そうそう、と返す。
「…それも、エイプリルフールだから?」
まだ不安でこなたを下から見上げて問う。こなたは困った顔をして一つ息を吐いた。
「違うよ、かがみ。ああもう、私のせいだなー…。もう少し真面目に口説いてればよかった。
――好き。かがみが大好き。この気持だけは、嘘吐けないよ」
ぶわっと涙が滲んでこなたの姿が不明瞭になるのと、こなたの慌てた声が
気づかない方がおかしいって」
「………」
伝わってきて。握ったままだった手を緩めてこなたの背に回して思い切り引き寄せた。
「わ…」
面と向かっては恥ずかしいし、私の性格じゃ一度しか言えないから。
嘘。内心は嵐みたいに荒れ狂っているくせに。痛みと想いを隠して私も嘘を吐く。
だって、今日はエイプリルフール。これぐらいの嘘は許されるはずでしょ?
「で、あんたはいつまで乗ってんの。終わったんならさっさと退きなさいよ」
ん、ちょい待って。と起き上がろうとした私をこなたが制止する。
正直言って早く退いて欲しかった。ただでさえいつもよりも近い距離だというのに
さらにこんな体制。こんな恋人同士、みたいな。
こなたはこなたで私の上から退く気配を見せず、ここまでやってもだめかぁ…
とかなんとかぶつぶつ呟いている。
「こなた!」
とうとう焦れて少し大きな声で呼ぶと、こなたは私の声が聞こえてないかのように、
そして何かを決心したみたいにうんうんと頷いた。
「あのね、かがみ。私はね、ずっと前から知ってたんだよ」
「前にさ、料理の火加減の話はしたよね?コンロによっても火力が違うって。」
「あー、中華料理店のとかはすごく強くて、家庭の中でも新旧で強さが違うんだっけ?」
「そうそう。それはオーブンも一緒なのだよ。」
「はぁ?だって温度設定とかできるんだから、同じじゃないの?」
「違う違う、使ってるオーブンが元々どれぐらいの火力を持ってるかってこと。
全部一緒じゃないからネ。ここのは結構新しいやつだから、多少火力が強いはずだよ。
このケーキのレシピはどこ?」
「それなら書斎にあるけど私が取ってくるわ、あんたは知らないだr…」
私が言い終わる前に、こなたは私の部屋になるはずだった、書斎と称される部屋に行き、
一枚の紙を持って戻ってきた。隠してあったレシピをすんなり持ってこれたことに対して、
いささか疑問を感じたが、これはこの際気にしないでおこう。
「ほら、ここの部分。」
「…ほんとだ。全然気付かなかったわ。」
確かにそこに書いてある通り、オーブンによって誤差やクセがあると書いてある。
特に電気オーブンとガスオーブンによる違いは他のより大きいらしく、
レシピは電気オーブンを使用していたが、ここのはガスオーブンだ。
(つまり、いくら時間をぴったりやっても焦げたのは、これが原因だったってわけね…)