心な事実を打ち明けていない。
彼の保身の術は事の詳細を知らない者には通用するが、すでに多くの情報を手に入れたこなたには効き目はない。
「その相手ってつかさなんだよね?」
いつまで経ってもそうじろうがその点に触れないので、こなたは自分から名前を出した。
「なっ…………!?」
この度の動揺は先ほどのものとは違う。
額にも頬にも首筋にも。
びっしょりと汗をかいているそうじろうは気分を落ち着けようと湯呑みを手にする。
が、まるで力が入らない。
地震が起こった時のように彼の手の中で湯呑みが微細動を繰り返す。
もはやそうじろうは何も答えなくてよい。
言葉で伝えることも、彼が得意な文章に書き表す必要もない。
まるでギャグマンガのキャラのように滑稽な狼狽ぶりを見せる彼は、その所作だけで十分すぎるほどに事実を語る。
「こなた…………」
獣のような双眸がこなたを捉えた。
103 :
麾く煉獄38:2009/09/01(火) 21:35:26 ID:Sn1nC9Kk
「当て推量じゃないんだろ? 知ってるんだな……そのこと……」
「………………」
これでようやくこなたの中で一連の悲劇が完結した。
みさおの話に間違いはなかった。
かがみの独白にウソはなかった。
結局、何もかもが真実。
自分ひとりだけが今日まで知らずにいた真実だ。
「初めてあの2人が家に来た時はビックリしたよ。まさか、あの時の子が来るなんて夢にも思わなかった。
おまけにこなたと同じクラスだなんてな……偶然なのか奇跡なのか…………」
遠い目をして語るそうじろうの口調や表情からは、痴漢をした事に対する悔恨懺悔の情は読み取れない。
どちらかと言えば、たった一度電車の中で出逢った可愛らしい少女に邂逅できたことへの悦び。
喜悦甚だしく、彼はだらしなく顔の筋肉を弛緩させている。
「まあ、向こうは俺の顔なんて覚えてなかったみたいだけどな。それだけが幸いだったよ。
こなたの友だちなら頻繁に家に呼べるし、もっと間近にあの子の顔を見られるもんな」
そうじろうは顎に手を当てた。
「憶えてるよッッ!!」
こなたは声を限りに叫んだ。
「お父さん、かがみに取り押さえられたんでしょっ!? つかさもかがみも憶えてるよっ!!」
「こ、こなた…………」
「私だけ…………! 私だけが何も知らなかったなんてバカみたいだよ…………ッッ!!
みんなそんな大事なこと隠してて……なんで……なんでなの…………!!」
悲しみと怒りの混じった涙がこなたから全てを奪った。
ぼやける視界の中にそうじろうの姿はない。
「こなた…………」
困ったように娘を見下ろすそうじろうの顔は、泣きじゃくる赤ん坊をあやす父親のそれと変わらない。
「すまなかった。いや、隠してたわけじゃないんだ。でもそんな事、わざわざ言うものじゃない。
分かるだろ? 俺の中だけで留めておけばよかったんだ。そうすりゃこなただって何も悩む必要はな――」
「勝手なこと言わないでよ!」
「………………」
「お父さんは……!! お父さんは私の自慢のお父さんだったよ。片親で今日まで育ててくれて……。
すごく感謝してる。感謝してるし尊敬もしてるよ。でも陰でそんなことしてるなんて思わなかった…………!!
恥ずかしいし……ううん、情けないよ…………」
「………………」
父親にロリコンの気があることをこなたは知っていた。
もちろん二次元での話であって、その嗜好はあくまで”オタク”を隠れ蓑にできる程度の軽いものであるとも。
だから彼女はそうじろうの趣味に妙に安心しているところがあった。
ヘタにそういう好みを隠されるより、自嘲も混ぜてカミングアウトしてくれるほうが潔い。
娘に対して裏表のない父親、という意味でも安心できる。
そうじろうに対しては概ねこのように思っていただけに、痴漢という卑劣な行為に及んでいた事実は衝撃が大きすぎる。
冗談などではない。
彼は本当にそれをやってしまっているのだ。
「そうだな……俺ってバカだよな…………」
居たたまれなくなって彼はふいっと余所を向く。
「でもな、こなた……」
淫靡を知られたからには、もうこの父親は愛娘の顔を真正面から見ることはできない。
「俺とつかさちゃんは――――」
彼が言いかけた時、こなたはすでに自分の部屋に駆け込んでいた。
・
・
・
・
・
その夜、こなたは一晩中泣き続けた。
涙が涸れるまで彼女は泣き続けた。
悲しかったのか、悔しかったのか、それとも腹立たしかったのか。
もはやこなたには分からない。
分からないのにこなたは泣いた。
溢れる涙を止めることはできなかった。
104 :
麾く煉獄39:2009/09/01(火) 21:38:48 ID:Sn1nC9Kk
ゆたかが留守だったのがせめてもの救いである。
こんな惨めな姿を従姉妹に晒すわけにはいかない。
「お父さん…………」
暗く閉め切った部屋に、たったいま自分が発したばかりの言葉が木霊する。
「なんで……なんでよ…………」
こなたは自分の声を聞いた。
「なんであんなことしたのさ…………!!」
この呟きに答えたのは、風に乗って幽(かす)かに響く踏切の音だけだった。
「こなちゃん…………」
数日で劇的に変わったこなたに、つかさはビクビクしながら声をかけた。
彼女はかろうじて高校生として登校してきているが、18歳とは思えないほどに窶れてしまっている。
「…………」
こなたは無視した。
疲れているのだ。
疲れているし、恥ずかしくもある。
柊つかさはこうして自分を案じて声をかけてくれるが、彼女は自分に淫らに迫った男の正体を知っている。
相手がその男の娘であることも知っている。
知っていて知らない振りをして”友だち”として接してくる。
こなたにはつかさが神々しく見えた。
”私だったら絶対に厭よ。気持ち悪い痴漢の娘なんて”
昨日、かがみに言われた言葉が思い出しもしないのに記憶の抽斗から飛び出してくる。
(つかさは……本当は厭じゃないのかな……)
そうそう簡単にできることではない。
バカがつくほどのお人好しでなければ、つかさのように振る舞うことは不可能だろう。
「ねえ、こなちゃん……」
つかさがそっと肩に手をかける。
「もう放っといてよ!」
「あっ――」
恥ずかしさが自分への怒りに変わり、それが頂点に達した時、こなたはつかさの手を強引に振り払ってしまった。
その時のつかさの顔は、こなたとは対照的に悲しみに染まっていたようだった。
「…………ごめん」
ほとんど舌先で発音するように詫びを入れ、こなたは教室を飛び出した。
「泉さん!!」
その様子を見ていたみゆきが呼びとめるが、彼女はそれも無視して走り去る。
心配しながらも、といって追いかけもしないみゆきは代わりにつかさに向きなおった。
「かがみさんは……まだお怒りに?」
おずおずと問いかけるみゆきに、つかさは忘我した様子で頷いた。
(おかしいですね。私が知る限り、かがみさんはそこまで怒りを引きずるような方ではないと思うのですが……)
いろいろとみゆきなりに考えてみる。
が、他人と争った経験に乏しい彼女はそもそも思考に用いる材料が少なすぎるために、易々と結論にたどり着いてしまう。
(怒りっぽい性格なのでしょうね、かがみさんは。それになかなか素直になれないようですし……)
結局、柊かがみを表面で見ただけの安直な結論である。
たかだか数年、友人を続けたくらいではこの程度の考え方しかできない。
しかし無理もない話ではある。
こなたの父親が昔、つかさに痴漢を働いた事実などどうして想像できようか。
つかさがその屈辱を隠してこなたと付き合っているなど、何をヒントに関連付けられようか。
ましてや高良みゆきは彼女を取り巻く女子には不釣り合いなお嬢様である。
105 :
麾く煉獄40:2009/09/01(火) 21:43:32 ID:Sn1nC9Kk
濁世の汚らわしい淫乱話など、瑶林瓊樹の彼女には甚だ遠い世界での出来事なのだ。
・
・
・
・
・
こなたはひとり、食堂で昼休みを過ごした。
これまではつかさとみゆき、3人で昼食をとっていたが、もはやそんな厚かましいことはできない。
何かと留めようとする2人に適当に理由をつけて教室を出、隅で小さくチョココロネを齧る。
惨めだった。
元を辿ればそうじろうの淫行が原因なのだが、こなたに全く非がないわけではない。
痴漢話がなかったとしても、彼女が幾度となくかがみを嘲弄していた事実は変わらない。
「………………」
味の濃いチョコレートクリームに吐き気を覚え、食べかけのコロネを袋に包む。
こなたはポケットから携帯を取り出した。
(連絡はしないと思ってたけど……)
いま一番頼りになるのはこの人物しかいない。
最も新しく登録されたアドレスを呼び出し、慣れた手つきでメッセージを打ち込む。
宛先:日下部 みさきち
件名:
本文:この前はありがとう。
話したいことがあるんだけど放課後あいてるかな?
言葉に敏感になっているこなたは、この種の呼びかけの文章を何度も打ち直した。
驕慢になってはならないし、といって必要以上に卑屈になってもいけない。
”話したいこと”と”相談したいこと”。
2行目の頭をどちらかにしようかと悩み、迷った末に前者を選ぶ。
相談というワードを挿れてしまうと身構えられるかもしれないからだ。
だから敢えて平易で一般的な言葉に置き換える。
送信完了、のメッセージを確認してディスプレイを閉じる。
(五月蠅いな…………)
食堂は生徒たちでごった返している。
それら一人ひとりが無遠慮に出している声が煩わしい。
つかさたちから離れる分には適した場所だが、気分を落ち着けるには極めて不向きだ。
こなたはそっと立ち上がり、食堂を出た。
行くあては――ない。
昼休みが終わるまで時間を潰す場所を探すだけだ。
別れの挨拶もロクにせずに、こなたは乱暴に鞄を引っ掴むと急いで教室を出た。
モタモタしていればまたつかさたちが声をかけてくるに違いない。
その気遣いはありがたいが今の彼女には苦痛でしかない。
そのような厚意を受ける資格すら、自分にはないのだ。
と考えればつかさは聖母にも劣らぬ慈愛の持ち主である。
(ごめん、つかさ……)
後ろで何か叫んでいる彼女を捨て置くように、こなたは廊下を急いだ。
106 :
麾く煉獄41:2009/09/01(火) 21:45:21 ID:Sn1nC9Kk
発信者:日下部 みさきち
件名:Re:
本文:いいぜ。じゃああの店の前で
という素っ気ない返信が5時間目の終わりに来た。
あの店とは言うまでもなくファミレスのことだ。
良かった、とこなたは安堵する。
返事がなければどうしようかと思っていたところだ。
蟠る生徒たちを避けて足早に校門を出る。
自分から誘っておいて遅れるわけにはいかない。
彼女は持ち前の脚力を活かして通学路をひた走る。
会ってどうするかと特別に何かを考えていたわけではない。
慰めてほしかったのかもしれないし、激励してほしかったのかもしれない。
頼りになるハズの身内があれでは、こなたの心休まるところは家にはない。
「み……みさきち…………!!」
呼び方は元に戻っていた。
みさおはすでにファミレスの前にいた。
会話の中でころころと表情を変えるこの少女は、なぜか物憂げな様子だ。
「お、来たか」
チャームポイントの八重歯を覗かせ、みさおが笑う。
「ごめん、こっちから誘っておいて遅れちゃって……」
今のこなたにはすっかり謝り癖がついてしまっている。
無意識に会話の始まりに詫びを持って来ることで免罪を図ってしまう。
「気にすんなって。それじゃ行こうぜ」
さらりと躱してみさおが歩き出す。
が、その方向を訝しんだこなたはすかさず、
「えっ? どこ行くの?」
率直に訊ねた。
みさおの足は店ではなく、それを横切るように南に向いている。
「ああ、今日はあっちの公園で話そうぜ」
こなたの問いに立ち止まることも振り返ることもせず、歩みをそのままに彼女は答える。
「お金なら私が出すよ。この前はみさきちに御馳走になったし――」
「いや、そうじゃねーんだ。まあいいから公園行こうぜ」
「…………?」
こなたはみさおが金欠なのかと思ったが、どうもそうではないらしい。
他にファミレスに踏み込めない理由があるのだろうか。
考えてはみるのだがもちろん答えは出ない。
(………………?)
結局、こなたはみさおの後を付いていく格好となった。
通りから少し外れたところに小さな公園がある。
今となっては砂場や遊具で戯れる子供などほとんどいない。
そこそこの年配がベンチに腰掛けて憩っているくらいである。
先導するようにみさおが近くにあったベンチに腰をおろした。
それに倣うようにこなたもその横に座る。
傍から見れば2歳ほど離れた姉妹のように見える。
「で、話って?」
みさおが空を見て問うた。
なぜファミレスでなく公園なのか、こなたは逆に訊き返したかったが、
「うん…………」
考えがまとまらずに生返事で答えるしかなかった。
どこかからサッカーボールが転がってきた。
その元をたどると数人の男の子がこちらに向かって手を振っている。
立ちあがったみさおがボールを蹴った。
107 :
麾く煉獄42:2009/09/01(火) 21:46:32 ID:Sn1nC9Kk
黒白の球は美しい放物線を描いて空高く昇り、やがて重力に従って落下する。
着地したところはちょうど男の子たちの目の前。
絶妙なコントロールを見せたみさおは大きく手を振った。
ボールを手にした男の子たちは慇懃にお辞儀をすると向こうの広場に走り去った。
「あのさ…………」
その様子を見ていたこなたは意を決したように声をかけた。
「ああ」
みさおも再び腰をおろす。
「私、昨日かがみに謝ったんだ」
「………………」
「今まで本当に悪かったって。もう揶揄ったりしないって……かがみに迷惑かけないようにするって」
「ふーん」
青空の下、独白するこなたに対してみさおの相槌は素っ気ない。
「で、どうだったんだ? 柊の奴」
「うん、許してくれたよ。かがみ、テストのことでイライラしてたからって。自分も悪かったからって…………」
「なるほどな」
「かがみは……許してくれたよ……でも、でもまた怒らせちゃった…………」
そこで言葉を切る。
先を続けるのが憚られる。
一気にまくし立ててもよかったが、喉奥に何かが閊えたようにこなたは言葉を紡げなかった。
「………………」
「………………」
暫時、無言。
生暖かい風が足元を撫でるように過ぎる。
「…………で?」
どこか拗ねた様子でみさおが問う。
「…………?」
「犯罪者の子が私に何の話があるんだよ?」
「………………ッッ!?」
こなたは驚愕の瞳でみさおを見た。
「はん……ざいしゃ……って…………?」
うまく発声できない。
顎骨が小刻みに震え、位置を定められない舌はこなたの意思を空気の振動として放つに至らなかった。
「だから痴漢の子って意味だよ」
今度は少し怒った口調でみさおが言う。
瞬間、こなたは虚空に投げ出されたような感覚を味わった。
途轍もなく高い所から、この世界の最も低い所に突き落とされたような妙な感覚。
青空に黒雲が迫った。
その先端が太陽に差しかかり、地上を遍く照らしていた光の一部が無惨に切り取られる。
「聞いてたの…………?」
こなたはかろうじてそれだけ訊く。
みさおはバツ悪そうに余所を向き、
「まあな――」
口先だけで答えた。
「最初から……? 最初からずっと聞いてたの……?」
震える声は2人の僅かな距離を蛇行しながら届く。
この問いに特に意味はない。
こなたが本当に知りたい事はつい先ほど、曖昧ではあるが答えを得ている。
「ん〜、まあ聞いてたかって言われたら聞いてたんだよな」
みさおがどこかのファンドのオーナーみたいな言い方をした。
「いやさ、柊連れてカラオケにでも行こうと思ってたんだけどさ、断られたんだよな。
あやのも事情があったし……。でさ、そのまま帰ろうとしたら、なんか柊の様子がおかしかったからな」
不審に思って後を尾けたという。
「………………」
つまりかがみとのやりとりも一部始終を見聞きしていたことになる。
「ビックリしたぜ。体育館裏に行くんだもんな。何があったのかって普通、気になるだろ?
柊ってそういうところは慎重だからさ。まさかチビッ子がいるなんて思わなかったけどな」
今のみさおは口調に緩急も付けなければ、表情に変化も見せない。
喜怒哀楽を感じさせない語りは、こなたに不安といくらかの期待をもたらしてくれる。
しかし期待を抱くのは誤りである。
108 :
麾く煉獄43:2009/09/01(火) 21:50:18 ID:Sn1nC9Kk
みさおは先ほど、こなたに対して”犯罪者の子”と呼ばわった。
この言葉を彼女が取り消さない限り、こなたを待ち受けるのは闇しかない。
「で……まあ聞いちゃったんだよな。チビッ子の親父さんが妹に痴漢したって話…………」
そこでもみさおは顔色ひとつ変えない。
妙に淡々と語る口調が不気味だった。
「順番がおかしくなったけど――」
みさおは目を細めた。
「本当なのか? 親父さんが妹に……したのって」
こなたはすぐには答えられなかった。
「柊の勘違いってこともあるだろ。まだチビッ子の言い分を聞いてないから私も勝手なこと言えないしな」
例えばここでウソを吐き、同情を求める方法もあった。
かがみの言いがかりだ、父親は無実だと開き直ることもできた。
「うん……本当なんだ。私も信じたくないけど。でも、でも昨日お父さんに聞いたらそうだって――」
だが彼女はそれをしなかった。
これ以上、罪を重ねたくはなかったのだ。
ここで虚偽を述べたところで、表面上はみさおの援けを得られても根本の解決にはならない。
「そっか…………」
みさおは天を仰いだ。
「それじゃ柊が怒るのも無理ないよな。妹のこと考えたらなおさら大変だったと思うぜ」
「………………!!」
こなたはグッと拳を握った。
ここにきてみさおはかがみを擁護する発言をした。
ということはつまり――。
「柊に同情するぜ」
こうなる。
「そ、そう……そうだよね…………」
こなたには苦笑いを浮かべるしかできない。
同時にファミレスではなく公園を選んだ理由も漠然とだが見えてくる。
「事情知るまでは柊がいつまでも怒ってるって思ってたけど。分かっちまったらもうそうは見れないんだよな」
「………………」
「それにチビッ子――」
「…………?」
「柊に内緒だって話、喋っただろ?」
「………………!?」
そうか、とこなたは思い当たる。
みさおが最初から話を聞いていたのなら、自分が口を辷(すべ)らせた事ももちろん知っている。
そもそもそれがキッカケでかがみの怒りを再燃させてしまったのだ。
「そういうところが周りを不愉快にさせてんじゃねーのか?」
「うっ…………」
反論の余地はない。
”周り”とはもちろんかがみのことであるが、今はそれにみさおも含まれているのだ。
「チビッ子のせいで柊に口が軽い奴だって思われたかもしんねーな」
みさおは憮(がっかり)したように俯く。
「――まあ喋ったのは事実だけどさ」
どうも当てこすりにも聞こえる彼女の言葉に、こなたはキュッと縮こまった。
「………………」
みさおが徐に立ち上がった。
どこ行くの? の一言がこなたの口から出てこない。
「悪りぃけど、そろそろ帰るぜ。誰かに見られるかも知れないし」
「えっ…………」
みさおの放った言葉はこなたの心を鋭く抉った。
すっかり小さくなっている彼女に、ひと欠片の憐憫もかけてはくれない。
単純明快な日下部みさおは、何物をも差し置いて直截的にこなたを援けようとしたのと同じように、
ひとたび愛想を尽かせばその翻しもまたバッサリと斬り捨てるように行う。
「あんまりチビッ子と一緒にいるの、他人に見られたくないんだよな。柊にも悪いし」
「――――ッッ!!」
あの時に近い。
みさおはかがみと同じように泉こなたを見限った。
こちらの場合は一度は彼女を救おうとしたから、見捨てたというほうが適切だ。
が、それが意味するところにさしたる違いはない。
109 :
麾く煉獄44:2009/09/01(火) 21:53:16 ID:Sn1nC9Kk
「じゃあな、チビッ子」
最後の最後までその渾名(あだな)で呼ぶみさおに、こなたは心を折られた。
どうせならかがみのように冷たく切り離してくれたほうがよほど救われたかもしれない。
中途半端に情けをかけられたようで、こなたは悔しさのあまりに涙を流した。
これが日下部みさおの、こなたに対する精一杯の優しさであることに追い詰められた彼女は気付かない。
みさおは当事者ではないから。
いくら痴漢の娘だからといって口汚く罵ることはできないし、その資格を持っているわけでもない。
親の犯した罪を娘にすり替えて責めるなどという卑怯な手段は、快活な彼女は決して用いない。
みさおはその部分を責めることはしなかった。
しかし柊かがみの存在を考えた時、こなたを庇護する理由もなくなった。
妹の件でどれほど深い傷を負ったか。
それを知ってしまったのだ。
だからみさおはこなたを責めずにかがみを庇う方法を取った。
つまり決別である。
”チビッ子”
親しみを込めていたハズのこれはもう愛称ではない。
痴漢の娘に成り下がった穢れし少女に対する蔑称。
言いかえればこの言葉は”矮小”だ。
つまり丈が低く小さいことであるが、これはあくまで見かけのこと。
今、こなたはこの”チビッ子”という言葉を、”人間として小さい者”として受け止めている。
「みさきち…………」
この呟きももはや彼女には届かない。
みさおは逃げるように公園を出て行く。
悔いしかなかった。
自分の軽率さを呪うだけだ。
あの時、みさおは執拗に責め立てるかがみを殴ってまで自分を庇ってくれた。
見知ってからさほど時間も経っていなければ、交誼を結ぶこともしなかった自分に対して。
2人の仲を考えればあの場合、みさおはかがみの肩を持っても不思議ではない。
むしろそのほうが当然とも思える。
それを敢えて自分を庇ってくれたというのに。
「バカだよ……わたし……ほんとにバカだ…………」
口は災いの元だとつい最近、痛いほど思い知らされたハズなのに。
喉元を過ぎ去らないうちにこなたはその熱さを忘れてしまっていた。
ほんの僅か、事態が良い方向に向かいかけただけで彼女の緊張は一気に弛緩し、結果――。
無用の口舌を動かして同じ過ちを犯す。
「…………かがみ…………」
こなたの心は襤褸布のように無惨に引き裂かれている。
その殆どが自分の播いた種だという自覚を、彼女はちゃんと持っている。
持っているからこそこなたはどうしようもない憤りと悔恨の念に囚われ続けるのだ。
「ふふ…………」
日が沈み、冷たい風が嬲る。
サッカーをしていた子供も休憩していた年配の姿ももうない。
こなたは嘲笑した。
「なんだ……簡単じゃん……」
だが直後、その笑いは欣喜に変わる。
この苦痛から解放される方法を見つけたのだ。
気が変わらないうちにその方法を実行しなければならない。
薄暗くなった公園をぐるりと見廻してから、こなたはそっと立ち上がる。
視界の隅に黒猫がいた。
黒猫は翡翠色の瞳を一瞬だけこなたに向けたが、すぐに興味なさそうに茂みに消えた。
(はは……猫にも嫌われてるんだ…………)
もはや無感動のままに、こなたは公園隅にあるトイレに入る。
(汚い私にはここがお似合いだよね…………)
誰も管理していないのか電球は切れており、あちこちに埃が溜まっている。
一歩踏み出すごとに塵埃が舞い上がり、カビ臭さが鼻腔を貫かんと迫ってくる。
110 :
麾く煉獄45:2009/09/01(火) 22:08:34 ID:Sn1nC9Kk
「恨むよ、お父さん――」
一番奥の個室に入る。
錆だらけの鍵をかけ、その場に蹲る。
ひんやりと冷たい。
不愉快な臭いがまとわりつく。
しかしこなたはそれに妙な心地よさを覚えた。
痴漢に奔った父親を持ち、何の因果かその被害者と級友になった。
その級友を何かにつけて揶揄い、さらに双子の姉までも嘲弄した。
そのくせ自分は義務のほとんどをその姉に押し付け、勝手気儘に振る舞ってきた。
やがて姉は絶縁を申し出、再三の謝罪にも耳を貸さない。
姉を奪い合った好敵手のとりなしで何とか関係の修復に漕ぎ着けるも、不用意な発言から怒りを再燃させてしまう。
挙句に妹が痴漢に遭ったこと、その犯人が自分の父であったことを告げられる。
最後まで自分を庇ってくれた好敵手ですらその事実を知り、己の軽率さも加わって自分の元を離れた。
「はは……ははは…………」
無意識に笑っていた。
この現状があまりにも可笑しく、彼女は嗤うことで自分がまだ生きていることを確かめる。
過失とはいえ、外には自分を支えてくれる者はいなくなった。
みゆきやゆたかなら慰撫してくれるかもしれないが、それも真実を知るまでの間だ。
汚らわしい男の血を継いだ娘など、まともな精神の持ち主なら敬遠したくなる。
つかさだけは表向きそうではなかったが、今となってはこなたに近づくことすらかがみが許さないだろう。
そして――。
家に帰れば堕ちた男がいる。
自由人という立場の彼は、自由の意味を超越して不埒な行為に及んだ。
一時の感情に負け、生涯愛を貫き通すハズだったかなたを忘れ、陋劣な男に成り下がった。
(お父さん…………)
自分がそんな男の血を引いていることが呪わしい。
が、今こうしていることの原因全てをそうじろうに押し付けるつもりはなかった。
こなたにも幾つもの落ち度があったからだ。
結局、父娘そろって軽率で蔑まれるべき人間だったと考え至る。
「なあんだ…………」
そう思えば不思議と納得できる。
自分の浅学、迂闊なところ、浅はかさや趣味嗜好。
全てはそうじろうのもの。
しっかりと父親譲りの自慢の娘に育っているではないか。
彼女が彼から受け継いだ特質はそのどれもが”愚”という一文字に置き換えられる。
「ちゃんとつかさに謝っておくべきだったな……かがみとみさきちにも…………」
そうは思いながらも、今さらどんな顔で会えるだろう。
きっと直接顔を見ずに済む方法で謝罪の意を伝えたところで、もはや誰の心にも届かないに違いない。
「みさきちにも…………」
ほとんど麻痺した神経を繋ぎ合わせるように、こなたは思考を巡らせる。
何故みさおにメールをしたのだろうか?
今後のことについて相談するためだろうか?
彼女ならかがみとの付き合いも長いから、名案を思いつくだろうという期待があったからだろうか。
(違う、違うんだ……私は結局、慰めて欲しかっただけなんだ…………)
自分の矮ささをまた自覚する。
(何度も私を助けてくれたから……甘え癖がついちゃってたんだ……)
どこまで自分は愚かなのだろう。
考えるまでもなく、みさおが自分を助ける義理はない。
(優しい言葉をかけて欲しかったから……)
彼女が本当に味方をするべきは立場からしてもかがみのハズだ。
それを自分にはない寛容さでもって支えてくれただけだというのに、それに甘えるなど傲慢極まりない。
”そういうところが周りを不愉快にさせてんじゃねーのか?
「はは……”そういうところ”だらけだよ……私は……」
心に生まれた闇はまずその心を食い荒らし、残酷な牙を宿主にあてがう。
111 :
麾く煉獄46:2009/09/01(火) 22:09:23 ID:Sn1nC9Kk
(あ〜あ…………)
何度目かのため息をつき、こなたは目を閉じた。
最後の最後まで自分だけが何も知らなかったことに、彼女は今になって憤りを感じた。
もちろんその対象は自分とそうじろうである。
(お父さんのせいで――!!)
元凶はそうじろう。
しかしその罪の重さを倍加させたのは自分自身だ。
(でも……お母さんにも悪いんだよね、これって。せっかく産んでくれたのに……)
こなたはふと写真でしか見たことのない母を想い起こす。
彼女が自分の命を賭してまで産み落とした新たな命。
それが今、自らの意思で終わりを迎えようとしている。
(だけどさ、もう生きていたくないんだよ、お母さん。私たち、周りに迷惑かけてばかりなんだよ……?
ずっとずっと……私たちのせいでさ……ねえ、お母さん…………)
そろそろこなたから五感が奪われ始めた。
彼女は疲れているのだ。
辛辣な現実の連続が精神を容赦なく蝕んでいく。
その責任の所在がどこにあるかに関係なく。
心を蝕み、悉く食い荒らしていく。
「ごめん……なさい…………」
こなたの意識は途切れた。
今夜はここまでです。
何の関係もありませんが、ハイマスカットという菓子を見つけました。
ヨーグレットに劣らないほど美味でした。
それではまた。
当て馬になることの多いみさおをまともに動かしてくれてる&持ち上げてくれてるので
みさお好きな自分にとってはありがたい小説です
だよね。二次創作だとみさお、弄られキャラになる事多いよね。
そうじろうの最後の言葉が気になる。
実はつかさと出来ていたなんて裏話があるのでは、とひそかに予想
喜びとしてのイエロー
憂いを帯びたブルー
どうでもいいけど、パンジーの匂いってキツイよね。
なんか頭くらくらする。
>>112 話は面白いけど難しい漢字を使い過ぎで凄く読み難いです。
みんながみんな貴方みたいに漢字力がある訳じゃないんだからもう少し簡単な漢字を使って欲しい。
それとも馬鹿は読むなって事ですかね?
>>117 普通に読めるものばかりだと思うが。読み方知らなかった物があっても推測で読めるし
どんだけ勉強嫌いなんですか
>>118 あんたに言ってないし読めないとも言ってない。。
俺は読み難いと感じたの。勉強嫌いとか勝手に決め付けないで。
漢字力は人それぞれでしょ。
>>117 読めないなら辞書で調べればいいだろうが
いちいち言う事か?
読みにくい(笑)漢字力(笑)
だからあんたに言ってない、作者に希望を述べただけ。
それが何か悪いのかよ?
作品は読んでもこんな気分悪いとこにもう二度とレスしない。
123 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2009/09/02(水) 20:21:54 ID:/hz8KHaG
表記の仕方って文章の上じゃかなり重要なことだから
読めないから簡単にして とかはあんまり言わないほうがいいっていうか
言いたきゃいってもいいけど自分の思い通りになると思わんほうがいいあるよ
夏休みはもう終わったのに
>みんながみんな貴方みたいに漢字力がある訳じゃないんだからもう少し簡単な漢字を使って欲しい。
>それとも馬鹿は読むなって事ですかね?
こういう気持ち悪い言い方が悪い
確かに。
正直自分も「アレ?今回やけにムズイ字多いな」
と感じたクチだけど、わざわざあんな卑屈な言い方をする必要は無いと思う。卑屈が映えるのは困り眉毛の美少女だけ。
こういう奴が荒らしに変貌するから性質が悪い
>>113 >>114 こちらのスレで何度かSSを投稿しているうちに、みさおが好きになりました。
公式にはそういう設定でしょうが、彼女は体育会系ではないですよ。
そう思う理由はいくつかあります。みさおは運動が得意なだけなのです。
背景にするにはあまりに勿体無い。
漢字の話。
そもそもタイトルからして難読なものばかり選ってますからね……。
難しい問題ですね。
一応、特に難しそうなものにはルビを振ってます。
平成も21年を過ぎたのだから時代に合わせて平易な文章にしたほうが、
あるいは読みやすいのかもしれません。
>>117の方には申し上げたい事もあるのですが、読み手側にそういった意見があるという点については
真摯に受け止めたいと思います。
過ぎてない。平成21年真っ只中だよ。
おおっと揚足取りみたいになってしまった。スマートじゃないな、我ながら。
まぁ難読熟語くらい、いーんじゃないの?
正直、難読であるのは問題ない。鬱陶しく思うのは、學とかソレ系。
固有名詞に使われる分には問題ないけど。
あとアレだ、横文字乱発されるよりマシじゃん?
旧字体ですね。
さすがに変換するのが手間ですし、字体が違うだけで意味は同じなのでそれはしません。
たとえば「わざわい」という言葉ひとつとってもそれを表すには、
「災い」「禍」「厄」「殃い」といろいろあって、どれも意味が違います。
そういう違いを出すために読みの難しい漢字が出てきてしまうのです。
横文字の乱発は……場合にもよりますが多用すると目で追うのが大変ですね。
読みづらいと思ったことないよ
133 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2009/09/03(木) 00:38:12 ID:lxWfVxT0
や、だからさ
難読漢字使うのとかって行ってみれば漫画家でいう絵が濃い人みたいなもんで
ある意味その作者の作風そのものなんだからさ
難読つかうなってやつは、ジョジョの作者に絵がややこしいから簡略化しろっていってるようなもんなわけよ
つまり無視していい
>>117 発想を逆転させるんだ。
知らない漢字とその意味を勉強する切っ掛けが出来て知識を増やせてラッキーだった、と。
それが出来ないならお前さんにはまだ読むには早いと言わざるを得ない。
>>125>>127その他煽ったら荒れる事に気付かない奴の方が遥かに性質が悪い。
このスレに来る人間に、性質の良し悪しなんて求めやしないさ。
事情はそれぞれ違えど、自殺に惹かれてんならそれでいーや。
てーかJEDIのSSは凄いなぁ。
迫力がダンチ。漢字含有率の多さも関係してんだろーな。
>>133 ジョジョ読めない理由がそれです^^
136 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2009/09/03(木) 05:38:08 ID:lxWfVxT0
>>135 スレチだが今やってる7部のSBRは大分綺麗な絵になってるぞ
つーかなんつーか外人の顔を見事に漫画で描いてる
そっから降りてけばいつの間にか一部とか違和感なく読めるぜ
>>134 ここに投下されるSSを読む際、僕もその姿勢で文章を追っています。
特に中尉さんの作品には表現技法から語彙まで学ぶことが多いです。
>>135 そう言って戴くと恐縮至極です。
その評価に能うだけの結末にしたいと思います。
JEDIのSS楽しみすぎて眠れず何度も来てしまう
早く読みたいよJEDI
あなたの才能が羨ましい
かがみに何かしらのしっぺ返し期待しているが、無理かな
事情はどうあれかがみもむかつく
>>135 >自殺に惹かれてんならそれでいーや。
俺はまるっきり惹かれてない。
俺はこなたを虐めたり自殺させたりするこのスレ(と言うより住人)自体が大嫌いだった。
今でもこなたを虐めたいとか言ってる奴は自分がされたらどう思うか考えた事あんのか?と嫌悪してる。
もしこなた本スレでAA貼って荒らしてる奴もこのスレの住人かと思うと吐き気がする。
じゃ何でこのスレ見てんだ?と言われそうだが、中には面白い作品もあるんでそれを読みに。
特にJEDI氏の作品は好きな作品が多い。(生理的に嫌いな作品もあるが)
叩かれる事を覚悟で書いてるが、俺みたいな奴も居るのだよ。
>>139 俺も似たようなもんだよ。
ここはキチガイの集まりかと思ったがどうしてどうして面白い作品も沢山ある。
受け売りだが難しい漢字も学べるし。
俺の一番好きな作品は「トモダチって時間じゃない」
wikiに上げてくれと何度もお願いしたの俺。
上げてくれた人ありがとうございました。
>>139 こなたが実在の人物だったら、このスレは名誉毀損とかじゃ済まないだろうけどねw
AA荒らしとか一部を除いて、基本的にみんなこなたが好きなんだよ。
このスレからこなかがスレに移った人もいるみたいだし。
まぁ確かに人が死にたがるネタで盛り上がるのは良い趣味とは言えないが、それは2次という事で割り切ってるんだよ。
笑ってるこなただけじゃなく鬱なこなたも見てみたい人もいるんだよ。
ってか、実在の人物じゃないからこそ、リミット外して騒げるってのもあるかな。
自分がされたらどう思うか、という他者への共感を行動の制動装置として機能させるのは、
あくまで相手が三次元の相手の場合のみに発揮させてる。
見も蓋もないけど…二次元キャラに対してそーゆーのって、無意味だと思うから。
二次キャラに感情はない。救いだって、こちらの都合に合わせて、機械仕掛けの神にお任せできちゃうから。
>あくまで相手が三次元の相手の場合のみに発揮させてる
あくまで三次元の相手の場合のみに発揮させてる
>>140 その作品読んでみた
面白かったけど、やっぱり酷い話しだね(笑)
三次じゃ無理だけど二次だとOKというのは、程度の差はあれど、
人間の嗜虐的な性質が、ちょうど満たされる範囲内だからかも
だからといって、こういうのがめちゃめちゃ大好きってはっきり言う人は、リアルでもいけそうな危ない人だと思うけど
逆に、こういうのを書く筆者の場合、やっぱりどこか病んでる部分があるのかな?
>>142 これが例えばスクイズの伊藤誠とかだったら、幾ら自殺ネタで盛り上がっても逆にマンセーだったりするんだろうけどねw
好きなキャラだと、どうしても2次だと頭では分かっていても感覚的に、こんな非人道的なネタを思い付くなんて許せない!って思う人もいると思う。
>>139はこういうタイプなんだろうね。
只、俺の今までこのスレで色々な作品を読んだ感想だけど、こなたなんて所詮2次のキャラなんだから殺したって何したって構わない、としか思ってない人が書いてる作品はやっぱり作風に現れてて読んでいて面白くない。
逆にこなたってキャラその物を好きな人が書く作品は、こなたが鬱になっていく描写が丁寧に書かれていて読んでいて面白い。
今晩、完結させます。
レス数が多くなるので間に規制かかると思いますが宜しくお願いします。
今やってるのって、世界狂えや法破れやって作品にあった話し?
みなさん、こんばんは。
本日分の投下参ります。
149 :
麾く煉獄47:2009/09/04(金) 21:30:07 ID:vuGyr2zl
「みさちゃん…………」
今にも泣き出しそうな顔であやのが呼ぶ。
「なんて言ったらいいか……」
「あやの…………」
臨時のホームルームが終わり、生徒がまばらになった教室で。
2人はほとんど言葉を交わすことなく見つめ合っていた。
が、何となく気まずくなってあやのが視線を逸らす。
「信じられないわ。泉ちゃんがこんな……」
「ああ…………」
一方でみさおもまともにあやのの顔を見られなくなった。
・
・
・
・
・
朝の臨時のホームルームでひかるが告げたのは、B組の泉こなたの死だった。
昨日の夜、彼女がいつまで経っても帰宅しなかったため、そうじろうはまず学校に連絡した。
連絡を受けたななこはすぐにつかさたちに確認したが、心当たりはないという。
こなたの交友関係から当たったななこはいつもの3人には連絡していたが、みさおとも繋がりがあった事に気付かず、
そちらには何のアプローチもしていなかった。
ひとまず教員たちが近隣を探したがいっこう見つからない。
ついに手に負えなくなり警察にも捜索願を出した。
こなたが公園のトイレで発見されたのは未明のことである。
調べでは衰弱死ということで片づけられているが、不審な点がいくつかあった。
ひとつは殆ど餓死に近いこと。
体内からはその日に食べたと思われるパン類が検出されている。
栄養状態にも問題はなく、たった一晩でここまで衰弱するなどあり得ないことだ。
さらに奇妙なのは彼女が自殺を試みた痕跡がある点だ。
首にうっすらと絞めた跡がある。
指紋照合等の鑑識の結果、こなた自身が首を絞めた際にできたものだと判定された。
自分の首を絞めて自殺を図ったが、その前に衰弱が進み窒息死は免れた。
不可解ではあるが、警察の判断は概ねこうである。
・
・
・
・
・
「公園……こうえん…………」
ひかるから事情を聞かされたみさおは、囈言(うわごと)のようにそれを繰り返した。
「ねえ、みさちゃん……」
あやのが袖を引っ張る。
同校の生徒が死亡したということで陵桜は3日間の臨時休校を決めた。
生徒らの動揺を落ち着けるためでもあり、警察・マスコミへの対応等処理するための時間である。
ホームルームではひかるが近々、カウンセリングルームを設けることを告げた。
こなたの死の状況がまだ判然としておらず、もし彼女が何らかの悩みを抱えての結果あのような行動をとったのであれば、
学園としてはとるべき妥当な措置ではある。
今回の件で生徒たちにも衝撃が伝播し、精神的に苦痛を受ける者も現れるだろう。
そのためにカウンセラーを当面の間、常駐させるというものである。
みさおの定まらない視線が一度だけあやのを捉えた。
続いてかがみはと教室を見渡してみるが、彼女の姿はどこにもない。
(妹のところに行ったのか…………)
かがみは今、どんな気持ちなのだろうとみさおは考えてみた。
嬉しいのだろうか?
それとも少しくらいは悲しいと思っているのだろうか?
あるいはすでに何の情もなく、赤の他人の死として受け流してしまうのだろうか?
「みさちゃん、大丈夫? なんだか顔色が……」
「あ、ああ……? うん、大丈夫だって」
血の気の引いたみさおが繕うように笑ってみせたところで、却ってあやのを心配させるだけだ。
150 :
麾く煉獄48:2009/09/04(金) 21:31:24 ID:vuGyr2zl
「で、でも…………」
「悪りぃけどさ、先に帰っててくんねえかな?」
「えっ――――?」
あやのは返答に窮した。
みさおに遠ざけられるのはこれが初めてだ。
何もかも正反対なのにこれまで仲良くやってこられたのは、互いに無いものを補い合えるからだ。
だからみさおにこうして離れられると、自分の持っているものに価値がなくなったからではないかと心配してしまう。
「え、ちょっと、ねえ……!!」
あやのの呼びかけを無視して、みさおはふらりふらりと教室を出て行った。
すれ違う生徒たちの笑い声に苛立ちを覚えながら、みさおは体育館裏に来た。
なぜここなのか、彼女にも分からない。
ただほとんど勝手に足が自分をここまで運んで来たような感覚だ。
しかしみさおがここにやって来たのは偶然でもなければ奇跡でもない。
「柊…………」
我に返ったようにみさおが目の前の少女を呼んだ。
「日下部、なんで……?」
振り向いたかがみの瞳は潤んでいた。
それを慌てて拭うが少し遅すぎたようだ。
「泣いてたのか?」
「バ、バカ! 泣いてなんかないわよ!」
「ウソつくなって。泣いてたんだろ?」
「………………」
「………………」
「………………」
「………………ッ!?」
ドン! と軽い衝撃の後、みさおは胸に飛び込んできたかがみにバランスを崩しそうになる。
「どうしよう……どうしよう…………!!」
かがみの目からまた涙が零れた。
醜態を晒すことも厭わないで、かがみは叱られた子供のようにわんわんと泣いた。
「私が……私があんなこと言ったから……! こなた……こなたがぁ…………ッッ!!」
「ひいらぎ…………」
「私のせいだ……私のせいで…………」
嗚咽まじりの悔恨を聞きながら、みさおは安堵した。
この少女は決して残忍でもなければ、冷酷非情でもない。
自分がよく知っている柊かがみと同じように、真面目で情に厚く、そして優しかった。
だから彼女はこんなに泣いているのだ。
こなたを死なせてしまったのは自分だと。
彼女はたしかにこなたにきつく当たった。
が、それは愛しい妹を想ってのこと。
これまでずっと抱えていたものを抱えきれなくなり、一気に外に出てきてしまったのだ。
(柊…………)
かがみの、こなたへの接し方は確かに冷たかったかもしれない。
しかしだからといって、死んでほしいとまでは思ってはいなかった。
こなたにそこまでの罪はない。
その点は誰よりもこのかがみが一番よく分かっていたハズなのだ。
「私……取り返しのつかないこと…………」
かがみは泣きやまない。
泣いても悔やんでも死んだ者は戻ってこない。
「あんなこと言わなきゃよかった! あの時許してればよかったのに!」
「柊、気持ちは分かるぜ。分かるけど――」
「だって私が突き放したのよ!? 一度は許してた! こなたがメールしてきたからそこに行ったのよ!!
