午後になって漸く一段落がついたし、なによりこなたの集中力が切れてしまったから
私でも何とかこなたと張り合えるゲームを少しだけして。
それから。――それから。…そうだ。もうちょっとで終わる恋愛系のゲームがあるからと、
そして私はそういったジャンルのゲームに興味がないからと、こなたのベッドで
前に来た時に気になっていた本を読んでいて――。
起き抜けのせいか、それとも半分寝ぼけているせいか、あるいはその両方共か。
いつもより働かない脳みそを懸命に使って出した答えはひどく単純なものだった。
ここ一週間ほどで急激に高くなり始めた気温は、河川敷や公園に等間隔に植えられた桜の蕾をやはり
急速にほころばせていて。それは今日も例外ではなかった。一ヶ月前コート無しでは
外など出られなかったのが嘘のように、一気に季節は春へ変わろうとしている。
遮るものなど何もない青空に浮かぶ太陽は、こなたの部屋の窓と純白のレースを透過して
程よいぬくもりを与えてくれている。お昼ご飯を食べた後ということも
思わず下を向いてしまった。
さらりとこなたが言った言葉がじわじわとわたしに染み込んでいく。
(や、やだ…なんなのコレ?)
自分の中から抑えきれない感情が溢れてくるのを自覚してわたしは怖くなった。
決して不快な感情ではない。
ただその勢いによって『わたし』というダムが決壊してしまいそうで怖かった。
「わ、わたしもゆきちゃんが大好き!!」
まるで何かに宣言するかのようにつかさがいきなり声をあげた。
「ありがとうございます。
先程泉さんがおっしゃったように、私も泉さんと同じ気持ちですよ」
ちらりと視線を上げるとニコニコといつも通りの笑みでみゆきが頷くのが見えた。
ふにゃ、という音が聞こえるようにつかさが茹でダコのように真っ赤になって崩れ落ちる。
それを見てこなたはつかさとみゆきから手を離し、少しだけ羨ましそうな顔をするとわたしの右耳に囁いた。
「かがみは言ってくるないの?」
こ、こいつはわたしに何を言わせるつもりなんだ?!
ココで、つかさもみゆきもいる場所でナニを言えというんだ!
向かい合った膝と膝との間がコブシ一つ分もない距離でこなたはわたしの顔を正面から見つめる。
さっきまでは錆び付いているかのように軋んでいた心臓がまるで油をさしたかのように軽やかに鼓動を早めていく。
ちょっとそのスピードは早過ぎるくらいだ。
こなたのエメラルドに映った像でわたしは自分の顔が真っ赤になっていることを知った。
こなたは一瞬だけ目を閉じて軽く深呼吸した後、目を開けて優しく微笑んだ。
「かがみ大好きだよ」
思わず下を向いてしまった。
さらりとこなたが言った言葉がじわじわとわたしに染み込んでいく。