キャラ板が荒れるから隔離してみた
SSまとめ
「あぁ!遅刻、遅刻!」
朝から慌ただしい声が聞こえる。
声の主は紅月カレン――5年前、当時最強と呼ばれていたKMF「ランスロット・アルビオン」を撃墜したパイロットだ。
今はOLとして働きながら母親と二人で静かに暮らしている。
カレンはスーツへ着替えを済ますと鞄を持って部屋から出ようとしたが、あるものが目に付き立ち止まった。
それは壁に貼ってあるルルーシュの写真。
カレンがその写真に向かって問う。
「あなたがいなくなってから、もう5年もたつのね――ねぇ、ルルーシュ?あなたが望んだ世界って本当にこれなの?」
もちろん答えは返ってこない。
「あっ、早くしないと電車間に合わない!」
カレンはハッとして急いで部屋を出て階段を下りる。
そしてリビングへと向かうと母親がニュースを見ていた。
リフレインの後遺症も今は大分なくなってきている。
「お母さん、おはよう!」
「おはよう、カレン。」
カレンが挨拶をすると母も返してきた。
カレンは急ぎながらもテレビの方へ顔を向けると、そこには悲惨な映像が流れていた。
そして現場にいるリポーターの女性、カレンの旧友でもあるミレイ・アッシュフォードが悲壮な顔で中継していた。
なんでカレンだけガムバレスルーされてんの?
設定変更
OL→ナース
あと、379の前に物語らしく簡単な前置きを書いてみた
とある草原にて遙か上空で鳥が空を飛んでいる、その行く先を馬車の荷台から眺めている女性が一人…
妖麗な美貌と緑色の長髪を持つ彼女は――そう、C.C.であった。
"彼が遺した世界"を見届けるためにC.C.は世界中旅しているのだ。
C.C.の口から独り言が漏れる。
「お前が守った明日は一体何だったん……ッ!?」
C.C.は言い終えることができなかった。
何故なら急に"彼"の気配を感じたのだ。
「あいつ…もしかして…いや、だが…」
そう言って何かを探すわけでもなくC.C.は上空を見上げた。
先ほど飛んでいた鳥は既に見あたらなかった。
――旧皇歴2023年、新世界歴4年
ゼロの手にかけられた悪逆皇帝ルルーシュの死から5年…
超合衆国とブリタニアの和平路線とゼロの暗躍により一時期は平和な世界が維持されていたが、それは恒久的なものではなく、世界は再び混迷の闇に包まれかけていた。
そんな中、一つの大きなうねりが起きようとしていたのは、この時点では誰も知らなかった。
「こちら現場のミレイ・アッシュフォードです。先ほどこちら旧シンジュクにおいて何者かによる爆弾テロが発生しました。現在のところ死者は50人、負傷者は100人を越え……ウッ!」
中継中に突如口元を押さえかがみ込むミレイ、たぶん死臭が漂ってきたのだろうとカレンは思った。
「シンジュクなんて30分も離れてないのに…」
そう呟くと、急にこうしている場合じゃないことに気づいたカレンは朝食のハンバーグを頬張り
「いっふぇくふね(行ってくるね)」
と母親に声をかけて慌てて家を出発した。
走って駅へと向かうカレン、さすがは元黒の騎士団エースとあって、常人では考え得ない足の速さと体力を持っていた。
「電車が来るまで、あと3分…これなら…」
走りながらカレンは独り言を言い、そして駅に通じる道の角を曲がった時!