それで……それであいつが謝ってきて、私も”もういい”って言ったわ! 私も悪かったって。
だからもう終わってたのよ! それなのにあいつが……だから私が…………!!」
151 :
麾く煉獄49:2009/09/04(金) 21:32:25 ID:vuGyr2zl
「落ち着けって!!」
「それでまた私が怒って……!! 言わなきゃよかったッ!! ずっと黙ってたのに、なんで!? なんでよ!?
なんであの日に限って喋っちゃうのよッッ!!」
「柊っっ!!」
みさおはかがみの両肩を強く掴んだ。
「………………」
「…………ごめん」
謝ったのはみさおだった。
「私がチビッ子に喋っちまったから……妹のこと……」
こなたの死が発覚するまで、みさおはたったひとつのことに怯えていた。
かがみだ。
不用意に広げるべきではないつかさの話。
それを最悪のタイミングでこなたに漏らし、またそのこなたからかがみに伝わってしまった。
”日下部は口の軽い女だから信用できない”
かがみにそう思われたのではないかと、彼女はただこれだけに怯えた。
実際、今まで2人はほとんど言葉を交わさなかったのだ。
「柊にしても妹にしても、本当なら知られたくない話……だよな。それを喋っちまったんだ……。
……言い訳はしないから。まあ、チビッ子を慰めるつもりだったってのは間違いないけど」
「うん…………」
「柊がさ、そういう理由で勉強してんだからあんまり邪魔するなって、そう言いたかったんだよ。
あいつがどう受け止めたかは分からないけど、私はそういう意味で……その……」
歯切れが悪い。
理由はどうあれ彼女は本来なら隠しておくべき事柄を吐露してしまっている。
そのことについては素直に詫びなければならない。
「だから……ごめん……」
「いいわよ…………」
暗く沈んだかがみの声からは、本当にみさおを許しているのかどうかは分からない。
「日下部が言ったとかどうとか関係ない。私があの時、もっと冷静になればよかっただけ。
あそこまで言うつもりはなかったのに……自分が抑えられなくなったから…………」
「………………」
「こなたがあんなに何度も謝ってくれたのに、なんで許せなかったんだろう……」
肩を震わせ、かがみがしがみつく。
それを受け止めてやれるのは自分しかないと、みさおはそっとその体を抱いた。
「もうひとつ謝ることがあるんだ」
ヘンに勢い込んでみさおが言う。
「実はさ、ここでの話、聞いてたんだ」
「そう、なんだ…………」
「ああ。チビッ子もやるじゃん、なんて思って見てたんだ。あのまま元に戻るんじゃねーかって」
「でも私が! 私が突き放したから!」
「そうじゃないんだ!」
「そうなのよ! あいつがつかさに悪戯したってだけで、こなたは何の関係もなかったのに!
その娘だからってだけであんな酷いこと…………!! 最低よ……わたし……最低だわ…………」
「………………」
「だから私のせいなのよ。私のせいでこなたが…………!!」
「柊、それは違うんだって」
「違わないわよ!」
「私のせいなんだ!」
そう叫んだみさおは、不意にかがみを抱擁する資格さえないと思いなおし、乱暴に彼女を突き放した。
「……日下部……どうしたのよ…………?」
拳を握り、みさおは何かに耐えるように唇を噛んだ。
かがみが何事かと歩み寄るが、みさおは顔を合わせようとしない。
自責の念に駆られているのは柊かがみだけではない。
この日下部みさおもまた、彼女と同様に自身の言動を悔いている。
「私のせいなんだ……」
という前置きの後、長すぎる沈黙を挟んでみさおが告白したのは公園でのやりとりだ。
かがみが責任を感じる必要はない、と言わんばかりに彼女は自分の発言の冷たさを殊更に強調した。
こなたを犯罪者の娘だと断じたことも。
一緒にいるところを見られたくないと突き放したことも。
明言こそしなかったものの絶縁を言い渡したことも。
そのどれもがこなたの精神を容赦なく蹂躙し、彼女自身の死を招いたのだとみさおは言った。
152 :
麾く煉獄50:2009/09/04(金) 21:33:42 ID:vuGyr2zl
「………………」
だがそれを聞いても、だからといってかがみの気持ちが軽くなることはない。
止めを刺したのがみさおだとしても、自分が犯した罪までは消えない。
こなたが亡くなった責任を彼女ひとりに押し付けることなどできない。
「あの公園なんだ……」
いつの間にかみさおも落涙していた。
(柊……柊は何も悪くないんだぜ? 全部私のせいなんだからさ)
ぼやけた視界の中、ハッキリとはしないがかがみもまた再び涙を流しているのだとみさおは悟った。
(私がさ、チビッ子に喋らなかったらそれで済んだんだよ……。なあ、そうだろ…………?
そうしてたらさ、もしかしたら仲直りできねーまんまだったかもしれないな。
でも少なくともチビッ子は死なずに済んだハズだろ? そのほうが良かったよな……柊……)
今度はかがみがみさおを抱いた。
互いに傷を舐め合うように。
悲しみを分かち合うように。
(ケンカなんて些細な……柊にとってはそうじゃないか……妹想いだもんな、柊は……)
「柊…………」
(でもさ、死んじまったらもうケンカもできないじゃんか。チビッ子には何の罪もないんだぜ?)
「ごめんな…………」
(罪を犯したのはあいつの親父さんのほうだもんな……それを勝手に結びつけちまったんだよな……)
「ほんとにごめん……」
(それに比べりゃチビッ子なんて可愛いもんだよな。ちょっとくらいムカつくところがあったってさ…………)
「柊…………」
今となっては、こうして生きていることさえ後ろめたい。
罪のない人間が生きることを許されるとするならば、罪人は死して然るべきなのだろうか。
そもそも自分たちだって罪を犯したのではないか。
みさおは溢れる涙を止めることができなかった。
(ごめん……ごめんな、チビッ子……私がうまく仲を取り持てばよかったんだ。お前は悪くないもんな。
なのに……なんであんなこと言っちまったんだよ…………)
一度は救おうとした相手を投げ落とす行為は、事の初めから突き落とすよりも残酷だ。
絶望の淵に立つ者に一条の光明を見せつけた後、途方もなく深い闇を見せる。
それだけですでに大罪だ。
「…………ちくしょう」
後悔はいくらしてもし足りない。
(私がチビッ子を追い詰めたんだ……! だからあの公園で…………)
2人は強く強く、互いを抱いた。
体温を通じて深い悲しみと後悔の念が流れ込んでくる。
自分の愚かさ、冷徹さ、非情さが。
抱擁しているからこそ強く感じさせられる。
こんなことをしていてももはや慰め合いにもならない。
「こなた――」
「チビッ子――」
2人は同時に呟いた。
呼称に違いはあっても今、彼女たちが想っていることは同じだ。
罪を犯した男の、罪のない娘。
それをこの2人が勝手に――主に感情によって――裁いてしまったのだ。
巻き戻すことのできない時間が後悔の種を播く。
黒く荒んだかがみの心が軽蔑の雫を滴らせる。
一時の思考に踊らされたみさおの迂闊さが絶望の波を沸き立たせる。
全てが手遅れになり、彼女たちは深い深い悔恨の念の虜となった。
153 :
麾く煉獄51:2009/09/04(金) 21:34:26 ID:vuGyr2zl
絶望に囚われた者がもうひとり。
彼は仏間に正座し、亡き妻と娘の遺影の前に頭を垂れた。
「すまん……すまなかった、こなた……」
ほとんど言葉にならない。
わなわなと震える口唇が謝罪すらさせないように、愚かなこの男から言葉を奪っていくのだ。
「俺が……俺がバカだった……! 俺があんなことさえしなければ……申し訳ない……本当に…………」
男、そうじろうは久しぶりに泣いた気がした。
最後に涙を流したのはかなたの死を看取ったあの日かもしれない。
「かなた、俺はお前との約束を守れなかった……夫として父として……失格だ……なあ、かなた。
お前を生涯愛するって決めたのにな……俺は……俺は…………!!」
遺影のかなたは微笑んでいるが、今のそうじろうにはそれが侮蔑の嗤いに見えた。
実際、彼女が生きていたら蔑んでいるに違いない。
逝去した妻を忘れて娘と変わらない歳の女子に手を出し、訴えられないことを幸いに生きてきたのだ。
「すまん、全て俺のせいだ。俺のせいでこなたを苦しめた。俺があんなことしなければこなたは…………。
こなたは死なずに済んだんだ。すまん、かなた。お前の大事な子を俺が……」
この声が届いているのかいないのか。
彼は顔だけは遺影に向け、しかし写真の2人は見ずに謝罪した。
だがその最中に、彼の心の奥底に潜む悪辣さがわずかに顔を覗かせた。
(でもな、たったそれだけのことで死にたくなるのかとも思うんだよ。だってそうだろ……?
別に前科ができたわけでもないし、世間に知られてるわけでもない。当事者だけで片付く話なんだ。
そこまで思いつめるようなことじゃない。まして死のうとまで思うとは…………)
精神のどこかが腐っているそうじろうは、こういう部分だけは声に出さなかった。
もしかしたら2人の霊魂か何かが仏間にいて、自分の言葉を聞いているかもしれない。
確かめる術はないがその可能性がないとは言えない。
だから彼は詫びだけは声に出し、本音は心の奥に隠した。
どこまでも罪から逃れ、表向きは善人を演じ、裏では徳に悖る行為に奔る。
このような身勝手さが彼にはあった。
しかし彼に良心がないわけではない。
(結局俺はどっちつかずの蝙蝠だったか。家族をとることも愛人をとることもできないなんて……情けないよ)
無言で抽斗から真新しい原稿用紙を取り出す。
その1枚を丁寧に破り、部屋の隅に置いてあった小卓を引き寄せた。
『 妻に先立たれ、娘も去った今、私には生きていく気力がありません 』
たったそれだけの短い遺書。
罫線に沿って丁寧に書かれたそれはこの世に別れを告げる手紙。
かなたに宛てた物でもこなたへのメッセージでもない。
彼はとうとう自分の罪を明らかにしなかった。
こんな安っぽい遺書にさえ、自分がかつて痴漢という卑劣な行為に及んだことを明かさなかった。
(ごめんな、つかさちゃん…………)
そうじろうは静かに目を閉じた。
(約束を破ってしまったな……2人だけの秘密だとあれほど固く誓っていたのに)
死を前にして、彼は様々な想いを抱く。
間もなくあらゆる苦悩と苦痛から解放される。
こうなっては何かを考え、あるいは想うことにはもはや何の意味もない。
「こなたに追及された時、何が何でも隠し通すべきだった。
そうすればあいつも死を選ばずに済んだだろうに……。
身内がいなくなった今、誰の目も気にすることなくきみと付き合えるかもしれん。
だけど情けない話だ……家族のいなくなった俺にはもうきみ以外に拠(よりどころ)がないんだ」
彼はほとんど唇を動かさずに呟いた。
154 :
麾く煉獄52:2009/09/04(金) 21:37:36 ID:vuGyr2zl
「俺は弱い男だ。きみに甘え、負担をかけてしまうに違いない。それでは俺たちにとって苦痛しかない。
ああ、そうだ。妻に先立たれ、娘にも死なれた俺は……俺はもしかしたら死神なのかもしれない。
このままじゃ俺は――きみにまで不幸をもたらしてしまうんじゃないか……俺は……」
と、自分を追い詰めれば娘と同じ様に自ら死ぬ事に正当性を与えられる。
「俺との付き合いを深くすることで、もしきみの身に危険が及ぶのなら……きみに死なれるくらいなら……」
決断の時だ。
「きみを愛する資格は俺にはないんだ…………!!」
彼は拳を握り締め――。
(俺の望みはきみの幸せだけだ。俺はきみのために敢えて死ぬ)
懐から万年筆を取り出し、ペン先を喉元に向ける。
(ごめんな、つかさちゃん…………!!)
死に様はさすがに小説家と言えなくもないが、彼は父としても夫としても失格だ。
最期の最期にこの男が謝った相手は妻でも娘でもなく――。
――柊つかさだった。
泉こなたのための葬儀は、彼女の父そうじろうと合同という形で執り行われることとなった。
参列する者の数は多くない。
親類縁者ではゆたかとゆい、訃報を受けて駆け付けたゆき。
そうじろうが世話になっていた出版社筋の担当若干名。
こなたの友人としてかがみ、つかさ、みゆき、みさお、あやのが揃った。
葬儀にはみなみも参列する予定だったが、所用で来られないという。
尤も彼女の場合は追悼というより、ゆたかの傍にいたかっただけかもしれない。
「なんでこんな事に…………」
呟き悲しむゆいはそうじろうの死にはそれほど悲嘆してはいないようだ。
彼女はむしろこなたの死を嘆いているようである。
もちろんゆたかに対してこなたが姉同然に接してくれたからに他ならない。
「ゆたかちゃんも大変だったね」
慰撫するように声をかけたのはつかさだ。
「え、いえ、大丈夫です……」
それに対し無理に笑顔を作って答えるゆたかは、今にも倒れそうなほど青白い顔をしている。
そうじろうの遺体を発見したのはもちろんゆたかだ。
外出先から戻ってきた彼女は、玄関扉を開けた瞬間に血の臭いを嗅ぎとった。
重い空気の中、居間に倒れるそうじろうを見たゆたかは衝撃で気を失いそうになった、と言っている。
「私たちもできるだけ協力するから」
そう言うかがみの口調には覇気がない。
居候先の家主が亡くなったことでゆたかは一旦、両親の元へ戻ることになった。
通学等についてはこれからじっくり考えなければならない。
柊姉妹が代わる代わるにゆたかを慰めている間、みさおはずっと中空の一点を見つめていた。
何かひどく悔恨するように彼女は唇を噛んでいる。
その様をあやのとみゆきは不安げに見ていた。
「まさかこんな事になるとは思いもしませんでした……」
不意にみゆきが呟く。
誰に対して言ったわけではない。
が、最も近くにいたあやのが、
「そう……ね……」
無視するのも気が引けたか、当たり障りのない相槌を打つ。
「やっぱりショックよね」
「ええ、泉さんとは親しくお付き合いさせていただいてましたから――」
涙を拭って眼鏡をかけなおすみゆきを横目に、あやのはふと疑問に思う。
本当に仲が良かったのだろうか?
友人だというのなら、なぜここまで余所余所しい言葉遣いをするのだろうか。
高良みゆきというキャラクターが持つ慇懃さなら分からなくはない。
が、それを差し引いてもこの淑女の言動からは、どうも親しい付き合いをしていたようには思えない。
155 :
麾く煉獄53:2009/09/04(金) 21:38:36 ID:vuGyr2zl
「私も……って言ったら烏滸(おこ)がましいかな。泉ちゃんとは知り合って日が浅かったし」
「そんなことありませんよ」
「ありがとう。でも残念だわ」
「何がですか?」
「ケンカしたままだから――」
「…………? 峰岸さん、お2人が仲違いしていたのをご存じでしたか」
「もちろんよ。見ていて辛かったわ。ケンカしてるところなんて誰も見たくないものね」
「そう……ですね……」
「………………」
「かがみさんもお辛いでしょうね。このような別れ方では――」
(………………)
みゆきの言い方に苛立ちを覚えたあやのは、ふっと目を逸らした。
視線を向けた先にはみさおがいて、今も呆けたように一点を凝視している。
(みさちゃん…………)
あやのはこなたやその親類よりも、みさおが可哀想になった。
さして親しくなかったハズのこなたを、かがみを殴ってまで救おうとしたのは彼女だけだ。
公園での一部始終を知らないあやのの目には、この日下部みさおが神々しく映っている。
(なんでみさちゃんが苦しまなくちゃならないの…………?)
こなたの死に平然として臨めとは決して思わない。
だが見ようによっては身内以上に悲嘆に暮れているようで、それがあやのには心苦しかった。
欷歔の声があちこちから聞こえる。
「こなたぁ…………!!」
座布団の縁を掴むかがみが流す涙は本物だ、とあやのは思った。
演技でここまで慟哭できるハズがない。
その横で真っ赤な目をして遺影を見つめるつかさ。
こちらはもう流す涙も涸れてしまったのか、薄桃色の頬には何度も濡れた跡がある。
「………………」
(妹ちゃんも可哀想に……)
と思いながら、あやのは自分はここに居ていいのだろうかと考えた。
周りを見れば死者に向けて啜り泣く者ばかりだ。
かがみ、つかさ、みゆきにみさお。
勿論ゆたかやゆいだってそうだ。
だが自分は違う。
確かに見知った者の死に深い悲しみの念は抱くのだが、涙が出ないのだ。
付き合いが短すぎるのだ。
幼馴染でもなければ同じクラスでもない。
おまけにかがみを通して知り合っただけで、その後もこなたと直接言葉を交わした記憶は殆んどない。
(でもそれはみさちゃんも同じハズ――)
あやのは自分が厭になった。
似た立場にいながら、みさおのようになれない自分が堪らなく厭になった。
途端、自分は自分が思っている以上に冷たい人間なのではないかとも思う。
(そう、よね……私、別に2人のケンカを止めに入ったわけじゃないし……ううん、違う。
盗み聞きしてたのよ。本当ならあの時すぐに割って入るべきだったのに…………)
結局、何ひとつアクションを起こさず最後まで傍観者の位置を貫き通したあやのは、
泉こなたが死んでもなおその立場を変えることはできなかった。
今さらになって慟哭するのも白々しい話かもしれない。
156 :
麾く煉獄54:2009/09/04(金) 21:39:35 ID:vuGyr2zl
「くそッ…………!!」
みさおが床を殴った。
悲しさのためか悔しさのためか、大粒の涙を流して。
「日下部のせいじゃない」
かがみがそっと耳打ちした。
しかしその言葉はみさおには届いていない。
自責の念に駆られ、2人はどちらからともなく視線を逸らしてしまう。
「………………」
あやのもみゆきも、そんな彼女たちに声をかけてやることはできない。
どんな台詞も2人の前には陳腐で安っぽく、心のこもっていない下手な慰めに成り果てる。
(柊ちゃん…………)
かがみは泣き続けている。
(みさちゃん…………)
みさおは悔しそうに拳を握りしめている。
複雑な感情が入り乱れる葬儀場で。
「そうじろうさん――――」
つかさがたった一度だけ、遺影に向かってそう呟いた。
そろそろ支援しとくか
つかあれだ、繋ぎ変えてアクセスして、IDを別物にしてしまえば、
連投規制は回避できる。
面倒だから薦めないけど。
まぁ、多分これで解除される…と思う。
160 :
麾く煉獄55:2009/09/04(金) 21:59:41 ID:vuGyr2zl
「それでは私はここで…………」
「おう、寒いから気をつけろよ」
「ありがとうございます。ではお休みなさい」
「お休み、高良ちゃん」
「ここでお別れね」
「うん……」
「柊ちゃんも妹ちゃんも、そんなに落ち込まないで」
「………………」
「………………」
「また……明日な」
「うん、お休み」
「バイバイ」
「またね」
寒空の下を歩く幼馴染。
あらゆる面で対極的な2人の少女は、灰色の地面を目で追っていた。
上を向きたい気分ではない。
今にも降り出しそうな曇天を見るよりは、まだ俯いていたほうが幾分マシだ。
「なあ、あやの……」
視線はそのままにみさおが呟く。
「死んじまったらさ」
「え?」
「死んじまったら何もかも無くなるんだよな」
あやのは重い頭を無理やり持ち上げて幼馴染の顔を見た。
……憔悴しきっている。
まるでこの世の罪を自分ひとりが被ったような今のみさおからは、全く精気が感じられなかった。
「どういう……こと?」
日下部みさおというキャラクターからはおよそ想像もつかない言葉に、あやのは戸惑いを隠せない。
「殴ったら謝りゃすむけどさ……こういう時はどうしたらいい?」
「………………」
「どうしたらいいんだよッ!!」
「――――!?」
いつもと明らかに様子が違うみさおを前にして、あやのは反射的に身を退いた。
「みさちゃん……」
長い付き合いの中、みさおのこんな姿は初めてだ、と彼女は思った。
(きっと自分の所為だと思ってるのね。柊ちゃんとのケンカを止められなかったから……?)
あやのは疑問に思った。
(でも泉ちゃんが自殺してしまった理由は何? おじさんが後を追ったのは分かるとしても。
そうよ。柊ちゃんとは仲直りはしてないけれど、でもそれが自殺の原因になるの?)
ここばかりは納得できない。
たかが諍いで死にたくなるだろうか。
死にたくなったとしても、実際に死ぬことがあるだろうか。
かがみは慟哭していた。
もしあの涙が偽りだったとして、実は彼女が恐ろしいくらい辛辣な責めを続け、
こなたの精神を無茶苦茶に蹂躙したというのならまだ理解はできる。
(でも少なくとも泉ちゃんには高良ちゃんや妹ちゃんがいたし、みさちゃんも助け舟を出してた)
こなたには多くの味方がいたハズなのだ。
少なくとも敵となる人物はいなかったハズなのだ。
「私の……せいだ。私がチビッ子を――」
気がつくとみさおはそれを何度も何度も繰り返していた。
「みさちゃんの所為じゃない。ううん、誰の所為でもないわ」
あやのはそっと彼女の肩に手を回した。
(じゃあいったい何が原因なの?)
もちろん分からない。
161 :
麾く煉獄56:2009/09/04(金) 22:01:18 ID:vuGyr2zl
「誰の所為でも……」
不意に彼女は背中に冷たいものを感じた。
まさか、という想いが過ぎる。
あやのはたった今、みさおの肩に回した手を離した。
(どうしてみさちゃんは自分の所為だって言うの……?)
そこに思い至ると恐ろしい推測が立ってしまう。
本当にみさおは自殺に関与していたのではないか。
直接的か間接的か、彼女がこなたに自殺のキッカケを与えたのではないだろうか。
(ううん、そんな事ない。みさちゃんはそんな事、絶対にしない!)
そうとも。
それどころかみさおは仲裁役を買って出たではないか。
彼女がこなたの自殺に関ったとは思えない。
(だったらどうして? 仲直りさせられなかったのは仕方がなかったとしても、
泉ちゃんの死まで自分の責任だと思う必要なんてないのに…………?)
あやのは泣いていた。
こなたに対してではない。
背負う必要のない責任感に押し潰されているみさおに対してだ。
これはあやのの知っているみさおではない。
ミートボールが好きで、言動が子供っぽい無邪気な彼女とは違う。
「ごめんな、あやの……」
何の脈絡もなくみさおが謝る。
「な、に……?」
結論を得られない推測に溺れていたあやのは、不意に投げられた不釣合いな台詞に顔を上げた。
「ねえ、みさちゃん……どうしてみさちゃんの所為なの……? なんで? ねえ……」
「――私が死なせたんだ」
「なん――!?」
「私のせいなんだ、あやの。あいつを追い詰めたりしたから……ッ!!」
「どういうことなの!?」
あやのはみさおの様子がずっと前からおかしかった事に気付く。
告別式よりも前、ひかるが彼女の死を伝えたあの時からだ。
「中学の時、柊の妹にあったこと……憶えてるだろ?」
「うん……」
日下部みさおという少女は時や場合に関係なく潔い。
勉強が苦手な彼女は提出課題などがあると、すぐにあやのやかがみに泣きつく。
その時には率直に助けてくれと言う。
滅多にないがもし協力が得られない時は渋々ながらも自力で解決しようと試みる。
大抵は学力不足か、あるいは根気が足らずに挫折する。
そういう場合には素直に担当教師に頭を下げる。
彼女は決して誤魔化したり隠し事をしたりはしない。
裏表がなく、極端な性格の持ち主だった。
だから彼女はあやのに全てを話した。
かがみには悪いと思いながらも、無二の親友に秘密事を作るに比べれば罪の意識は軽い。
「そんな…………」
あやのは激しい動悸に襲われた。
彼女はみさおの言葉を全て信じた。
(泉ちゃんのお父さんが……?)
そうじろうが立件されない罪を犯した事実を信じたくないあやのだったが、
みさおの告白を信じないわけにはいかなかった。
(それじゃあ、みさちゃんが――)
こなたが死ぬ直前に言葉を交わしたのは、父でもかがみでもなく日下部みさおだ。
その部分はどうしても拭い去れない。
「柊と妹のこと考えたら可哀想で……あの時はそればっかり考えてたんだ……。
だからチビッ子の気持ちなんか全然頭になかった……! 最低だよ……!!
あいつには何の罪も無かった! 無かったんだッッ!!」
みさおは拳を握り締めた。
爪が掌に食い込んだがその痛みは今の彼女には優しすぎた。
「なのに私、あいつのこと犯罪者の子なんて言っちまった……。
本当はあいつだって辛かったハズなのに、私が……突き放したんだ。
一緒にいるところを見られたくないって……そう言っちまったんだ――」
後悔とは遅すぎる懺悔の言い換えだ。
162 :
麾く煉獄57:2009/09/04(金) 22:02:41 ID:vuGyr2zl
それをしてしまった時点で取り返しのつかない段階に立っている。
これの厄介なところは殆んどの人間にそれを自覚させない点である。
「そんな、みさちゃんが……」
あやのは無条件にみさおを庇う気にはなれなかった。
贔屓目に見ても彼女がこなたに向けて放った言葉の数々はどれも辛辣で、
自殺に追い込むに十分なだけの冷たさが宿っている。
「あいつには……あの時のあいつにはもう誰も味方がいなかったんだ」
家族は最後の砦だが、こなたの場合はその肉親が蔑むべき対象である。
加えて今回の問題を引き起こした張本人だ。
「バカだ……わたし……何も、なにも気付けなかった……ッ!!
なんでメールが来たのか……もっとちゃんと考えればよかったんだ。
あの時にはもう――あの時には私しかいなかった!! なあ、そうだろ!? あやの!!」
「み、みさちゃん、落ち着いて……」
「もしかしたら……ちがう、私はあいつを助けられたかもしれないんだ。
なのに私を頼ってきたあいつを……あいつを…………」
もはや今の彼女はあやのとは目を合わせない。合わせられない。
自分が罪深い行動をとってしまったことを、こなたの死によって厭というほど感じさせられたからだ。
「落ち着いてよ、みさちゃん。それが泉ちゃんの自殺のキッカケになったとは限らないじゃない」
「………………」
「い、泉ちゃんは、たとえば……うん、公園で話をする前から死ぬつもりだったのかもしれないでしょ?
おじさんがあんな事したんだから、そのショックでっていう可能性も――」
そう言うあやのは先ほどとは反対に闇雲にみさおを庇おうとした。
気付いたのだ。
自分にはみさおを責める資格などないことに。
遡ればこなたとかがみの諍いを止めようともしなかったし、その後もフォローらしいことは何ひとつしなかった。
みさおが密かに仲直りの機会を探って、度々こなたと連絡を取り合っているのを彼女は知っている。
それを横目で見ながらなお、彼女はその手伝いをしようともしなかった。
時間が解決してくれる。かがみもいずれは心を開く。今は見守っていたほうがいい。
そんな日和見主義とも思える持論を盾に、なんら行動を起こさなかったのは確かだ。
(私……何も知らなかった……妹ちゃんのことも、なにも……)
途端にみさおの幼馴染であることがひどく恥ずかしく思えてくる。
かがみが真実を告げた時、自分は何をしていたか?
みさおが真実を知った時、自分はどこにいたか?
「………………」
あやのは愛しい彼と2人だけの時間を満喫していた。
買い物にも行ったし、カフェで楽しく会話もした。
自分だけが何も知らなかったのだ。
デートを愉しんでいる間に局面がここまで動いていたこと。
こなたにも、かがみにも、みさおにもそれぞれの苦悩があったこと。
(私だけが何も知らなかったんだ!!)
今の今まで関与しなかった自分に、どうしてみさおを責められる。
できるとすれば――自責の念に駆られる親友を慰撫すること。
そうしている間だけ、自分も多少なりとも関っていると思い込むことができる。
こなたの自殺は防げなかったが、代わりにみさおを慰めることで罪の意識から逃れることができる。
「そんなこと……ねえよ」
みさおは今まで見せた事のない鋭い眼であやのを見た。
「…………ッッ!?」
射竦められたあやのは反射的に身を退いた。
「死ぬ気だったらメールなんてしないさ。話があるからって呼んだりしない。
でもあいつはそうじゃなかった。だから望みがあったんだ。
柊を怒らせたのは間違いないけど、別にチビッ子が全部悪いわけじゃない……」
「う、うん…………」
「悪いのはあいつの親父さんだよ。ちょっと考えりゃ分かることなのによ……。
私がうまく取り持てたら――せめてあいつが苦しまずに済む一言でもかけてやればよかった。
そうしたらさ、柊との仲は駄目でも死ぬことはなかった……そうだろ?」
163 :
麾く煉獄58:2009/09/04(金) 22:03:52 ID:vuGyr2zl
「………………」
あやのは何も言えなかった。
どう答えても彼女の言葉は軽い。
こなたの生にも死にも関わらなかった彼女には、みさおを慰める資格すらない。
「おこがましいけど、あいつはきっと私に助けを求めてたんだ。
私なら何とかしてくれるって、助けになってくれるって……だから、あの日もメール――」
そこで言葉が詰まる。
こなたからの最後のメールを、みさおは公園を出たすぐ後に消去した。
あの時はかがみ同様、冷静にものを考えられなかった。
そうじろうとこなたを切り離して考えることができなかったのだ。
(そうだ……柊のため柊のためって……チビッ子のことなんてこれっぽっちも考えなかった!!)
あやのは視線を彷徨わせた。
みさおはこなたを追い詰めたかもしれないが、では自分はどうなのか。
自殺を止められなかった点では同じではないのか。
一度は彼女を支えたみさおに比べて、自分は最後まで傍観者ではなかったか。
かがみの側にも、こなたの側にも、みさおの側にも付かなかったではないか。
そこを考えると彼女は出口のない思考の迷宮の虜になる。
「お願い、みさちゃん……」
震える声であやのが言う。
「そんなに自分を責めないで」
これはみさおを想ってではない。
「みさちゃんは何も悪くないから」
これは――彼女自身に対しての慰めだ。
みさおが自分を責めれば責めるほど、何もしなかった自分は強い罪悪感に囚われてしまう。
その罪の意識から逃れたいがために、幼馴染というポジションで最も違和感のない慰めの言葉を投げかける。
(最低なのは私のほうよ……)
みさおを慰めることで自分を慰めようとする。
それをはっきりと自覚しているあやのは自らを嘲笑った。
不意にみさおが空を仰いだ。
相変わらずの曇天だ。
だがよく見ると空を覆い尽くす灰色の雲の一部分が欠け、一条の光が降り注いでいる。
時刻は午後7時。
月は出ていなかった。
(償いはしねーとな……)
やはり日下部みさおは潔かった。
すぐ横を歩く親友の顔をじっと見つめる。
ひどく悲しそうだった。
ただ同級生が亡くなったのであれば悲しくはあっても、ここまで沈痛な面持ちにはならない。
(チビッ子とは知らない仲じゃないもんな。ましてや私が追い詰めたんだから……)
知人の死と、幼馴染がその死を後押しした事実。
その二重の事実があやのを苦しめているのだろう、とみさおは思った。
彼女にはこの程度の推測しかできない。
もっと深いところであやのが苛まれているというのに、みさおには彼女の苦悩の深潭は見えない。
「………………」
みさおが何度目か分からないため息をつく。
そして、
「あやの」
呼び慣れたその名を噛み締めるように呼び、
「――――ごめんな」
短く、簡潔に、彼女は謝った。
164 :
麾く煉獄59:2009/09/04(金) 22:05:57 ID:vuGyr2zl
葬儀場を後にし、みゆきと別れ、あやの、みさおと別れ――。
柊姉妹は家までの道をゆっくりと歩いた。
今夜はずいぶんと風が冷たい。
つかさはまだしも、薄着をしてきたかがみは風邪をひいてしまうかもしれない。
「寒くない?」
なのにこうやって気遣う役はいつもかがみだ。
「うん」
お姉ちゃんこそ、という言葉がつかさの口から出てこない。
親しい者とその親を同時に喪って、すっかり気落ちしているようである。
もちろんその想いはかがみも同じだ。
痴漢の娘だというだけでこなた自身はその罪とは関係ないし、どんな形であれ共に過ごしてきた仲なのだ。
おまけに自分が冷たく突き放してしまったから、という負い目もある。
こなたなど死んでもいい、などという冷酷無慈悲な考え方はかがみには絶対にできない。
(………………)
だが、そうじろうに関しては違う。
彼はやはりつかさに手を出した痴漢であって、その罪は消えない。
だからかがみはこなたの死は悲しんだが、そうじろうの死には何も感じなかった。
こちらも死んで然るべきとは思わない。
が、かといって生きていて欲しかったと願うような相手でもない。
「つかさ…………」
「なに?」
「こなたの事……本当に残念だったわね……」
「…………うん」
こういう時に”残念”という言葉を用いるのが適切かどうか、かがみは些か逡巡してから言った。
残念なのは自分の所作だ。
結果としてこなたを責め立てたかがみの悪辣さをつかさは知らない。
ファミレスでの一件以来、つかさはさほど深く諍いに関わらなかったからだ。
では彼女が何をしていたかというと、関係の修復よりもむしろかがみの気を落ち着けることに腐心していた。
珍しく怒りの収まらない姉の前で、下手に双方の仲を取り持とうするのは却って逆効果ではないか。
かがみは自尊心が強いから、こなたと同格に扱えば気を悪くするに違いない。
つかさだからこそそれに気付けたのかもしれない。
「こなちゃんだけじゃなくて、そうじろうさんまで……」
というつかさの呟きが空気を通して横を歩くかがみに届く。
「そう……ね…………」
適当に相槌を打つ。
そうじろうの死などどうでもいいのだが、つかさの手前それを表に出すわけにもいかず、
かがみとしてはこうやって無難な受け答えをするしかない。
(こなた…………)
全て打ち明けるべきだろうか、とかがみは考えた。
妹の知らないところで何が起き、誰が何を言い、こんな結果になってしまったのか。
わざわざ言うような事ではないかもしれない。
隠すということはつまり罪の意識から逃れることになるのだが、といってつかさに何もかも話していいものか。
かがみは悩んだ。
告白すればつかさに嫌われるかもしれない。
彼女はこなたが痴漢の娘と知っていながら付き合っていたのだから、かがみの言動はそれを邪魔するものだ。
乱暴で冷たい人間だと罵られるかもしれない。
(どうしたらいいのよ……)
妹に隠し事をしたくないかがみは、しかしその内容とそこから予想される結果に苦しむ。
(だって……つかさは…………つかさッ!?)
思考の海でもがいていたかがみは、不意に数分前のやりとりを思い起こした。
”こなちゃんだけじゃなくて、そうじろうさんまで……”
つかさの台詞だ。
どこかがおかしい。
死者を悼む気持ちが表れた、心優しい妹の呟きだ。
彼女がこなただけでなく、そうじろうの死にまで悲しみを覚えるのは単なるお人好しだからか。
それとも同情からくるものなのか。
165 :
麾く煉獄60:2009/09/04(金) 22:07:22 ID:vuGyr2zl
(”そうじろう”さん……!?)
憔悴したつかさの横顔を見ながら、かがみは違和感の正体に気付いた。
「つかさ、なんで……」
「えっ……?」
「なんであいつのおじさんのこと、”そうじろうさん”って呼んだの?」
「………………」
「なんで?」
「………………」
かがみは別につかさを責め立てようとしたのではない。
釈然としない単語が妹の口から出てきたから、その理由を確かめようとしただけだ。
が、この姉はいつになく強い口調で、追い詰めるように問うてしまっていた。
「わ、私そんなこと言った!?」
たっぷり間を置いたつかさの答えはこれだった。
彼女はウソをつくのが下手だ。
誤魔化すのも得意ではない。
18年も一緒にいるかがみにはよく分かっているのだ。
「言ったわよ」
「………………」
「つかさ、何か隠してない?」
自分こそ重大な事実を隠しておきながら、かがみはつかさに詰め寄っていた。
反射的につかさが身を退く。
その反応がまだ疑いの段階だったかがみの思考に確信を持たせる結果となった。
つかさの優しさを考えれば、そうじろうの死を嘆くところまでは分かる。
だが彼を名で呼ぶのは、友人の父親の呼称としては些か馴れ馴れしすぎる。
見開かれた眼が姉を正視できない。
「あの、あのね…………」
もはやこの場を乗り切れないと悟ったつかさは、叱られた子供のように俯いた。
「私…………」
「…………? 怒らないから言ってみなって」
「わたし…………」
「うん…………」
凝視するかがみの目を一瞬だけ見、つかさは、
「――そうじろうさんと付き合ってたの」
そう言ってから再び目を逸らした。
「なっ……に…………!?」
今度はかがみがつかさから逃れるように身を退いた。
直後、地面がぐらりと揺れる感覚に襲われ、かがみは慌てて近くの壁に手をついた。
「あんた、あんた……なんて…………?」
「私ね、ほんとはそうじろうさんと付き合ってたの」
一度吐きだしたことで吹っ切れたか、つかさは狼狽する姉に追い討ちをかけるようにハッキリと答えた。
こちらはもうかがみの気迫に怯える必要はない。
「なに、よ……どういうこと……? あいつと付き合ってたって……なに…………?」
歯の根が合わない。
「っていうかいつからなの? いつからよ……?」
この双子は今日までの多くを一緒に過ごしてきた。
朝起きてから夜寝るまで、甘えたがりのつかさがべったりとかがみに寄り添う恰好で。
学校にいる間も休み時間はたいてい顔を合わせていたし、休みの日もそれは同じだ。
たまにそれぞれの友人と外で過ごすことはあっても、柊家の中で最も長く時間を共有していたのはこの2人だ。
だからかがみにとって、”自分の知らないつかさの行動”はあり得ないのだ。
朝起きるのが苦手なのも、勉強が不得手なのも、料理が上手なのも、運動音痴なのも。
かがみはつさかの殆ど全てを知っているハズなのだ。
「初めてこなちゃん家に行った後だよ……」
うろたえる姉の姿が気の毒になったらしいつかさは、その顔を見ないようにして言った。
「あ、あんた……分かってんの? あいつは痴漢魔よ? あんたはあいつの――」
「分かってる。分かってるよ!」
「………………」
「会った時はビックリしたよ。私もあの時の事はよく覚えてたから、ほんとはすごく怖かった。
だってそうじろうさん、ずっと私を見てたから……また何かされるんじゃないかって――」
「だったらなんで…………!」
かがみの体は不自然なくらいに震えていたが、怒りによるものではない。
166 :
麾く煉獄61:2009/09/04(金) 22:08:36 ID:vuGyr2zl
怒ることもできたが、そうしたところでその感情をぶつけるべき相手がいない。
「あの日ね、お姉ちゃんもこなちゃんも寝た後……そうじろうさんと話したんだ。
すごく反省してた。あの時は警察が出てくる騒ぎになったから咄嗟に開き直ったけど、本当に申し訳なかったって。
私、最初は許せなかったけど、いろいろ聞いてるうちになんだか可哀想になっちゃって……」
「何が可哀想なのよ? あいつはスケベな痴漢じゃない」
「違うよ! 違うの……そうじゃないの……」
つかさには似つかわしくない叫び声が、かがみの追及をほんの僅か退けた。
「そうじろうさんね、早くにお嫁さんを亡くしたから寂しかったんだって。
こなちゃん、お母さんにそっくりでしょ? それが辛かったって言ってた」
「………………」
「青春とはちょっと違うけど、女の人ともっとお付き合いがしたかったみたいなんだ。
それ聞いてたら私、涙出ちゃって。あの時はいやらしい人だと思ってたけど、すごく優しい人なんだって。
よく見たら背も高くてカッコいいし。それでお付き合いすることになったの――」
かがみは気を失いそうになった。
いくら可愛い妹の行動だとしても、これだけは赦せるものではない。
彼女の説明が下手なのか、それともかがみが頭からそうじろうを否定しているからなのか。
付き合うに至った動機もいまひとつハッキリしない。
もし本当にそれだけが理由なら、お人好しにも程がある。
「つかさ……おかしいって思わないの? あんた、痴漢と付き合ってたのよ?」
今はこれだけ詰るのが精一杯だ。
常識と良識の中に生きるかがみには、つかさの考え方は到底理解できない。
身内だからとどれだけ贔屓目に見ても。
「普通の人じゃないのよ? 犯罪者なのよ、あいつは!?」
「そんな言い方しないでよ!」
つかさは初めてかがみに食ってかかった。
妹に逆らわれた経験のない彼女は、気が動転したか反射的につかさの頬を張った。
「………………ッ!?」
「いい加減にしなさいよ! なんであんな奴かばうのよ! 自分が何されたか分かってんの!?」
「分かってるよ! 分かってるもん!!」
「だったら…………!!」
怒りに震えるかがみは言葉を紡ぐことができない。
感情だけが空回りし、冷静につかさの間違いを正すことができない。
「なんで……なんでよ……! なんでこんなこと…………!」
彼女の怒りの矛先はつかさから、手近にあった壁に向けられた。
「何の為に……私が弁護士を目指してると思ってんのよ…………!!」
まだ具体的な勉強を始めたわけではない。
希望する進路は法学部への進学、というだけであってその分野の参考書にすら触れていない段階だ。
取り敢えずは日頃から勉強の手を抜かず定期考査で点数を稼ぎ、担任から合格ライン突破のお墨付きをもらう。
そこでようやく夢への第一歩を踏み出せるのだ。
「………………」
かがみが弁護士になろうと決めた理由が自分にあると知っているつかさは、さすがに何も答える事ができない。
つかさがそうじろうに痴漢され、その彼が何の咎も受けないことが真っ直ぐなかがみには今もって許せない。
彼女が弁護士になり、そしてその時に今と同じ志を持っていれば、多くの女性が救われるだろう。
無垢な妹と同じような目に遭っている女性の多くが。
卑劣で狡猾で女性を性欲を満たす道具としてしか見ない、愚かな男たちの犠牲となっている女性の多くを。
同じく女性のかがみが救うだろう。
だがそれはあくまで付随された効果。
かがみの将来の夢は、究極的にはつかさの為なのだ。
当時、つかさを救えなかった無力な己と決別する為の。
公然たる手段である。
かがみは未来の被害者を弁護することで、過去のつかさを救おうとしているのだ。
美しい姉妹愛のひとつの形である。
だがそれを――。
(つかさに……裏切られた…………)
かがみは目の前が真っ暗になった。
ずっと見てきた妹が、知らないところで自分に背いていた事実が信じられない。
これは許しがたい背信行為だ。
激しく叱りつけ、罵りたくなったがしかし、いま一度冷静になろうとかがみは深呼吸した。
「どうして言わなかったのよ? なんで……ずっと黙ってたの?」
答えによっては彼女はさらに怒りを爆発させてしまうかもしれない。
支援
168 :
麾く煉獄62:2009/09/04(金) 22:09:45 ID:vuGyr2zl
今度こそ歯止めをかけられずに妹を誹るかもしれない。
「言えるわけないよッ!」
悲痛な声でつかさが叫ぶ。
「お姉ちゃんが弁護士になりたいって思ってるの知ってるもん! その理由だってッ!!」
「つかさ…………」
「嬉しかったよ。私、お姉ちゃんにすごく愛されてるって思ったもん。だって普通できないよ。
私のために弁護士になって私みたいな人の手助けしたい、なんて……簡単にできることじゃないもん」
「…………」
「だから言えなかった! 付き合ってる相手がそうじろうさんだなんて言えるわけないよ……。
お姉ちゃんの将来の夢、台無しにするのと同じだから……」
「それで、なの?」
「うん……お姉ちゃんに気付かれないようにこっそりお付き合いしてた。胸が痛んだけど。
でもそれを知ったらきっとショックを受けると思ったから。だから…………」
つかさが真実を隠し通したかった理由が痛いほどに分かるかがみは、悔しさに唇を噛んだ。
振り上げた拳を降ろす場所が見つからない。
誰に怒ればいいのか、誰を憎めばいいのか――。
もう彼女には分からなかった。
「だから私、そうじろうさんと約束してたの」
「なに、を……?」
「”お互いに気付いていない振りをしよう”って。お姉ちゃんは仕方がないけど、
他の誰にも分からないから黙っていようって話をしてたんだ」
「付き合ってるってことを?」
「ううん、電車の中であったこと。だからこなちゃんも知らなかったハズなんだ。
知ったらきっとショック受けるだろうから。その……お父さんが痴漢した……なんて嫌だもんね」
かがみは漸く知った。
なぜ妹がこなたと普通の友人以上に親しく付き合っていられたのか。
簡単な話だ。
彼女がそうじろうを愛していたから。
その娘と昵懇の間柄になることで、間接的にそうじろうに近づくことができるのだ。
「出会いが駄目だったんだよね、きっと。普通に出会ってたら、こんな想いしなくてすんだのに」
つかさは掠れた声で呟いた。
悖徳(はいとく)感に苛まれたまま、この少女はずるずると許されざる関係を続けてきたのだ。
それが真っ当な出会いであったらどれほど良かっただろう、とつかさは思った。
少なくともかがみに対しては罪の意識を抱かずに済んだハズである。
同級生との父との交際……。
といえば後ろ暗い響きはあるが罪悪でも何でもない。
彼の妻かなたは既にこの世の人ではないから、これを妨げる者もいない。
「だけどこなちゃんが死んじゃって――そうじろうさんもいなくなった……。
こなちゃん、どうして自殺なんかしたんだろ……? お姉ちゃんとケンカしたから?
