「じゃ、異議もなくなった所で、帰りましょうか」
「え、ああ、うん。帰ろっか」
もちろん、異議が無い訳じゃなくて――むしろ全身全霊をかけて唱えたい――けれど、
足元がどうしても濡れてしまうような欠陥品。
……まあ、だからってないよりはずっとマシなんだけれど。
とりあえず私は、濡れるのが大がつくほど嫌いなのだ。
そういえば、私は傘を持ってきてるからまだ濡れずに済むけど、こなたはどうなんだろう。
忘れているかもしれないし、忘れていないかもしれない。
授業はもう六限目で、これさえ終われば放課後だ。
裏を返せば、この授業が終わったら帰らなくてはいけない、という意味で。
部活になんて入っていないから、雨が止むまで時間を潰すなんてことも出来ない。
本当に忘れていたらどうするのだろうか
「つかさに聞いたー」
「あ、そっか。つかさと私は今日持ってきてないんだっけ」
今日は鞄が重かったし、持って行かなくてもいいか、なんて言ってたんだ。
「みゆきは? みゆきは持ってきてそうだけど」
「それがさ、なんか、借りるのが心苦しくて……」
申し訳なさそうな顔をしながら頬を掻く。それを見て私は、
「私に入れてもらうのも心苦しいと思えよ」
つい、突っ込んでしまった。
言っている事は何となく分かるのだが――条件反射って恐ろしい。
「だってかがみは私の嫁じゃん? 頼み事なんて当たり前でしょー?」
わざとらしく語尾を延ばし、その一言を強調する。
しかし、その、わざとらしく強調されたその一言は、問題発言以外の何物でもなくて。
「誰があんたの嫁か!」
「やっぱり?」
「あんたの事だから忘れてるかな、と思ってね」
と、言ってやるとさっきの顔とは一変、ふうん、とにやける。
みき「こなたちゃんのお母さんよ、大きくなったこなたちゃんを見た時かなちゃんの生き写しかと驚いたわ」
私はまた違う意味で絶句した。
もし母とかなたさんが結ばれていたら私とこなたは巡り会えなかったということだ。
私は手放しにこなたと出会えたことを喜んで良いのだろうか…。
みき「私はね、かがみ達を応援することにしたわ」
母の突然の台詞に言葉もでない…。
みき「あなたはお互いが大切だと想い合える人と幸せを掴みなさい。
私達が掴めなかった幸せをあなた達が掴む事が私達の願いであり、あなた達の願いである事と信じる事にしたから
他の誰が反対しても私だけはあなた達の味方でいるわ」
いつの間にかまた私の目から涙が溢れていた…私はこの言葉を待っていたんだと思う。
みき「もう、泣かないの。
そしてかがみ、娘の幸せは親である私の幸せでもあるんだからしっかり掴みなさいよ?」
お母さん
私、あなたの子供で本当によかった…ありがとう