ううん、そんな理由で死ぬなんておかしいよ。受験かな……受験がつらかったからかな」
つかさは意味のないことをした。
ハッキリしない頭で懸命にこなたの死の原因を推測する。
(違うのよ、つかさ……)
だが彼女は決して真相には辿り着けない。
その原因がかがみに、そしてみさおにあるなど彼女は知る由もない。
そもそも死の理由の候補から彼女たちは真っ先に除外されている。
「………………」
かがみは天を仰いでため息をついた。
(はは……結局、私は何も知らなかったわけか…………)
虚無に放り出されたような感覚を味わったかがみは、急に自分がバカバカしくなった。
(つかさの為、つかさの為とか言いながらさ……カッコつけて弁護士になりたいだなんて……。
そのくせこんな隠し事してるのも見抜けないなんて、ほんと情けないわ……バカみたい…………)
自分が憎み続けてきたそうじろうを汚らわしいとはもはや思わない。
そう思ってしまえば彼女は、それと交際していた自分の妹をも汚らわしい存在と認識してしまうことになる。
「ごめんなさい…………」
俯き、そう呟くつかさの目から涙が零れた。
「ずっと隠してて……ずっと騙してて……ごめん…ごめんなさい……」
かがみはそっと愛しい妹を抱きしめた。
169 :
麾く煉獄63:2009/09/04(金) 22:10:56 ID:vuGyr2zl
(つかさ…………)
葛藤だ。
彼女は大いなる病と闘っていたのだ。
こんなに健気で愛い妹をどうして罵れるだろう。
(お姉ちゃん…………)
つかさもまた後悔していた。
今日まで隠してきたことを、なぜ今になって吐露してしまったのだろう。
かがみが傷つくと分かっているのだから、これまでのようにひた隠しにするべきだったのではないだろうか。
そうじろう亡き今、その真実を知っているのは自分だけなのだから。
生涯誰にも漏らさず、彼との思い出を自分の胸の内にだけ潜めておけばよかったのではないだろうか。
「本当に……ごめんなさい…………」
つかさの謝罪の言葉はかがみへのものなのか、それともそうじろうへのものなのか。
吐いた本人にすらそれは分からない。
ただ謝らずにはいられなかった。
かがみを裏切り、そうじろうを裏切った自分の罪。
2人に意識が向き、こなたの死を素直に悼むことができない軽薄さ。
それらがつかさを容赦なく甚振るのである。
かがみは――。
柊かがみはとうとう妹に真実を明かさなかった。
つかさの知らないところでこなたを執拗に責め立てたことも。
みさおが一度は彼女を庇い、事実を知って蔑ろにし、いま悔恨の念に囚われていることも。
怖かったのだ。
全てを吐き出すのが堪らなく怖ろしかったのだ。
そうじろうが痴漢魔であることに、つかさ共々気付かない振りをしていたが、かがみはその姿勢を貫けなかった。
真実を全て知れば、つかさはきっとかがみを怒るだろう。
憎むかもしれないし、そうじろうへの愛の深さによっては殺意すら抱く可能性もある。
かがみがこなたを追い詰めさえしなければ彼女は死を選ばず、そうじろうだって生きていたハズだ。
となればそうじろう自殺の発端はかがみ、ということになる。
つかさがこの結論に至るかは分からないが、少なからずかがみを恨むだろう。
かがみのとってきた行動は、そのどれもがつかさにとっては余計な事だ。
結果的に2人の仲を引き裂いた姉を、彼女が許すだろうか。
(私……取り返しのつかないことを…………!!)
こなたの死の直後にも思った事であるが、今は少し事情が異なる。
『お姉ちゃんのせいだ!! 全部、お姉ちゃんのせいだよっ!!』
そんな声が頭に響き、かがみは無意識につかさに背を向けた。
自分はとてつもなく重い罪を犯した。
罪無きこなたに迫り、彼女を殺した。
続いてそうじろうに命を絶たせた。
彼を愛する妹の気持ちを蹂躙した。
これだけの罪を認識しながら、かがみは虚無の中を漂った。
(なんてことを…………)
自分には勇気がない。
つかさに怨まれる覚悟で全てを告白する勇気も。
こなたのように罪の意識に耐えかねて自ら命を絶つ勇気も。
できるのはこの期に及んでなお自分の軽率さをひた隠し、つかさに知られないよう怯えながら時の過ぎるのを待つだけ。
最愛の妹に恨まれるくらいなら、ウソをつき通したほうがいい。
かがみは自分を最低の人間だと嘲った。
そうじろうやこなたとは比べものにならないくらいに小さく、愚かで、厚顔な存在だと罵った。
「もうひとつだけ訊いてもいい?」
精神が崩壊しかけているかがみは、定まらない視線を空中に漂わせて問うた。
170 :
麾く煉獄64:2009/09/04(金) 22:18:34 ID:vuGyr2zl
「あいつのこと、そんなに好きだったの?」
「”あいつ”なんて呼び方しないでよ」
「……ごめん。その……こなたのおじさんのこと――」
「好きだよ。大好きだよ。優しいし、カッコイイし、私のこともすごく大切にしてくれたから――」
落涙しながら亡き人を語るつかさの口調は、間違いなく恋する少女のものだ。
それも強烈に。
いまや隠す必要のなくなった想い人に向け、つかさはストレートに愛を語っている。
「一緒に遊園地に行こうって約束してたのに。それもできなくなっちゃった……。
ねえ、お姉ちゃん……なんでこなちゃんは死んじゃったの? ねえ、なんでよ……なんでよ、お姉ちゃん。
こなちゃんが生きていたら、そうじろうさんだって生きてたのに…………ッッ!!」
つかさは声を限りに叫んだ。
彼女の慟哭はそのまま鋭い槍となってかがみを容赦なく貫いていく。
ねえ、つかさ…………。
あんたがあいつの事を好きだってのはよく分かったわ。
もうこの世にいないのを嘆いて、もし後を追うっていうんなら。
私も……あんたの後を追いかけるわ。
だってそうでしょ。
つかさにまで死なれたら、私は3人も殺したことになるのよ?
そんな人間が生きていて良いハズないもん。
あの世でこなたとあいつに謝るわ。
もちろんつかさにも。
そうならない方がいいけど……。
今のあんた見てたら、ほんとにやり兼ねないからさ。
ごめんね、こんな情けない姉で。
弱虫で卑怯で。
全然、つかさの尊敬する姉になれなかったね。
つかさの事、守りたいだなんて思ったけどさ。
結局、何もできなかったね。
何もしないどころか、つかさの恋を駄目にしちゃった。
ごめんね、つかさ。
本当にごめんなさい――。
大罪を犯しながら、しかしやはり妹を第一に想うかがみは罪を償うことよりも恋人を喪ったつかさに、
惜しみない愛を注ぐことを誓った。
死者に対しては悼むしかできないが、いま生きている者にしてあげられる事は無数にある。
自分の所為で不幸の底に転落してしまったつかさを救えるのはもはや自分しかいない。
かがみは何度も自分にそう言い聞かせ。
愛しい妹をそっと抱く。
何があってもつかさを守ってみせる。
今度こそ過ちを犯さないように。
常に正しい道を選び抜き、つかさを救ってみせる。
芯の強い姉は空虚となった妹の殻を愛撫する。
もう一度支援
支援なら手伝うぜ!!!!!
これで
解除
できるだろうか
?
支援
もういっちょ
177 :
麾く煉獄65:2009/09/04(金) 23:11:45 ID:vuGyr2zl
・
・
・
・
・
しかし決意を新たにしたかがみも数日後に日下部みさおが自ら命を絶ったという報せを受けると、
愈々自責の念に耐え切れなくなり、つかさを残してこの世を去った。
間もなくみさおが命を絶った公園とかがみが自殺した体育館裏に真っ赤な花が咲いたが、
誰の目にも触れることなく僅か18日間で儚くも散ってしまったという。
終
以上で終わりです。
お目汚し失礼しました。
いつもスレを跨いで完結するので今回は収まった点はよかったのですが……。
1人で容量の半分近くを消費してしまった愚挙、ご海容ください。
そうじろうとつかさの間柄を予想したレスを見た時はドキリとしました。
ともかくも無事に完結。
お読みくださり、ありがとうございました。
最中、数多度支援下さった方にも重ねて御礼申し上げます。
>>178 お疲れ様でした…
ちなみに自分はそうじろうとつかさが付き合ってる予想を書いた者です。
やっぱりそうだったか、と思いながら読みましたが、
まさかのラストに「えっ!?」と目が点になりました…
文句を付けるわけではありませんが、
あまりに唐突にすぐ2人が死んで終わっちゃったので、
残されたつかさの心情とか、色々見たいとは思いました。
でも、全体的にあなたの作品は大好きです。ありがとうございました。
次を楽しみにしています。
みさおとかがみは傷を舐め合って生きていくんだと思ったんだけどあっさり死んでしまったか・・・
あとみゆきとあやのの会話はなんかの伏線だと思ってたらそれも違ったw
乙です
ああ、みんな死んでしまったか
とても面白かったです、でも最後の部分はない方がよかったかな、と個人的には思います
あっさりし過ぎたので
(笑)
>>178 乙。
…かがみは泣く程こなたを友人として見てたか?と凄く疑問。
痴漢の娘だから私が見てないところで何しでかすか分からないからね」
鋭い刃のようなあてこすりはこなたの心を容赦なく剔(えぐ)る。
「表向き友だちを装ってきたけど……あんたは私たちの気も知らないでずいぶん好き勝手やってきたわよね?」
「………………」
「つかさをバカにして、私を揶揄って、みゆきにセクハラまがいの発言して――いったい何様のつもりよ?」
「………………」
「自分ひとりじゃ何もしない……何もできない癖してエラそうな態度ばっかり……ムカつくのよ」
幾らムカつくからってこんな言葉を例え勢いでも言い切り、言った後に「言い過ぎた、ごめん」の一言も無し…。
やっぱかがみは最低だと思った。
こんな奴生きてる資格ねえよ。死んでくれてすっきりした。
おもしろかったです。
かがみは最後まで悪かがみんなのかな?と思っていたのですが、
こなたが死んで後悔しているかがみを見て泣きそうになりました。
ちなみにそうじろうとつかさのプレイを想像して勃起しそうになりました。
改めてお読み戴きありがとうございました。
>>180 予想された時、さすがに最後の台詞はあざとすぎたかと思いました。
振り返ってみると僕のSSは全て、最も肝心な部分を暈かしています。
残された者の心情、死を選んだ者の心理などは読み手に委ねています。
>全体的にあなたの作品は大好きです。
感涙の極みであります。
>>181 伏線にならないとも限らない可能性はあります。
>>182 早死にする人は実はいい人が多いのかもしれません。
>>183 2人の死は初めから決めていた結末なのではずせませんでした。
このシーンはくどくどやらずさらりと流すことによる効果を狙ってみたのですが、
あまりにあっさりし過ぎていたかもしれません。
>>184 大嫌いで憎くて鬱陶しくて……。
だからといって相手に死んで欲しいとまでは思わない、微妙な距離感。
……僕はかがみのようにはなれません。
>>185 最後の最後まで悪辣なキャラを描くには僕の腕が足りません。
スッキリしない終わり方なら得意ですが。
187 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2009/09/05(土) 14:47:51 ID:yIX7nKwj
このかがみんは痴漢の娘のこなたを憎みながらうわべだけとして接しも
深層心理では単純に泉こなたがかなり好きんなってたんだろうなー
こなたっつーか、いつもの四人のやりとりの感じを
スケールは大分落ちるけどちょうど一昨日のハルヒでのキョンのキレデレに近い何かを感じる
ほんとかがみはぐうの音も出ないほどの畜書だな(にっこり)
僕のSSはどれもこなたが死んでからが長いので、
こなたの死をもって終わるSSを書いてみました。
万が一スレが空疎になった時、延命も兼ねて投下します。
勿論、投下予定の方がいらっしゃいましたら差し控えますゆえ。
今まで、どれくらい、こなたSS作りましたか?
また、作品名も教えてくれませんか?
列記しますと過去のものは、
虚像と実像
罪咎深き賤しい女
惨劇館
惨劇の後に……
憎悪、堆く
死にいたる隘路
閻しき貴女よ
世界狂えや法破れや
死へ続く静かな雨音
胡蝶之夢
以上ですね。
192 :
お漏らし中尉:2009/09/06(日) 22:39:08 ID:k7O2cKla
こんばんわ〜
避難所に投下したSS『寝取られた女』の続きを投下します
193 :
お漏らし中尉:2009/09/06(日) 22:40:52 ID:k7O2cKla
ギギギギ・・・・
見た目通りの音を立てて、重厚感のあるドアが開く
先ほどまでは一切の光を遮っていたある種の壁
こなたはその境界線を自らの足で侵す
そこは裏切りと色欲によって彩られた罪の部屋
かがみと白石が囚われている部屋だ
この部屋は泉こなたが父親とは共同で保管できないものを隠すために借りていた貸し倉庫だ
幸い白石の家はその倉庫に近く、二人を運び出すのは辛うじて一人で済んだ訳だ
「お陰で腕を擦り剥いちゃったよ・・・」
こなたは椅子に全裸で縛り付けられている白石の額に軽く拳を当てた
コツンという小気味の良い音が聞こえて白石は怯えた目でこなたを見上げる
「なにかの冗談だよな?」
「・・・・しつこいなぁ・・・・」
白石はここに連れてこられ、目が覚めてからずっと、その言葉を口にしている
同じ質問を聞くたびにこなたは「そうだよ」と笑ってみせる
倉庫とは思えないほどに大きな照明がこなたの無機質な瞳を照らす
そして、白石にさらなる恐怖を与えるのだ
白石は自分の正面、役2メートルほど離れた所で椅子に縛られているかがみを
まるで『お前のせいだ』と言わんばかりに睨む
対するかがみには猿轡と目隠しがされており、衣服が着せられていた
こなたがかがみの横に立つとかがみの肩が震えたのが解る
彼女には白石は愚か、こなたの姿も見えていない上にここが何処かも解らない
「かがみん、聞こえる?」
「・・・・・」
「聞こえるね・・・ふふ」
「・・・・・」
そういうと、こなたはかがみの目隠しを外す
中から現れたのは怯えたかがみの視線
それが外界との接点を取り戻す
恋人を小憎らしそうに覗いたこなたは全裸の白石の椅子を動かし横向きにする
丁度、かがみからは白石の横顔が見える形になった
かがみは先ほどまで性行為を行っていた異性の裸体を見て、少し顔を赤らめた
白石はそんなかがみをまるで疫病神の様に邪険にする
「白石・・・・」
こなたが白石の前に立つ
途端に白石の顔は青ざめた
こなたに殴られた後頭部が未だ激痛を響かせ、まるで頭の中でドラムがなっている様に心拍数が上がる
白石が「ひ・・・・」と小さな声を出したが、こなたには別段殺意はない
不可解なのはこなたがユックリとスカートに手を入れて下着を脱ぎだした事だろうか?
こなたは売るところへ売れば数万円の価値がある女子高生のパンツを白石の口に捻じ込んだ
「まあ、約束は約束だからね・・・」
194 :
お漏らし中尉:2009/09/06(日) 22:42:59 ID:k7O2cKla
白石は息苦しさと性的な興奮で複雑な顔を作りながらもその男性自身を屹立させていく
「本当なら私も・・・その、エッチしないといけないんだけどね・・・・」
「ふー、ふー」
「口で勘弁してね・・・」
こなたの恥じらいながらの申し出に白石は首を大きく縦に振った
もしかしたら命の危険があるかも知れないこの状況で、バットで殴られた本人との性交渉・・・
どう考えても白石の心境は理解できないが、だからこそこんな事態になったのだろう
こなたは頭の中で白石を罵倒しながらしゃがみ込む
横からは愛しい恋人である柊かがみの視線・・・・
「かがみん、しっかり見ておいてね・・・私のたった一度の浮気・・・」
そういって、こなたは小動物のような口を開けて白石のソレを飲み込んだ
「んふう!」
白石は体をのけ反らし、全身で悦んだ
こなたはPCゲームや成人アニメのDVDで見たよう男性を愛撫する
口を上下し、唾液に絡め、時には舌で弄び
再び口に含むと「ん、ん、ん」と声を立てながら傘を刺激する
かがみは小さく首を振りながら男性を喜ばせるこなたを眺めていた
『こなた、何やってるのよ・・・・』
こなたと白石の賭け事について、まったく知らないかがみはこなたの行動が理解できない
おそらく『裏切った自分への当て付け』としか感じていないだろう
もちろん、こなたにはその思惑もあった
しかし、本当の目的はそれではない・・・・
じゅるじゅると唾液の音を立てるこなたに白石が性的興奮を止め処なく溢れさせる
この一方的な性行為にこなたは少なからず興奮を覚え、紅潮した頬と妖艶な視線が男性に注がれ
その全てが快楽へと変わっていくのだ
こなたは白石の表情から、絶頂が近いことを読み取るとしっかりくわえ込んだソレを今度は根本まで飲み込む
さらに激しくなったピストン運動に白石が悶絶した頃
「んんんん!」
と言う声とともに白石の体が波打つ・・・・・
白濁液はこなたの純粋なその口を汚し
可愛らしい唇からはグロテスクな液体がその異臭を放つ
欲望全てを咥え込んだ少女は涙を流しながら、愛おしい恋人の前で
自らの敵に蹂躙された
はずだった
「ん!んんんんんん!んーーーー!?んんん!!?」
こなたはニンマリと笑うと白石のソレを口から吐き出す・・・が
射精した痕跡は全くない
195 :
お漏らし中尉:2009/09/06(日) 22:44:12 ID:k7O2cKla
白石は顔を真っ赤にして悶絶し、声を上げ続けていた
「ねえ、どんな感覚?気持ちいい?・・・・それとも痛い・・・・?」
こなたはクスクスと笑いながら黄色い筒を白石に見せる
白石は目を剥いてその黄色い筒に活目した
『アロソアルファ』と書かれたそれは瞬間接着剤である・・・・
後は語るまでもないだろう
全てを悟った白石は目を剥いて、弱弱しくも激痛に耐えながら
やがて気絶した
「あーあ・・・、ちょっとやりすぎたかなぁ・・・?」
こなたはそういって白石の両手と両足を瞬間接着剤で完全に固定し、ガムテープでグルグル巻きにした
「・・・・次はかがみんの番だね・・・・」
こなたの視線を直に受けたかがみは、緊張感が臨界点を突破し、視界が暗くなっていくのを感じた
「・・・・かがみん・・?・・・意外とデリケートだったんだね・・・・」
こなたは白石への制裁を終えて幾分かスッキリしたのだろう
恋人の意外な一面に微笑を浮かべながら、白石の処理を思案していた
・・・・・・
196 :
お漏らし中尉:2009/09/06(日) 22:45:35 ID:k7O2cKla
「ごくごくごく・・・ふう・・・・けぷ」
こなたが飲んでいるのは『キリン様の力水』と書かれた炭酸飲料だ
気を失った白石を近くのごみ捨て場に捨ててきたこなたは汗をかき、体が水分を欲していた
夜の11時だからといっても住宅街の近く・・・・
台車に乗せた全裸の白石を目立たない場所に捨てるのには苦労した
後は近くの住人があの馬鹿を見つけてくれれば万事丸く収まるだろう
・・・そう、本来こなたが白石に復讐すること自体がお門違いなのだ
こなたにはソレが解っていた
だからこそ、白石はあの程度ですんだといえるのだが、回復についてはいささか疑問が残る
一息ついたこなたはかがみの前に椅子を持ってきて対面したままそれに座るとかがみの猿轡を外した
「ぷはあ・・」と深呼吸するかがみにこなたは小さく「ごめんね、痛かった?」と謝る
「・・・・・そりゃあ、痛かったわよ・・・」
かがみはこなたの行動に戸惑いながら納得いかない様な、後ろめたいような、そんな声で問いに答えた
目が覚めたら白石の姿はないし、こなたの雰囲気も変わっているではないか
先ほどまで感じていたこなたからの殺意も今は全く感じない
「なんでこんな事するのよ・・・」
「・・・・・・なんでって・・・」
かがみからの質問にこなたは少し考え込む
直接的な理由は、おそらく自分と白石の馬鹿な賭けなのだが
自分がこの行動にいたったのにはかがみの裏切りが引き金になっている
「うーん・・・・」
感情と言うのは実に複雑だ
一度膨れ上がった憎悪がそのまま持続して大きな惨劇で幕を閉じてしまえばそれで済むのだが
白石への復讐を終えたこなたは妙に冷静さを取り戻してしまった
故にこの後に引けないこの状況をどうしたらいいのか自分でも解らない
とりあえず、こなたは立ち上がり頭をかきながら順を追って今回の事件を振り返った
その姿は既にいつもの泉こなたである
かがみはその光景を眺めながら異様な緊張感に困惑している様子だ
「と・・・とりあえず、あんたを裏切ったことには変わりない訳だから・・・その・・ごめんなさい・・」
「あ・・・・うん・・・」
こなたは頭を抱える
かがみの謝罪の言葉がまた一つ、こなたのこの行動の意義を失わせるのだ
こなたは考えた、自分がいったい何を求めてこんな暴挙に出たのかを必死に考えた
いったい誰が悪いのだろうか?
白石?いや違う・・・あいつは最低だけど、あいつの口車に乗ったのは自分だ・・・
197 :
お漏らし中尉:2009/09/06(日) 22:46:16 ID:k7O2cKla
「ねえ、こなた・・聞いてるの?」
「・・・・うん・・・」
「じゃあ、許してくれるの?」
「・・・・んー・・」
「そうよね、あんたを裏切ったのは私だもんね・・・・・」
「それは、そうなんだけど・・・」
「けど、なに?謝ったくらいで許せないって事?」
「いや・・・」
かがみは一度こなたの方に視線を向けるが、すぐにその目を伏せる
涙のようなものが照明に照らされているのがわかる
それが流れ出すのはもはや時間の問題だということも
「そうよね、そんな言葉で許してもらおうなんて思ってないわ・・・」
「・・・・・・・」
「私があんたに黙ってれば大丈夫だと思ってたのも本当だし・・・」
「・・・んー」
「白石の誘いを断ろうと思えば断れたんだもんね・・・なのにほいほい付いていって・・・・」
「あー・・」
「馬鹿よね・・・ぐし・・・私、こなたの恋人なのにね・・・ぐす・・・」
「かがみん・・・・」
ここまで素直に謝られると、こなたにはもう打つ手が残されていない
本当なら白石の腹を割き、引きずり出した後でその腸でかがみを縛り上げて拷問
最後は隠し持った毒薬で仲良くおネンネ・・・と、こんな筋書きだったのだが
謝る相手にそんな事は出来ない
なにより、白石の男性自身の出口を接着剤で固めた事ですら、今は悔やまれるのだ
こなたは取り戻してしまった正気に舌打ちをして椅子に座る
泣きじゃくる恋人はそんなこなたに何度も許しを乞うているのだが、こなたは一体何を許したらいいのだろう?
「か、かがみん」
「・なに・・ひぐ・・・こなた・・・えぐ?」
意を決したこなたはやっと積極的にかがみの名前を口にする
「実は・・悪いのは私なの・・・」
「・・・どういうこと?・・・・えっく・・」
こなたは白石とのやり取りからかがみを騙すために電話した事
実はその後も白石とグルになってかがみを尾行していたことなどを全て話した
そうしなければこの罪悪感とも虚無感とも言えない感覚からも
この意味の解らない現状からも脱出できないと踏んだのだ
198 :
お漏らし中尉:2009/09/06(日) 22:47:06 ID:k7O2cKla
一連の説明をはじめたこなたに対してかがみはショックを隠せなかったのか
しゃっくりをしながらもかがみはこなたを睨み据えていた
のだが、かがみが白石についていった辺りからしおらしく目をそらし
携帯に出なかった事についても弁解せず謝ると黙って話を聞いていた
そして・・・話が終わると「ふう」とため息を付いて
気まずい様な苛立った様な恥ずかしい様な
そのどれともつかない様な複雑な表情を浮かべていた
「・・・だれが悪いと思う?」
「そんなこと言われてもなぁ・・・」
こなたは縛られたままのかがみが首を傾げるのを見てため息を付いた
「そうだよね・・・」
「ところでさ・・・そろそろこの縄解かないか?」
かがみはいい加減窮屈に感じたのだろう、この状況からの開放をこなたに要求したが
こなたは「やだ」と気まずそうに断った
「なんでよ・・・・」
「だって、かがみをバットで殴っちゃったからさ・・・・このままで居ないといけない気がして・・・」
「何言ってるのよ?」
「かがみが悪くないのに私がかがみを殴ったみたいになっちゃうじゃんか・・」
「あー、要するに私が悪いと思ってる訳だな?」
「そうじゃないけど、なんかそうしないとかがみに悪い気がして・・・・」
かがみは眉をハの字にして口を半分開けたままこなたを眺めた
言っている事は解らないでも無いのだが、なにぶん理論そのものが間違っているのだ
こなたなりの気の使い方にはいつも悩まされる
「いいからさっさと解きなさいよ・・・・それともこのままで一生過ごすつもり・・?」
「・・・わかったよ・・」
こなたはしぶしぶかがみの縄を解くとその縄を綺麗に束ねて床に転がす
かがみは体の自由が利くことを確認すると
こなたの頭めがけて拳骨を振り下ろした
ゴチンという音と共に「いだ!」というこなたの悲鳴が倉庫に響く
こなたが「あにすんのさ・・・」と抗議の声を上げると、かがみは「一発は一発よ」と笑って答える
「ねえ、そういえば前から聞きたかったことがあるのよね・・・」
「ん・・・・?」
こなたは頭を抑えながらかがみの問いに耳を傾ける
199 :
お漏らし中尉:2009/09/06(日) 23:08:26 ID:k7O2cKla
「私たちってさ、これから何時までも付き合っていけるのかな・・?」
「え・・?」
「今回の事だけじゃないの・・・・告白したのは確かに私だけど・・」
「・・・」
「それでも、今まで何度も気持ちが揺れた事が有ったのよ・・・」
「そうなの?」
「そう、結婚して子供を生んで幸せな家庭を築く・・・そんな幸せにも憧れるの」
「かがみもなんだ・・・」
「え?」
こんどはかがみが面食らう
「いや、私も・・・かがみの事を大好きだけど、お母さんに憧れるって言うか・・・」
「・・・そう、そうなんだね・・・・私たち・・・やっぱり変なのかな?」
「罪な事だと思う・・・でも、私はかがみとずっと一緒にいたいんだよ」
「こなた・・・」
「だから、男なんかに体を弄ばれてるかがみをみたらムカついた・・・殺したくなった!」
「そうだったんだ、こなたも私と同じこと考えてたのね」
暫くの沈黙が倉庫内に静寂をもたらした
「同じじゃないよ・・・」
「・・・・・」
少しだけ怒気のようなモノを帯びたこなたの言葉にかがみが無言で答える
「だって、かがみんは自分から男を求めたんだもん・・・原因が私だとしても」
「・・・・そうね、裏切りよね」
こなたはかがみの目を見据えて、座りなおす
かがみも先ほどから積極的に会話をしているが、居直っている訳ではない
それなりの罪悪感もあるし、被害者としての意識を持っている
「そうだよ・・・これは裏切りだもん、許せないよ」
「じゃあ聞くけど、こなたはどうなの?」
「何が?」
「あんたは少なからず白石との取引で私を売った訳でしょ?しかも自分の貞操まで賭けてさ・・・」
「う・・・」
「もしもの話をする気はないし、私が同じこと言われたらどうしたかも解らないけどさ・・」
「・・・・」
「私を白石に口説かせたのはこなたでしょ?私を信用してたなんて言葉じゃ終わらないわよ」
「・・だって」
「だってじゃないでしょ!」
200 :
お漏らし中尉:2009/09/06(日) 23:09:33 ID:k7O2cKla
かがみの大きな声にこなたはビクッとして目を瞑る
怯えるこなたを見て「あー、ごめんごめん」と恋人の頭を撫でるかがみ
この二人の喧嘩は大抵こんな感じで進んでいくのだ
かがみが怒り、こなたが怖気付きそれを宥めながらの緩やかな進行・・・
きっとそれがどんな問題でも解決していける方法なのだろう
「うひ・・・うえ・・」
「ほら、泣くな泣くな・・・」
「だってぇ・・・悔しかったんだもん・・・」
「そうね・・・私も言い過ぎたわ・・・」
「わたし・・不安だったんだもん・・・」
「はいはい・・・・」
ぐずぐずと鼻水を啜ってういるこなたはかがみの胸で弱弱しく本音を呟く
「このままかがみとずっと一緒にいたかったけど・・・」
「・・・・」
「かがみがいつ男の人の所にいっちゃうかって思うと・・」
「・・そうよね、私たち女だもんね・・」
かがみは「お姉ちゃんはいいお母さんになる」などとにこやかに笑うつかさの顔を思い浮かべた
夕食時にその話題が出ると酷く胸が痛くなり、体にへばりついた罪悪感を抱えて一日を過ごしていたのだ
気付いていたのだ、このままでいる事なんて出来ないと言う事・・・
「そんな事とっくに気付いてたのにね・・・」
かがみはこなたを抱きしめるとこなたの唇に優しくキスをした
甘くて柔らかい唇
こなたとのキスが一番ドキドキするのだ
「ねえ、こなた・・・・」
「・・・・なに?」
かがみはこなたの髪を撫でながら、静かに語りかけた
何というか・・・子供を寝かしつけるそれに似た口調はかすかに妖艶な音色を含む
201 :
お漏らし中尉:2009/09/06(日) 23:10:56 ID:k7O2cKla
「さっきさ、私を殺すって言ってたじゃない?」
「・・・さっきまではね、言ってた」
「どうやって殺そうとしたの?」
「二人で毒を飲んで死のうと思ってた・・・」
「それはさ、私が裏切ったから?」
「・・・・・違うよ」
かがみの抱擁を受けながら、こなたは柔らかい声で言葉を続けた
「ずっと二人でいたかったから・・・かがみんを男の人にとられない様にそうしたかった」
「そうなんだね・・・」
「うん、だって私、かがみんが死ぬほど好きだから」
「私も・・・こなたが好き」
可愛さ余って憎さ百倍・・・こんな時にも使うのだろうか?
かがみは思った、こなたが同じ事をしたらきっと自分もこんな行動に出るだろうと
そして、この娘が抱いている感情、悩みは自分のものと同じだ
どう足掻いても二人の将来への不安、恐怖から逃れられないのだ
ならばいっそ・・・
「こなた、その毒・・・一緒に飲もうか?」
「へ?」
間の抜けたこなたの返事にかがみが満面の笑みを浮かべる
「私もあんたと一緒にいたいのよ」
「あ・・・・」
「その前にさ・・・」
「ん・・・」
かがみがこなたの唇をもう一度愛でる
「もう一度あんたを確かめさせてよ・・・・」
「かがみん・・・・」
照明の照らすなか、少女の影が重なり
しばしの静寂と共に倉庫には不似合いな愛の音色が空間を濡らした
・・・・・・
202 :
お漏らし中尉:2009/09/06(日) 23:11:58 ID:k7O2cKla
『心中しんじゅう(一般)』
・相愛の男女が合意の上で一緒に自殺すること。情死。
・二人以上の者が一緒に自殺すること。
・(比喩的に)ある物事と運命をともにすること。
愛を確かめ合った二人は身繕いに勤しんでいた
かがみが買ったコスメ品やらなにやらを床に並べ、かがみがこなたにメイクしている
「くすぐったいよ・・・」
「我慢しなさい、死に化粧なんだから」
「死ぬんだから別にいいじゃんか〜」
「嫌よ、私のこなたは死んでても生きてても可愛くないと嫌だもん」
「もう・・・」
「なによ」
お互いに、先を望まないからこそ素直になれるのだろう
かがみがルージュの口紅を手に取った瞬間、こなたがその手をそっと制する
そして、かがみの唇に視線を合わせた
「かがみと同じ色がいいな・・・」
「赤よりもこっちが可愛いわよ?きっと似合うから」
と強引に勧めるかがみに普段なら「やだやだ!」と抗うこなただが
少し頬を赤らめて首を横に振る
「同じのじゃないと嫌だよ」
「・・・なんでよ、あんたペアルック嫌いじゃなかったか?」
ため息を付いて、眉を上げるかがみは少しだけ不機嫌だ
こなたもちょっと不機嫌そうに装っていたが、観念したように口を開く
「だって・・・・キスできなくなるじゃんか」
「・・・・・バカ」
かがみはこなたに何度目かのキスをし、こなたの唇はかがみの唇によって赤く染まる
お互いの紅潮した頬が距離を取り戻すとかすかに甘い息が漂った
かがみは「メイクの仕上げがキスなんて、ロマンチックね」と悪戯っぽく舌を出した
お互いに身綺麗にし終わると、コンクリートの床の上に二人で並ぶ
こなたが取り出したのは二つの紙袋
その中には青い色をしたいかにもヤバそうな粉末が透けて見えた
203 :
お漏らし中尉:2009/09/06(日) 23:12:52 ID:k7O2cKla
「見るからに毒々しいわね・・・・」
「まあ、美味しそうではないよね」
こなたはそう言って笑うとあらかじめ用意しておいたコップにりんごジュースを注ぐ
少し温くなったジュースからはりんごの甘い香りが漂ってきた
その黄金色のジュースに粉末が加わると・・・
「これじゃ葡萄ジュースね」
「合成着色料ってこんな感じなのかな?」
二人は普段飲んでいる飲料を思い浮かべて苦笑いを浮かべ、お互いのコップに手を伸ばす
「じゃあ、あれかな」
「ふふ・・乾杯」
ふたりの間に『本当にいいの?』などというやり取りはなく、悲壮感すらも感じられない
こんなにも明るい心中などこの世にあるのだろうか?
お互いのコップを鳴らした二人はその液体を一気に飲み干した
「うげえ・・・なんか黄粉と砂糖をお茶で割ったみたいな味・・・」
「・・・・・うぷ・・・りんごジュースで口直しね・・」
かがみがジュースを二つ告ぎ分けると、前代未聞の毒薬の口直しが行われる
「「んぐんぐんぐ ぷは!」」
似たように喉を鳴らし終えた二人はカップを床に置く
かがみは不意にこなたを抱きしめて倒れこんだ
「ひゃー」
こなたのふざけた様な声が部屋に響く
薬の効果が出るにはもう少しかかるのだろう
じきに二人が一つになれるのだ、二人にとってこんなにも明るい未来は無かった
ふありが互いの体温や肌触りを感じている最中に
体の異変は確かなものへとなっていく
最初の異変は感覚からだった
「いたたた・・・・」
かがみは体のどこが痛いのかハッキリしないままこなたを抱きしめる
こなたもまた痛みに耐えている様子だ
そして次第に心拍数が怒涛の勢いで上がってきた
「ちょ、ちょっとこなた?」
こなたは胸を掴んで必死に何かに耐えていた
「だ、大丈夫・・・」
204 :
お漏らし中尉:2009/09/06(日) 23:14:01 ID:k7O2cKla
ひょっとしたら体が小さい分毒の周りが早いのだろうか?
かがみがそう考えた瞬間、胸が圧迫された感覚に襲われて息が苦しくなった
ちょうど、肺が呼吸を拒んでいるような異様な感覚だ
だが、かがみはこなたを放すことは無い
こなたも必死にかがみの背中に手を回してきた
どんどん息苦しくなり、体中が痛み出し、視界も二重三重とかすみ始めてくる
かがみが歯を食いしばってこなたに目線を落とした
「ちょ・・・お前・・・もっとマ・・シな・・薬は・・無かっ・・たの・・・か?」
「だって・・・・」
精一杯のかがみの抗議にこなたが悪びれた様に舌を出す
「・・お金・・なかった・・んだもん」
「ばかね・・・」
「バカ・・じゃない・・もん」
「はい・・はい」
かがみはため息を付くと小さく笑った
気が付くと痛みも苦しみも無くなっていて
あるのは目の前の愛しい愛しいこなたの顔だけ
視界が遠退いて行く中、こなたの唇が小さく「すき」だと告げ、そのままこなたの瞳が閉じる
震える眼に微笑を投げかけたかがみはこなたに最後のキスをした
「私も・・こなたが好き、今度は絶対浮気しないからね・・・」
動かなくなった二人の少女はお互いの愛を貫いたのだろう
それが間違っていたのか、それとも正しかったのかは解らない
おそらくそれを知っているモノは誰も居ない
ただ二人が愛を求めたその楽園は『禁断の果実』の甘い香りによって
永遠に守られるだろう
願わくば、この哀れな恋人たちに明るい未来があります様に・・・
おしまい
『寝取られた女』、拝読しました。
身分の違いから決して結ばれないと悟った男女が両家の親が見ている前で酖毒を呷る。
という本を以前読んだのを思い出しました。
いつの世も男という生き物は愚かなのかなあと思ったり。
愛憎という言葉が既にあるように、愛情と憎悪は隣りあわせなのかもしれませんね。
恋慕に盲目になれば愛しいあまりに殺意を抱くこともあるのでしょう。
さて、”寝取られる”とはどういうことなのでしょうか。
このSSには一般的な意味以上に深い意義があるような気がします。
206 :
お漏らし中尉:2009/09/06(日) 23:33:15 ID:k7O2cKla
以上で終わりです
読んでくれた方、どうもです
今回はそんなにグロ描写も無く、終了させました
また、その内書かせてもらいます
>JEDI_tkms1984さん
『麾く煉獄』拝読させていただきました
いつもながら作品の長さにも、その密度にも驚いてます
難しい漢字をつかってその場面場面で雰囲気を作られたりと・・・・
あの漢字たちはどうやって勉強されたんでしょうか・・・?
そして今回のかがみとこなた、このスレでは珍しくみさおを巻き込んだストーリーにもドップリ漬かっちゃいました
こなたのこういったミスやみさおの行動なんかは日常生活の中にも転がってる要素であるあたりが
この作品のリアリティを上げているんじゃないかなと、僕は感じました
間違った事をしてしまった父を許せないこなた
例え間違っていても妹を許してしまうかがみ
一体なにを攻めていいのか解らない、登場人物全てにとっての悲劇的な一作だと思います
これぞ煉獄ですね
追記
137でのお褒めの言葉、本当に感激しました
大して読書も勉強もしてないので思ったままに書いてるだけなのですが
そう言っていただけると『本を読もう、勉強しよう』と意欲が沸いてきます
ちなみに文法はJEDIさんから学ばせて頂く事も多かったりしますw
これからも頑張ってください!
乙です
えろくて切ない
…素敵
>>206 今回は本当に長くなりました。
前にも書いたのですが、僕はみさおが好きになったようで下にも置かない役どころを担わせました。
原作を読み返してみると彼女の良さはあのおおらかさにあるのではないかと。
(煉獄でも引き合いに出したように、こなたの嘲弄に激怒しなかったあたりとか。普通は怒ります)
漢字に関しては何かと問題が持ち上がっている漢検を受けていた影響が大きいですね。
1級は未だに通ってないのでいつか本腰入れて勉強したいのですが。
それに加えて中国の歴史物を読んでいると大抵の言葉は知らず身に付いています。
勉強も読書もされていないという話ですが、もしそうなら天与の才ではないでしょうか。
どんなに読み書き研鑽しても上達しない場合もありますから。
夢中に放り出されたような巧みな地文には頭が下がります。
1級って難しいんだね。怖いよ
210 :
お漏らし中尉:2009/09/09(水) 00:14:04 ID:gXoUipQD
>>207 まさに今回のテーマです
ありがとうございます!!
>>208 なるほど・・中国のものを・・・
漢字検定や勉強で得た知識をこうやって使えると楽しいでしょうね
僕は書いてて楽しい、読んで不快にならないように作文してるだけなので
そんなに褒められると参ってしまいます(汗)
ともあれうれしい限り、また書こうと思いました
その他の読者の方たちも有難うございました!
211 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2009/09/09(水) 01:25:47 ID:oKiWBC0O
>>211 これ、どこの電車?
色は通勤で使う京浜東北線に似ているが…。
誰か教えて、鉄の人。
ごめんなさい
ごめんなさい
許してください
ごめんなさい
許されてるから、やってるんだ。
自殺予防週間なんですね。
ここに来る前から自殺については色々と考えていましたが、
自ら死ぬ権利を無責任に奪ってはいけませんね。
僕はこういう週間にこそ”自殺はいけない!”と盲目的に考える人々が、
その考えが本当に正しいのかを思惟するべきではないかと思います。
死ぬのも生きるのも難しい。
人間という生き物はまだ、生と死について何ひとつとして確信を持てるレベルには達していない気がします。
そーだね。自殺は悪い事では無いね。
大切なのは自殺そのものの予防ではなく、自殺に至る状況を予防する事だろーね。
そちらを講ぜずに、自殺すんな生き地獄の中で呼吸だけしてろ、
というのはあまりにも酷だ。
>>217 蓋し至言です。
”死ぬな、生きろ”と放つ人々は往々にしてその人の人生に対して無責任です。
これ以上できないくらいに頑張っている人に対しての、”頑張れ”よりも辛辣です。
苦痛の生を続けさせるくらいなら、安息の死を選ぶのもひとつの道ではないでしょうか。
もちろんそういう人々の逆境を全体で取り除こうとする動きも必要とは思います。
生と死は等価値なんだよ、僕にとってはね
カヲル君・・・・・何を言ってるのかよく分からないよ・・・・・
このスレなんだかんだで生き延びてるのな
>>2 少なくともアルカイダ等のテロ組織よりは156倍マシだろう
223 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2009/09/13(日) 22:34:59 ID:RQVgxjsB
こなた 大爆発
225 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2009/09/15(火) 21:29:10 ID:mFVrEsN/
!?
お久しぶりです、御大!
相変わらず綺麗な絵です。
何故かスレタイ検索にこのスレ引っかからなかったせいで
前スレ落ちてからの一月弱、避難所見ながら彷徨ってたけど
今さっきまとめwikiから合流したw
>>JEDI氏 2時間かけてじっくり&一気に読ませて頂きました。
一度に読んだ為本格的には色々と推測する感じにはならなかったのですが
最後の、自分の意義を根本から揺るがされたかがみが印象的でした。
最愛の父親が実は痴漢を行っており、しかもその被害者は親友だったこなた。
最愛の妹は実は憎むべき相手の事を愛しており、自分が妹のためにと行った事は全て逆効果だったかがみ。
最愛の人が無くなった原因は大好きな姉にあったつかさ(つかさ本人は知らないですが)
真実の残酷さも印象に残ります。
>>216-218を読んだ所、自殺=悪だと頭ごなしに断定するのは間違ってるという意見をお持ちみたいですが
ステージななのナルキッソス(フリーでダウンロードできる)お勧めです。
宣伝みたいになって申し訳ないですけど自殺=悪という図式を考え直させられる物語だったものでw
>>お漏らし注意
愛しさゆえ暴走してしまったけど和解できて良かったです。
最愛の相手と抱き合って、心も一つにして一緒に逝く……
……ひょっとしてこのスレの作品内では、一番幸せに自殺できたケースかも……!?
あと白石南無w
>>227 この2人可愛いw
……けど可愛ければ可愛いほど、その片方はそうじろうと関係を持ち、もう片方は今回の騒動の発端と思うと……
……セツナカワイス
>>227 ありがとうございます。
貴方に僕のSSのワンシーンを描いて戴いただけで感無量です。
吸い込まれそうな色使いから、表情の丁寧な線に至るまで允に好みであります。
ホラー漫画時分の大橋薫調のタッチに惚れました。
>>229 ありがとうございます。
今回は前のSSでちらっと出した痴漢の話を持ってくるのが目的でしたが、
登場人物のそれぞれが”事実の断片しか知らない状況”を作る事を心がけました。
(例えばこなたが最期まで父とつかさの関係を知りえなかった等)
自殺に関しては……そうですね。
一度でも本気で死にたいと思った人間なら、その多くが”自殺=いけない事”
というマジョリティオピニオンを否定したくなるのではないでしょうか。
紹介いただいた作品には後日、目を通してみたいと思います。
うつ☆すたを思い出すな
232 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2009/09/19(土) 00:26:43 ID:Xljdm5Gk
そういや、2年経ってるんだな。
うつ☆すたは今でも殿堂入り
文章と漫画とその他もろもろメディアミックスがいっぱいでおいしいが長続きってのもあるが
紳士淑女のサロン
236 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2009/09/19(土) 19:32:14 ID:g4HkPkW+
神奈川版「審判」で疑問に思ったことがあるんだけど
かがみが2歳上の伸恵のことを呼び捨てにしているのよ。
伸恵って専門学校生だったはず。
普通、年上なんだから伸恵さんと呼ぶはず。
伸恵は原作版かアニメ版かによって違うな。
原作なら16歳の高校1年(つかさ達より2つ年下)
アニメなら20歳の短大生(つかさ達より2つ年上)
酒やタバコやりまくってるせいでアニメ化のときに無理矢理20歳にされたもよう
238 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2009/09/19(土) 21:39:52 ID:g4HkPkW+
しかし、なんで伸恵を出したのかしらん。つかさとは親友になっている設定だったし
なにか元ネタでもあるの?
>>236 確かに10代から20歳そこそこだとそういう傾向強いね。
らきすたが児ポ法にひっかからないのが不思議
242 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2009/09/21(月) 17:29:43 ID:nR2xVzDH
ところで伸恵はわかるけど、赤い悪魔の続編と神奈川版「私のお父さん」に
出ていた竜崎は結局何者なんだ?個人的に竜崎の職業を解釈して見ると
ゆい、大石とは知り合いからか警察官としか思えないが。
竜崎は本当は何者なんだ?
デスノートじゃね?
投下された当時、ググっても特に出て来ないからオリキャラかと思って
「ふてぶてしいオリキャラウザす」ってレスしてした者だけど
作者はデスノートか何かの登場人物の名前を少し変えたみたいな事いってた。
そういやデスノートのとんでもないSSもあったよね。
俺も久しぶりに何か書こうかな。
246 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2009/09/22(火) 12:28:09 ID:/OtZZoEE
247 :
ガンガン福岡:2009/09/22(火) 20:50:00 ID:H+yNYQ6b
>>247 古典的ながら現代でも効果は全く失われていない黒板消しの罠。
絶望に彩られたこなたの泣嘆の表情が印象的でした。
呪いだとしたら抗う術はないような気がしますが……。
ともかくもご自愛くださいませ。
>>247 やぱり欝なこなたはかわいいな。
原点に戻った感じだ
存在を消されたみゆきの兄が実は池沼で、高良家の地下室に隔離されてて、池沼の癖に性欲だけは猿並で力も強く暴れまくる
こなたならいなくなっても問題なしと判断したみゆきとゆかりが、こなたに睡眠薬入りの紅茶を飲ませて地下に監禁
こなたは池沼の嫁として死ぬまで地下で飼われる
池沼に好き放題、強姦と暴行を加えられ池沼の子を妊娠
池沼の子を孕んだという最低の屈辱に絶望して舌を噛み切って自殺
死体は最近飼い始めた犬の餌にされる
というのはどう?
やりたい事が芽生えたこなちゃん。新卒で入った会社を半年足らずでやめちゃいました。
ところが一年やっても叶わず。しょうがなく進路変更しようとするも、
金融危機の影響で第二新卒市場壊滅。受ける会社悉く全滅。
気付けば前職の待遇や職務内容を遥かに下回る会社を受けていた。
その時になって気づく。「実は前職、結構いい所だったんだね」
辞めなければ良かった、その思いが胸に去来するも、後悔したくないからその事を認めたくない。
でも退職してから1年半も経つと、認めざるを得なくなっちゃった。
最早大卒としての待遇を遥かに下回る企業ばかり受けていたから。
「転んじゃったよ」コンプレックスと後悔ばかり抱えて生きていく事に嫌気が差したこなちゃんは、
自殺を決意。さよなら、人生。こんにちは、死。
とかどーでしょーか。
はい、自己投影は宜しくないですね^^;自重します。
あと頑張ります。
252 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2009/09/25(金) 20:34:41 ID:fEd6kIrv
今は無きアラバマが偏愛をコミカライズしたらどうなるんだろう?
普通のこなかが物でハッピーエンドで終わりそう・・・
凄いスレタイに釣られて来た
話によって人間模様が相当複雑で、不謹慎だけれど面白い。
支援
254 :
お漏らし中尉:2009/09/26(土) 01:15:12 ID:HIo4sVPp
>>247 なんか、現実味を帯びて欝度急上昇中って感じですね・・・
っつか入院って、まさか持病のアレですか?
255 :
ガンガン福岡:2009/09/27(日) 21:41:21 ID:sJszne4H
>>254 まさにうなされ続けた鬱状態より思いついたネタですので…
入院の原因についてはPiな場所を見て頂けると分かりますよ。
レディートゥーダンス♪
258 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2009/09/30(水) 22:14:07 ID:qMBuUfVt
こなたダーンス
こなたキャワイ杉
260 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/03(土) 01:43:28 ID:v4lHuvFb
261 :
かがみの妹:2009/10/03(土) 02:02:08 ID:3sQD2QeO
『かがみの妹』
気の毒な話、10代という若さで死を迎える人間は想像よりも多く存在する
その多くが不慮の事故によるものであるが・・・
近年、その不慮の事故の中に第三者が介入することの無い事故、事件が顔を出す
自分を対象とした殺人・・・
思春期であり、デリケートな問題を多々心に刻んだ若者たちの多くは己に嫌悪感を抱き
自己を救うために別の自分を否定する方法を安易にとる様になった
「まさかあの人が自殺するなんて、あんなに真面目で明るかったあの子が・・・」
「まったくそんな感じはしなかったのに」
「自殺するなんて、その前にどうして相談してくれなかったの」
周囲はあたかも自殺したものに責任があるようにして口端から糞を垂れ流す
ニュースキャスターや専門家などは真面目を装った顔で得意げに
「近年自殺は増加傾向にある」
「家庭環境や教育の場に責任がある、改善が必要だ」
「もっと人間の内面に目を向けるべき」
「自殺の対策として、カウンセリングとシュミレーションが必要だ」
などと原稿用紙の二行も占めていない言葉を己の言葉のように吐き散らかす
そんな言葉が死者を取り巻く中、誰しもが心に秘めている言葉がある
「こんな世の中だから自殺するのだ」と
今や自殺は社会現象であり、古来より人間のみに許された特権である
元来、人間には食人や殺人が悪という概念は存在せず暴力と略奪が横行していた
という記述がある
その野蛮な動物たちの時代を終わらせたのが『宗教』であり後に聖人といわれる存在なのだ
しかし、その心の柱になりうる筈の宗教は神のもとへと旅立つための道しるべとして
自ら天へと旅立つ術を人間に与えたのだ、それが「理性」であり「自己否定」の感情
少々偏見も含まれては見えるが、今この場で妹の亡骸を前にして涙を流す少女にとって
この理論は正当な倫理のもとに構成されて見える
「つかさ・・・」
かがみは見慣れた自分の分身に悲しみを含んだ視線を落とす
棺桶の中の妹は今にも起き出してきて、また大いに甘えてくれるのではないか
そんな期待を抱いてしまうほどに美しい
死に化粧には恐らく身近な者が死んだという現実を柔らかにする目的があるのでは無いだろうか?
それを死んだものに対する「せめて美しく逝かせてあげたい」という感情に置き換えて
己のエゴを押し通しているのだろう
だって、そうすることによって救われるのは死人ではなく生きている者たちなのだから
大粒の涙は枯れ果てて、かがみの視界には色あせた周囲の景色が残る
この十数年間、妹を庇い、まるで母親の様に男の様に強く接してきたために
かがみは泣く事が苦手なのだ
「つかさ・・・」
「・・・つかさ・・つかさぁ」
両親や姉は惜しげもなく涙を流し、親友としてクラスメイトとして参列してくれた
学校の友人たちはつかさの手を握り、交互に名を呼び、共に悲しんでくれている
262 :
かがみの妹:2009/10/03(土) 02:03:11 ID:3sQD2QeO
中でも教員代表の黒井ななこ
クラス代表の高良みゆき
友人代表の泉こなた
この一緒に海にいったメンバーは特別な思いを込めて悲しみの意を露にしている
かがみの体は風に晒されているが未だに現実感が無く
妹が死んだ夢でも見ているのではないかと錯覚・・・いやそう望んでいる
「かがみん・・・・」
気が付くと目の前に高校一年からの大親友である泉こなたが佇んでいる
もっとも近しい存在だからこそ、こんな時にどんな声をかければいいのか解らない
既に涙を枯らし、泣き腫らしたかがみの乾いた瞳はこの幼さを残す少女を冷たく見据える
他意はない、だがどうしても心に温もりの灯火を宿せないのだ
こなたはかがみの心を察してか、そっと彼女を抱きしめた
「こんな時くらい・・・・泣けばいいじゃん」
「・・・・」
かがみはこなたの瞳を見据える、いつも垂れた目じりが今日は俄かに瞑れている
こなたはかがみの視線に耐えかねて視線をそらした、そして懸命に何かを語ろうとするのだが
涙と肩の震えからかまともに喋れずにいる
彼女もまた妹の為に悲しんでくれる友人なのだろう
その少し後ろには高良みゆきがハンカチを左手に持って困った様にこちらを見ている
「・・・あの・・・お悔やみを・・・・申し・・」
(お悔やみを申し上げます)たった一行の言葉が喉から発せられない
人間は感情によって言語能力を極端に低下させる生き物だ
溢れる涙で視界を曇らせる秀才の少女の肩に力強い女性の手が優しく触れる
「高良でもそないな顔するんやな」
ななこは片手でみゆきを抱きながら、かがみとこなたをもう片方の手で抱きしめる
その光景は愛しい娘たちを何かから守る為に抱いている、聖母の様にも見えた
「泣きたい時は体裁考えんと泣かないかん」
263 :
かがみの妹:2009/10/03(土) 02:03:55 ID:3sQD2QeO
ななこはユックリかがみの頭に手を置くと、長い髪を撫ぜる
「確かに泣いても妹は戻らんけど・・・・人間は目いっぱい悲しまな前に進めんのや、せやからいっぱい泣いて妹を弔ったらないかん」
「う・・・・」
かがみは自分の瞳から涙が湧いて来るのを感じた
(泣いてもつかさは帰ってこない)かがみの考えていたことだ
だからこの場で泣く事はしたくなかった、最後まで気丈な姉でいたかった
だが、そんな思いを見透かされた今、涙を堪える理由は無くなってしまった
かがみは少しだけ憎らしそうにななこを見上げるとこなたとみゆきを抱きしめ
ななこの胸に顔を埋める
家族には見せたくなかった
自分の情けないまでに涙にぬれたその顔を・・・・
「つかさぁ・・・つかさぁ・・・なんで死んじゃったのよ!」
少女に抱きしめられた友人たちも、その声と共に涙を流した
天に昇ってしまった少女にも届くような悲しい歌が柊家を包むころ
明るい太陽は雲に盗まれ、空もまた涙を流すのだろう
この時ばかりは誰もが思うのだ、か弱き少女の魂よ永遠なれと
………
つかさ
本来言葉とは実態があって初めてその意味を持つ
しかし、実態を失ったその名前という言葉は悲しみの意を残してこの世から形を消した
失われた形を追い求めて血縁の者は49日間涙を流し
50日目には事実を受け入れなければならないのだ
それが、由緒正しき神道の家柄に仕える柊家一門の慣わしに恥じぬ者とされる
51日目にかがみは愛しい妹の部屋に入り、線香を供え、礼を行った後に遺品整理に取り掛かる
人の死がたったの49日間で癒える事もなく、かがみは眼前の多数の亡骸に心を痛めた
勝手知ったこの部屋もまだ夏の終わりだと言うのに冷たい空気に支配され
いつも妹が寝ぼけ眼で自分を見ていたベットにも一切のぬくもりは無い
たったの数十日で机の上にたまった埃は赤いブックライトを薄いピンクに変えている
中途半端に使われた大学ノート達も生前のつかさが残した丁寧な文字を羅列させた貴重な品
勉強を得意とはしなかった彼女だがノートはしっかりと取るなど律儀な血をしっかり引いていた
かがみはそれらのノートを大して意味もなくめくり、眺めている
「つかさ・・・・なんでかな」
何度も口にしたこの言葉も既に口癖のようになり、意味を失いつつある
彼女が死んだ理由など、彼女とともに死んでしまったのだ
かがみはそれらのノートをダンボールに入れると教科書の類やプリントと共に封じる
ダンボールには『つかさ 勉強道具』とマジックで書かれた
勉強嫌いの彼女の部屋からダンボール一杯の勉強道具が出てくるのだから少し笑える
机の引き出しには修学旅行の写真などが大切そうにしまわれていた
京都の写真、とても懐かしい若かりし頃の思い出になる筈だった
アルバムを捲っていると一枚の写真が床に落ちる
その写真には奇妙なところがあった・・・・
「・・・・・・?」
264 :
かがみの妹:2009/10/03(土) 02:04:37 ID:3sQD2QeO
その写真にはつかさは愚か、かがみやこなた、みゆきすらも写っていないのだ
二名の男子が鹿をバックに笑っている写真・・・一人は白石・・・
もう一人も恐らくつかさと同じクラスの人間だろう
確かつかさの葬式で最後まで妹の手を握って泣きじゃくっていた男子だ
かがみの顔は少しだけ赤くなり、すぐに視界がぼやけた
「あんたにもそんな人がいたのね・・・全然気が付かなかったわ」
かがみの脳裏に「どうしてだよ!なんでだよ!」と叫ぶその男子の姿が蘇る
彼もまたかがみと同様妹が自殺した理由を知らないのだろう
結局自分も妹の変化には気が付いてあげられなかったのだと不甲斐なさで胸が痛んだ
傷心のかがみは一通り引き出しの中のものに目を通すとそれらをダンボールに入れる
そうして複雑な単純作業を繰り返していくと、あっという間に妹の部屋のものが無くなるのだ
かがみは最後にクローゼットの中の制服とバックを持ち出し自分の部屋に持っていく事にする
衣服類はかがみとつかさでは趣味が違うので既にダンボールに入れてしまったが
学校の制服などはサイズなども同じでかがみも使えるのだ
残りの高校生活くらいは妹の残り香を求めても罰は当たらないだろう
そう思い妹の形見をしっかり抱いたまま空になった妹の部屋から早々に立ち去った
かがみが自分の部屋に着き、制服を衣装棚に戻したあとで
妹の鞄を開けて見る
もちろん興味本位な部分もあったが、もしかしたら遺書の様なものがあるのでは?
と期待からの行動だった
つかさは練炭を使って神社から離れた倉庫の一室で自殺したのだ
一酸化炭素中毒は唇や肌をピンク色に染め、細胞を容赦なく根絶やしにする
その傍らには何もなく、玄関の左端には整頓された靴が置かれていた
その倉庫は祭具が置かれており、つかさが使ったのは全く空の部屋だ
そこは幼少の頃、姉妹たちが雨の日の遊び場としてよくお膳を持ち込んでおままごとをした部屋
つかさは決まってお母さん役をかって出る、かがみは男の子役が多く、姉二人は先生や父親をやった
その頃からだろうか?つかさが料理を始めたのは
家事に興味を持ち、お菓子を作り、姉たちと競っていた
かがみもまた勉強を頑張り、その成績と計画性などで家族を賑わせる
自分とは対照的だった女の子らしい妹
そのつかさがお膳を前にして眠るようにして床を涎で汚していたのだ
遺書も残さず、何かを抱きしめるかのようにして部屋の中心に置いた練炭を盛った膳を見守るように
果てていた
かがみはつかさの鞄から見慣れない手帳を見つける
デコレーションが趣味の妹にしては簡素な手帳
システム手帳でもなくアドレス帳でもない、プリクラなども集めていないのでその類でも無いだろう
その手帳は青く、恐らく新しくは無い
かがみは手帳をパラパラと捲っていくとページの上には日付、そしてその下に文章がある・・・
「これって・・・日記?」
ものぐさの妹が日記を付けていたなんて正直疑わしい
姉の率直な意見がかがみの心に響いたが、少女は苦笑したままページを捲っていく
もし妹が生きていたならプライバシーを配慮して鞄に戻すところだが
この手帳には妹の死と関係する何かがある筈だ・・・・と期待した姉は構わず目を通す
しかし、日記の内容はさほど大したことは書かれて居ない
別に『大した事』でない訳でもないのだが四六時中妹と一緒にいたかがみにとって
書かれている事の殆どは知っていることばかりだ
知らない事といえば、自分に内緒で男の子と付き合っていた事
バレンタインやクリスマスにはプレゼント交換をしていた事
ファーストキスの味がどんな味なのかなどつかさの思いが綴られた文面たちくらいのものだろうか
はっきり言ってかがみにとってはこれは大きな事件だ
あのつかさがまさかここまで進んでいたとは正直ショックだし、悔しさも多少ある
が、殆どの誰しもが経験することなのだから別に大騒ぎする事ではない
265 :
かがみの妹:2009/10/03(土) 02:05:57 ID:3sQD2QeO
若くして命を絶ったのだ、そんな妹を責められるわけが無い
むしろ花開いて散った事を天に感謝すべきだろう
しかし真に興味を引くべき所はそんな事では無い
『どうして私は生きているんだろう』
かがみの目に飛び込んできたこの文面は鋭い刃と化してかがみの心臓を背中から射抜いた
たった一言、日付もなにも無いページにはそう書かれている
その一行で終わっているのだ
その言葉の後には何かを書いた痕があるのだが消しゴムで消されており読めない
かがみは次のページを開くが真っ白だった、その次もその次もその次もその次も
真っ白なページが続く
そして最後のページにたどり着くとようやく何かが書かれていた
『みんなバイバイ、私はお友達と一緒に帰ります』
かがみはその手帳をパタンと閉じるとなんともやるせない心情でベットに倒れこんだ
つかさにもこんな一面が、人生に悩み、疲れ、死を心のより所にするような一面があったのだ
一体何が彼女をここまでさせたのだろうか?
確かに彼女は学校の成績もよくは無かった
でも進路は調理の専門学校だと決めていたようだし、もしそうでなくとも他に道は幾らでもある
かがみがそう思うほどに妹のつかさにはそういった種類の技量があるのだ
そして、姉のかがみは妹には無い非凡な頭脳があり、その洞察力で柊家を沸かせたことがある
一昔前に『モーリーを探せ』というゲーム本が流行った事がある
この本はB4サイズの本目一杯にコインサイズの人物や動物、風景が描き込まれており
その中からたった一人のモーリーを探すといった単純なゲーム本だったのだが
大の大人でもモーリーを探し出すのに数十分を要し、感の悪いものなら一時間かけても見つからない程の出来だった
当時、父のただおが買ってきた本を見て真っ先にモーリー探しに挑戦したのはつかさだったが
結局半日かけても見つからず泣きべそをかいていた
べそが大泣きになる前にかがみが「小学校高学年にもなってなに泣いてるのよ」などと
小学生らしからぬ言葉を口にし、つかさの話を聞いた後で仕方なくその本に挑戦したことがあったのだが
あっさりとモーリーを見つけてしまった
所要時間はおそらく1,2分程度しかかかっていない
この事実に父であるただおは驚きというより驚愕という言葉が似合うような顔を娘に向けた
「かがみや・・・・どうしてそんなに早く見付けられたんだい?」
違和感・・・かがみはささいな違和感を感じている
つかさの日記からもつかさが自殺を行った部屋からも小さなものだが違和感を感じるのだ
あの時、モーリーを呆気なく見付けたのは違和感を感じたからだ
周囲の不自然さや作者によって乱恥気に仕立てられたキャラクターが守っているモーリーへの道
かがみにはモーリーの周囲が浮いて見えたのだ
モーリーを守ろうとする故に築き上げられた不自然な空間が浮かんで見えた
かがみはここ数週間の記憶を蘇らせるとはっとする
その瞳には何かを疑う強い光と何かを信じたいという気持ちが渦巻いていた
「もし、そうだとしたら・・・・」
……
266 :
かがみの妹:2009/10/03(土) 02:06:42 ID:3sQD2QeO
「もしもし、こなた?」
日は高く昇り、気温も上々、肌につたう汗が心地よい風に冷やされる時刻
かがみは庭に面した大窓に腰掛けて親友泉こなたに電話をかける
「かがみん、もう大丈夫なの?」
「ええ、なんとか・・ね」
親友の言う大丈夫には色々な意味があるのだろうが、かがみにとってのそれは
妹を失ったショックを指している
49日間でなくなる程度の悲しみでは無いが、49日以上も重苦しく過ごしたのであれば
亡くなった妹が浮かばれない、とかがみは少しだけおどけた声で言葉を返す
こなたは少し安堵したように「そうだね」と呟いた後、申し訳ないと謝った
「折角だけど、いまちょっとゆい姉さんの家に来ててさ。手が離せないんだ」
「え、そうなんだ?」
「うん、実はねゆーちゃんがちょっと体調壊しちゃっててさ・・・色々とね」
「そう・・・」
こなたの話を聞く限りでは「ちょっと」の大変さでは無いことが容易に想像できる
かがみも、流石に私用の為に無理を言う気にもなれず
「用事が終わって時間が見えたら一緒にご飯でも食べましょ」とだけ伝えて話題を終えた
こなたは「そうだね」と返事をしたあと電話を切るる
普段は携帯電話を持ち歩かないこなたが即座に携帯電話に出たのだから事態の大きさは見て取れる
血が繋がっていなくても妹とは姉をそんな気持ちにさせる存在なのだろう
しかし、出鼻をくじかれた形に終わったかがみの謎解き
かがみは已む無しに次の目的への連絡を試みた
相手はBクラスの秀才であり親友の高良みゆきだ
こちらは簡単に約束を取り付けることが出来た
目的の場所に向かうかがみの脳裏には「はい?もしもし?」という温厚なみゆきの声が木霊した
彼女もまたかがみの身を案じ、まずは弔いの言葉を口にした後でかがみの心境を察する言葉を放った
そういった心使いのできる人間が身近にいるだけでかがみは豊かな気持ちになった
指定された喫茶店は春日部駅から徒歩5分圏内の店で
朝のラッシュ時にはリーマンの軽食でごった返すここの名物店だ
店長は40代の紳士でなかなかのハンサム、脱サラしてから開業したのだが
なかなかどうして繁盛している様だった
「はい、イチゴパフェとチーズタルト、あとはロシアンティね♪」
30を過ぎたくらいであろう艶やかな女性が笑顔で持ってきてくれるここのスイーツは絶品だった
脱サラした夫に着いてはや数年、どんな困難も共に乗り越えていける絆を感じ
二人の少女はいそいそと働く女性を羨ましそうに眺めていた
「あの・・・」
「ん?」
先に口を開いたのはみゆきである、呼び出した本人が物思いに耽っているので
みゆきは困った様に首を傾げて見せた
相手に注意を促すときでさえ可憐に、下手に出れるのはある意味才能なのだろう
かがみは「ごめんごめん」と柔らかな掌で空気を曲げた
「実はね、みゆきに聞きたいことがあるんだけどさ」
「はい、答えられる範囲でしたら」
267 :
かがみの妹:2009/10/03(土) 02:08:01 ID:3sQD2QeO
かがみはパフェをすくい、一口頬張ると「おいひ〜」と目を瞑ってみせる
満足そうな店長の顔を横目にみゆきもかるく会釈して紅茶を味わう
この店のロシアンティはパインジャムを使用している事で有名なのだ
みゆきもまた「はぁ…」とため息を付くと頬が落ちないように両手で支えた
つかさが死んで以来実に51日ぶりの甘いものを3分の1までやっつけたかがみは
口の中の甘さを紅茶で洗い流して、一枚の写真をテーブルに出す
それはつかさのアルバムに挟まっていた例の男子の写真だった
みゆきはソレを見ると「ああ」といった風な顔をしてチーズタルトの角を取る
そのちょっとした微笑を見るなりかがみは二人の男のうち白石では無い方の男子を指差した
「この男子?」
「ええ、その殿方です」
みゆきは隠す風も無く、チーズタルトを口に運んだ
みゆきの口内には甘くまろやかな風味が一瞬で広がり、その甘さが脳を刺激する
女性の脳はは男性よりも甘みに敏感に出来ており、甘さによる幸せを感じることが出来るのだ
「3ヶ月ほど前でしょうか、つかささんからはその方とお付き合いしている旨を伺いました」
「そ、みゆきは知ってたんだ」
かがみは特に意外といった風でもなく、パフェを口に頬張った
二人の少女が放つ甘い香りがその周囲一体を淡いセピア色に変えていく
「実は口止めされてまして・・・かがみさんに心配をかけるのは・・と言うのが彼女の言い分で・・・えと」
「・・・・・・?」
「こなたさんに関しましては・・・・・」
「ああ、だいたい察しは着くわ」
恐らくこなたに言えばあっと言う間に東京まで広がってしまいかねないと思ったのだろう
かがみもソレに関しては「そうかもね」と思った
こなたはイイ奴だし、かがみも大好きな親友だがそういったことに関して言えば気が置けないと言って良い
小早川家でくしゃみをしているこなたもつかさが男性と付き合っていたことなど知らない筈だ
それに今となっては知ったところでそれ程の意味は無いだろう
268 :
かがみの妹:2009/10/03(土) 02:10:04 ID:3sQD2QeO
「その男子さぁ、今ここに呼べない?」
みゆきは「え?」と言う顔でかがみの顔を凝視した
かがみのこの大胆さにはいささか驚いたのだろう、対面する少女は危うく紅茶を吹きかけた
が、かがみにいたってはいつもの通り、沈着冷静である
みゆきは少し考えた後、かがみに向き直る
「残念ながら、私はその殿方の電話番号を知らないので・・・・」
「あ・・・そっかぁ・・」
できる事ならここにその男子を呼んであげたい、みゆきはそう思いながらも
かがみの役に立てない事を詫びていた
それにもし呼べたとしても、呼ばなかったかもしれない
突然、失った彼女の友人なり家族なりから呼び出しをされてもノコノコ出てくる可能性は低かった
そこでみゆきは提案した
「でしたら、明日学校で直接お話したら如何でしょうか?私が事前にお伝えしておけば大丈夫じゃないでしょうか?」
「そうね、それが一番かもね」
才色兼備、かがみは心の中で苦笑した
おそらく何時の時代でもみゆきの様にあらゆる局面で他人の気持ちを察する人間が
後に成功者と謳われるのではないだろうか
かがみは妹の死の真相を突き止めたいばかりに自分でも知らないうちに躍起になっていた様だ
少し反省する機会を彼女が与えてくれたびだろう
かがみはパフェを口元まで運ぶと伝票を引き抜いて笑った
「ここは私が出すから遠慮せずに食べて頂戴」
「あら、でしたらもう少し高価な物を頼めばよかったですね」
稀に見るみゆきのボケにかがみはニンマリと美しい白い歯を空気に触れさせた
「言うわね、みゆき」
何時振りだろうか、こうやって笑い合うのは
かがみは妹の大好きだったイチゴパフェを頬張ると人知れず、涙を拭った
つづく
さて、どうなる・・・wktkして待ってます
汚名挽回名誉返上と血迷うのも面白いかもしれない。今日はそんな気分。
名誉なんてあったかどうか知らんが。いや、無いと知っているけれども。
excelent
272 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/04(日) 04:07:19 ID:3uUJz+Ls
いいね
こいこいこいこい
275 :
かがみの妹:2009/10/05(月) 23:50:39 ID:/n+cBUDp
……
月曜日、誰もが憂鬱に思うブラックマンデー・・・
日曜日とは打って変わった現実に、夢うつつの人間たちは不満をぶら下げて立ち歩む
柊かがみは朝の授業から物思いに耽っていた
昨日の時点では仮説に終わっていた自分の確信が真実と結びつく可能性が有るからである
何故、確信と言い切れるのかかがみにも解らないが恐らくと言う程度の域は遥かに飛び越えていた
推理に確信を持つと言うこと事態が矛盾めいたものを感じさせるのだが、それもまた矛盾となりえる
名探偵は自分の推論に確信を持って犯人を説き伏せるもの
『つかさが自殺した部屋にはもう一人、別の誰かがいた』
みゆきには話していないが、かがみはそう確信している
もちろんこんな犯人探しに似た行為は警察か探偵の仕事なのだが
殺人でないという以上、犯人探しに拘る理由はかがみには存在しない
ただ、妹が死んだ理由が知りたいだけだった
月曜日の終業の合図は全校生徒のみならず、教員たちにとっても待ち遠しいものだ
6限目の授業が終わり、屋上で待つかがみに少し肌寒い風が触れ始めた頃
みゆきが一人の男子を連れてくる
かがみがみゆきの瞳を見据え「ありがと」と軽く挨拶をした
みゆきはその意を汲んだのだろうか「それでは」と男子を置いて屋上から姿を消す
その場に取り残された男子はただ佇むばかりで不安そうな表情を露にしている
「大丈夫、つかさの事で少し質問するだけだから」
「・・・・本当に姉妹なのか?」
男はつかさの温和なイメージからは程遠い空気を敏感に感じて口を開いた
「似てない双子ってのも面白いでしょ?」
かがみは苦笑して男の瞳をじっと眺めた
男も負けじとかがみの視線を押し返してくる
まるで負い目など感じていない純粋な視線は実に小気味良くかがみを気圧す
「生前はつかさが・・うちの妹がお世話になりました」
突然、かがみは男に頭を下げると目一杯の微笑を向ける
それを見た男はやっと気を許したかのように頭をかいて照れて見せた
おそらくこの男はつかさの死に関しては全く知らないだろう
それ所かつかさはこの男に出会った事で生きる喜びを少しは見出したのでは無いだろうか
かがみはそう思った、単純に勘でしかないが・・・
276 :
かがみの妹:2009/10/05(月) 23:53:44 ID:/n+cBUDp
「それで聞きたいことっ何?」
「月並みよ、つかさが死んだ理由を聞こうとしたけど・・・・」
かがみは一度言葉を切り、そのまま階段の方に足を投げ出した
「アンタは関係なさそうだしね。ごめんね、思い出させちゃって」
「・・・・・いいよ、別に」
歩を進めようとするかがみに男が「待って」と声を掛けた
振り向く事無くかがみが立ち止まる
その場の空気は先ほどとは少し変わっていた
かがみは動揺している、それが何故か解らないが
うっすら滲んだうなじの汗と震える指先が自分にそう継げる
少女は噛み締めた唇を悟られないように声を発する事無く首を少しだけ捻って応えた
「つかさはさ、自殺なんかするような奴じゃなかったんだ」
「・・・・・」
名も知らぬ妹の恋人は今にも泣き崩れそうな声でなんとか言葉を発している
かがみはその言葉に精一杯頷くと低い声で「そうね」とだけ呟く
情けないことだが、ほかに言葉が見つからないのだ
「それなのに、あいつは俺の事ばっかり心配して・・・でも俺、気付けなくって」
「・・・・・そうね」
かがみは相手の男を責める事など出来ない
何せ、この男よりも自分のほうが妹とは近しい存在だったのだ
それなのにこんな彼氏がいた事も、妹が悩んでいたことも何も知らなかった
かがみは悔しさや悲しさをごちゃ混ぜにしたよく解らない感情の海に浸かったまま
これ以上この男の声に耐えられない自分を引き連れてこの場を退散する
「懺悔なら他所でやって頂戴・・・・私だって怖いのよ」
「・・・・」
かがみは引き際に小さな声で「ごめんね」と呟き、呆然と立ち尽くす男から逃げるようにしてこの場から立ち去った
決して不快に思ったわけではない
むしろあそこまで妹を愛した男を目の当たりにして、これから先の彼の人生に何か負い目を感じてしまったのだ
傷心の少女は階段を下りながら、つかさにも男を見る目が有ったのだと少しだけ嬉しくもあり
ああいった男に好かれるのはどんな気持ちなのかと妹を羨む気持ちもあった
どちらにしてもあの男は妹を一人で死なせるような人間では無いのだろう
名前も知らない男にかがみは多少の好意と大きな罪悪感を持った
277 :
かがみの妹:2009/10/05(月) 23:57:01 ID:/n+cBUDp
……
「どうでした?」
学校の正面玄関から姿を現したかがみをみゆきが呼び止める
どうやらみゆきはこなたを食い止めておいてくれた様だ
こなたはみゆきに自慢げにオタク話を展開させている真っ最中の様子で
みゆきはしきりに感心して見せていた
「収穫ゼロ・・・・かな」
「そうですか」
「なになに、何の話ぃ?」
話に入ってこようとするこなたをかがみは制そうとするが、思いとどまった
そもそもこなたをこの話の輪に入れない理由など無いのだ
まあ、多少伏せておいた方が良い面も有るのだろうがそれ以外は話しておくことにしよう
なにしろこなたの情報収集能力はある意味神がかり的なものがある
それに一、二年にも顔が利くし誰からも警戒されないのは彼女くらいのものだろう
かがみは二人に包み隠さず(一部は伏せて)話す事にした
その内容はつかさが死に至るのに何か理由があったに違いないがどうも友人関係が怪しいという事と
つかさが自殺した現場にはもう一人の人間がいたという事だ
あとは日記の存在くらいのものだろうか
とにかく、かがみは味方が欲しかった
妹を死に追いやった原因を知るためにどんな情報でも欲しかったのだ
だからこそ、親友二人にこの事を打ち明けた
そして二人の友人はコクコクと頭を振りながら、懸命にかがみの話を聞いていた
確かにつかさは何となく自殺するような人間では無かったし、そこは二人とも一応の納得をする
みゆきなどは腕を組みながら目を閉じて真剣に話を噛み締めている
そんな彼女を頼もしく感じるかがみは吹き抜ける風に向かって少し不敵に笑ってみせた
まるで『私にも頼りになる友達がいるんだぞ』とでも誇るように・・・
そこで思わぬ方向から一つの質問が少女を激射する
「ねえ、どうしてつかさが自殺したときにもう一人いたって言い切れるの?」
「確かに・・・・」
こなたの質問はみゆきを振り向かせるのに十分なものだった
現場にいなかった人間がこれほど大胆な仮説を浴びせるのだから、それなりの根拠があるのだろう
二人の友人はそう思って耳を傾けるのだが
しかし、当の本人であるかがみは別にたいした事でもなさげに説明を始めた
「まず、玄関の靴の置き方なんだけど端っこにおいてあったのよね」
「それのどこがおかしいのさ?」
「じゃあ、あんたが一人で部屋に入るとしたらどこに置く?」
誰かがたった一人で部屋を使った場合どうだろう、かがみの言葉はそう語っているのだ
みゆきは顎に指を当てて「私でしたら・・・真ん中に置くのでは無いでしょうか?」といって頷いた
こなたはポカンとした顔でかがみを見る
278 :
かがみの妹:2009/10/05(月) 23:59:28 ID:/n+cBUDp
「みゆき、正解」
「ん〜」
不服そうなこなたにかがみは人差し指を向けながら言葉を続けた
「結構特殊な例もいるけどね、大抵の人間がそういった行動をとるものなのよ・・・よほど沢山の靴でもない限りはね」
実際、人間は均衡の取れた場所にポジショニングする傾向があるのだ
それは常に己の目に届く所に『所有物』を置いておこうとする本能が作用するらしい
そして、細かいことを言えば個人の利き目の方にややよっているというのが理論だそうである
かがみは文庫本を読む合間にそういった心理学に近い科目にも手を出していた
好奇心が探究心に繋がった良い例だといえるだろう
そして・・・・
「それにつかさの倒れていた場所も不自然なのよ・・・」
こなた、みゆきはもう一度お互いの顔を見合わせるとかがみに向き直った
示し合わせたようにこなたが口を開く
「どうおかしいの?」
もっともな質問だろう
恐らく第一発見者だったのがかがみで無ければ残されていなかった真実かもしれない
桃色に染まって絶えていた妹の姿を思い出し、かがみは少し立ち眩みの様なものを感じるが
友人二人に悟られない様に「コホン」とワザとらしく咳払いを一つつく
「つかさは玄関に顔を向けて倒れてたのよ、普通は人間が寝るときは楽なほうを見るもの」
「一酸化中毒の強い酸欠症状からすればそれが理にかなっているかも知れませんね・・・ですが」
かがみは一度目を瞑ると小さく深呼吸をする
「つかさが眠る時はいつも仰向け・・・つまり天井を見ていたのよ」
「それはきっと、苦しくてもがいた時に・・・・」
こなたの声をみゆきが制した
「一酸化炭素中毒の特徴は強烈な酸欠による眠気ですからもがく事は無い・・・・と思いますが」
「が?」
かがみの追随にみゆきは申し訳なさそうにこなたを見下ろす
興奮したとは言え、友人の言葉を遮ったのは当人の流儀に反したのだろう、すまなそうに頭を下ろす
こなたは「気にしないで」と言う風にみゆきをチラリと見るとかがみに向き直った
それを合図にみゆきの口が再び鈴の音にも似た声を鳴らす
「練炭に着火した後に、つかささんが座ったままだったとしたらそういった姿勢になりませんか?」
「あ〜、ずり落ちる感じでって事?」
本来、ずり落ちるという言葉は『布団から〜』といった時に使うのだが、能天気なこなたの声をきいたみゆきは訂正するのも申し訳ないと
少し納得のいかない笑顔で「そうですね」と頷いた
しかし、すぐさまかがみの否定が場を緊張させる
「そうね、でもこう考えられないかしら?」
凛とした声が空気を揺らすと、かがみの釣りあがった瞳が一層鋭くなったのを二人は感じた
「誰かが部屋から逃げだしたとしたらどう?そしてソレを見送った」
「確かに・・・・・」
279 :
かがみの妹:2009/10/06(火) 00:02:55 ID:d2QGPo0h
みゆきもこなたもお互いの顔を見合わせ、生唾を飲む
かがみの理論は真実に近いかもしれない・・・
しかし、少々強引過ぎるような気がするのも本当のところだ
ただかがみがそれ以上の事を握っているのであれば話は別だが
妹を失ったばかりの親友に『隠し事はないか』と迫れるほど二人は破廉恥では無い
それにこの問題は主に柊家・・・かがみの問題だ、二人は自分たちの出来ること・・・
してあげられる事を出来る限りしてあげたかった
二人の察していた通り、かがみは友人たちに話していない事がまだ有った
この時、かがみが二人に伏せていた事は実に二つある
一つは日記の最後のページに書かれていた
『みんなバイバイ、私はお友達と一緒に帰ります』という文章
かがみの確信を支える推論はこの言葉を中心に構成されていると言えた
もう一つはつかさの携帯電話には何一つデータが残されていなかった事である
かがみがみゆきの「つかさの恋人」を連れて来させたのもこれが原因だった
なにせ、データさえ残っていればメールの内容から本人を特定できたのだから事態はもっと簡単だったに違いない
そして、こなたに関していえば「妹の彼氏」に関する事も伏せている事になるので三つと言うことになる
かがみは胸を痛めながら事に臨んでいる、それは人間の業にも似た境遇を思わせた
怪訝な顔をしたままのかがみを見つめる四つの優しい瞳たち
かがみは何故だか解らないが、この事は二人に伏せておかなければいけない気がしていた
事が真相に近づいていくの感じるたびに彼女の中の罪悪感は積み重なって、心を押しつぶす
「そろそろ帰りましょうか、風が止んだからそろそろ雨が降るわ・・・」
かがみはそう言うとこれまでと変わらない笑顔で、その場にいる筈の無い妹を見つめていた
そのつかさは果たして鮮明に生前の面影を映し出していたかどうかは定かではないが
それは紛れも無く、かがみの中のつかさそのものであった
一瞬、空が歪んだような錯覚が少女の世界を飲み込んだ
……
280 :
かがみの妹:2009/10/06(火) 00:05:28 ID:d2QGPo0h
翌朝、かがみは目覚めると即座にカーテンを開けて、待ちかねた様に全身へと陽の光を浴びせる
窓を開けると清々しい風が部屋中に舞い込んできて庭の菜の花の香りを自分に届けてくれた
その香りに絆されながら化粧台に腰掛けると、バサバサだが艶のある髪に櫛を入れる
この時期の気候は本当に良く、寝汗で体がべたべたしないので朝のシャワーは省くことにする
サラサラと流れるその手触りに、「誰の為でもなく髪のお手入れとはね」などどいうこなたの憎まれ口を思い出す
朝から鏡の中の自分に苦笑しながらいつもの様にリボンで髪を束ねた
「さて、と・・・・」
ベットの整理もそこそこに、彼女は制服姿を鏡でチェックすると自分の部屋を後にした
妹のつかさの部屋はすぐ隣、かがみの隠された日課は妹の目覚まし代わり
ドアを開けるといつも通りに心地良さそうに布団に包まる憎めない妹、つかさの姿が目に入る
かがみはつかさの傍にそっと腰を下ろすと妹の髪を撫でる
その手触りは自分のものとソックリで細くしなやかな感触だ、ただ妹の方が少し髪が柔らかい
きっと、自分の髪は性格から刺々しさを吸収したのだろう
かがみはそんな事を考えながらゆっくり妹の耳に手をやる
「いぎい!?」
ギリギリと引っ張られる耳たぶに対して、悲痛の声をあげるつかさ
かがみはジットリした目つきで妹のその顔を見つめた後にその痛みからつかさを解放した
「お、おねえちゃん!?おはよう?」
「おはよ、つかさ♪」
つかさは驚いた素振りで壁を背にして呆然と姉を眺めている
そんな妹に対してかがみは謝罪もせず、むしろ爽やかな朝の挨拶をプレゼント
にこにこ笑っているかがみは、つかさの布団を剥ぎ取り無残にも床に落ちた目覚まし時計を手に取った
持ち主の意思とは反してデジタルの数字は着々と時を刻む
「つかさちゃん・・・・今、何時かな?」
「ひ、ひゃああああん!」
ドタバタの朝、かがみはいつもいつも手が焼けるこの妹に呆れながらも「しょうがないな」と苦笑い
こんな妹と何時までも仲良く暮らしていきたい、そんな願いを密かに胸に秘めて妹の名を呼んだ
「つかさ、急ぎなさい」
「・・・・・・・」
「あれ?」
気が付けばつかさの姿が無い、変わりに見覚えがある石段・・・ここはうちの神社の境内だ
かがみは石段の端々に揺れる向日葵を倒さないように前へ進むが境内につかさの姿は無い
外に出たきり夕飯の時間になっても帰ってこない妹に腹を立てた姉は
「ちょっと、神社の裏庭に行って来るね」という妹の言葉をもとに神社の周辺を歩き回っていた
まったく幾つになっても世話の焼ける妹だ
かがみは既に隠れ始めた夕日を睨み、再び地面に視線を落とす
面白い形に組まれた石の絨毯はまるで城壁を倒したようにも見える
その絨毯の上にある見慣れたものが弱弱しく風になびきながら、かがみの足に絡みつく
かがみはそれを手に取ると、じっと眺めて息を呑んだ
「・・・ちょっと、どうなってんの」
281 :
かがみの妹:2009/10/06(火) 00:09:21 ID:d2QGPo0h
手に握られた妹のリボンが力なく垂れるとかがみは全身に悪寒が走るのを感じた
彼女は感じた、見えない何かが自分を導いている
かがみはその誘いに抗うことが出来ないまま、その方向に歩を進めた
一歩一歩足を前に出していくと目の前に現れたのは祭具を収納するために建てた倉庫だ
今の時期は使わないその倉庫一室、向かって右端の部屋には何故だか明かりが点いている
彼女は自分が怯えているのを感じた
足は振るえ、奥歯を噛み締め、胸元からは血の気が引いていくのを感じた
しかし、彼女は引き返すことをしなかった
恐怖に負けながらも少しずつ前に進んでいく
確か、右端の部屋は空だった筈・・・
小さい頃に姉たちと一緒にこの部屋で遊んでいた事があるので間違いない
きっと昔、電気を点けたまま部屋を出て・・その後、接触不良で消えていた電球が今頃点いたんだ
そうに決まってる
かがみは無茶苦茶な理論を無理やり肯定しながら部屋の前に立ち尽くす
どうしてもドアノブを握った手が引けないのだ
「落ち着いて・・・・きっと何も無い」
その時、先ほどまでとは比べ物にならない程の突風がかがみを襲う
巻き上がった髪の毛が顔にかかり「きゃあ!」と悲鳴を上げた少女はドアノブを掴んだまま尻餅をついた
硬い石畳の上に情けなく転がったかがみは目を閉じたままガチガチと歯を鳴らした
その後、何事も無いことを確認すると恥ずかしそうに周囲を見回して誰もいない事を確かめる
「誰も見てなかったでしょうね・・・・」と心の中で呟く彼女は少しひりひり痛むお知りをさすりながら体を起こす
倉庫のドアが半分ほど開いていた
恐らくかがみが転倒した際に、ドアノブを引っ張ったせいだろう
部屋の明かりがその隙間から漏れて中から煙のような靄が立ち込めた
一見埃の様に見えたのだが、やや弱くなった風がさらにドアを押し開けた時
かがみの両の瞳にとんでもない光景が飛び込んできた
それは玄関に整頓されたつかさの靴だ、そしてこの嗅ぎ慣れない匂いは・・・・
「つ、つかさ!?」
かがみは尻餅の痛みも忘れて立ち上がり、部屋の中に土足で駆け込んだ
床には体制を横にして蹲る妹が、生気を失った空ろな瞳で玄関を眺めていた
少女はそんな事はお構い無しに部屋の窓を全開にして、お膳の上の物に眼をやるとそれを窓から捨てる
絶望的・・・そんな言葉がかがみの頭に木霊する
「つかさ!つかさぁ!?」
282 :
かがみの妹:2009/10/06(火) 00:13:03 ID:d2QGPo0h
何度も妹の名前を呼んだ、きっと目覚めると信じて
きっと次に名前を呼んだら目が覚めるに違いない、そうに決まっているのだ
そして申し訳なさそうな顔で「また寝坊しちゃった」と笑うのだ
「つかさぁぁ・・・・」
知らぬ間に流れ出した涙はかがみの視界を奪う
もう一度妹の名前を呼んだ後、再び彼女の心に耳を当てた時
大きくユックリと胸を反らせて・・・・・・そっとその生涯を閉じた
「つかさあああああああ!!」
涙が止まらない、目の前で妹を失ってしまった痛みが直に涙腺を刺激するのだ
つかさの空ろな瞳には生前のような輝きは無い
浮腫んだ顔にはまるで生気が無く、突き出された真っ赤な舌を伝って口内の分泌物が首元を走る
現実の死
妹の死
かがみは大きく息を吸い込んで、地鳴りの様な声で叫ぶ
「うわああああああああああああああああああああ!!!」
その時、何かが自分の手を掴んだ
……つかさ!?
「柊!柊!?」
「うあ・・・・!?」
気が付くと整頓された真っ白なブロックが空一杯に広がっている
いや・・・・ここは
かがみは数秒の放心の後にここがどこだか理解した
「大丈夫か?」
「・・・・黒井先生、何してるんですか?こんな所で・・・」
「何て・・・・」
ななこは困ったような顔で笑うと「ふう」と小さくため息をつく
こういった表情は普段の学校生活では決して見ることは出来ない
学園内での黒井ななこは生徒たちにとってシリアスとは無縁の存在なのだ
283 :
かがみの妹:2009/10/06(火) 00:14:28 ID:d2QGPo0h
「お前、ここが何処かわかっとるんか?」
「・・・保健室・・・みたいですね」
「みたいて、そんな悠長な」
「・・・・」
かがみはベットから体を起こして、俯いた
よりにもよって学校でこんな夢を見るなんてどうかしている
しかも、保健室に運ばれて介抱されているなんてこれではつかさに笑われてしまうではないか
ここは毅然とした態度で先生と接しなければ、自分は陵桜学園の生徒なのだ
そう心を奮い立たせてななこを涼しげに見据えると突然視界が途切れた
「うひい!?」
「ほれほれ、わはは♪」
冷たい感触がかがみの顔面を覆い、抗う術を無くした少女は情けない声を上げてベットに倒れこんだ
その後、鈍い音と共にその笑い声は途切れ何かがかがみの膝元に倒れ込む
顔に張り付いた布を引っぺがした少女はベットに倒れている物をみて軽く驚いた
「こなた・・・・あんた、なにやってんの?」
「・・・・・・うう」
どうやら生きているであろう泉こなたは頭に出来た大きなコブを擦りながら、かがみに目線を送る
その視線は妹の葬式で見せた、あの視線と重なるものだった
ななこがこなたの襟を掴むと特徴的な八重歯を覗かせてこなたの頬を人差し指でつつく
「こいつな、柊が心配で心配でたまらんかったんやで?」
「な、ななこ・・・黒井先生!」
こなたは頬を赤く染めると「話が違う」と言いたげな表情で頬を膨らませている
良く見ると、ベットの傍らにはメガネがずり落ちたみゆきが眠っていた
話によると玄関先で突然倒れたかがみを保健室まで担ぎ、柊家に電話した後にななこを呼びに行ったりと
かがみの身の回りのことをやってくれたのはみゆきだそうだ
ななこは「先生の仕事までとってしまうんやから、たいしたもんや」とケタケタ笑っている
かがみはみゆきの頼もしさとこなたの不器用さに少し心が晴れた気がする
もちろんななこのアッケラカンとした教師と思えないその雰囲気にもだ
284 :
かがみの妹:2009/10/06(火) 00:17:19 ID:d2QGPo0h
かがみは小さく笑うとみゆきとこなたを交互に見つめ「ありがとう」と呟く
こなたはその言葉にニンマリと・・といってもいつものからかい半分の顔でなく
今まで見せたことの無いような可愛らしい笑顔をかがみに向ける
いつの間にか目を覚ましていたみゆきは寝ぼけ眼をかがみに向けたまま少しだけ頷いた
「さ、高良も起きたことやし・・・・・」
にこやかに笑ったななこは洗面器に使ったままのまあたらしいタオルとかがみに差し出すと
それをかがみの頬に当てる
10代の柔らかな少女の肌にピシャリと伝ったつめたい水は、悪夢で上気した火照りに心地よい
「その涙と鼻水まみれの顔を拭いたら、先生が家に送ったるわw」
保健室には三人分の笑い声と一人の少女の非難の声が木霊する
一瞬にして賑やかな雰囲気を作り出すななこはやはり大人の女だ
もしかしたら、この女教師は自分の考えなど全てお見通しなのではないだろうかとさえ思う程に何らかのアクションを起こすのだ
かがみはそんな事を考えながら自分の顔面に血液が集中するのを感じた
「ななこさん、今日は迷わないでね・・・」
他に誰もいない保健室に、大きく鈍い音が響くと
四人は既に日が落ちた夜道へと岐路に着いた
つづく
285 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/07(水) 10:13:23 ID:uQBjrqFn
ところで質問だけど、オリジナルの私のお父さんと神奈川版、どっちが面白い?
>>284 乙
なんか知らぬが仏って感じで、禁断の扉連想するな。
昔描いた絵が気に入らないのでまとめから削除していいですか?
>>287 描いた本人になら消すなとは言えないよ。
289 :
神奈川版麾く煉獄:2009/10/08(木) 20:12:30 ID:OJsWMOKl
ったく、あいつのせいで最悪な学校生活だったわ・・・
そう言いながら私は家に入った。
かがみ「ただいま」
みき「あら、おかえり、伸恵ちゃんが来ているわよ」
かがみ「えっ?」
多分、伸恵はつかさの部屋だろう、私は行って見た。
つかさ「のぶちゃん・・・私もこなちゃんのおじさんにレイプされて
無理やり関係を・・・」
どっどういうことよ・・・
つかさ「こなちゃんの家に泊まった日に無理やり犯されたんだよぉ・・・
それからも何度も何度も・・・」
伸恵「そうか・・・あの親父!茉莉やアナだけじゃなく、つかさまで!」
ガチャ
つかさ「おっお姉ちゃん!」
かがみ「どういうことよ・・・二人とも・・・」
伸恵「かがみさん、本当のことを話します。つかささんはこなちゃんの親父さんに
レイプされたんです。それだけじゃなく、茉莉やアナまで」
その時、私の携帯からメールが来た。
「土見凛」
土見は中学の時の友達だ。しかし、なぜ今頃・・・
「よっ元気にしているか?おれも元気だ。ところでこの写真の男探しているんだけど
知ってる人かい?」
写真の売っている男は何とそうじろうだった!
「知っているわよ、友達のお父さん、泉そうじろうという人よ」
メールを送信した、十秒後、メールが返ってきた。
「泉そうじろうだと!おい、そいつの住所を教えろ!今すぐだ!」
290 :
神奈川版麾く煉獄:2009/10/08(木) 20:13:51 ID:OJsWMOKl
「もう、かがみとは縁を切ろう・・・私はみさきちやみゆきさんと付き合えばいい(≡ω≡.)
ぼっちになったかがみは悔しがるだろうな。ぷぷぷヽ(≡∀≡.)ノ」
家に帰ると、家の前にシルバーのシボレーコルベット・スティングレとイエローの
フォードムスタングマッハ1が止まっていた。車の周りにはヌンチャクや日本刀、
自転車のチェーンを持った高校生たちがいた。制服から見てバーベナ学園の生徒
だろう。
「ただいま(≡ω≡.) 」
そうじろう「オッ遅かったな!早く鍵を閉めろ!」
「なんで?(≡ω≡.) 」
凛「おい!居るんだろうが出てこいや!コラ!」
樹「隠れたって無駄だぞ!コチトラしびれ切らせとるんじゃ!」
そうじろう「もうすぐ、ゆい姉さんがやっている、俺は隠れているからな」
数分後ゆい姉さんがやってきた。凛と樹はゆい姉さんに声を掛けた。
凛「おい、あんた」
ゆい「はい?」
凛「泉の野郎はどうしている?」
ゆい「おじさんなら、今外出中・・・」
樹「嘘つくな!」
凛「いいかよく聞けよ、姉ちゃん。俺は泉の野郎に復讐しに来たんだ。親父とお袋と
楓のお袋を事故死させたやつにな!」
ゆい「ちょっと、話が分からないな〜」
凛「あの時、楓はカゼをひいていたんだ」
凛はコルベットのボンネットにあぐらをかいたまま喋り続けた。
凛「親父たちは急いで、車を飛ばしていたんだその時、猛スピードで一台の車がやってきた
こっちは早くに走ってんのに、後ろの車はフォーンを鳴らしまくる、痺れを切らしやがった
のかぶつけ始めた。親父は焦りだして運転を誤ってガードレールを突き破って転落だ。
そのまま、親父たちは死んだ。泉の野郎許さねえ!」
ゆい「それは、それは」
凛「それだけでなく、泉の野郎、ノコノコ葬式に顔出しやがった。俺の後継人とか何とかで。財産を泉の野郎に
預けたんだ。そしたらよう、俺の財産持ってトンズラしやがった!」
ゆい「うわー、だからフィギュア買うお金があったんだ〜」
凛「道の駅にパンパーが壊れている車に泉の野郎が乗っていたのはそこの店員が見ていたんだ。証拠の
写真だってあるぜ」
ゆいは凛達の話を聞き終わると家の中に入った。
そうじろう「土見の奴なんかいってきたか?」
ゆい「あの人、土見って言う人なの」
そうじろう「ああ、あいつはヤクザの息子だ。山口組系暴力団、小神組の幹部の息子だ。
ああ、盗んだ金の持ち主がヤクザだと知っていれば、俺はあんなバカをしなかったのに」
ゆい「おじさん、なんで猛スピードで走ってたの?」
そうじろう「そりゃ、見たいアニメがあったからさ」
「おお〜気持ちわかるよ〜(≡∀≡.)」
そうじろう「だろ?」
「ところでゆい姉さんを呼んだ理由って?」
そうじろう「ゆいには俺の身代りに凛達に殴られるんだ、そしたら、お前の欲しがっていた車を買ってやる」
「おお!ナイスアイディア!(≡∀≡.)」
291 :
神奈川版麾く煉獄:2009/10/08(木) 20:14:37 ID:OJsWMOKl
ゆい「はぁ?なんで私が殴られなきゃならないの?冗談じゃない。話し合う方がいいわ」
ゆいは外に出ると
ゆい「土見さん、とにかく寒いので入ってください、ほかの皆さんは外でお待ちください」
樹「なんだと!俺たちも入らせてもらうぜ!」
と樹は自転車のチェーンを振り回した。
凛「よせ、樹。」
凛とゆいは家の中に入った
ゆい「おじさんは本当に反省しています。本当にすまなかったと・・・」
凛「さっきの話聞こえていたんだぞ!アニメ見たさで事故で死んだ親父たちの身になってみろ!」
ゆい「じゃあどうやったら納得いく?」
凛「殴りつけ蹴りつけまくってやりてえな」
ゆい「でもそれじゃ、喧嘩両成敗で終わっちゃうよ」
凛「ああ、そこなんだ!泉の野郎を痛めつけても親父たちは帰ってくるわけじゃない。現実的な問題として
慰謝料請求するよ、何と言っても土下座させないと気が済まねえ」
ゆい「わかった示談と行きたいわけね」
ゆいはそうじろう呼び、話し合いを始めた。結果、一千万円で示談は成立した。凛達は満足げに帰って行った。
ゆい「さて、御約束の車を買ってくださいな」
そうじろう「あ?そんな約束した覚えないけど」
ゆい(イラッ!)
「ちょーっとお父さん、話したいことがあるんだけど!(≡皿≡.)」
続く
292 :
ヤク中大分:2009/10/08(木) 20:34:44 ID:q+p42UAi
>>289 痴漢どころか凛の親を事故で死なせた上、財産をネコババ。小学生の茉莉、アナをレイプ。
ゆいに「俺の身代りに凛達に殴られるんだ」と発言・・・
ここまで来ると、そうじろうは人間失格だよなw
伸恵やかがみ、凛はどう行動をとるのか楽しみだ。
とにかく、続きを期待しているぜ。
294 :
神奈川版「麾く煉獄」:2009/10/09(金) 10:34:36 ID:+kTX550g
「つかさに痴漢したって言うのはどうことだよ!(≡皿≡.)」
そうじろう「お前なんでそれを知っているんだ?」
「かがみから聞いたんだよ!(≡皿≡.)」
「そうか・・・実は父さんも言いたかったんだけど実はつかさちゃんとはセフレなんだ」
「え!(≡Д≡.)」
そうじろう「つかさちゃんが泊まった日があっただろ、あん時、無理やりバージン奪ったんだ、それからは
毎回、セックスし放題なんだよ」
ゆい「おじさん、話は終わりにして、示談金はおじさんが払うの?」
そうじろう「そりゃ、ゆきとひであきに支払わせてもらうんだよ」
ゆい「・・・この前、大金持っているって言ったよね?」
そうじろう「ああ、あれはこの前、みなみけのDVDボックスに使っちゃったよ、ハハハ」
ゆい「ところで、昔、私がおじさんに預けたお年玉は?紛失したって言っていた」
そうじろう「あれか、スーファミ買う金に使った」
ゆい「じゃあ、おじさんに預けた修学旅行の積立金は?紛失したって言っていたけど」
そうじろう「ああ、あれはシスター・ウォーズっていう風俗店でパーっと使ったよ。長門ちゃん可愛かったな」
ゆい「じゃあお、おじさんに預けた結婚式費用は?紛失したって言っていたけど」
そうじろう「あれね・・・あれはシスター・ウォーズの長門ちゃんが渋谷のマンションが欲しいから
って、全部、マンション買う金に使った」
ゆい「じゃあ・・・おじさんに預けたゆたかの貯金通帳は?引ったくりに会って盗られたと!」
そうじろう「あれはこの前、長門ちゃんがパリに行きたいからって全額、揚げたよ。それ以来会ってないな」
ゆいは黙って席から立ち上がった。そして、トイレに入って、ある男に電話をかけた
ゆい「大石さん、起きてた?、「鷲が舞い降りた」んだよ」
295 :
神奈川版「麾く煉獄」:2009/10/09(金) 10:35:29 ID:+kTX550g
一方、柊家では
伸恵「じゃあ、帰るからな。あとは私に任せとけ」
つかさ「うん」
かがみ「本当に大丈夫なんでしょうね、その赤坂って言う刑事」
伸恵「大丈夫、大丈夫〜赤坂さんは信用できるからね。結構私も助けられているから」
かがみ「ふぅん。それならいいけど。ところであんた、車変えた?」
伸恵「あれは赤坂さんから借りたんだよ、シトローエンCXブレーク。カッコいいだろ」
かがみ「あんた、無免許運転もほどほどにしなさいよ」
伸恵は車を発進させると、○○信用金庫に向かった。数か月前、伸恵はある計画を立てていた。
伸恵はこなたがバイト先の店で神王と魔王という客から多額の金を貢がせていることが判明した。
それは毎月、一人一千万ほどの大金だそうだ。伸恵は秋葉原で盗聴器を買い、こなたの家や
神王、魔王の家、小神組の事務所に設置した。また、赤坂から埼玉県警が所有するTNT爆薬と
グレーネドランチャー搭載のМ16ライフルを盗ませた。また県警の覆面パトであるシトローエンCX
ブレークを譲ってもらい、薬の売人小野だいすけのコネを使って、ゴトゥーザという裏改造業者に
DOHCとツインターボと強化サスペンションと取り付けてもらった。
そして、昨日、驚くべきニュースが盗聴器から来た。神王と魔王の娘シアとネリネが小神組の構成員、白石に
大金の奪還を依頼したのだ。
シトローエンは○○信用金庫の駐車場に止めた。伸恵は警備員にこなた名義の書類を見せる。
警備員はこなたの大金運び始める。その間、伸恵は建物内にTNT爆薬を設置した。三億もある大金を
シトローエンに積み込め終わると、駐車場から出た。その時、入れ違いでキャデラックフリードウッド
エルドラードとリンカーンコンチネンタルマークXが爆音を鳴らしながら入ってきた。どうやら、キャデラックに
白石がいることから、小神組が奪還にきたのだろう。
伸恵はシトローエンを止め、小神組の構成員が信用金庫に入っていくのを見るとスイッチを入れた。
その時、TNT爆薬によよって大爆発が起こり、信用金庫は粉々に吹っ飛んだ。
それを見届けるとシトローエンを発進させた。
296 :
神奈川版「麾く煉獄」:2009/10/09(金) 10:36:30 ID:+kTX550g
次の日、
「おはよーヽ(≡ω≡.)ノ」
みさお「おい!どういうことだチビッ子!」
「どした(≡ω≡.)」
みさお「柊妹を痴漢しただけでなく、レイプ。その上、柊の中学の友達の親を事故死させるなんて!」
「なんで知っているの!(≡Д≡.)」
みゆき「それだけでなく、中年の男性から三億程の大金を貢がせていたそうですね・・・パトリシアさんから
聞きましたよ」
「何かの間違いだよ!(≡Д≡.)」
みさお「もうお前とは付き合いきれないな。じゃーなチビッ子」
「つかさ!ベラベラ喋ったな!許さん!(≡皿≡.)」
つかさを殴りかかろうとした。
伸恵「皆にすべてを話したのは柊さんじゃない私だ・・・」
「伸恵!(≡皿≡.)」
伸恵「柊さんはかけがえのない親友なんだ。それに私たちは愛し合っているんだ」
そのころ、こなたの家では
ピンポーン
そうじうろ「どちらさんですか?」
大石「んっふっふ、泉そうじろうさん、強姦及び道交法違反、殺人、横領容疑であなたを緊急逮捕します」
そうじろう「なぁ!」
警察署
そうじろう「つかさちゃんとは合意の上であったし、殺人なんて知らない!あれは横領じゃなくて
少し金を借りたばかりだ!」
大石「んっふっふー、嘘はいけませんよ。そうじろうさん。つかささんと土見さんは被害届を出しているのですよ」
そうじろう「土見とは示談が成立したんだ」
大石「土見さんは示談ではなく口止め料だけもらっただけだそうです」
そうじろう「一千万も貰っといて、それを口止め料だなんて!でっち上げだ。そうだ!俺は何も悪くない!」
熊ちゃん「こいつ、オタク秩序維持法違反でぶっ殺しちゃっていいですか?」
大石「んっふっふ、仕方ありませんね、ここまで救いようのない屑は殺すしかありませんな」
297 :
神奈川版「麾く煉獄」:2009/10/09(金) 10:37:40 ID:+kTX550g
学校では
伸恵「これ以上、柊さんたちには近づくなよ!」
「ちぃぃぃぃクソアマが・・・・(≡皿≡.)」
伸恵「そうそう、土見の奴、示談せず、告訴する方針だ」
「なんだと!示談金、一千万円も渡したのに(≡Д≡.)」
伸恵「ハハハ、あんたの親父は騙されたんだよ、示談金をたくさんもらった後、警察にチクる予定だったんだよ
最初からそのつもりだったのさ」
つかさ「のぶちゃん・・・」
伸恵「さて、柊さん、応接室に行こうか。赤坂さんが待っているよ」
つかさ「エヘヘへ・・・うん!」
伸恵とつかさは教室から出て行った。白石やクラスメートたちがこなたを囲んだ。
白石たちの手には木刀、トンファー、ヌンチャク、ハンマーを持っていた。
白石「泉、ちょーっと遊んでやるぜ、くひひひひひひひひひ・・・・」
バキドゴグシャベキバゴボゴ
「ぎゃあああああああああああああああ!(T皿T.)」
一年後、秋葉原
「慰謝料で全財産すっからかんになったよ・・・小早川家とは絶縁状態になってしまった・・・(≡ω≡.;)
今は秋葉原でホームレスをしている、学校は退学になったよ。ちなみにホームレスだから仕事がない・・・(≡ω≡.;)
神王と魔王は毎日、私に金がないのがわかってて、わざと金を取り立てに来るし・・・(≡ω≡.;) ネカフェに
泊まる金もない・・・お父さん、留置所で自殺しちゃったし・・・(≡ω≡.;) 」
ドン
こう「汚い!あっちに行け!シッシッ」
この時、こなたは頭に血が上った!こうがアニメイトに入っていくのを見ると、ガソリンの入ったポリタンクと
ライダーを持って、アニメイトに突撃した。
「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!あのクソアマぶっ殺してやる!(≡皿≡.)」
こなたはアニメイトを放火したが、結局こなたはアニメイトごと燃えてしまった。
このアニメイト放火でこうを含み死者18名、重軽傷者3名の大惨事となった。
めでたし めでたし
あ
>>297 アニメイト放火とか不謹慎すぎてワロタ
神奈川版こなたはやっぱり、他人まで道ずれにしているなw
凛と伸恵はカッコいい活躍しているなw
大石は何気に自殺スレのレギュラーキャラへと定着しているし
ところで、こうってキャラいたっけ?はじめて聞く名前だけど
>>299 原作版のみ登場の八坂こうってキャラがいる。
ひよりんが所属するアニ研の部長をやってて学年は最新7巻現在で高3。
って何だよ俺のID!!
MXはまあいいとしてTBSとWC・・・・・
「TBSは便所」・・・・・こいつぁ傑作だ!!!www
そうじろうの罪状が何気に増えているw
強姦三件、道交法違反及び殺人(三名殺害)、横領二件。
これじゃ、もう禁固刑か無期懲役のどちらかだよなw
強姦+殺人の時点で、もう死刑か無期しかない。
304 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/10(土) 11:17:53 ID:l4OZ6v/L
私のお父さんの時もそうだよな〜
オリジナルはこなたは執行猶予ありで刑務所に入れば数年で
釈放されるほどの罪状なのに(小早川ゆきも懲役刑食らっただけで済んだ)
神奈川版は覚せい剤取締法違反、銃刀法違反、殺人、強盗、建造物破壊、道路交通法違反と
現実世界の現行法で裁かれた場合、こなたは死刑になる可能性があり、無期懲役は稀な例
だろう。(小早川家も2件の保険金絡みの殺人、文書偽造、銃刀法違反覚せい剤取締法違反、
火薬類取締法違反で死刑か無期懲役になる可能性が高い)
つか、こなた、飲酒運転までしていたしw
まぁ結局は竜崎が何とかしてくれるんだろうけど・・・
神奈川系の自殺小説が面白いんで、俺も一つ作ってみた。
それでは本日のを投下しますよ。
泉こなたが自殺未遂で入院し、一週間が立った。
かがみ「意外にしぶといわねアイツ。もう逝くかと思ってたんだけど」
みゆき(ふふふふ、泉さんの死亡ギャンブルでかなり稼がせてもらいましたわ)
みゆき「うふふふ、それなら泉さんにとどめを刺しますか?」
かがみ「どういうことよ?」
みゆき「殺し屋を雇うんです。取って置きの人がいるんです」
かがみ「そいつ、どういうやつよ?」
みゆき「一人は「お前の母ちゃん、パンパン(売春婦)」と言われると怒り狂って殺すような人で
デパートのアン「パン」マンショーで親子供を皆殺しにしてから、「お前の母ちゃん、パンパン」と
からかった女子中学生が通っている中学校に単身、殴りこみをかけ、座間基地流れの自働ライフルで
二十数人を射殺し、逃走途中にパトカー警官五人を殺したシブタクこと渋井丸拓男という男です。
弾が尽きて捕まりましたけど、その際、短刀で三人の警察官を殺害しています」
かがみ「たしか、裁判官はジブタクを同情して刑務所送りにせず、無罪放免になったって聞いたことあるな」
みゆき「もう一人は久瀬という男で、学校退学になった後で小遣い稼ぎにレイプもののAVを制作して
少なくても、一週間で50人もの女性をレイプしてます。警察は久瀬を捕まえることができなか
ったのですよ。証拠を残さずやるので捕まりにくかったんです。しかし、奴はついにドジを踏みました」
かがみ「ドジって?」
みゆき「あの時はシスター・ウォーズに警察が手入れの準備をしていた時に久瀬が店に入ってきたんです
店に入ると久瀬と店の用心棒たちが撃ち合いを始めたんです。警察が踏み込んでみると用心棒や
店で働いてる娼婦、胸や頭、顔を撃ち抜かれて死んでいたんです。久瀬は腿撃たれを気絶していました」
かがみ「こいつは証拠不十分の上、正当防衛で無罪になっていたな」
みゆき「さっそく、その二人を手配しましょう」
みゆき(大金も手に入ったことですから私は国外逃亡しますね。日本にいても危険ですし・・・・
つかささんとかがみさんには感謝してますよ、ここまでうまく利用できたんですから・・・うふふふふ)
かがみ「ところでつかさは?」
トイレにて
つかさ「はぁはぁシャブをやって気持ち良いよ〜これは止められないよぉ〜
よーし、シャブがなくなってきたから、だいちゃんの所へ行こう〜」
二日後、病院
待合室でそうじろうと竜崎が話していた。
そうじろう「竜崎君、後は頼むよ。俺は家に戻るから」
竜崎「わかりました。泉さんが目を覚ましたら、電話します」
そうじろうが待合室を出るとき、高校生らしき男と入れ違いになった。
キョン「あの。泉さん、どの病室だ?」
竜崎「あなたは誰です?」
キョン「俺はキョンって名前だ」
キョンは自己紹介を終えると竜崎と共にこなたの病室に入った。
「あれ?ここ病院か?(≡Д≡.)」
竜崎「目を覚ましましたか?」
キョン「すまないが泉と二人にしてくれないか?」
「わかりました。できるだけ話は手短にお願いしますよ」
竜崎が病室から出ると
「えーと・・・(≡ω≡.)」
キョン「キョンだ。よろしくな」
「私、つかさのリボン亡くして自殺したはずなのに・・・(≡ω≡.)」
キョン「泉。お前はキャンブルの賭けにされていたんだ。高良みゆきが主宰する死亡ギャンブルのな」
あれは一週間以上前にさかのぼる。ハルヒが「ギャンブルに参加するわよ!」と言い出したのが始まりだ。
ハルヒは死亡ギャンブルという大会のサイトをキョンに見せた。ルールは「死亡」「生存」のどちらかに
賭けるという簡単なものだ。ハルヒは泉こなた「死亡」に五千円ほど賭けた。キョンは「あんな若いのに
死ぬわけないだろう」と「生存」に二千円ほど賭けた。しかし、ギャンブルというものは面白いものだ。
その場で出した二千円だけでなく、家の抵当、全財産、おまけに小神組が経営するサラ金会社から
八億円もの借金をし、「生存」につぎ込んだ。
そして、こなたは自殺未遂で終わり、「生存」というわけで国家予算に匹敵するほどの大金が手に入る
はずだった・・・
しかし、主催者の一人コードネーム「シェリル」が大金を持って消えたのだ。当然、ほかの主催者メンバー
「美沙」「ミュン」「シルビー」もあわて始めた。結果的にキョンには一銭の金も入らなかった。
ただ、多額の借金だけが残った。
キョンは借金取りに追われる日々を送り、学校でもハルヒ達の態度がよそよそしく冷たい、ハルヒはみくるたちに
「キョンと付き合うのはもう止める」とまで言っていたという。このことを知ったキョンはハルヒを殺したい
という気持になった。
ところが、キョンの怒りのはけ口はハルヒへは向かず、こなたや、大金を持ち逃げした「シェリル」や
「美沙」「ミュン」「シルビー」に向けられていった。
しかし、他の主催者メンバーの「美沙」「ミュン」「シルビー」は日本国外にいるし、「シェリル」は日本人だと
いう事だけで後は不明だ。こなたを殺してしまえば刑務所送りが確実になってしまうので、こなたを利用して
陵桜学園の生徒を多く殺させて、思いっきり世間を騒がせてやろうと思うようになっていった。
続く
309 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/11(日) 00:13:25 ID:O1hDZ7PI
かがみ達こわいよー
8億はいきすぎ
昨日マジ凹み。っちまうかー、リアル世界での不満・鬱屈・憂鬱・絶望の捌け口として。
なんか、キョンの考えていることかがみたちよりは怖すぎる。
でもこれはハルヒが元凶じゃね?キョンにギャンブル進めといて
その後、キョンを怒らせるような発言していたし。
312 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/11(日) 11:30:37 ID:O1hDZ7PI
ゴルゴがこなたを助けてくれる!はず・・
まず、キョンは薬の売人、小野だいすけという男と接触した。「シェリル」というコードネームの女を
探させるためだ。大量殺戮はその後だ。数日後、小野から電話があった。
それはみゆきたちが殺し屋の話をしていた日であった。
小野「キョンさん、「シェリル」という女の正体が分かりましたよ」
キョン「わかった、すぐそっちに行く」
キョンは電話を切ると徒歩と電車で、小野の住むアパートに向かった。
キョン「俺だ」
小野「来ましたか?」
キョンは小野を部屋に上がると、シャブを撃って恍惚状態のつかさを見た。
つかさ「えへへへへ〜だいちゃんの友達かな、かな?」
キョン「お前、「シェリル」という女を知っているか?」
つかさ「えへへへへ・・・・ゆきちゃんのことだよ〜ゆきちゃんが持っているメモ帳見たんだよお〜」
キョン「そのメモ帳には何が書かれてあった?」
つかさ「多分、チャットのネームだよぉ〜チャット友達の名前も書かれてあったんだからさ〜」
それから、つかさからこなたの自殺理由など詳しく聞き出した。キョンは話を終えると
キョン「そうか、いいものをやるよ」
キョンはポケットからコカインらしきものを取り出した。それは「スパルタンX」というコカイン系の麻薬で
一度吸うと脳みそが猿以下になるという恐ろしい麻薬だった。
つかさ「じゃあ、吸わせてもらうよお〜」
スー
つかさ「んがあああああああああああああああああああ!んぎいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!
ふぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ
ぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ
ぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!
どんだけぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!
脳みそがとけるよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!
天国に行っちゃうよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!
ヴァァァァァァァァァァァルゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥスウァァァァァァァァァァァミィィィィィィィィ
ゴォォォォォォォォォォォォォォズゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!」
つかさは軽く逝くとばったりと倒れた。
キョン「小野、倒れたぞ」
小野「そうですか、これなら運べやすいですね」
プープープー
外から車のクラクションが聞こえた。小野とキョンはつかさを運び出す。車はキャデラックセビルだ。
小野「これはこれは、小神組の白石さん」
白石「上物の女なんだろうな?」
小野「ええ、ピチピチの女子高生ですよ」
白石はつかさをトランクに乗せると小野に金を渡した。キャデラックは発進し、道路に出た」
キョン「ふぅ、あのシャブ中女、風俗行き間違いなしだな」
小野「つかさちゃん、シャブをやる割にはツケが溜まってましたから、我慢にも限度が来てましたよ」
キョン「さてと、小野。武器を売ってくれる人を紹介してくれないか?M60機関銃と手榴弾、M16
自働ライフル、M20 "スーパーバズーカ"が欲しいんだ」
小野「なら、埼玉県警の大石さんに頼みましょう。あの人なら五万円程で売ってくれますから」
キョン「でも、M60機関銃と手榴弾とM20ってそう簡単に手に入らないだろ?米軍にコネがあるのか?」
小野「いや、バズーカやM60や手榴弾は埼玉県警にあるんですよ。おもに暴動鎮圧用にね」
キョン「凄いな。よし、明日までに用意してくれ」
キョン「というわけなんだ」
「あいつらぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!許さん!全員ぶっ殺してやる!!(≡皿≡.) 」
キョン「だろ?だから俺はお前を味方してやる。お前の側にいてやる」
「よし!今から退院だよ!(≡皿≡.)」
キョンは病室を出ると竜崎に
キョン「泉は退院したいそうだ。手続きは任せたぞ」
竜崎「わかりました。キョンさん、さっきの話聞いてましたよ。僕もできる限り、彼女に協力します」
キョンはそうじろうと入れ違いになるように病院から出た。
午後6時、一台のプジョー604の覆面パトカーが病院の駐車場から出た。プジョーにはこなた、そうじろう
竜崎、運転しているのは熊ちゃんだ。しかし、背後から一台のアルファ・ロメオ6が追跡していた・・・
プジョーが市街地を出ると駐車いるルノー30からシブタクがブローニングM2重機関銃を取り出し組み立てていた。
熊ちゃんはプジョーを止め、プジョーから降りた。ブローニングM2重機関銃を組み立てているシブタクに近づいた。
熊ちゃん「おい!そこで何している!」
シブタク「ウゼェ!死ねえ〜〜〜」
シブタクはブローニングM2重機関銃を熊ちゃんに向けて発砲した。瞬く間に熊ちゃんはハチの巣にされて死んだ。
シブタク「ヒャーハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!次はお前だ〜〜〜!泉こ〜な〜た〜!」
ブローニングM2重機関銃をプジョーに向けて発砲した。プジョーはハチの巣になる。
プジョーを追跡していたアルファ・ロメオが止まり、アルファ・ロメオから久瀬が降りてきた。久瀬の手には
ソ連の開発した携帯対戦車兵器RPG−7があった。それをプジョーに向ける。
竜崎「泉さん、車から降りてください!」
「はわわわわわわ(≡Д≡.)」
こなたと竜崎は急いで、車から降りた。すると、久瀬はRPG−7をぶっぱなした。プジョーは大爆発した。
竜崎は反射的に手榴弾をシブタクと久瀬に向けて投げた。久瀬のほうに投げた手榴弾はアルファ・ロメオの
ボンネットに当たり大爆発した。
久瀬「うぎゃあああああああああああああああああああああああああああああああああああ!」
爆発に巻き込まれて、体中に破片が突き刺さりまくった久瀬は地面をのた打ち回っていた。
一方、シブタクのほうに投げた手榴弾はシブタクの股間に当たり大爆発した。
シブタク「ぐええええええええええええええええええええええええええええええええええ!」
爆発によって、シブタクの下半身は無くなっていた、いわばテケテケのような状態である。
こなたは戦意喪失状態のシブタクのほうに近づいた。
「かがみたちに頼まれたんだね?(≡皿≡.)」
シブタク「俺は「シェリル」っていう女に頼まれたんだ!頼む病院まで連れてってくれ!」
「「シェリル」ってみゆきさんのことだね?前、みゆきさんのメモ帳を読んだら「みゆき=シェリル」(≡皿≡.)
と書かれてあったよ。死亡ギャンブルの主催者メンバーなんだよね?みゆきさんは?(≡皿≡.)」
シブタク「どうして知っている?」
「というと、私の死亡ギャンブルでみゆきさんとは面識がだったんだな?他に参加者は?(≡皿≡.)」
シブタク「キャッスルロックの連中は「美沙」を通じて参加してきた」
「「美沙」・・・ゴーディことゴードン・ラチャンスのことか(≡皿≡.)」
シブタク「キャッスルロックもあんま遊べる所がなくて、参加者の多数がキャッスルロックの人間だ。
ボストン、コロンビア大学の連中は「シルビー」から口が掛ったそうだ」
「「シルビー」・・・キャロライン・シーバーだね?(≡皿≡.)」
シブタク「メイン州の連中は「ミュン」が窓口だったそうだ」
「「ミュン」?「親殺し」と仇名されたパーシー・タルボットは刑務所を出たのか?(≡ε≡.)」
こなたは思わず口笛を吹いた。
シブタク「先月刑務所を出たばかりだ・・・」
「これで、かがみたちが私を殺すということがわかったぞ(≡皿≡.)」
そう言うと、こなたはそこにあった漬物石を持ち上げ、シブタクの頭に向かって投げた。
グシャ!
シブタクは脳みそや眼球をぶちまけて死んだ。
続く
316 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/11(日) 19:25:55 ID:O1hDZ7PI
つかさが壊れていく・・・
なんで、つかさが覚せい剤なんかやっているの?w
なにかむ元ネタでもあるん?
こなたスレの吸収祝いには、すこぶる景気のいいSSだな。
>>292 あいかわらず可愛い絵柄だわあ
もっと描いてください
この板のスレッド、「こなた」で検索かけたらワロタ
一方、久瀬のほうはのた打ち回りながらも、ルノー30のほうに向かって逃げた。
竜崎「待て!」
竜崎は奪ったRPG−7を片手に持ちながら。久瀬を追いかけた。久瀬はルノーに
乗り込むと無線機に向かって
久瀬「「シェリル」!襲撃に失敗した!助けてくれ!」
久瀬はルノーのエンジンをかけ、アクセルを踏む。竜崎は急いで、RPG−7を
ルノーに向けて発射した。
ドガアアアアアアアアアアアアアアアアアン!
ルノーは久瀬もろとも粉々に吹っ飛んだ。
「ふぅ・・・何とか退治できたね、これでかがみたちが私を殺すということがわかったよ(≡ω≡.)」
竜崎「そうですね・・・とにかく、携帯で大石さんを呼びましょう。ところでそうじろうさんは?」
書き忘れていたが、そうじろうは逃げ遅れて、車で爆死している。
次の日、
「竜崎、ゆーちゃんのことは頼むよ(≡ω≡.)」
竜崎「わかってます。ゆたかさんやこの家は僕が守りますよ」
「それじゃ行ってくるね!ヽ(≡ω≡.)ノ」
竜崎(プッ、さっさと死んでこいやwキモオタ女wあーこれでゆたかさんや泉家の財産は俺のもんだなw)
と家を出た。学校の校門前でキョンに出会った。
キョン「泉、武器はこっちが用意したぞ。好きなだけ暴れてこい」
とM60機関銃と手榴弾、M16自働ライフル、M20 "スーパーバズーカ"を渡した。そして、コカイン系の
麻薬「サイクロンZ」を渡す。この「サイクロンZ」は北朝鮮の兵士も使っている麻薬で、24時間ハイテンションで
いられ、体中の痛みを感じないという優れものだった。こなたは鼻で「サイクロンZ」を吸った
「うぴょぴょぴょぴょ〜!こなた、行っきま〜す!(≡∀≡.)」
そのころ、学校では
男子生徒「柊、外人さんがきているぞ」
かがみ「え」
パーシー「おい、「シェリル」・・・高良みゆきのやつ、来てる?」
かがみ「みゆきは来てないわよ。ところであんた、何者だ?勝手に学校に上がりこんでくるなんて」
パーシー「こっちはみゆきのバカ野郎が大金ネコババしたから、探しているのよ」
かがみ「あんたさぁ、もしかすると親殺してムショ入っていたパーシー・タルボット?」
パーシー「・・・そうだけど」
かがみ「みゆきが言っていたわよ。ムショ帰りのあんたとは付き合えないってさw親を殺すなんてロクな
やつじゃないなwムショ帰りのあんたには友達なんて一人もいないだろw」
パーシー「・・・」
かがみ「だいたい、あんたみたいなのを屑って言うのよwさっさと出て行け!じゃないと警察呼ぶ・・・」
その時、手榴弾が100個投げられた。そして、大爆発した。
投げたのはこなただった。両手にはM60機関銃が握られている。
「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!お前ら全員皆殺しだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!ヽ(≡皿≡.)ノ」
ズガガガガガガガガ!ドカーンドカーン!
そのころ、みゆきはドバイ行き旅客機に乗っていた。
みゆき「ふふふふ・・・大金も手に入りました。今ニュースで泉さんが学校に殴りこみを駆け、
かがみさんや「ミュン」・・・いやムショ帰りの社会のゴミさんを含め801人殺した後
屋上で口に銃を突っ込んで、自殺したそうです。ふふふふ・・・・計画通り♪」
ポン、誰かが肩を叩いた。
キョン「見つけたぞ。「シェリル」」
みゆき「ひぃ!たっ助けてください・・・お金は返しますから・・・・」
キョン「お金は貰うことにしておこう。しかし、お前を殺さないと気が治まらぬ」
みゆき「おい!やめろゴロツキ!」
キョンはナイフを取り出し、みゆきの右の眼球を抉り取って捨てた。みゆきは絶叫を上げて
脱糞した。
キョンはみゆきの鼻を削いだ。
それに続き、ナイフでみゆきの腹を裂き、ハラワタを見せる。絶叫を上げていたみゆきは気絶する。
キョンはガスバーナーで熱した金属バットをみゆきのマンコに突っ込む。気絶していたみゆきは
絶叫を上げながら、意識を取り戻す。
キョン「これは俺の怒りと悲しみの分だ!」
みゆきの子宮を素手で抉りだし、悲鳴をあげる口を突っ込んでやる。
めでたし、めでたし
ワロタ
てゆーか書くの飽きただろw
若瀬いずみはこなたのことを恨んだりするかな
最近、神奈川が躍動しているなw面白かったよ
今回、キョンというキャラが出ていたけど、何のアニメのキャラなの。
327 :
sage:2009/10/14(水) 10:56:54 ID:TM/6iA8b
ズシャ!
どうせなら、神奈川よガンガンの「仮面少女」もやってくれ!
あれはオチがいまいちだったからな。
いやこれ神奈川じゃないだろ。
アイツは地の文による描写を一切行わず、台詞だけで完璧に描写しきる。
方々で色々と言われたアイツだが、台詞だけであそこまで描写し自然に展開運ぶってのは
実はかなり難しい。
第一、神奈川が「仮面少女」書いたら、かがみたちから絶交させられ、
刑務所で自殺で終わるだろ。
331 :
師匠:2009/10/14(水) 14:51:16 ID:5r8+VFd6
「泉こなたを自殺させる方法」を考えるスレ みwikiで見た
デフォ北大阪さんの「幸せのゴール」に感動しました。
そして、続きを思いついたので書いちゃいました。
「幸せのゴール」は、すごくキレイに終わっているので
パラレルワールド的な意味合いで「幸せのゴールAS」という題名です。
全7話で、すでに完成しています。
初めて書いて、先達さんのネタをパクッたりしてますが、どうか見てやって下さい。
…では、投下します。
332 :
師匠:2009/10/14(水) 14:54:24 ID:5r8+VFd6
『幸せのゴールAS』−第壱話−
・
・
・
・
「あ…私、屋上から飛び降りたんだった…。」
こなたには、時間の流れが酷くゆっくりに感じられていた。
生まれてからの思い出が、走馬灯の様に流れる…
「(はは、これが走馬灯ってやつかな?)」
「(つかさ…みゆきさん………)」
「(それに かがみ……かがみ……かがみ……)」
「かがみ――――――――――――!!」
ズンッ!!
その瞬間、こなたの身体は地面に到達した。
「(あれ?あんまり痛くない…もうあの世ってヤツ?)」
恐る恐る こなたは、目を開いて見る。
そこには、世界で一番愛しい かがみの顔があった。
「バカッ、飛び降りるヤツがあるか!?」
かがみは、今にも零れ落ちそうなくらい目に涙を浮かべていた。
「えっ?かがみ…何で…ここあの世だよね?」
「あの世じゃないわよ、アンタちゃんと生きてるわよ。」
「さっき一度止めたのに二度やるとは、思わなかったわ。まったく……」
地面に衝突するその刹那、かがみがこなたを全身で受け止めたのだ。
「どうして、もう契約は切れてるのに…。」
「私も最初、仕事と割り切ってアンタとさよならするつもりだった…でも…」
かがみは、言葉に詰まる…
「でも、できなかった…アンタの事…」
「こなたの事を好きになってしまったから……愛してしまったから……。」
かがみの瞳からは、止め処なく涙が零れ落ちている。
333 :
師匠:2009/10/14(水) 14:55:13 ID:5r8+VFd6
「こなたが好きなの…」
「かがみん……」
こなたは、そっとかがみの柔らかな唇に自分の唇を重ねた。
「私もかがみの事、世界中の誰よりも好きだよ…愛してる。」
ボッ!かがみの顔が一瞬にして真っ赤になった。
「ふふ…やっぱり、かがみんはツンデレだね。」
「う、うるさい…さあ、もう自分で立てるでしょ?」
かがみは、ひょいとこなたを抱き上げ地面に降ろした。
こなたは、華奢とはいえこうも軽々と自分を抱き上げた かがみに少し驚いた。
それと同時にある事に気付いた。
「かがみん、以外に力持ちだったんだね…」
「えっ……そう?」
「それに私、6階のビルの屋上から飛び降りたんだよ。よく私を受け止められたね?」
「え…そ、それは、そうあれよあれ……」
「あれって何?」
「落下物の重さって、どんなに高い所から落としても変わらないのよ。そうそれよ」
「え、そうなの?」
「そうそう、こなた物理苦手でしょ〜 だから知らなくて当然だけどさ〜。」
その後、かがみは物理学の能書をウンタラカータラ言っていたが、こなたには何の事かさっぱりだった。
(うんちく=重さは変わらないが、高さに比例して衝撃は大きくなる。)
「うぅ〜もう、わかったよ かがみん。」
「そ、まあ細かい事は、気にしちゃダメよ〜 こ・な・た♪」
かがみは、ニヤッとして少し意地悪っぽく言った。
「それにしても、何でそれで大学落ちたの?」
「うっ!人が気にしてる事をズバッと……まぁそれはその…」
「それは〜?」
今度は、こなたがニヤッとして少し意地悪っぽく言った。
「それは…ゴニョゴニョゴニョ…」
「え、何?聞こえないよ。」
「うっさいわね、アンタの事が気になって集中できなかったのよ!!!」
「アンタ大学受かったら契約切れるでしょ?そうしたらお別れでしょ?だから…だから…」
かがみの瞳からまた涙がポロポロと零れ落ちた。
334 :
師匠:2009/10/14(水) 14:56:03 ID:5r8+VFd6
こなたは、その涙をそっと拭って…
「やっぱり、かがみは優しいね…ありがと。」
「バカッ!当たり前じゃない…アンタの事……好き…なんだから。」
「かがみ……」
かがみは、スッとこなたに背を向け腕を組み
「あ〜さっきから何か私ばっかアンタの事、好きって言ってない?」
「なんか癪だわ。こなたも言いなさいよ!って言うか言え!!」
「うん、……好き。(かがみん、ツンデレ全開だよ萌え〜)」
「よろしい。」
かがみは、こなたに背を向けたまま…
「それじゃ、こんな所じゃ何だから…えーと、その…私ン家行かない?」
「かがみん、それ誘ってるの?」
「バッバカ!そんなんじゃ……ないと言えばまぁ…嘘に…ゴニョゴニョ」
かがみの顔は、真っ赤々だ。
「うん、行く。今夜は、かがみと離れたくないよぉ。」
かがみは、こなたの甘える様な上目使いに一瞬クラッとなり倒れそうになる。
今すぐに こなたを抱き締めたい衝動を抑えるのに必死だ。
「じゃ、じゃあ電車なくなっちゃうし、急ぎましょ。」
その時 こなたは、重大な事に気付いた。
「え…だってかがみん家、燃えちゃったじゃん?」
「あれは、設定上の私ン家…ホントの私ン家が別にあるの…」
「…ま、ついて来て。」
「うん。」
・
・
・
電車に揺られる事、20分弱…
その間こなたとかがみは、他愛もない話で盛り上がった……
・
・
・
「それがさ〜臭くってさ〜。」
「だよね〜毎回じゃきついよね〜。」
「あ!終点ね、降りましょ こなた。」
335 :
師匠:2009/10/14(水) 14:57:29 ID:5r8+VFd6
話に夢中になっていた二人だったが、終点のアナウンスを聞いた かがみが立ち上がった。
「え、うん。(……大宮?)」
二人が降りた駅は、大宮だった。
「何してるの早く来なさいよ。」
「あ、ごめんごめん。」
かがみは、駅の西口に向かって歩き出す。
こなたもその後をパタパタと着いて行く。
「(西口、かがみんもしかしてアニメ○ト?)」
いやいや、こんな時間にやってないだろ?っと自分自身にツッコミを入れるこなた。
「(どこまで行くんだよ、かがみん…。)」
駅を西口から出た二人は、しばらく歩いたビルの下で足を止めた。
かがみは、そのビルを指差し…
「ここよ。」
「え…ここ…?」
かがみの指差したその先は、県内でも有名な高層ビル『大宮ソ○ックシティ』だ。
「かがみ、ここオフィスビルじゃんよ。」
「まあね、登録はオフィス扱いにしてあるけど、住居に改装してあるのよ。」
「いいのそれ……?バレたらヤバイんじゃ…。」
かがみは、エレベーターに乗り込みボタンの下部にある鍵穴にキーを挿し
右に回して29階のボタンを押した。
「大丈夫よ29階の全フロア私が契約してるから、このキーがないと行けない様になってるし。」
「そう……て、29階の全フロアってどんだけだよ。」
「何言ってんのよ、ここ大宮よ六本木とかと違うんだから安いもんよ。」
だからと言って、18やそこらの小娘が借りられる物じゃないと こなたは、思ったが黙っていた。
そうこうしている内にエレベーターは、29階に到着し扉が開いた。
そこは、3畳ほどの広さの部屋に鉄の扉が一枚あるだけの無機質な空間だった。
「ちょっと待ってね…今、鍵を開けるから…」
「それから、絶対に笑うんじゃないわよ。」
「笑う、なんで?」
336 :
師匠:2009/10/14(水) 14:58:27 ID:5r8+VFd6
「いいから…。」
「うん、わかった。」
かがみは、こなたが頷いたのを確認してから鍵を開け始めた。
指紋認証、静脈認証、網膜認証の三段構えだ。
「す…すごい厳重だね、かがみ…?」
「まぁ…この頃、物騒だから…」
「まだ声紋チェックと合言葉があるのよ。」
「セキュリティの最強コンボですな、かがみ様……」
そう言った所で機械が喋りかけて来た。
「アナタ ノ オナマエ ト アイコトバ ヲ ドウゾ」
「柊かがみ。合言葉は、パン工場〜♪」
「ニンショウチュウ シバラク オマチクダサイ」
「ぷっ!なに今の合言葉、パン工場〜?」
こなたは、突拍子もない合言葉に思わずふいてしまった。
「だから、笑うなって言ったじゃない。」
「笑ってない、全然笑ってないよ…ぷっ!」
「やっぱり笑ってるじゃないの。」
「ニンショウ カンリョウ! ドウゾ オハイリ クダサイ」
厚さ30pはあろう、鉄の扉がゆっくりと開いた。
鉄の扉の向こうは、4畳半程の空間が広がり豪華チックな木製の扉があった。
先程の無機質な空間と違い、壁紙も張られ床には高価そうな絨毯も敷かれていた。
「あ、悪いけどここからは、靴脱いでね。」
「私、どうも部屋の中を土足で歩くの好きになれなくてさ。」
「あ、うん。」
「さあ、遠慮せずに上がって。」
かがみが、ドアを開けてくれた。
次の瞬間、こなたの目の前に信じられない光景が広がった。
「うわ〜、こんなのテレビとか雑誌でしか見た事ないよ。」
そこは、まるでどこかの超高級ホテルのロイヤルスイートと見間違う程だった。
「すごいでしょ、この家具とか揃えるの結構苦労したのよ〜。」
「うん、すごいね……。」
337 :
師匠:2009/10/14(水) 14:59:07 ID:5r8+VFd6
しかし、こなたは腑に落ちない…
なぜなら、先程から広がる光景は、どうやっても異常!18歳の女の子が出来る事ではない。
「ねぇ かがみん…人間レンタルの会社ってそんなにお給料いいの?」
「えっ……」
一瞬、かがみの動きが止まった。
だが、すぐに かがみはこう切り返した。
「まぁね…あの会社は、なんでも屋みたいな所だから…」
「お得意様はみんな大金持ち、時には某国の大統領からも依頼があるのよ。」
「だから、お金は取り放題!仕事の内容にもよるけど、ン千万・億は当たり前ね。」
「そう…なんだ…」
「な、何でそんな事 聞くの?」
「いや、私も雇ってくれないかなぁと思って…」
「あー無理無理、今は社員募集してないし…」
「(かがみんの嘘つき…何か隠してる…)」
かがみが、会社の事を隠すのも当然。
あの会社は、表向きはただの派遣会社だが
本当の所は、金さえ積めば人殺しでも何でもやる『闇の組織』なのだ。
実際、あの組織で実力ナンバー1のかがみも数え切れない人間を殺めて来た。
かがみは、この事をこなたには一番知られたくなかった…
知られれば自分から離れて行ってしまう…そんな気がしてならなかったからだ。
「ま…とりあえずシャワーでも浴びて来なさいよ。」
「そこを右に行った所だから…着替えも私のだけど後で置いとくから。」
「え、でも かがみは?」
「私、ちょっと電話する所があるから こなたの後でいいよ。」
「うん、わかったよ。」
風呂も総大理石で嫌ってくらい豪華だったのは、言うまでもない。
「う〜…こう豪華だと妙に落ち着かないもんだね。」
こなたは、広いジャグジーに口まで浸かりブクブクやりながら困惑していた。
ふいに かがみが脱衣所から…
「こなた〜、ここに着替え置いとくよ〜。」
「うん、ありがとう。それにしてもすごいお風呂だね〜。」
「まぁね、ゆっくり浸かって身体休めな〜。」
そう言って かがみは、脱衣所を出て行った。
その後、こなたは考え事をしながらジャグジーを泳いだりしてみたが
のぼせそうになったので上がる事にした。
338 :
師匠:2009/10/14(水) 15:00:00 ID:5r8+VFd6
「うっ!化粧水とか全部ブランド物…エ○メスのドライヤーなんてあるんだ……」
こなたは、あまりに一般ピープルを逸脱した かがみの生活に呆れ返っていた。
かがみが、用意してくれた着替えはやはり こなたには、ぶかぶかだった。
「かがみ〜……」
脱衣所を出た こなたは、かがみを呼んでみるが返事がない。
その時、奥の部屋からかすかに かがみの声が聞こえた。
「あ、電話するって言ってたっけ……向こうの部屋でいいのかな?」
奥の部屋に近づくにつれ、かがみの声が鮮明に聞こえて来る。
・
・
「We will leave for USA tomorrow.」
「(英語?かがみん、英会話できたんだ。)」
・
・
「Please arrange for the air tickets.」
「(何話してんだろ…私ヒアリング苦手だから所々しか解んないや???)」
・
・
「Yes, we are two persons. 」
「(仕事の話かな……?)」
・
・
「So, see you tomorrow at ten o'clock.」
「(アメリカがどうのと言ってたような……?)」
・
・
「Thank you Good bye.」
「かがみ〜?」
こなたは、そっと扉を開け中を覗いてみた。
「あら、もう上がったの こなた?」
「うん…電話、邪魔しちゃった?」
「そんな事ないわよ、丁度終わったとこ。」
「それにしてもやっぱり私のじゃ、ぶかぶかだったわね。」
「でも、これ かがみ臭がしてとってもいいよ。」
「かがみ臭って…何か私が臭いみたいじゃないの。」
「違うよぉ、何か安心するって言うか…なんて言えばいいのかなぁ?」
339 :
師匠:2009/10/14(水) 15:00:45 ID:5r8+VFd6
かがみは、そんな こなたを見て微笑んだ。
こなたの言わんとしている事を何となく理解できたからだ。
「(こなた…ありがとう…こんな私を必要としてくれて……。)」
かがみは、こなたをそっと抱き締めた。
「かがみん……」
「あ、ごめん……何か こなたをギュウしたくなっちゃって…」
「かがみ、これって百合フラグ立って…」
そこまで言いかけて かがみが言葉を遮った。
「わわわ、私、シャワー浴びて来るね。」
「あそうそう、そこにお茶入れといたから良かったら飲んで。」
「あ…かがみ……」
「それと、そっちが寝室だから眠かったら先に寝てて。」
かがみは、慌ててバスルームの方に行ってしまった。
こなたは、少し名残惜しかったが我慢した。
「(かがみん、奥手すぎ……。)(; ̄ω ̄A アセアセ・・・」
こなたは、リビングのソファーに座り かがみが入れてくれたハーブティーを啜る。
「(う〜ん…やっぱりここは、私がリードした方がいいのかな?)」
如何せん、こなたも初めての事なのでどうしていいか解らない。
「(あ、このカップ…ウェッ○ウッドだ……。)」
「(そろそろウザイよ、このブランド品のフルコンボ。)」
そんな事を考えながら外の夜景を眺めたりしていたが
「(やっぱ…ベットで待ってた方が・・・いいよね?)」
「(・・・うん、きっとそれがいいよ。)」
自問自答で答えを無理矢理出したこなたは、自分の使ったカップを洗い寝室に向かった。
シルクのベッドに横たわり、かがみが来るのを待つ。恥ずかしいので、明かりは点けない。
時計の秒針が耳に突く・・・たったの一分がやけに長く感じられた・・・。
そんな静寂の中、寝室の扉がゆっくりと開いた。
「こなた……まだ起きてる……?」
「…うん…起きてるよ……」
340 :
師匠:2009/10/14(水) 15:02:26 ID:5r8+VFd6
こなたは、上半身だけ起こして かがみの声のする方向に目を向けた。
月明かりがぼんやりと かがみの姿を映し出す。
こなたの目には、バスローブ一枚で髪を下ろした かがみが妙に艶っぽく見えた。
「さっきの話じゃないけどさ……」
「…… ……」
こなたは、思わず唾を飲む。
「フラグって……立ってるの…かな……?」
「……立ってると思う…多分……」
それを聞いた かがみは、こなたにゆっくりと近付いて行く……
「…キス……してもいい…?」
かがみの問いに対し こなたは、コクッ…と頷いた……
二人の唇がゆっくりと惹かれ合い……その距離はやがてゼロ距離に達した。
「うむぅっ、んんっ」
「ふぁっ、うむんぅ……」
どちらからともなく、お互いの舌を絡める。
「ちゅぅぅ…んくぅ…うぁん…んんぅ…。」
「んぅ…ぷはっ。」
かがみが こなたの耳元で囁く…
「こなた……好き…。」
「かがみ…私も かがみの事……好き…。」
「こなた…ずっと…ずっと…一緒だよ。」
「私も…かがみと離れたくない…。」
「こなた…大好きだよぉ…こなたぁ…。」
・
・
・
その夜、月明かりが二人を照らす中……
こなたとかがみは、心も身体も一つになった……心も身体も……。
・
・
・
つづく
341 :
師匠:2009/10/14(水) 15:43:10 ID:5r8+VFd6
第一話は、ここまでです。
第二話は、数日後に投下します。
どんな感想が返ってくるか・・・
スルーされたりして・・・
注意書き、ちなみに筆者は神奈川氏とは関係ありません。ただ、書き方を真似ただけです。
埼玉の刑務所にて
「今まで、どうもありがとうございました(≡ω≡.)」
看守「二度と来るんじゃねーぞ!」
こなたは五年の刑を得て今日出所したばかりである。
「ったく、お父さんもかがみんたちも誰も面会とかにきやがらねえし(≡皿≡.)」
こなたはムショでのそうじろうやかがみたちに
そうじろう「傷害事件起こすなんて、なんて馬鹿なことしてくれたんだ。お前は勘当だ。
もう二度と家に帰ってくるな」
つかさ「こなちゃん、ウザい上にキモい上に犯罪者よねー」
かがみ「二度と私達の目の前に現れないで頂戴!」
みゆき「ムショで腐った根性叩きなおしたほうがいいかもしれませんね」
とまで言われた。
「ったく!誰のおかげで助かったんだよ!恩をあだで返すなんて友達じゃないよね(≡皿≡.)」
おまけに刑務所の衛生環境はすこぶる悪く、こなたは梅毒、エボラウィルス、エイズ、結核に
感染していた。とうぜん、治療もしていないで出所した。
「さて、心機一転に隣町でもう一度人生をやり直そうヽ(≡∀≡.)ノ」
そして、数日後、こなたはそこにあるアニメソング&ヘヴィメタル専門ラジオ局に就職した。
「涼宮ハヒルでーす!どうぞよろしくお願いしますヽ(≡∀≡.)ノ」
祐一「ああ、涼宮さんね。俺は相沢祐一。ディレクター&DJ担当だ。よろしくな」
(相沢祐一・・・どっかで聞いたことが・・・あっ(≡ω≡.))
(そういえば小学生の時、虐められて屋上から飛び降りようとしたとき、助けられたっけ(≡ω≡.)
あん時「お前は幸せになる、お前は絶対に幸せになる」って言ってくれたっけ・・・(≡ω≡.))
(あの時の男の子か・・・(≡ω≡.))
長森「私はあなたと同じアシスタンドディレクターの長森瑞佳だよ。ハヒルさん、よろしくね」
こなたの仕事はアシスタンドディレクター及び雑用係であった。午後六時、こなた達は仕事を
終えて、帰るとき
長森「ねー、ハヒルさんは住む所あるの?」
「いや〜、実はお金がなくてネカフェを転々としているんだ・・・(≡ω≡.)」
長森「じゃあ、うちに来てよ。私はルームシェアで住んでいるから、大歓迎だよ。人が少なくて
といっても、岡崎さんと二人なんだよ」
「岡崎って女性なのかい?(≡ω≡.)」
長森「ううん、男だよ」
「じゃー住むことにするよ(≡ω≡.)」
こなたと長森は長森のゲストハウスに向かった。
長森「ただいまー」
朋也「あっ・・・」
長森「岡崎さんまだ寝ていたの〜一日中ダラダラしているのはダメだよ」
朋也「今日は仕事が休みだったんだよ。いいじゃん疲れているんだから」
長森「もう〜あ。それより紹介するね、この人、今日からここに住むことになった涼宮ハヒルさん」
朋也「へぇ・・・俺は岡崎朋也。よろしくな」
「どうも、私、泉こな・・・いや涼宮ハヒルでーす。よろぴく〜(≡∀≡.)」
朋也「ところで年はいくつよ?」
「こう見えてもピチピチの22歳なのだよ。大学を出たばかりでーす(≡∀≡.)」
長森「へぇ、私と同い年なんだ。大学はどこだったの?」
「東京大学法学部(≡∀≡.)」
朋也「名門だな!おい」
こうして、こなたたちはお酒やつまみを食べながら、夜を明かした。
次の日
「う〜飲んだ飲んだ、頭痛いな〜(≡ω≡.)」
とこなたはリビングに向かった。リビングには朝食を作っている長森と新聞を読んでいる朋也がいた。
長森「あっおはよう」
朋也「昨日は一杯飲んだな」
こなたは朋也が読んでいるスポーツ新聞に目を向ける。そこには驚くべきことが載っていた!
「○○刑務所、新型ウィルス感染。死者多数。出所した泉こなたを追跡中」
とこなたの写真と一緒にデカデカと乗っていたのだ!
「えええええ!?(≡Д≡.)」
朋也「そんなに驚いてどうしたんだ?」
長森「写真の子、少しばかりハヒルさんに似ているよ。髪の毛の色は別として」
(ここに来る前に髪の毛の色を赤に染めて正解だったね・・・頭いいな私!(≡ω≡.))
朋也「それより朝食にしようぜ」
そういうと朋也は新聞を畳みテーブルについた。
こなたと長森はラジオ局に着くといつものように仕事をした。終業時に
祐一「涼宮さん、今日、一緒に飲みに行かないか?」
「いいね、いいね飲みに行こう(≡∀≡.)」
長森「相沢さん、私は?」
祐一「いいぞ!次いでだから岡崎も連れてこいよ」
そして、こなた達四人は大型ディスコ「マハラジャ」に行って踊った。
祐一「涼宮さん、俺、彼女募集中なんだ」
「おお!なんという恋愛フラグ!(≡∀≡.)」
祐一「良かったら、俺と付き合わないか?」
「いいよ!いいよ!OKだよ!(≡∀≡.)」
それからというもの、こなたは朋也、長森、祐一と共に仕事し、たまにディスコで遊び
ゲーセンで格闘ゲームをしたり、カラオケでアニソン歌ったり、ゲストハウスで
アニメ映画のDVDを見たり、過ごしていた。その一方で新型ウィルスは着々と感染者を
増やし続けていた。おまけに一般市民に死者も出ていた。
そして、こなたの幸せは長く続かなかった。
「マハラジャ」でこなた達は楽しんでいる。カウンター席で二人の男がいた。
シブタク「おい、あそこにいい姉ちゃんいるじゃねーか」
連れ「ん?あの赤毛の子どっかで見たことがあると思ったら、「うんこなたの泉」じゃねーか!」
シブタク「泉?お前のダチ刺したやつか」
連れ「それだけじゃねー泉の奴、ウィルス感染で指名手配されてんだよ」
シブタク「良いチャンスじゃん。密告すれば、金が入るってか、よし電話してこよう」
祐一「二手で別れて、行動しないか?恋人みたいにさ」
「いいね〜いいね〜私、行きたい所があるのだよ(≡∀≡.)」
長森「ハヒルさん、相沢さんと付き合っているもんね」
朋也「じゃあ、俺と長森はコンビニで何か食べでいるよ」
警察官「警察だ!泉こなた!警察署まで来てもらおうか」
「えっ?(≡Д≡.)」
警察署
警察官「君、新型ウィルスに感染しているそうだね?」
「ウィルスなんて感染してないよ!(≡Д≡.)」
警察官「まぁいい、尿検査すれば分かることだ」
「尿検査でウィルス感染していることがばれてしまう(≡Д≡.)
隣に、ホームレスのおっさんが小便しそうだな・・・まてよ!いいこと思いついた(≡∀≡.)」
数分後
警察官「尿検査の結果、ウィルスには感染していないようだ帰っていいぞ」
(うふふふふ、尿検査に出したのはホームレスのおっさんの小便なのさ(≡∀≡.))
早朝、ゲストハウスにて
「ただいまー(≡∀≡.)」
朋也「涼宮、いや泉こなた、お前俺たちをだましていただろ?」
長森「東京大学卒なんて嘘だよ。おまけに嘘の経歴を使ってだよ?」
「いや、騙すつもりはなかったんだけどな〜(≡ε≡.)」
朋也「その上、刑務所帰りとはどういうことだ!この家から出て行け!」
長森「あなたとはもう絶交だよ」
「みんな・・・幾らなんでも酷過ぎ(TωT.)」
こなたは荷物一つも持たずに家を出た。
「そうだ・・・祐一の所に行こう」
こなたは携帯をかけた。
祐一「もしもし」
「祐一、私だけどさ(≡ω≡.)」
祐一「げっ!泉かよ!電話かけてくんな、ブス!」
「恋人に向かってそうはないよ!(≡ω≡.)」
祐一「はぁ?俺たち付き合っていたっけ?付き合った覚えすらないんだけど、あと、俺彼女いるんだわw」
「え(≡Д≡.)」
祐一「これでお前とはお別れだなwじゃーな、樹海でも東尋坊でも行ってこいやw」
プープープー
「酷過ぎる・・・(TωT.)」
こなたは泣きながら、トボトボと歩いている時、
ドン
警察官「気をつけろ!カス!」
「カチン!ヴガァァァァァァァァァァァァァァ!(≡皿≡.)」
そこに放置されていた鎖鎌を手に取り、警察官に向かって投げた。
グサ!
警察官「うぎゃああああああああああ!」
こなたは警察官を殺すと、警察官が所有していたシュマイザーMP40短機関銃を
奪い取り、レンタルビデオ店「TSUTAYA」へ向かった。「TSUTAYA」に着き、
「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!てめぇら全員皆殺しだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!(≡皿≡.)」
ズガガガガガガガガガガガガガガガガ!
こなたはシュマイザーを駆使して、女子供、老人を手当たり次第に殺しまくった。
その時、こなたの前に五人の男女がいた。こなたはシュマイザーを男たちに向けて
撃とうとするが、弾切れで弾が出てこない。
竜崎「コナキモドラゴン!」
大石「コナキモグリフォン!」
キョン「コナキモペガサス!」
伸恵「コナキモマーメイド!」
凛「コナキモフェニックス!」
五人「コナキモ戦隊!コナキモレンジャー!」
(こな!…こなちゃんキモいよ!
こな!…こなちゃんキモいよ!)
世界中に 一匹しかいない糞虫に 殴らないと生きられない
生まれたとき与えられた 力強い殺意を分かち合おう
空気読めないムカつく糞虫 怒りのパワーで はるかな地獄への旅を行かせよお〜
デ!デ!デッド!糞虫殺して 蒼く輝く埼玉を守りたい
デ!デ!デッド!殺意全開 5人の中に君がいる
コナキモ戦隊コナキモレンジャー
(こな!…こなちゃんキモいよ!
こな!…こなちゃんキモいよ!)
世界中が一緒に自殺を待ってる 一人だけじゃ出来ないさ
流す涙は光る悲しみ 燃えつづける殺意を誓い合おう
アキバ汚したムカつく糞虫 オタクへの偏見で 迫害の日々を思い出させよう〜
デ!デ!デッド!糞虫殺して ブーイングが聴こえるアキバを取り戻せ
デ!デ!デッド!殺意全開 5人の中に君がいる
コナキモ戦隊コナキモレンジャー
空気読めないムカつく糞虫 怒りのパワーで はるかな地獄への旅を行かせよお〜
デ!デ!デッド!糞虫殺して 蒼く輝く埼玉を守りたい
デ!デ!デッド!殺意全開 5人の中に君がいる
コナキモ戦隊コナキモレンジャー
伸恵「こなたさん〜悲しそうですね、なにせ男に捨てられて、不幸のどん底って所ですか」
バシッバシッバシッ!
大石「んっふっふ、その不幸のどん底で〆られるなら本望でしょう・・・」
ドスドスドスドスドス!
竜崎「こぉんの大バカ野郎!てめぇが迷惑かけると俺に迷惑かかんの分かってんのか、往生せいや〜〜〜!」
バキドゴグシャバギ!
凛「長年の恨みこの場で晴らしてやるぜ死ねや〜〜〜〜!!」
ドギューンドギューンドギューンドギューン!!
キョン「更生した何てほざいているが、ちっとも反省してねぇじゃねえじゃねえかあ〜〜!!」
ドギューンドギューンドギューンドギューン!!
「うぎゃああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!(T皿T.) 」
一時間後
「コナキモレンジャーに徹底的にリンチされた後、肥溜めに放り込まれたよ(≡ω≡.;)
臭い、臭い言って誰も近づかない・・・しかもみんな、石投げてくるし(≡ω≡.;)
あれ・・・あそこの木にロープが絞められている・・・(≡ω≡.;)
結局、自殺したほうが得ってことじゃん・・・(TωT.;) 」
めでたし、めでたし
>>341 面白いです。
全7話という事で読み応えがありそうです。
でもこなたはまた自殺すんの?
もう一回自殺してるんだからもう勘弁してあげて欲しいな。
こなたがその会社に就職して頑張る姿を見てみたい。
350 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/15(木) 03:15:51 ID:j8TGup2s
あ
351 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/15(木) 08:22:39 ID:5xGYoWHE
>>347 実際、神奈川が手掛けるとこんな感じなりそうだな。
ガンガンの仮面少女は「こなたが自殺しない」とか「かがみたちは
殺人犯したこなたとは縁を切りそう」と感想がついていたのを思い出した。
しかし、こなたが刑務所帰りだと分かると祐一たちが180度の豹変
ぶりはある意味凄い。ちなみにこういう展開は「BOY A」という
映画を見ればわかる。
つか、涼宮ハヒルという偽名には糞ワロタ。どこのAVだよw
あと、コナキモレンジャーもワロタ。
考えたくない事が山積みよぉ
長森だとか祐一だとか…懐かしすぎるだろw
354 :
名無しさん@お腹いっぱい:2009/10/16(金) 11:17:51 ID:cPs8cCGR
ターボレンジャーの替え歌かよwwwwww
しかし、竜崎たちはこなたになんか恨みでもあったのか?
>>353 Kanonはハルヒと同じ時期に京アニがアニメ化したんじゃなかったっけ?
だって2006年のアニメだぜ。懐かしいどころかつい最近だろ。
知ったか乙
356 :
師匠:2009/10/16(金) 14:51:49 ID:ZzYPqquK
>>348さん、感想を頂けて嬉しいです。
ストーリーは、後半に進むにつれて現実を逸脱した話になって行きます。
…では、第二話を投下します。
357 :
師匠:2009/10/16(金) 14:52:26 ID:ZzYPqquK
『幸せのゴールAS』−第弐話−
・
・
・
チチチッチュンッチュンッ
朝の光に頬を照らされ かがみは、目が覚めた。
・
・
「う、う〜ん…もう…朝か…」
時計の針は、8時をちょっと過ぎた辺りを指していた。
ほんの数時間前の事が、かがみの脳裏によぎる。
「そうだ、私…こなたと…しちゃったんだ……」
両手で頬を押さえながら赤面する かがみ。
「…って、こなた!?」
かがみは、隣にいるはずの こなたがいない事に漸く気付いた。
慌てふためいて、寝室を出てリビングに向かう。
「こなた、こなた!!」
「あ!かがみん、おはよう。」
そこには、エプロン姿で朝食を作っている こなたがいた。
「そろそろ、起こそうと思ってたんだぁ。」
「こなたぁ〜。」
かがみは、眼に涙を溜めて こなたに抱きついた。
こなたは、抱き付かれながら右手で左手の掌をポンッと打った。
「はは〜ん…さては、私がいなくなったと思って…」
「だって、だってぇ〜。」
「よしよし…やっぱり かがみんは、寂しがり屋の兎ちゃんだね?」
そう言って、かがみの頭をやさしく撫でる こなた。
「う〜、子供扱いするなぁ〜。」
「大丈夫だよ。私は、どこへも行かないよ かがみ。」
「うん…。」
「もうちょっとで朝食が出来るから、顔洗って来なよ かがみん。」
そう言って こなたは、キッチンの方へ行ってしまった。
358 :
師匠:2009/10/16(金) 14:53:02 ID:ZzYPqquK
かがみは、渋々顔を洗いに行く。
「(もう、こなたのヤツ…人の気も知らないで……。)」
・
・
・
「よし、これで出来上がりっと。」
こなたは、出来上がったばかりのタコさんウィンナーをつまみ食いした。
そこへ、こなたの背後から…
「こらこら、つまみ食いをするな!!」
「う、早いねもう戻って来たの?」
「違うよぉ、これはつまみ食いじゃなくて味見だよ〜。」
「味見なら皿に盛る前にやれ!はしたない。」
「まあ、いいじゃん。じゃ、かがみはそっちの席ね。」
「って、つまみ食いしたの私のかよ。」
「気にしない、気にしない♪」
「…ったく、この娘は。」
ダイニングテーブルで向かい合って朝食を食べる二人。
その時、かがみは こなたの様子が少しおかしい事に気付く。
顔を赤らめ身体をくねらせ、妙に艶っぽいのだ。
「さっきからどうしたの、こなた?ソワソワして…。」
「お手洗いなら我慢してないで行きなさいよ。」
「いや…ヒリヒリして……。」
「ヒリヒリ、何がよ?」
「だから、その……。」
こなたは、恥ずかしそうにモジモジしている。
「だから何よ?」
「あの…その……アソコが…。」
「なっ!!」
一瞬にして かがみの顔が真っ赤になる。
「ほら…かがみ、激しかったでしょ?……だから…。」
「わ、わ、わっ……ご、ごめん。」
「なんで謝るの?私、嬉しいんだ……」
「この痛みは、かがみと一つになった証拠、かがみが私を愛した証拠なんだから。」
「こなた……。」
「でも、今度はもちょっと優しくしてほしいな……。」
359 :
師匠:2009/10/16(金) 14:53:33 ID:ZzYPqquK
「そ、そだね……。(ホント、ごめん…。(;≧ー≦)ノゴメンヨー)」
朝食を済ませた二人は、食器を片付けながら
「そうだ こなた〜、今日これから買物でも行かな〜い?」
「あ〜行く行くぅ〜、下着とか欲しいし。ゲーセンも行こうよ、新作出たんだぁ。」
「よーし、膳は急げよ。サッサと片付けて行くわよ。」
二人は、意気揚々と大宮の街に繰り出した。
「よし、まずは東口のロ○トからよ!!」
「だりゃー!!」←どんな買物だよ。ヾ(--;)ぉぃぉぃ
「次は、ゲーセン!!」
「とりゃー!!」←まぁ、これはアリか?(;^_^A アセアセ・・・
「ル○ネ!!」
「うりゃー!!」←だから、どんな買物だよ。ヾ(--;)ぉぃぉぃ
「次、西口!!アニメ○ト、ア○シェ、ゲ○ズ!!!」
「うー、やー、たー!!」←おーい、戻ってこーい。(-。−;)
「昼ごはん!!」
「早めに食ってニッコニッコ〜♪うっ!!」←歌いながら食うから…。( ̄Д ̄;;
「仕上げよ、JA○K、マ○イ―――――!!」
「くらい、やがれー!……萌えたろ?」←つっこむ気力もねぇよ。( ̄_ ̄ i)タラー
・
・
・
「疲れた〜。」
「私、もう歩けないよぉ〜。」
二人は、デパートの階段2階と3階の間の踊り場で休んでいた。
「…今日は、もう帰ろっか?」
「そだね。でも、あそこ行ってないよね?」
「あそこ?……あぁ、そ○う?」
「あそこ、あんま行かないよね?」
「そう言えばそうね…それと、糟日部のロビ○ソンも中々行かないわよね?」
「そうだね。なんでだろう?」
「東口だからかしら?私達、西口を利用する方が圧倒的に多いし。」
「あ、そうかもね。」
その時いきなり、かがみが立ち上がった。
360 :
師匠:2009/10/16(金) 14:54:41 ID:ZzYPqquK
「そうだ、こなた。私、買い忘れた物があったの思い出したわ。」
「え、まだ何かあるの?」
「すぐ戻って来るから こなたは、ここで待っててよ。」
「え、でも……。」
かがみは、立ち上がろうとする こなたを無理矢理すわらせて
「団長に逆らうなんて100年早いわよ!」
「え?」
「団長命令よ、待ってなさい!」
そう言い放って、かがみは階段を2階に降りて行ってしまった。
「やれやれ……かがみんも高校3年間で結構染まってんじゃん。」
・
・
・
「(さっき こなたに似合いそうなの見つけたんだ…。)」
「すみません、これとこれ下さい。」
・
・
・
「ありがとうございました〜。」
「えへへ…こなた、喜ぶかな〜?」
買い物を済ませ、こなたの元に戻ろうとしたその時
かがみは、何かの気配を感じ足を止めた。
「……サクシャアか?」
柱の影から黒い帽子、サングラス、黒スーツで身を固めた男が音もなく姿を現した。
「気配は、完全に消していたのですが…流石ですね、かがみ様……。」
かがみが、組織で一番の信頼を置く部下『サクシャア』だ。
「めずらしいわね、アンタの方から私の前に姿を現すなんて…。」
普段は、諜報活動が主たる仕事のサクシャアは
あまり、かがみの前には姿を見せないのだ。
「組織から貴女の抹殺命令が出ています。」
「そっか、もうバレたんだ…こなたと関わってんの。」
361 :
師匠:2009/10/16(金) 14:55:10 ID:ZzYPqquK
組織では秘密漏洩を防ぐ為、契約の終わった人物と関わるのは御法度だった。
そのルールを破れば、組織に消される……
それは、組織で実力ナンバー1の かがみと言えど例外ではなかった。
「これは、プレジデントからの命令ではありません。」
「御子息様から下った命令です。」
「なんですって!?」
「プレジデントは、ヤツにそんな権限を与えたと言うの?」
「いいえ…ここからは私の推測ですがプレジデントはもう……」
「まさか、ついにアイツ…自分の父親を……。」
「はい……。」
「って事は、アイツも一枚噛んでるわね?」
「察しの通りです。…裏で御子息を操っているのは、恐らくヤツです。」
「やっぱりね、アイツに父親を殺る根性なんてないもの。」
「今夜、殺るおつもりですか?」
「まぁね…逃亡生活を送るくらいなら、こっちから殺ってやるわ。」
「そうですか…くれぐれもお気を付け下さい。……では。」
「待って、サクシャア!!」
「!?……まだ何か?」
かがみは、立ち去ろうとするサクシャアを引き止めた。
そして、神妙な面持ちで…
「私に何かあったら、こなたを…頼むわ…。」
それを聞いたサクシャアは、クスッと笑って
「貴女に何かあるとは、私には到底思えませんよ。」
「バカ、真面目に言ってんのよ!?」
「ふふ、これは失礼致しました。わかりました、お任せ下さい。」
「ええ、頼んだわよ……それとアンタも気を付けなさいよ。」
「それこそ、私の心配は無用ですよ……では。」
そう言々残しサクシャアは、柱の影に溶けるように消えて行った。
サクシャアが去った後もその場に立ち尽くしていた かがみだったが
不意に自分の名前を呼ばれ我に返る。
「かがみ〜。」
こなたが、帰りの遅い かがみを待ち切れなくなり探しに来たのだ。
「あ、こなた?」
「遅い!敵は3分もあれば火星から月まで来るよ!かがみん!!」
「何だそれは、また何か漫画かゲームのネタか?」
「とにかく、お・そ・いぃ〜!!」
362 :
師匠:2009/10/16(金) 14:55:41 ID:ZzYPqquK
「ごめん、ごめん。お店でどれにしようか迷っちゃってさぁ。」
「ったく、そんな迷ってなに買ってたんだよぉ?」
「これよ、これ……。」
そう言って先程買った物を袋から出して こなたに見せた。
「ペンダント…?」
それは、銀色に輝くリングペンダントだった。
リングには、小さいながらも5月の誕生石エメラルドが埋め込まれていた。
「こなたに似合いそうだと思ってさ……。」
「えっ…私に?」
「そ、こなたにプレゼント。」
「悪いよ。こんな高そうな物、受け取れないよぉ。」
「いいの!私が、こなたに着けてほしくて買ったんだから。」
「でも……。」
「黙って貰っとけ!いいから着けてみれって。」
「う、うん……。」
こなたは、リングペンダントを恥ずかしそうに着けてみる。
「なんか…こーゆーのに私、無頓着だから恥ずかしいな……。」
「そんな事ないって、すっごく似合ってる。……カワイイよ こなた…。」
「かがみん……。」
こなたは、かがみのその言葉に俯いて顔を赤らめている。
「(うっわぁ、このこなた可っ愛いなぁあぁあぁあぁ。)」
かがみは、興奮のあまり無意識に壁をボコボコに殴っていた。
公衆の面前でなければ今頃こなたは、かがみのキスの嵐に見舞われていたであろう。
「ちょ!かがみ、壁殴っちゃダメだってば―――。」
「あっ…!?(だぁ〜、かがみ凶暴伝説―――。)」
「私…謝って、弁償して来る……。」
「大丈夫だよ、かがみん。」
「大丈夫なワケないでしょ、思いっきりヒビ入ってるし。」
「じゃあ、あと3行くらい待ってね。」
・
・
・
「ほら、もとどーり♪」
「え、なぜ?」
「ギャグ漫画とかで1コマで大ケガが治る理論といっしょだよ〜。」
363 :
師匠:2009/10/16(金) 14:56:14 ID:ZzYPqquK
「はぁあ?」
「あとは、このSS読んでくれてる皆が都合のいいように脳内補完してくれるから――。」
「ちっくしょう、もう何でもアリなのね――!!」
「何か腑に落ちないけど、今回はそれに甘えとくわ…。」
「あ!そうだ…ほら、こなた見て?」
かがみは、先程の店で買ったもう一つの物を袋から出して見せた。
「あ、同じヤツ?」
それは、かがみがこなたにプレゼントした物と同デザインで
リングの宝石だけ7月の誕生石ルビーになっている物だった。
「リングの宝石だけ違うけど、これで こなたとお揃いだよ。」
「かがみん……。」
「こなた…。」
「そうだ、まだペンダントのお礼してなかったね…チュッ=v
不意にこなたは、かがみの頬にキスをした。
「わわっ、こなた!誰か見てたらどうするのよ?」
かがみは、慌てて辺りを見渡す。
「別にいいじゃん。やましい事なんて何もないじゃん。」
「いや、だって私達いわゆる、その…あれでしょ…?」
かがみの声が自然と小さくなる。
「まったく、かがみんは……。」
「そんな世間の体に囚われていたら百合は、やってけないよぉ?」
「百合って言うな、それに声が大きい。」
「んもぉ〜…じゃあさ、かがみは私の事、愛してる?」
「あ、当たり前じゃない…。」
「私も かがみの事、世界中の誰よりも愛してる…。」
「その気持ちは、永遠(とわ)に変わらない……。」
「それでいいじゃん!世間に何と言われようとさ……。」
その言葉に かがみの胸がキュンッとなった。
「そっか、そうだよね…こなた…ゴメン…。」
「かがみん…。」
こなたは、かがみをそっと抱き締めた。
364 :
師匠:2009/10/16(金) 14:56:44 ID:ZzYPqquK
「う、優しくするなぁ……。」
かがみの心(なか)は、こなたの優しさでいっぱいだ。
「今、優しくされたら…ひっ、泣いちゃうかもしれないだろ…ひぐっ。」
「よしよし、もう泣いてるよ……。」
こなたは、へたり込んでしまった かがみを子供をあやす母親のように慰める。
「だってぇ、だってぇ…ふぐぅっ。。゚(。ノω\。)゚。エーン」
「ほら、これで涙拭いて。」
こなたは、ポケットからハンカチを取り出して かがみに差し出す。
「えぐっ…ひっ、あひがと…ひっく。」
「大丈夫?立てる?」
「う、うん……。」
「今夜は、かがみんの好きな物を作ってあげるから。」
「だから泣き止んで……ね?」
「うわ―――んっ、優しくするなぁ〜〜〜。」
「だぁ〜、だから泣かないで――。(;><)」
・
・
・
こなたは、その日の夕食を腕によりをかけて作った。
かがみは、それを喜んで食べた。その後、お風呂も一緒に入った。
ついでに こなたは、背中流し合いっこしながら
うっかりのふりをして かがみのおっぱいも触った。
「ちょ、どこ触ってんのよ!?」
「いいじゃ〜ん、ベッドの上ではもっとスゴイ事してんだし…。」
「バ、バカ……。」
かがみは、赤面しながら満更でもなかった。
そして、二人はベッドの上で愛し合った。
こなたとかがみの今の気持ちを例えるなら
「CoolがHotになっちまった…もう誰にも止められねぇ!!」
って感じで、ラジカセで会話すれば?って感じだ。
そして、時間は過ぎ……
・
・
・
365 :
師匠:2009/10/16(金) 14:57:16 ID:ZzYPqquK
「(ふふ、こなた良く寝てる…。チュッ=j」
かがみは、こなたの額に軽くキスをする。
こなたを起こさない様に静かにベッドを降り
クローゼットに向かう。
いつも暗殺の仕事で身に纏うブラックレザーのスーツに着替え
組織から支給された、攻撃にも防御にも使える
かがみ専用の手甲、通称『アテナ』で武装する。
「(こなた…私、必ず戻って来るから……。)」
部屋を後にし、エレベーターで地下駐車場に向かう。
「たのむわよ……。」
キュルルッドンッ!セルを回してエンジンを掛ける。
かがみが組織の仕事で、移動手段としてよく使うバイク
『YAM○HA Y○F−R1』だ。
フルにチューンしたそのマシンは、最高出力200馬力以上…
最高時速は、裕に300km/hオーバーを叩き出す!!
「行くわよ、R1 !!」
地下駐車場を飛び出した かがみ!
R1のエンジンが軽快な唸りを上げる!!
かがみには、その音がまるで決戦の場に誘う
『Prelude(前奏曲)』のように聞こえた……。
・
・
・
つづく
366 :
師匠:2009/10/16(金) 14:57:57 ID:ZzYPqquK
以上が、第二話です。
第三話は明日、投下できると思います。…では。
師匠のひと、できれば番号入れてくれ
頭が探しにくい
誰かゲームの話まとめに上げてくれない?
まだ上がってないみたいなんで
369 :
師匠1:2009/10/16(金) 22:38:40 ID:ZzYPqquK
>>348さん
投下の時、この様にすればいいと言う事でしょうか?
370 :
師匠:2009/10/16(金) 22:40:48 ID:ZzYPqquK
>>370 そそ
わがまま言ってるだけなんで
うざければスルーでオkです
372 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/17(土) 10:16:45 ID:50S0lEop
「行くわよ、R1!!」(笑)
なんかもう神奈川版シリーズ読んでるとあらゆる意味で死にたくなってくる
374 :
白の子:2009/10/17(土) 10:58:21 ID:RWDIFWU/
フヒィフヒィフヒィヒャッハ
こなた「寂しいよぉ…」
376 :
師匠:2009/10/17(土) 15:39:35 ID:V0dxT7F2
皆さん、こんにちは。
第三話を投下させていただきます。
『幸せのゴールAS』−第参話−
・
・
・
「ハアハアハア…。」
かがみは、誰かに追われ暗闇を走っている…
見えない壁にぶち当たり、追い詰められる かがみ。
黒い大きな影が、ゆっくりと近づいて来る…
そして、その魔の手が かがみに…
・
・
・
「かがみ――――――――――――!!」
こなたは、飛び起きた。
「ハアハア…夢…か…。」
異様に生々しい夢に悪寒が走る こなた。
「かがみ!?」
いない!!
隣にいるはずの かがみがいない!!
こなたは、必死に家中を探し回ったが かがみの姿は、どこにもなかった。
・
・
リビングで途方にくれる こなた……
ふと、ダイニングテーブルの上にある紙に気付く。
かがみの書き置きだ!!
そこには、組織の事…
今まで、かがみがして来た事が詳細に書かれていた。
「そんな…かがみんが…人殺しを…。」
「嘘だ!こんなの絶対に嘘だ!!」
後退りをした こなたは、リビングの本棚にぶつかってしまう。
不意に こなたの頭に何かが落ちて来た。
「痛っ……。」
「何これ…かがみんの…日記…?」
こなたは、その日記を開いてパラパラと読破して行く…。
以下、かがみの日記より…
○月×日
今日も、人を殺めた…。
もう、こんな事したくない……。
------------------------------
○月×日
また、殺しの依頼だ。
もう、こんな仕事はしたくないとプレジデントに嘆願してみたが
『大事な友達が、この世からいなくなる』と脅された。
プレジデントは、その後にこうも言っていた。
『いや、君にとっては友達以上の存在か……』
『確か名前は、泉こなた君だったかな?』
『君は、友達以上の関係を望んでいるのだよね?』
私は、ゾッとした。誰にも話してないのに…
私がこなたに恋心を抱いている事を知っている?
なぜ、コイツが!?
------------------------------
○月×日
また、人を殺めてしまった…。
もう嫌だ!!
でも、アイツには逆らえない……。
奴にとって私は、ただの操り人形……。
------------------------------
○月×日
また、殺した……。
・
・
・
死んでしまいたい……。
------------------------------
○月×日
また、殺した……。
・
・
・
死んだら楽になるのかな……。
------------------------------
○月×日
嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ
嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ
嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ
・
・
------------------------------
・
・
以下、白紙のページが続く。
そして、最終ページ…
・
・
------------------------------
・
・
・
助けてよ こなた。
救ってよ こなた。
------------------------------
と、綴られていた。
それを読み終わった瞬間、こなたの瞳から涙が溢れ出した。
「苦しんでたんだ……」
「かがみは、たった一人で苦しんでたんだ……。」
こなたの脳裏に かがみの書き置きの最後の一文がよぎる。
『……すべてを清算する。』
「かがみ、まさか!?」
涙を袖で拭った こなたは、キッと空(くう)を睨む。
「助けなきゃ!!」
「かがみは、死のうとした私を助けてくれた…生きる希望をくれた。」
「今度は、私の番だ!!」
居ても立ってもいられなくなった こなたは、部屋を飛び出した。
今のこなたを漢字一文字で表すなら『凛』がもっとも相応しいであろう。
ビルを出た所で、こなたは呼び止められる。
「また、会いましたね…泉こなたさん。」
「……あの時の!?」
こなたに契約完了のサインをさせた、あの男だ。
「何か用ですか?私、今忙しいんですけど…」
ぶっきら棒に答える こなた。
「プレジデントが貴女をお呼びです。」
「(プレジデント!かがみの日記にあったアイツか!?)」
「いっしょに来て頂けますか?」
「どうせ、断っても力ずくで連れて行くんでしょ?」
「物分りが、よろしいようで……。」
男は、ニヤッと不気味な笑みを浮かべた。
それに こなたは、ゾッとしたが勇気を振り絞って
「いいよ、行ってあげるよ。」
・
・
・
一方その頃、かがみは……
組織の本社ビル1Fロビーで戦闘中だった。
「撃て――――――――――――!!」
何十発という弾丸が、かがみに向かって一斉に放たれる。
「そんな物!私には、通用しないのよ!!」
かがみは、その銃弾に臆する事なく突進して行く。
並外れた動体視力で弾を見切り、驚異的な反射神経と無敵の手甲『アテナ』で弾き返す。
かがみが、我流で編み出した技…
名付けて『ミラーコマンドー』!!
ガーベルコマンドーではないので、要注意だ。
因みに名前の由来は、どんな攻撃も鏡のように反射するところから来ている。
「あちょ、あちょ、ほあたぁっ!超振動拳(ウソ)!!」
かがみの拳が炸裂する!
「お前は、もう死んでいる!……な〜んちゃって。」
ツインテール繋がりか?妙にハイテンションな かがみ様。
また一人、また一人と倒されていくが、如何せん数が違いすぎる。
「くっ…これじゃ、ラチが開かない……。それなら!!」
かがみは、左の拳を腰の辺りに当て力をためる…
そして、高速で拳を前に突き出した。
『Dark Scream(暗闇への誘い)!!!』
その瞬間、かがみの前方に強力な衝撃波が発生し敵を襲う。
衝撃波は、15人程を一気になぎ払った。
「たいそうなお出迎えは、有難いんだけどさぁ…」
「迂闊に私に近付くヤツは…死ぬわよ!!」
「ひぃぃぃぃぃ…ば、化け物。」
敵は、あまりの力の差にほとんど戦意を喪失していた。
かがみは、さらにたたみかける。
…が、一瞬光る物が かがみの眼をよぎった。
「!?」
ガキンッ!慌ててそれを『アテナ』で弾き返す。
「……糸?」
それは、注意深く見なければ、まったく気付かない程の細い糸だった。
「ここは、私が引き受けます。貴方達は、下がっていて下さい。」
群集の中から現れたのは、桃色のセミロングヘアをツインテールに結った
背の小さな可愛らしい女の子だった。
「ゆたかちゃん……。」
その女の子は、『小早川ゆたか』だった。
「プレジデントが、お待ちです…ご案内します。」
「…… ……。」
かがみは、黙って頷いた。
二人はエレベーターに乗り、最上階のプレジデントルームを目指す。
狭い空間で、二人は沈黙を守っていたが、ゆたかが重い口を開いた。
「かがみ先輩が悪いんです……。」
「…… ……。」
「こなたお姉ちゃんに関わったりするから……。」
かがみは、「こなたお姉ちゃん」その言葉に少し苛立ちを覚えた。
「こなたを裏切ったくせに……」
「『お姉ちゃん』だなんてよく言えるわね!?」
「そ、それは……。」
「それは、何よ!?」
苛立ちを思いっきり、ゆたかにぶつける かがみ。
「…… ……。」
しかし、ゆたかは黙ってしまった。
何か言いたそうだったが、唇を噛み今にも泣きそうな顔で黙ってしまった。
その時、エレベーターの扉が開く。
「どこへ行くつもり、最上階じゃないわよココ?」
「まずは、この階にお連れしろとの事です。」
かがみは十中八九、罠だと悟ったが遭えて黙っていた。
「ここです……。」
ゆたかが、扉を開くとだだっ広い鉄の空間が広がった。
「何よここ、何もないじゃない?」
かがみとゆたかが部屋に入った瞬間、扉が勢い良く閉まった。
「!?」
「やっぱり、罠だったようね……。」
「すみません…かがみ先輩…。」
ゆたかが申し訳なさそうにしている。
その時だった、部屋に設置してあるスピーカーから音楽が流れた。
パンパカパーンッ
「レディース&ジェントルメン〜ようこそ、柊かがみ。」
かがみは、辺りを見回す。
「あそこか……。」
かがみから見て、左上方ガラス張りの部屋から男がこっちを見ている。
「アンタに用はないのよ。プレジデントを出しなさいよ。」
「今は、俺がプレジデントだ。」
「はぁあ、プレジデントはアンタの父親でしょ?白石みのる!!」
そう…その男は、こなたのクラスメイト『白石みのる』だった。
「あー親父?…もう、この世にはいないぜ。」
「(やっぱりね……。)」
「それから、俺の名は白石ではない。」
「じゃあ、何だよ?」って聞き返しそうになったが
白石が調子に乗りそうなのでやめた。
「ふーん、あっそ。」
「ふーん…って、聞きたくないのかよ?」
「別にぃ……。」
「いいだろう、では名乗ってやる。」
「(いや、だから興味ないから……。)」
「そう、俺の名は……」
「ちょっと黙ってろ、白石。」
何者かが、白石を邪魔した。
「小神……!?」
「気安く私の名前を呼ぶんじゃねぇよ。ツンデレブスッ!!」
かがみに罵声を浴びせるその人物は
スーパーアイドルの美少女?『小神あきら』だった。
「やっぱり、アンタが白石を操ってたワケね?」
小神の「ツンデレブス」という言葉に内心ぶちギレモードだったが
表面上は、冷静さを保つ かがみ様。
「違う、断じて違う!俺は、操られてなどい・な・い〜!!はうっ」
白石の股間に小神の蹴りがHITした。
「うっせんだよ。もうそろそろ、アイツが来る頃だ…」
「てめぇは、そっちに行ってろ。」
「むごごごご、ずびばせん あぎら様……ずぐに行ぎます。」
悶え苦しむ、白石をよそに話を続ける小神。
「お前は、今から死ぬんだから聞く必要ないだろ?レズヤロー。」
眉がちょっとヒクッとなってしまったが、あくまで冷静さを保つ かがみ様。
「へぇ…私が死ぬ?やってみなさいよ。」
「ふん、その減らず口……今に叩けない様にしてやんよ。」
かがみの後方の扉が開いたと思ったその瞬間!
何かが飛び掛って来た。
間一髪!それを回避した かがみは、驚愕した。
「つ、つかさ……。」
ライトパープルのショートヘアをリボンでカチューシャ風にまとめている女の子
かがみの二卵性双生児の妹『柊つかさ』だ。
「お姉ちゃんが、悪いんだ……」
「お姉ちゃんが、こなちゃんの肩なんか持つから悪いんだからね。」
普段の天然キャラは、どこへやら…息を荒くして殺気立つ つかさ。
「妹に殺されるのも、お通ってモンだわよね〜?」
調子に乗って、だるだるソデをブンブン振っている小神。
かがみは、小神を今すぐにブン殴ってやりたい気分だったがそれ所ではない。
油断すれば、本当に妹のつかさに殺されかねない……
そんな異常な程の殺気をつかさは、発していたのだ。
「小早川、てめぇも解ってんだろうな?」
「手加減するなよ!全力で殺れ!!」
「で……でも。」
ゆたかは、少し嫌がった。
「てめぇ、逆らうのか?頭から牛乳ぶっかけっぞゴラァ!!」
「うぅ……わかりました。…全力でやります。」
ゆたかは、スッと腰を低く構え戦闘態勢に入る。
「それでいいのよ。じゃあ、始めてもらいましょうか?」
「(くっ…やるしかないの?)」
かがみも二人を迎え撃つべく、身構える。
「行くよ、お姉ちゃん……。」
始めに仕掛けたのは、つかさだった。
つかさの武器は、ダマスカス鋼を硬化テクタイトでコートした双剣。
通称『オルトロス』!!
二本の剣から繰り出される、多彩なコンビネーションや攻撃のバリエーションは
組織の中でもナンバー1だ。
そんな、つかさの猛攻を冷静に対処する かがみ。
「(つかさらしくないわね、殺気だらけで太刀筋がバレバレ。)」
「バルサミコ酢、バルサミコ酢、バルサミコ酢!!」
「つかさ先輩、下がって!」
『妖斬獄縛陣!!』
ゆたかの武器は、超硬ダイヤモンドファイバーを細く編み込んだ強靭な糸。
通称『アラクネ』!!
その糸は、ゆたかの技をもってすれば鉄をも切り裂く事ができる。
その反面…ゆたかの小手先一つで、相手を傷付けずに拘束したりする使い方も出来る。
「やった!捕まえた!!」
…と、思ったが かがみの姿がどこにもない。
「ウソいない!どこ?」
「後よ!!」
「えっ!?」
振り返って、防御の態勢を取ろうとするがもう遅い。
「遅い!!」
かがみの高速拳が、ゆたかにクリーンヒットした。
「きゃあぁぁぁぁぁぁ!!」
ゆたかの軽い身体は、10m程ふっ飛ばされ壁に激突した。
「きゅうぅ〜。」
「悪いわね、ゆたかちゃん……。」
「ちっ、役立たずが……。」
小神が、舌打ちをした。
一方その頃、組織の本社ビル屋上に一機のヘリが到着した。
・
・
・
「ここが、我社の本社ビルです。」
「そんな事、どうだっていいよ。早くプレジデントに会わせてよ。」
「そう、慌てなさんって…こっちから来てやったぜ。」
そこには、白石が立っていた。
「セバスチャン!なんでアンタがここに?」
「柊から聞いてないのか?この会社、俺の親父の会社なんだぜ。」
「セバスチャンの……!?」
「もっとも、親父はさっき殺しちまったからなぁ〜。」
「今は俺の会社で、俺がプレジデントだが…。」
「そんな…」
こなたは、親を殺して平然としている白石に愕然(がくぜん)とした。
「か、かがみ…かがみは、どこ!?」
「会わせてやる、ついて来な。」
・
・
・
つづく
387 :
師匠:2009/10/17(土) 15:47:11 ID:V0dxT7F2
以上が、第三話です。
第四話は明日、投下できると思います。…では。
神奈川版「麾く煉獄」「トモダチって時間じゃない」 「仮面少女」読んでみたけど
ここが良く分からなかった
神奈川版「麾く煉獄」
1、凛のそうじろうをリンチしに来たけど、最終的に金で解決したけど、最後は
そうじろうを告訴、結局、凛の目的はなんだったんだ?
2、そうじろうはなんで凛の親の財産を横取りしたの?
3、伸恵はなぜ、こなたの三億もの大金を奪い、なぜ銀行を爆破した目的は何?
神奈川版「トモダチって時間じゃない」
1、キョンはみゆきに詐欺同然の目に遭わされたのに警察に頼まなかったのか?
2、なんでつかさが覚せい剤にハマっているのか分からない。
3、シブタクたちはどうやって、機関銃やバズーカ砲を入手したのか?
神奈川版「仮面少女」
1、コナキモレンジャーのこなたをリンチする理由って何?理由すら書かれて
いなかったたので分からなかった。
2、なんで長森たちはこなたがムショ帰りだと分かると絶交したの?
3、なんで警察官がサブマシンガンなんか持っているんだ?
ここが分からないのよ。誰か分かる人教えて
389 :
師匠:2009/10/18(日) 15:09:54 ID:c8ZNhpuX
皆さん、こんにちは。
第四話を投下させていただきます。
『幸せのゴールAS』−第四話−
・
・
・
かがみとつかさの勝負は、まだ続いていた……
小神は、それをつまらなそぉ〜に見ていた。
そこへ、白石とこなたがやって来た。
「あれぇ〜、まだ終わってねぇの?」
「あのツンデレ…妹を差し向ければ少しは、動揺するかと思ったんだが…」
「以外に冷静に対処しやがる。」
「流石は、柊かがみって所か……。ふぎゃっ」
小神が白石の足を思いっきり踏み付けた。
「てめぇ、感心してる場合じゃねぇーぞ?」
「小神…さん…?」
状況の解っていない こなたは、小神がここにいる事が不思議だった。
「なんで、こんな所に…?」
「あー?私がお前をここに呼んだからに決まってんだろ。」
「呼んだって…えっ、え?」
「ったく、めんどくせぇな…。」
小神は、頭を掻きながら超面倒くさそぉ〜に事の次第を話した。
・
・
・
「そんな…じゃあ、この組織は実質……。」
「そうだよ、私の物だよ。」
「あの〜、一応俺がプレジデントなんスけど…。」
白石は、少し寂しそうだった。
寂しかったので、皆の気を引こうとして『三回まわって、ワンッ!』をした。
「ちょ、ちょっと待て!何で俺がそんな事を…?」
だ・か・ら〜『三回まわって、ワンッ!』をした。
「な、何なんだこれわ!何かの陰謀だぁ〜!!」
だってお前、「ムチャなフリ来てぇ〜♪」って歌ってたじゃん。
「いや…でも、三回まわって、ワンッは、本当にスペシャルブロークンハートって感じで…。」
ゴチャゴチャ言ってないでいいから、早くやれよ!!
「うぅっ……はい。」
・
・
・
「三回まわって……ワンッ!」
ぷっ、ホントにやってやんのバカじゃねぇ?(´゚,_ゝ゚):;*.':;ブッ
「お前がやれつったんだろーが!?」
あぁん?今すぐ『白石は、突然の心臓麻痺で死にました。』
…って事もできるんだけどなぁ〜?
「えっ!?…はは、冗談スよ…冗談…。」
書き手には、逆らえない白石であった…。
「(くそ、今に見てろ…。)」
何か思った?(▼皿▼)y-.。o○
「いい、いいえ。何も思ってません…。」
そうだよね。プファー( ̄△ ̄)y─┛~~~~~
「白石…さっきからお前は、何をしとんのじゃ?」
「いや、書き手さんが暴走して…イテッ!」
こなたが、白石を押し退けてウインドウに張り付く。
「かがみ!!それにつかさ…あそこで倒れてるのは、ゆーちゃん!?」
ガラスを叩いて、三人の名前を呼ぶ こなた。
「バーカ、こっちの声は聞こえねぇーよ。」
「う……うわあぁぁぁぁぁぁぁん。」
こなたは、膝をついて泣き崩れてしまった。
ドスッ!
その時だった…こなたの後頭部に白石の手刀が、きれいに入った。
こなたは、その場にドサリと倒れ、気絶してしまった。
「悪いな、泉…」
「この戦いが終わるまで、お前はそこで寝てな。」
「白石、てめぇ何、勝手な事しやがって。」
「あ…いや、うるさかったんで……。」
「これじゃ、コイツに柊かがみが死ぬ所を見せられねぇだろ。バカッ!!」
「あ…そう言う事だったんですか?」
「泉こなたをココに連れて来た意味ねぇーじゃねぇかよ。」
「ちっ…やっちまったモンは、しょうがねぇけどよ…。」
「今度、勝手な事やったら…ただじゃおかねぇからな!!」
「あ、あははっ…。」
白石は、笑ってごまかす事しかできなかった。
「ところで、何でこんなに長引いてんスかぁ あきら様?」
話をスリ替える白石。
小神は、「話、変えんじゃねぇよ」と言う目で、白石を睨みながら答えた。
「柊かがみは、強い!」
「それに拍車をかけて、あの手甲のせいもあるんじゃない?」
「手甲?…ああ、柊の着けてるやつ、たしか『アテナ』でしたっけ?」
「そうだよ。」
「そんなにスゴイいんスかぁ…アレ?」
白石のその台詞に、腕を組んで面倒くさそうに小神は答えた。
「アンタさぁ、この世で一番硬い物って何だか知ってる?」
「馬鹿にしてんスか、あきら様…そりゃ、ダイヤモンドでしょ?」
「ぶー、はずれ。」
「え、じゃあ何だって言うんですか?」
「純粋なロンズデーライト……。」
「ロンズデーライト?」
「そう、別名『六方晶ダイヤモンド』。」
「ダイヤモンドの約1.6倍の硬さがあんのよ。」
「あの『アテナ』は、それで出来てるって事ですか?」
「ああ、そうだよ。」
「その証拠に、斬鉄もできる腕前の妹つかさの攻撃をいとも簡単に防いでるじゃない。」
「決着がつくのも時間の問題ね……。」
「アンタの親父も厄介な物、柊かがみにくれてやったモンだわよ。」
小神は、タメ息をつきながら、かがみとつかさの戦いに目を向けた。
・
・
・
キンッガキンッ金属音が響き渡る。
「(つかさ、だいぶバテてるわね…そろそろっかな?)」
「もう、終わりにしましょうか つかさ?」
「くぅぅ、お姉ちゃんのくせにぃ〜…どんだけぇ〜……。」
後に大きく跳んで、つかさの攻撃を回避する かがみ。
そのまま着地を待たずに攻撃に移る。
『Dark Scream(暗闇への誘い)!!!』
いつものつかさなら回避できない事もないが
先程からの大振りで、だいぶ消耗していた。
「避けられないって言われるよ……でも、そんなの関係ねぇ〜。」
力を振り絞り、回避しようとするが身体が思うように動かない。
「やっぱり避けられないとです……つかさです……つかさです。」
そんなつかさの頑張りも虚しく身体は、衝撃波に巻き込まれ壁に激突した。
「ぎゃふんっ!!」
「ぶつかってるやないかーい…。」
・
・
・
「ハアハア……やったわ……。」
流石のかがみも消耗していた…
そんな かがみに休息の時間はなかった。
鉄の扉が開き…次の刺客がまた一人、入って来たのだ。
「(やっぱり、現れたわね。一番、戦いたくない人物が……。)」
「つかささんも小早川さんも…二人掛りで情けないですね……。」
薄い青紫色の瞳に眼鏡をかけ、ライトピンクのロングヘアをたなびかせる…
容姿端麗、成績優秀、品行方正、文武両道な女性……
「次の相手は、貴女かしら?……みゆき。」
こなたのクラスメイト『高良みゆき』だった。
「ふふ、その通りです……かがみさん。」
不敵な笑みを浮べる みゆき……。
「かがみさんが、変な気を起こす物ですから…」
「私の休暇が、台無しになってしまいました……。」
「そう…それは、悪かったわね……。」
「お気になさらないで下さい…。」
「かがみさんとは一度、お手合わせ願いたかったので…。」
「ふっ…私は、なるべくなら みゆきとは、戦いたくなかったわ。」
「しかし、それは今となっては、避けられない事……。」
「そのようね……。」
かがみとみゆきは、それぞれ身構える。
みゆきの武器は、チタン合金を硬化テクタイトでコートしたレイピア。
通称『シルフィード』!!
突進力は、組織中ナンバー1。
高速連続で繰り出される突きは、まるで閃光のようだと言われている。
「……参ります。」
みゆきのあまりの踏み込みに、空間が歪んだ。
高速の突きが、一瞬にして二人の間合いを縮め、かがみを襲う。
「速っ……。」
上方に跳んで、それを回避する かがみ。
「(あれだけあった間合いが一気に縮まった……。)」
「それで避けたつもりですか、かがみさん!?」
みゆきは、かがみを追うように攻撃を上突きに変換する。
「くっ…!」
かがみは、なんとか身体をずらし、回避を試みたが
猛烈な突きが、左の脇腹をかすめそこから血が噴出す。
「(串刺しだけは、避けましたか…かがみさん。)」
すかさず、空中で かがみは、反撃の蹴りを放つ。
みゆきは、それを『シルフィード』のカップ・ヒルト(鍔の部分)で防いだが
あまりの威力に吹っ飛ばされる……。
しかし みゆきは、身体をひねり受身を取ってきれいに着地する。
「流石ね……みゆき。」
「ふふ、私の攻撃に死角は、ありません…。」
「ましてや…この必殺の『Lightning(電光石火)』なら、なおさらです。」
そう言うと みゆきは、柄頭をやや上向きにレイピアを持ち
右手を剣先に這わせるように構えた。
「(あれが、みゆきの必殺の構え……!?)」
「行きますよ……。」
また空間が歪んだ。
かがみは、みゆきのあまりに速いスピードに
一瞬、目の前にいる みゆきが消えたと錯覚するほどだった。
次の瞬間、かがみの右肩に激痛が走った。
「ぐっ…(速すぎる…。)」
ズド――――――ンッ!!
その威力で壁まで吹っ飛ばされる かがみ。
「今のが私の必殺『Lightning(電光石火)』です。」
レイピアについた かがみの血をペロリと舐めるみゆき…
その瞳は、まるで悪魔のようだった。
「かはっ……くぅぅ。」
「痛いですか…苦しいですか…かがみさん?」
「その痛み…苦しみから今、解放して差し上げます。」
みゆきはまた、『Lightning(電光石火)』の構えを取る。
「ふふ……。」
「!?」
「何が可笑しいのです。かがみさん?」
「痛みで気でも狂ってしまったのでしょうか?」
かがみは、ゆらりと立ち上がる。
「みゆき…甘いわ…砂糖より甘いわよ!!」
「えっ…!?」
「今の一突きで、心臓を狙っていれば私を倒せたのにね…。」
「どういう事です…?」
「知らないようだから教えてあげるわ。」
かがみは、みゆきを指差し。
「柊かがみに同じ技は、二度も通じない!!」
・
・
・
少しの間を置いて、みゆきが口を開いた。
「ふふ…何を言い出すかと思えば……。」
「たった一度、見たくらいで私の『Lightning(電光石火)』を見切ったと言うのですか?」
「その通りよ、みゆき。」
かがみは、ボコボコとみゆきの腹ワタが煮えくりかえる音が聞こえたような気がした。
「……いいでしょう。」
「次こそ私の全力をもって、その心臓を一突きにして差し上げましょう!!」
「さぁ〜て、出来るかしらね?」
「減らず口を――――――――――――!!」
空間が歪み、みゆきのあまりの踏み込みに鉄の床がひしゃげた。
・
・
・
が、標的となるかがみは、すでにみゆきの目の前にはいなかった。
「!?」
「なっ!どこに!?」
みゆきの真横に かがみが突然あらわれた。
「だから、見切ったって…」
ズドンッ!みゆきの腹部に かがみの左の拳がメリ込む。
「うぐぅ……。」
続いて、右の拳を振りかぶる かがみ。
「言ったでしょ――――――――――――!!」
ド―――――ンッみゆきの身体が宙を舞う。
かがみの拳は、みゆきの左頬を的確に捉えた!!
みゆきの口から血といっしょに奥歯が飛び出る……『虫歯』…だった。
念の為、もう一度言う……『虫歯』…だった。
「きゃふんっ…」
「これで解ったでしょ?柊かがみに同じ技は、二度も通じない!!」
カッコよく決める かがみだったが、当のみゆきはと言うと…
「はわわっ、めがね〜…めがねは、どこですかぁ〜?」
「あれがないと私は…。」
ズルッ かがみは、コケた。
「自分の目の前に落ちてるわよ……。(ー。ー#) 」
「ああっ、こんな所に……。」
スチャッ ヒビの入った眼鏡を装着し立ち上がる みゆき。
「やってくれますね、かがみさん。」
「まあね。(私の決めシーン、返しなさいよぉ〜。 “o(><)o”)」
「でも、これで私の勝ちね。」
「はっ?」
かがみの台詞にキョトンとする みゆき。
「何故でしょうか?」
「何故って……必殺の『Lightning(電光石火)』を見切られた今…」
「みゆきに勝ち目なんてないじゃない!?」
「ふふ…。」
「な、何が可笑しいのよ。」
「甘いのは、貴女です。かがみさん!!」
「その甘さ…砂糖の三千倍と言われるモネリンより甘いですね。」
「ぬわんですってぇ―――――!?」
どこぞのパン職人ばりのリアクションを取る かがみ。
「まさか、私の技がアレだけだと…?」
「えっ、違うの?」
「ええ、全然違います。」
キッパリ答える みゆき。
「へぇ〜、面白いじゃない…やってみなさいよ。」
「余裕ですね…かがみさん。では、参ります…。」
みゆきは、『Lightning(電光石火)』の構えを取る。
「(また、『Lightning(電光石火)』…のワケないわよね?)」
「かがみさん、覚悟!!」
『Lightning Meteor(電光石火の暴君)!!!』
剣先から閃光がほとばしる…
そのまるで流星のような無数の閃光が、かがみを襲う。
「(くっ、避けたり防いだりできる数じゃない…。)」
「お願い、間に合って!!」
かがみは、垂直に跳びながら円を描く様に右足を渾身の力で振り抜いた!!
『Jet−black Symphony(漆黒の交響曲)!!!』
かがみの目の前に爆風の障壁が発生し、みゆきの攻撃を全て遮断した。
「これで終わりよ、みゆき。『Bad End(終の黒)!!!』」
そして かがみは、着地と同時に前方の空間を力の限り蹴り飛ばした!!
『シュートォ――――――――――ッ!!!』
超強力な衝撃波が発生する。
その衝撃波は、前途の『Dark Scream(暗闇への誘い)』の比ではない。
それが、物凄いスピードで みゆきに迫る。
「めがねぇ〜…めがねはどこですかぁ〜……?」
眼鏡は、かけていた……が、レンズは割れていた。
ヒビが入り、耐久力の落ちた所に みゆきの技の衝撃で割れてしまったのだ。
哀れ、みゆき…最後の技は、自分で自分の首を絞めた形となってしまった。
「きゃあぁぁぁぁぁぁ…。」
壁に叩きつけられる みゆき。
「ハアハア…終わった……。」
・
・
・
一方その頃、こなた達のいる管制室では…
「柊かがみと泉こなたを見逃せだぁ〜?」
「そうです、柊ちゃんと泉さんを見逃して下さい。」
「要求が呑めないんだったら、この場でアンタ等を殺してもいいんだゼ。」
かがみのクラスメイト、『峰岸あやの』と『日下部みさお』が
小神と白石に かがみ達を見逃せと、要求…いや、脅迫していた。
しかし…小神は、余裕だった。
「おい、白石…コイツ等うぜぇ…アレ使って、消せ。」
「待ってました〜♪」
白石は、自分自身の首に何かを注射した。
ボコ、ボコボコ、ゴキゴキゴキ!!
白石の筋肉が、異常な程ふくれ上がる……。
「何だってヴぁ、コイツ!?」
「まさか、組織が密かに開発していた究極の肉体強化薬…」
「でも、あれは未完成だったはず……!?」
「残念だったな、すでに完成してたんだよ!!」
「うえ〜気持ち悪りぃ〜、あれじゃ『戸〇呂(弟)』じゃんよぉ。」
「気を付けて、みさちゃん。あれが完成品なら…今、彼は殆ど化物同然。」
「さぁ〜て、死のショ〜タイムだ!!」
みさおとあやのは、身構えた。
・
・
・
場面は、変わって かがみ達に移る…
「そ、そんな……。」
かがみは、驚愕していた。
みゆきが、ボロボロになりながらも立ち上がって来たのだ。
「うぐっ…負けません…。」
「まだ立ち上がって来るなんて…。」
「はあぁぁぁぁぁぁ!!」
みゆきは、かがみに向かって突進する。
しかし、そんな みゆきにいつものスピードはない。
ドカッバキッドゴッ!かがみの拳が容赦なくHITする。
吹っ飛ばされる みゆき……。
「まだです…まだ私は、負けていません……。」
それでも、立ち上がって来る みゆき…
体力は、限界…みゆきは、精神力だけで持ち堪えている状態だ。
「(なんで…なんで、立ち上がるのよ――!?)」
「(お願いだから…そこで寝ててよ――!?)」
「(このままじゃ…このままじゃ、みゆきを……。)」
「(みゆきを殺さないと、いけなくなるじゃない――――!!)」
そんな かがみの願いも虚しく、みゆきはゆっくりと向かって来る。
意を決して、かがみも向かって行く…
その時だった…かがみの手足に何かが巻き付いて来た。
「ハッ!これは…!?」
「ハアハア、やっと…やっと捕まえましたよ…かがみ先輩。」
「ゆ、ゆたかちゃん!?」
巻き付いて来たそれは、ゆたかの武器である糸『アラクネ』だった。
「動かないで下さい。…動いたら、手足がバラバラになりますよ。」
「(しまったぁ――――!!)」
「お手柄ですね、小早川さん。」
そんな、かがみにさらに追い討ちをかけるように……
「油断したね…お姉ちゃん。」
ムクリとつかさが、起き上がる。
「(さ、最悪…こんな時に つかさまで…。)」
「さあ、観念していただきます…かがみさん。」
みゆきが剣を構える、つかさも剣を構える。
それに倣うように、ゆたかも腰に携えたナイフを抜いて構える。
「(万事休すね……。)」
なんとか、打開策を見い出そうとする かがみだったが
この場を切り抜けるいい方法が思い浮かばない。
その間にも三人は、かがみに迫り来る!!
「(ごめんね、こなた…私、死ぬみたい……。)」
かがみは…ついに諦め、眼を閉じた……。
ザシュッ!!
その瞬間、三人の刃が突き刺さった……
・
・
・
つづく
402 :
師匠:2009/10/18(日) 15:20:42 ID:c8ZNhpuX
以上が、第四話です。
第五話は明日、投下できると思います。…では。
403 :
愛を知る県:2009/10/19(月) 12:52:22 ID:BDEPayn3
漏れさぁ文才無いんだが良いネタ思いついたから書いても良いかな?
”ただいま”と言わせて下さい。
405 :
師匠:2009/10/19(月) 15:16:43 ID:7glYROv6
皆さん、こんにちは。
第五話を投下させていただきます。
『幸せのゴールAS』−第伍話−
・
・
・
「(ああ…もう、あの世かしら……?)」
「(何の痛みも感じずに、死ねたみたいね…。)」
恐る恐る、目を開いてみる かがみ……
・
・
・
しかし、目の前に広がる光景は、あの世ではなかった。
「うっ……。」
「くっ……。」
「くぅ……。」
「嘘、そんな……!?」
それは、つかさ、みゆき、ゆたかがそれぞれを刺し合う…
いわゆる、同士討ちの格好になっていた。
「な、なんで…みゆき!!」
崩れ落ちる みゆきを抱きかかえる かがみ。
かがみの瞳からは、涙が止め処なく零れ落ちている。
「これで…いいのです。かがみさん。」
「泉さんを見捨てた時から…私達の運命は、こうなると決まっていたのです。」
「そんな…」
「かがみ…先輩……。」
「ゆたかちゃん!!」
「私の…代わりに…こなたお姉ちゃんに…」
「こなたお姉ちゃんの事…本当のお姉ちゃんのように…思ってたって…」
「ゆたかちゃん…。」
「お…お姉ちゃん…。」
「つかさ!!」
「えへへっ…こなちゃんにさぁ…」
「今度、会ったら…また遊ぼって…伝えておいて…。」
「つかさ…。」
「お姉ちゃん…私…何だかもう眠いよ…。」
「つかさ!?」
「かがみさん…どうやら…私達の命も…風前の灯のようです…。」
「いや、嫌よ…こんなの……。」
「かがみ先輩…こなたお姉ちゃんと…幸せに…な…って……。」
「いやぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
三人は…静かに息を引き取った………。
「うわあぁぁぁぁぁぁ!!!」
かがみは、三人を抱え込むように泣きじゃくる。
その時だった…
「くっだらねぇんだよ!!!」
バリ―――ンッ!
ガラスを破り、白石が乱入して来た。
「オメェ等の友情ごっこは、見ててイラつくんだよ。」
「その声、まさかアンタ白石?」
かがみは、白石のあまりの変貌ぶりに度肝を抜かれた。
「俺は、究極の肉体を手に入れたんだよ。」
「究極の肉体?(ハッ!?)」
かがみは以前、組織の資料でチラッとだけ見た薬の事を思い出した。
「まさか…あの薬、完成してたの…?」
「この俺の肉体(からだ)を見て解んだろ?」
「この肉体は、すんげぇぞ。日下部や峰岸も殺してやった。」
「日下部と峰岸を…なぜ?」
「お前と泉を見逃せなんて言うから、ウザかったんでな。」
「ほれ、あそこで…ぐぎゃっ」
そう言って白石が、管制室の方に目を向けた時、何かが顔面を踏み付けた。
「バル酢!!」
「ぐわあぁぁ、目が〜…目が〜…。」
究極の肉体でも目への攻撃は、痛いようだ。
「かがみん。」
「こ、こなた…なんでココに…?」
こなたは、かがみに駆け寄り抱きついた。
「組織の奴等に無理やり連れて来られたんだよ。(ホントは、自分から来たんだけど…。)」
「それで、さっきまで気絶させられてて……。」
「泉…てめぇ、気が付いてやがったのか…?」
「ちょっと待て、あきら様は!?」
今度こそ誰にも邪魔されず、管制室に目を向ける白石。
しかし…そこに小神の姿は、なかった。
「小神なら、どっか行っちゃったよ。」
「そんなぁ〜あきら様〜。」
嘆き悲しむ白石をよそに、こなたとかがみは…
「ゴメン…かがみ……。」
「リビングにあった かがみの日記…見ちゃったんだ…。」
「えっ、あれを?」
「かがみの苦しみを…悲しみを…気付いてあげられなくてゴメン。」
「かがみは、私を救ってくれたのに…気付いてあげられなくて…本当にゴメン。」
涙を流して、謝るこなた…
かがみは、そんな こなたをそっと抱きしめて…
「ううん…あの高校三年間で、本当に救われたのは私の方なの…。」
「あの荒んだ心を こなたにどれだけ癒されたか……。」
「かがみん……。」
見つめ合う二人……。
「こなた……好き。」
「かがみ……好き。」
二人は、お互いの愛を確かめ合うようにキスをした。
・
・
・
長い乙女チックなキスを終えた かがみは、スッと立ち上がった。
「だから、こなたの為にも…死んでいった皆の為にも…私は、白石に勝つ!!」
『そして、こなたと添い遂げる!!!』
「かがみん……。」
そこに嘆き悲しんでいた白石が、ポツリと呟いた…
「夢だな……。」
「夢?」
かがみは、白石のその台詞を聞き返した。
「そうだ、お前達が添い遂げるなど…しょせんは、夢だと言ってんだよ。」
暫しの沈黙の後…かがみは、答えた。
「白石……」
「アンタまさか、夢とは不可能と言う意味と同じだと思っているのかしら?」
「なに……?」
「夢を不可能な事と考えるのは、もはや人生を諦めた廃人に等しい…」
「私達にとって夢とは、決して不可能な事じゃない!!」
『どんな夢だって…信じて貫けば、必ず現実のものになるのよ!!!』
ドンッ!!かがみは、『Dark Scream(暗闇への誘い)』を放った…
衝撃波をもろに受けた白石は、壁に叩きつけられた。
そんな かがみの攻撃も白石には、まったく通用していなかった。
「かあぁ―――つっ!…笑わせるな、この程度で俺を倒すだと?」
「別に……。」
しかし…かがみは、冷静だ。
「ただ、こなたと皆の亡骸を傷つけられたくなかっただけよ…。」
「なに?」
白石が、辺りを見回すと こなたと三人の遺体が、いつの間にか壁際に移されていた。
「なるほど…二人だけで心おきなく戦うためと言うわけか……。」
「いいだろう…この白石みのる、全力を持って相手をしてやる。」
ジリジリと睨み合う かがみと白石…
「さあ、どうした柊。かかって来ないのか?」
「それなら、こっちから仕掛けてやるぜ。」
『くらえ!スーパーウルトラグレートデリシャスワンダフリャボンバー!!!』
白石が、拳を突き出したその瞬間、閃光が走った。
ドスッドスッドスッ 何十発という拳が、かがみにHITする。
あまりの拳のスピードに…かがみには、一瞬何かが光った程度しか認識できなかった。
「きゃあぁぁぁぁっ。」
ズザァーッ ふっ飛ばされ、倒れ込む かがみ。
「かがみん!!」
こなたは、かがみに駆け寄ろうとした。
「うぅ…大丈夫よ、こなた。私…絶対に勝つから…。」
「かがみん…。」
「だから…危ないから、大人しくそこで見てて…ね?」
「う…うん、わかったよ。」
かがみに諭され、すごすごと元の位置に戻る こなた。
「1秒間に50発ぐらいの超高速パンチだ。」
「さあ、立て!まさかこれで、終わりなんてねぇよな?」
「くっ…。(なんて速さよ…って言うか、デリシャスとか意味わかんねぇーし。)」
かろうじて立ち上がる かがみ。
「そぉーら、もう一度くらいな!!」
もう一度、『スーパーウルトラ何たらボンバー』を放つ白石。
しかし、かがみはそれをあっさり回避した。
「何、俺の超高速パンチを避けた。」
「柊かがみに同じ技は、二度も通じない!!」
「今やこれは、常識……。」
「バ、バカな、どうやってかわした?1秒間に50発ぐらいの超高速パンチだぞ。」
いつから常識になったんだよ?…と思いながら問いただす白石。
「簡単な事よ。アンタのパンチが超高速なら…」
「私は、さらにその上の超々高速で動けばいい…それだけよ。」
「お、おざけんじゃねぇーぞ。」
(おざけんじゃねぇ=小沢健二みたいに余裕しゃくしゃくにしてんじゃねぇよの意。)
「そんな、屁理屈みたいな理論が通るかぁ―――っ!!」
「それなら、お望み通り別の技で葬ってやらぁ―――っ!!」
『100%中の100%ォォォォォ―――――――――ッ!!!』
白石のフルパワータックルだ!弾き飛ばされた かがみの身体が宙を舞う。
そのまま、背中から地面に叩き付けられる かがみ。
「へっ、これで終わったな……。」
ザッ しかし…かがみは、再び立ち上がった。
「バ、バカな。あれをくらってまだ…。」
「アンタこそ、おざけんな…。」
「柊かがみをなめるなぁ―――――――――!!」
かがみは、両肘を腰に当て、力を溜める。
『壱・弐・参・肆・伍・陸・漆・捌・玖!!』
『Darkness Overdrive(暗黒疾走)!!!』
「なにぃ―――っ!?」
一瞬で敵の九箇所を打つ、絶対回避不能の突進技。
かがみの超必殺とも言える大技が白石に炸裂した……が。
「う〜ん…なにかしたのかなぁ〜?」
白石には、まったく通じていないようだった……。
「そんな…渾身の力で放った私の技が……。」
「(もう…ダメだ……全身の力が抜けていくみたい……。)」
ズシャッ 戦う気力を失い、その場に前のめりに倒れ込む かがみ。
「ふんっ…言ったはずだ。俺は、究極の肉体を手に入れたと…」
「その究極の人間に、いかなる力を費やそうともカスリ傷ひとつ付けられるか バカめ。」
「さあ、究極の人間と普通の人間の力の差がわかったところで死ね。」
白石が、かがみに止めをさそうとしたその時…
白石は、自分の身体の異変に気づいた。
「な、なにぃ―――?」
「なんだ、この頭から流れる血は…?」
「まさか、今の柊の技で……ぬうぅぅ…。」
「許せ――――――んっ!!」
ドガッ 逆上して倒れている かがみの頭を踏み付ける白石。
「たとえ…たとえカスリ傷と言えど、貴様のようなウジ虫が…」
「究極の人間である俺の肉体に傷を付けるとは――――――っ!!」
怒りの治まらない白石は、かがみの頭を何度も踏み付ける。
「この怒り、貴様を八つ裂きにしても治まらん。」
「粉々に打ち砕いて、灰も残らぬくらい焼き尽くしてくれる。」
「死ね、柊ぃ――――――っ!!」
ピタッ
渾身の力で、かがみの頭を踏み貫こうとした白石の足が止まった。
「いや、待てよ…もっとコイツを苦しめる……」
「肉体だけでなく、精神をもズタズタに…そうだ、殺すのはその後だ…。」
白石の目がギロリと、こなたに向けられる…
「ひっ……。」
こなたは、恐怖のあまり腰が抜けて、逃げる事さえままならない。
「うぅ…やめろ白石…こなたには…」
「こなたには、指一本ふれるなぁ――――――っ!!」
かがみは、最後の力を振り絞り、白石を後ろから羽交い絞めにした。
「な、なにぃ…柊、お前…まだ動けるのかぁ!?」
「くらえ、白石。私の最後の技を!!」
「そして、死ね!うあぁぁぁぁぁぁ!!」
『Kagami Rolling Crash(鏡の国のかがみ)!!!』
かがみは、白石を羽交い絞めにしたまま天高く舞い上がった。
そのまま、天井に白石の頭をぶつける気だ。
「バカめ…究極の肉体を持つ、この俺にそんな技など通用せん。」
「それは、どうかしら?」
「なにっ!?」
「アンタさっき…私の技で頭から血を流してたわよね?」
「それがどうしたっ!?」
「他の部位は、傷ひとつ付かなかったけど…頭だけは、別だった…。」
「まさか……!?」
「そのまさかよ!アンタの弱点は、頭部よ!!」
「や、やめろ柊。今からでも遅くない、技を止めろ。」
「っざけんな!アンタに対する慈悲の心は、まったくないわよ!!」
「あの世で、みんなに懺悔するがいいわ!!!」
「ぐわあぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
ズガ――――――ンッ!!
天井に激突した白石の頭は、グシャグシャに砕け散った。
「みんな…仇、とったわよ。」
白石から手を離し、空中で二回転半して着地する かがみ。
一方の白石は、そのまま落下した…どうやら本当に死んでいるようだ。
「かがみ――――――!!」
「だから言ったでしょ…私は、必ず勝つって!!」
かがみは、親指を立て勝利のポーズを決め、こなたに満面の笑みを見せた。
・
・
・
つづく
414 :
師匠:2009/10/19(月) 15:26:20 ID:7glYROv6
以上が、第五話です。
第六話は明日、投下できると思います。…では。
>>404 おかえりなさい。向こうのやつおもしろかったよ。
改めてただいまです。
やはり僕の居場所はここのようです。
慣れないことはあまりするものではないですね。
あっさりバレてしまい韜晦した意味が全くありませんでした……。
>>416 ありがとうございます。
そう言って戴けると助かります。
自殺以外のSSも書けるんだという事を確かめたかったのです。
418 :
師匠:2009/10/20(火) 15:24:14 ID:+txyxyYR
皆さん、こんにちは。
第六話を投下させていただきます。
『幸せのゴールAS』−第六話−
・
・
・
「かがみ――――――っ!!あれっあれれ?」
こなたは、かがみに駆け寄ろうとしたが、転んでしまった。
なぜなら、先程の白石の睨みにより、腰が抜けたままだったからだ。
「なんか、腰が抜けちゃってて…かがみ、悪いけど手ぇ貸してよ。」
「ったく、しょうがないわね……。」
かがみが、こなたに手を貸そうと歩み出したその時…
一発の銃声が鳴り響いた……。
「えっ…?」
こなたは、何が起こったのか解らない……
次の瞬間…かがみが突然倒れた。
「かがみ――――――っ!!」
「ヘヘッ…ざ、ざまあみやがれってんだぁ。」
「こ、小神!?」
そう…それは、逃亡したと思われていた『小神あきら』だった。
「私の計画を台無しにしやがってぇ――――――!!」
「次は、てめぇだ!泉こなた!!」
ドンッ
小神が、容赦なく こなたに向けて銃を放つ。
ガキンッカランカランッ
しかし…その弾は、こなたまで約1メートルの所で
何かによって阻まれた。
「なにぃ…あれは、柊つかさの『オルトロス』!!」
「つかさ…!?」
こなたは、つかさの方を見た。
しかし…つかさが動いた形跡は、まったくなかった。
だが、こなたは……
「私の事、守ってくれたんだね…つかさ。」
「んなワケあるかぁー。偶然だ偶然!!」
「偶然なんかじゃない…これは、つかさが守ってくれたんだ。」
「そしてこの剣で、お前を倒せって言ってるんだ。」
こなたは、つかさの『オルトロス』を手に小神に向かって走り出す。
「バッカじゃねぇの?じゃあ、次もお友達が守ってくれるってかぁ!?」
小神は、こなたに向けて発砲しようとした…
…が、何かが小神の手から銃を弾き飛ばした。
「な、なんだとぉ…あれは…あれは…」
カラン…
銃といっしょに転がっていたのは、みゆきのレイピア『シルフィード』だった。
しかし、みゆきが動いた形跡はない……。
だが…こなたは、小神に向かって走りながら…
「(みゆきさんも助けてくれたんだね……。)」
「そんな、バカな…し、死体が動くわけねぇ――――――!!」
小神は、困惑して後ずさる…不意に何かが足に絡まり転んでしまった……
「これは、小早川の『アラクネ』!あ、ありえねぇ。」
「(ゆーちゃんも私を助けてくれるんだね……。)」
「こんなのありえねぇ…認めねぇ…私は、認めねぇぞ!!」
「うあぁぁぁぁぁぁぁ!消えてなくなれ悪魔の化身・小神あきら!!」
「これが、私達の友情だぁ――――――――――――っ!!」
グサッ 小神の腹に『オルトロス』が深々と突き刺さった。
「ちっくしょう…認めねぇ…み…と…め……」
小神は、絶命した。
「ハアハア…やった…やったよ、みんな。」
「これで何もかも全部、終わったんだ……。」
「けほっ…ごほっ…こ…こな…た…。」
「ハッ!かがみ!?」
かがみに駆け寄る こなた。
「かがみ――――――!!」
「ごめん…最後の最後で…ドジっちゃった…。」
「もう、喋らないで かがみ!今すぐ救急車よぶね。」
「待って…もう、助からないわ……。」
「そんな事ない、絶対に助かるよ。」
「ダメよ…どうやら心臓に当たったみたい…」
「今…生きているのも不思議なくらいよ…けほっけほっ。」
「そんな事、言わないで…お願いだよ死なないでよ…。」
かがみが死ぬ!そんな感情に心が支配され
我慢していた涙が、こなたの瞳から溢れ出てきた。
「お願いだよぉ…生きてよ…生きてよ かがみ。」
「泣かないで…こなた…」
「…こなたに…泣き顔は…似合わないぞ…。」
かがみは、震える手で こなたの涙をそっと拭った。
「い…嫌だよ…こんなの……。」
「ごめんね…こなた…。」
「私の…最後の…最後のお願い…聞いて…くれる?」
「なんでも…なんでも聞くから…お願いだよぉ…最後なんて言わないでよぉ。」
「…こなた…もう一度…最後にもう一度だけ……キス…して…。」
「うん……。」
こなたは、震える唇をかがみの唇にそっと重ねた。
―――……長い長いそれでいて…切ない…『切な過ぎるキス』。
二人は、このまま時間が止まればいいと思った……。
しかし、そんな二人のお願いも時間には…届かなかった……。
・
・
・
「…こなた…あなたに会えて…本当に…よか…った……。」
かがみの身体から、力が抜ける……。
「かがみ――――――!!」
「かがみ かがみ かがみ かがみ――――――!!」
「うああああああぁぁぁぁぁぁぁぁ――――――!!」
かがみに縋(すが)り付いて、泣きじゃくる こなた…。
その悲しみは、海よりも深い……。
・
・
・
どれだけ泣いたのか……
すでに時間の感覚すら解らない こなた。
「……かがみん。」
おもむろに立ち上がった こなたは、つかさの方へ歩いて行く。
そして、『オルトロス』の片割れを拾い上げ、かがみの横に寄り添って膝をつく…
「かがみ…今、私もそっちに逝くね。」
刃を首に押し当てたその時…
「本当に、それでよいのですか…泉こなたさん?」
「ハッ!貴方は……誰?」
それは、黒い帽子にサングラス、黒スーツで身を固めた男。
かがみが、組織で一番の信頼を置く部下『サクシャア』だった。
「サクシャアと申します。ご安心を私は、貴女の敵ではありません。」
「かがみ様より自分に何かあった時は、貴女の事をたのむと仰せつかっております。」
「かがみに……?」
「はい…かがみ様は、恐らくこの戦いが始まる前に…こうなる事を解っておられたのでしょう…。」
「それは、私とて…あの時のかがみ様を見れば、解っておりました。」
「じゃあ、何で…何で止めなかったんだよぉ!?」
「できれば、私もそうしたかった……しかしそれは、できなかった…。」
「な、なんでだよ!?」
「なぜなら…この戦いは、泉さん!貴女の為…強いては、かがみ様ご自身の為。」
「それをどうして、私が止められるでしょうか?…いいえ、できません。」
「私には、止めたくても…止められなかったのです…。」
スッと、サングラスを外したサクシャアの瞳から一筋の涙が頬を伝っていた。
サクシャアの瞳は、深い深いブルーで、まるで…その瞳に吸い込まれる感覚さえ覚える程だった。
こなたは、サクシャアのその瞳に心が洗われたような気がした。
「そっか…サクシャアさんも…かがみの事…好きだったんだね…?」
それを聞いたサクシャアは、クスッと笑って…
「私は、かがみ様の一部下…その様な感情は、持ち合わせておりません。」
「うそつき!!」
「は?」
「だって、顔にそうやって書いてあるよ。」
「えっ…私の顔にですか?」
慌てて、顔をまさぐるサクシャア…
「ぷぷっ…冗談だよ冗談。」
「なっ…あんまり、大人をからかわないで下さい、泉さん。」
「ふふ…ごめん、ごめん。」
「まったく…貴女と言う人は……。」
「でも…かがみ様が、貴女の事を好きになった理由…」
「何となくですが、解るような気がします。」
「サクシャアさん……。」
・
・
・
「ねぇ…サクシャアさん…。」
「何でしょう?」
「かがみの顔…見てよ…。」
かがみの顔は、血の気が失せ白々としていたが…
どことなく笑っているような…そんな安らかな顔をしていた。
「笑っている…?」
「そう…最後の最後まで かがみは、笑ってたんだ…。」
「…… ……。」
「かがみってさあ…いつも強がってはいるけど…本当は、すっごく寂しがり屋なんだよね…。」
「…… ……。」
「だからさ…私がついててあげないとダメなんだよ。」
「泉さん……。」
「……どうしても死ぬ、おつもりですか…?」
こなたは、サクシャアのその問いに無言で頷く。
「……わかりました。」
「貴女の決意は、固いようです。私が、どうこう言って変わる事はないでしょう……。」
コトッ サクシャアは、こなたの横に緑色の液体が入った小瓶を置いて背を向けた。
「その小瓶の液体は、痛みも苦しみもなく死ねる薬です。」
「貴女が苦しまずに死ぬ…それが、このサクシャアのせめてもの願い……。」
こなたは、薬を手に取る。
「ごめんね、サクシャアさん…あっちで、かがみに謝っとくよ。」
「……さようなら…そして、ありがとう。」
こなたは、薬を一気に飲み乾した。
パタリと倒れ、本当に痛みも苦しみもなく こなたは逝った……。
その顔は、安らぎと満足で満ち…微笑んでいた。
「……泉こなた。」
「しかし…彼女は、死後の世界がなかったらどうするつもりか……。」
「ふっ…死後の世界がある事が前提とは、本当に不思議で面白い人間達は……。」
・
・
・
「ケケケッ…」
「んっ…?」
「本当に、おもしれぇヤツだよ…テメェで死にやがった。」
「貴様……小神!?」
そう…生きていたのだ!あの悪魔が……
「貴様、生きていたのか!?」
「私が、そう簡単に死ぬとでも思ってたのか?」
そう言って小神は、上着を脱ぎ去った。
「それは、防弾チョッキ……?」
「斬れはしなかったが…メリ込んで来て、すんげぇ痛かったけどな…。」
「馬鹿な!では、あの血は……?」
「演劇とかで使うただの血袋だよバァーカ。」
「何と…そうだったのか…くっくっく…ハァーハッハッハ――――――!!」
「あん?何だコイツ、気でも狂ったか?」
「いや、気など狂ってはいない……。」
「ただ…貴様に柊かがみの復讐ができる!貴様を殺せる!!それが嬉しくてな!!!」
「はあ?この小神あきら様を殺すだと?」
「そうだ…貴様には、柊かがみ達が味わった地獄を見てもらう。」
「へぇ…そんな事ができんのかねぇ!?」
小神は、自分自身の首に白石が使ったあの薬を注射した。
ボコ、ボコボコ、ゴキゴキゴキ!!
小神の筋肉が、異常な程ふくれ上がる……。
「芸のないヤツだ…私には、そんな物は無意味。」
「口だけは、いくらでも叩けるよなぁ!死ねぇ――――――!!」
ド――――――ンッ 小神は、全力でパンチを放った。
「な…なにぃ――――――!?」
しかし…サクシャアは、それを片手で軽々と受け止めた。
「だから言っただろ?そんな物は、私には無意味だと……。」
「ぐっ……。」
小神は、拳を引こうとするが…サクシャアは、驚異的な握力でそれをさせない。
「ひとつ…聞いていいか?」
「あん?」
「お前の血の色は、何色だ?」
「は?何、言ってんだテメェ!?」
「…もう一度、聞く。お前の血の色は、何色だ?」
「ふざけんじゃねぇ!赤に決まってんだろ――――――がぁ!!」
グシャッ! 小神が答えたその瞬間…サクシャアは、小神の拳を握り潰した。
「ぎゃあぁぁぁぁぁ、手が…手がぁぁぁぁぁぁ。」
「んっ…おかしいな。お前の血の色、赤ではないな……?」
握り潰された右の拳から流れる小神の血は、なぜか黒色だった。
「な、なんだこれは、なんで血が黒いんだぁ――――――っ!?」
「お前の心の色といっしょだな。」
「な、なめやがってぇ……。」
「それよりも右手ばかり気にしていて…いいのか?」
「左腕もなくなっているぞ…?」
「な、なんだと!?」
小神が、左腕に目を向けると肩から先がなくなって、黒い血が噴き出ていた。
「ぎゃあぁぁぁぁぁ、どうなって…どうなっていやがるぅ。」
「左腕だけじゃない、両足…胴体もなくなっているな……お前、首だけだぞ?」
いつの間にか、小神の身体はなくなり、首だけが残っていた。
「なんだこれは、なんでこの状態で私は、生きてる!?」
「そんな状態でも生きているとは……まさに化け物だな…お前。」
「やめろ…私は、化け物じゃない…違うんだ…そんな目で私を見るな!!」
「やめろ…やめてくれ…たのむからやめてくれぇ――――――っ!!」
・
・
・
・
・
「…ハアハア…ハッ!!」
「ある!手も足も胴体も…なんだったんだ今のは…!?」
「どうだ…地獄を見た感想は……?」
「て、テメェがやったのか……?」
「言ったはずだ……柊かがみ達が味わった地獄を見てもらうと!!」
「お…お前は、いったい何者なんだ…?」
「ふっ…どうせ、貴様とはすぐに会う事になるんだがな……。」
「何をゴチャゴチャ言ってやがる…答えろ!お前は、なんだ!?」
「いいだろう…教えてやろう。」
「人間(ひと)は、私をこう呼ぶ……」
『冥界の王 ハーデス!!!』
・
・
・
つづく
427 :
師匠:2009/10/20(火) 15:30:25 ID:+txyxyYR
以上が、第六話です。
第七話(最終話)は明日、投下できると思います。…では。
>>417 自分の顕示欲のためなら他スレが荒れようが追放されようが不快な思いをする人間はお構いなしなんですね。
さすが他人の金をむしり取って食い物にする寄生虫ですね。
そこの他にも毒まんじゅうみたいなSS投稿してるでしょ全く人でなしですね。
悪行があなたに還って身内に異常者がでたり、あなた自身が難病で苦しみの限りを尽くしながら生きながらえることを祈ってます。
この世のすべての災いがあなたに降りかかりますように。
さて、気を取り直して行こうぜ
こういうのには反応しないほうがよいと承知の上ですが……。
何処のどなたか知りませんが、かのスレでの愚挙に関しては悉く僕に非があり、
需要があるとの声に投下した次第です。
最中に既に投稿すべきでない流れを感じていましたが、さりとて未完で放置すれば
それはそれで後味の悪さを残すと思い完結させたまでです。
この点に関しての謗りは甘んじて受けますが、しかしこのスレに来てまで容喙するのは
全くの見当違いです。
このスレにいる方々は善良であり、個人的な事柄で彼らを巻き込み不快感を催す発言をする事を、
僕は決して赦さないでしょう。
今後かのスレへの投下は一切行わないことをここで宣言しておきますが、
それでも僕に意見があるなら一応HPも持っていますからそちらでどうぞ。
>>428 むしろ何の生産性もないお前の存在が疑問
432 :
師匠:2009/10/21(水) 17:51:10 ID:svzxZIJ9
皆さん、こんばんは。
どちら様か解りませんが、まとめの方に移して頂き有難うございます。
wikiの使い方が、いまいち良く解らないものでして…。(;^_^A アセアセ・・・
では、第七話(最終話)を投下させていただきます。
『幸せのゴールAS』−第七話−(最終話)
・
・
・
「冥界の王?…ハーデスだと?」
「そうだ。」
「ぶっ、お前アニメとか漫画の見過ぎだよ絶対。」
「信じる信じないは、お前の勝手だ…どうせ、あの世ですぐに会う事になる。」
「バッカらしい…冥界だのあの世だの…そんなもんねぇよ。」
「死んでみれば解る……。」
「お前が死ねぇ――――――!このアニオタヤロー!!」
渾身のパンチを放つ小神。
「救いようのない、愚か者め!!」
「あの世で、柊かがみ達に詫びろ!!!」
『Eternal Pain(終りなき苦痛)!!!』
小神の身体が、闇に包まれる…
「な、なんだこれは!?」
無数の亡者が、小神を闇に引きずり込もうとする。
「地獄の亡者共が、貴様のあの世への水先案内人だ。」
「や、やめろ!離せ、離しやがれ!!」
地獄の亡者は、振り払っても振り払っても小神にまとわりついて来る。
「無駄だ…亡者共は、貴様の魂を引きずり込もうとしているのだからな。」
「ひぃぃぃぃぃ…助けてぇ…助けてくれぇ――――――!?」
「怖いか…苦しいか?」
「柊かがみ達が、貴様に受けた苦しみは、こんな物じゃなかったぞ!!」
「謝る!柊達に謝るから許してくれぇ――――――!?」
「謝る…?」
ハーデスの瞳が、さらに惨忍さを増す。
「じゃあ、お前……死なないとなぁ?」
「ひっ…!!」
右の拳を振りかぶるハーデス。
「まずは、『峰岸あやの』と『日下部みさお』の苦しみ……。」
ズドンッ!!
小神の顔面にハーデスの拳がメリ込む。
「ぐへっ……。」
「これは、『高良みゆき』!!」
ズドンッ!!
「や…やめ……て……。」
「『小早川ゆたか』…『柊つかさ』の分!!」
ズドンッ!ズドンッ!!次から次に連続で拳を叩き込むハーデス。
すでに、小神の顔は原形をとどめていない。
「た…たすけ……て……。」
「これは、『泉こなた』の苦しみぃ――――――っ!!」
ズド――ンッ!!
気絶したのか…悲鳴すら上げない小神。
「そしてこれが、『柊かがみ』の……」
「『柊かがみ』の心の痛みだぁ――――――っ!!」
ズド――――――ンッ!!
人知を超えた威力に小神の顔が消し飛んだ。
次の瞬間、小神を包んでいた闇が消え
魂の抜けた死体と言う名の抜け殻だけが残った…。
・
・
・
「ふっ…私とした事が、少し感情的になってしまったな。」
「ハーデス様!!」
不意に名を呼ばれるハーデス。
「タナトスか……。」
死を司る神、『タナトス』だ。
「こんな所におられたのですね…探しましたよ。」
「ふっ…ちと野暮用でな…。」
「また、愛と人間の研究ですか?」
「ああ、そうだ。」
「私には、人間など愚かな存在を研究されるハーデス様のお気持ちが解りかねます。」
「タナトス…お前は、愛とは何だと思う?」
「愛でございますか?」
「そうだ、愛だ。」
「それは…弱い人間が、何かにすがりたい一心で創り出した妄想かと……。」
「ふふっ…当らずとも遠からず…と、言ったところか……。」
「では…正解は、なんなのです?」
「実は、私も本当のところ…よく解らん……。」
「だが…人間は、その愛によって限りなく優しく…限りなく強くなる事がある。」
「愛は、時に神にも匹敵する…奇跡を起こす。」
「そう…人間は、愚かな存在であると同時に素晴しい存在でもあるのだ!!」
「ん〜…やはりこのタナトスには、難しくて理解しかねますな……。」
「ふっ…私もまだまだ、研究が足らんようだ……。」
「…してタナトス。」
「はっ!」
「これは、冥界の王として命ずる!!」
「ここに倒れている人間…小神あきら、白石みのる以外の魂を『エリシオン』にお招きしろ。」
(エリシオン=神々に愛された人々が死後に住む楽園。)
「私の客人だ…くれぐれも丁重にな……。」
「ははっ。」
そして…ハーデス、タナトスの二神は、光に包まれ消えた……。
・
・
・
場面は、冥界に移る……。
「うぅ…ここは…そうだ!私、死んだんだ。」
「っていう事は、ここがあの世ってヤツ?」
「そうよ…。」
「やっぱり、来ちゃったのね……こなた。」
不意に声を掛けられる こなた…
振り返らずとも声でわかる…あの女性(ひと)だ……。
「かがみん……。」
「こなた……。」
嬉しさのあまり、かがみの胸に飛び込む こなた。
「ははっ…会いたかった…かがみ。」
「私も こなたがいなくて寂しかった…。」
「これからは、ずっと一緒だよ……かがみん。」
「うん…。」
「そうだ、つかさやみゆきさん…みんなは?」
「もう、先に行ってるよ……。」
「え…先に行ってるって…どこに?」
「ん〜…なんかわからないけど…エリシオンってとこらしいわ。」
そう言って、エリシオン行きと書かれた二枚の切符をこなたに見せる。
切符には、それぞれ『柊かがみ』、『泉こなた』と書かれていた。
「エリシオン?」
「なんか、あの世でもすっごく特別な所みたいなんだけど……。」
「エリシオン…エリシオン……ああっ!思い出した。」
こなたは、何かの漫画かゲームで出て来た『エリシオン』の事を思い出した。
「かがみ、エリシオンって極楽浄土の事だよ。」
「ええっ…そうなの?」
「でも私…小神の事、殺しちゃったのに……。」
「解らないわ。でも…これは、冥界の王ハーデスの勅命だそうよ。」
「えっ…ハーデス?」
こなたは、『ハーデス』と言う単語に敏感に反応した。
「ちょ…アンタなんでワクワクしてんのよ?」
「だって、ハーデスだよ?ラスボスだよラスボス!!」
「はぁ〜…また、ゲームか何かか?」
「どんな、コスプレしてんだろぉ?やっぱ、サ〇プリスかな?」
「いや、コスプレとかじゃないだろ。…サ〇プリスってなんだよ?」
こなたは、かがみのツッコミも耳に届かないくらい興奮している。
「行こうよ、かがみん。」
「エリシオンへ…みんなの所へ…。」
こなたは、走り出した。
「ちょっと!待ちなさいよ こなた。」
「またっく…どうしてアンタは、そんなに能天気なのよ?」
かがみもこなたの後を追って、走り出した。
「えへへっ…気にしない、気にしない。」
こなたは、はにかんだ最高の笑顔をかがみに見せる。
かがみは、そんな こなたの笑顔を見て思った。
「(でも…私は、そんな こなたが好き…。)」
「(世界で一番、だぁ――――――――――――い好き。)」
「こなた、愛してるよ……私達、幸せになろうね。」
・
・
・
冥界に二人の少女の笑い声が、響き渡った…
こなたとかがみは、『幸せのゴール』を見つけた…
しかし…それは、終わりと言うゴールではない………
なぜなら…幸せのゴールは、『幸せのスタート』でもあるのだから……。
・
・
・
...Fin
438 :
師匠:2009/10/21(水) 17:55:47 ID:svzxZIJ9
以上が、第七話(最終話)です。
『幸せのゴールAS』…どうだったでしょうか?
まあ、台詞とかほとんど好きな漫画やアニメのパクリですが…。(汗)
また、何か思いついたら投稿させて頂きます。
最後に…
私の拙い書き物を見て頂いて、本当にありがとうございました。
なんか色々話ぶっ飛びすぎwww
440 :
師匠:2009/10/22(木) 21:17:07 ID:F9EbW6s2
>>439 うまく、まとめたつもりだったんですが…
もっと色々読んで勉強します。(´・ω・`)ショボーン
そういうと神奈川版シリーズも相当ぶっ飛んでいたよな・・・
マシンガンが出たり、シャブが出たり、ヤクザが出たり・・・
カギカッコの終わりに「。」が付くのがなんかイヤだ
443 :
師匠:2009/10/23(金) 16:02:55 ID:cRqYBYNl
>>442 確かに他の方の作品には、付いている方もいますが
付いていない方のほうが多いようですね。
指摘されて、ようやく気が付きました。
今度から付けないようにします。ありがとうございます。
浮気したお詫びというワケではありませんが、来月上旬に一品納めます。
今度のはそんなに長くありません。
445 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/23(金) 22:56:16 ID:yo6cWCq/
>443
顔文字と自分を出すのは下手糞な証拠。
もっとSSのなんたるかから学んでくれ。
あんな作品(とすら呼べない)物を見るとヘドが出る。
447 :
師匠:2009/10/23(金) 23:28:53 ID:cRqYBYNl
>>445 貴重なご意見ありがとうございます。
真摯に受け止め、これからに活かして行きたいと思います。
しかし、流石にこうもボロクソに言われるとヘコミますね…
ま、これも皆さんの優しさです…本当に嫌だったら無視ですもんね?
前向きに前向きに…それが私の哲学。
>>444 やっぱあれはジェディ氏のSSだったか
相当叩かれてたけど俺は面白かったよ
こっちと向こうじゃ需要が違うからなあ
>>449 既にバレてましたが実はそうでした。
一応、後顧を考えて匿名にしていたのですが……。
空気を汚すのは好きではないというかすべきでないので、今後かのスレに
僕が何かを書き込むということはないでしょう。
「寂寥の渦」の時は何も言われなかったのですけれどね……。
つーか、あっちのスレ、だいぶ前から雰囲気おかしくないか?
なんかもう変な人しか残ってない感じ。
このスレの住人の言うことじゃないかもしれんが。
452 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/25(日) 18:04:27 ID:Y2DmTIeo
神奈川版シリーズのこなたをいじめる、ほとんどの動機ってみんな
金目当てなんだよな。小早川ゆき、ゆい姉さん、伸恵、凛
キョンにしろ金目当てで動く行動が多かった。
私のお父さんなんてゆきが言う復讐というのは嘘で本当の目的は
金目的じゃないのか?と思うほどだったよ。
伸恵は「つかさを助ける」という大義名分を上げているけど、やっている
ことは全部強盗とか金目当ての行動だしね。
凛も復讐しに来たと言っているけど、本当は示談金が目的だったし
>443
おまえ中学生か高校生だろ
>>443 てか、本来は鉤括弧最終の句点はどっちでもいいんじゃなかったか?
455 :
師匠:2009/10/25(日) 22:53:57 ID:GICYnbrY
>>453 違います。
>>454 どちらでもいいようですね。
この頃は、閉じカッコ直前の句点は省略することが一般的のようです。
文章作法のサイトを見たのですが、私の書いた物は、かなり不作法でしたね。
お恥ずかしい、反省しています。
456 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/26(月) 10:33:14 ID:ORmGUlJM
よくよく考えてみたら、こうとやまとはなかなか出てこないよな。
良い作品も中にはあるが、基本的にここの連中は人間の屑だな。
こなたを自分の名前に置き換えて書け。
神奈川版「私のお父さん」読んでみたけど、ゆきの両親を自殺に追い込んだ
そうじろうへの復讐は別にいらないんじゃね?
ひであきの高級車買ったり、高級酒を飲むという贅沢ぶりや遺産相続でのそうじろうとの揉め事とか。
動機が小早川家の目的は遺産目当てだって言うことがはっきり分かっているし・・・
おまいらはどう思うよ?