カレンは何者かとぶつかってしまった。
「きゃぁぁぁぁっ!!!」
カレンは叫びながら後ろへ吹き飛ぶ。
「いたたたた、すいません!急いでて…」
そう言いながらカレンは立ち上がろうとすると、ぶつかった相手から聞き覚えのある声が聞こえてきた
「久しぶりだな、カレン。」
カレンがハッと声の主の方を向くと、そこにはC.C.が立っていた。
「あ、あんた!何でこんな所にいるのよ?」
カレンが立ち上がりながらC.C.に問うと、
「そんなことはどうでもいい。ちょっと話があるからこい。」
と返ってくる。
「いっ…私はこれから仕事なのよ?そんな時間ないわよ」
「そんなもの休めばいい。」
「そんなものって…休める訳ないじゃない!?あんたみたいに私は暇人じゃないの!また今度ねっ」
そうカレンは言って走りだそうとしたがC.C.の一言に立ち止まる。
「お前、ルルーシュの事が知りたくないのか?」
「え…」
カレンは困惑する。
(ルルーシュの事って…彼は既にスザク…いえゼロに殺されて…今更なにを…)
「いいから来い。」
そう言ってC.C.はカレンの手を引く、カレンは何の抵抗もしなかった。
そして二人は近くの喫茶店へと向かった。
「すみません……はい、必ず午後の方からは入りますので……はい……それでは、失礼します。」
カレンが携帯電話を閉じる。
おそらく勤めている病院にかけたのだろう。
C.C.は注文したオレンジジュースを飲みながらカレンのその光景を見ていた。
「それで、ルルーシュの事って何?」
カレンは携帯電話を鞄にしまうとC.C.の方を向き尋ねた。
C.C.は静かに、そしてとんでもないことを口走った。
「あいつが生きている。」
その言葉を聞き、カレンは目を見開かせ激しく動揺する。
「そ…んな…」
(ルルーシュが生きて……!?でもそんなのって…)
しばらくの沈黙の後、カレンが語気を荒げて言う。
「そんなわけないでしょ!?彼は確かにスザクに殺されたのよ?そんなあなたの妄想き……!?」
あまりに大きな声を上げてしまったのだろう、店内の他の客が自分たちの方を見ているのに気づいたカレンは慌てて口を閉じた。
「確定情報だ。私にはわかる――しかもあいつは、このトウキョウのどこかにいる…」
信じられないと言った表情で見つめるカレンにC.C.は続ける。
「何故あいつが生きているかはわからない、しかも気配を出したり隠したりしている…」
カレンはただ、呆然としていた。
その後、C.C.と別れ職場の病院へと向かったカレンだが先ほどのC.C.から聞いた話がずっと頭の中を過ぎり、仕事に集中できるはずがなかった。
「紅月君…紅月君!!」
考えに更けていたカレンはその声に慌てて返事をする。
「はっ…はい!」
声をかけたのは病院の院長だ。
「まったく…いったい今日はどうしたのかね?」
「な、何もありません。」
「ふむ…ではこの容器にクリームを335室の玉城さんの火傷箇所に塗ってきてくれ。」
「わかりました。」
そう言ってカレンは白いクリームが入っている容器を受け取り部屋を出た。
335室へと歩を進めながらも頭の中では、ルルーシュの事をカレンは考えていた。
(ルルーシュが生きている…しかも私のすぐ近くに………)
そう考えていたときであった、カレンは階段から足を滑らせ踊り場へ転げ落ちてしまった。
「キャァァァァ!!」
カレンは悲鳴をあげる、さらに持っていた容器が割れ、中に入っているクリームがカレンのナース服全体にかかってしまった。
(もう…イヤ…)
カレンは泣きそうになっていた。
ちなみに今でた玉城は"あの"玉城です
この日、カレンは同じような失態が何度も続いたがようやく仕事が終わり帰宅することができた。
「ただいま〜」
帰宅したカレンはそう言って玄関に入ると、ある異変に気づいた。
(靴が一足、多い…)
玄関にいつもはない男物の靴があったのだ。
リビングの方から母親の声が聞こえる。
「おかえり、カレン。お友達がきてカレンの部屋で待っているわよ。」
「え…」
(男の友達って…ジノ… …スザク…それとも…)
その時、カレンの携帯が鳴った。
着信相手は『No Name』――カレンはもしかしてと思い、急いで電話にでた。
「もしもし、紅月カ……」
その声を遮り、昔聞き慣れた声が携帯電話から聞こえた。
「Q1、聞こえるか?」
ReStage1
Aパート終了
「嘘で……しょ…?」
だが、その声は間違いないカレンが5年前に聞いたルルーシュのものでしょ。
「カレン、大事な話があるんだ。」
電話の向こうからルルーシュと思わしき声が再び発せられる。
「ルルーシュ、いったいどこにいるの!?」
そう言ってからカレンはハッとし自分の部屋へ急ぐ。
そして部屋のドアをあけると、カレンのベッドに携帯をかけながら座っているルルーシュがいた。
「久しぶりだな、カレン。」
ルルーシュが声をかける。
カレンは直立不動で瞬きもせずルルーシュを見つめる。
「ん?カレンどうしたんだ?」
ただまじまじとルルーシュを見つめるカレンを不思議に思ったのか、ルルーシュが再びカレンに声をかけた。
「ル…ルーシュ?本当に……ルルーシュなの?」
ようやくカレンが声を発した。
「あぁ、俺こそ5年前ゼロに殺された悪逆皇帝、ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアだ。」
「ルルーシュ……グスッ」
カレンは持っていた鞄を落とし、そのまま泣き崩れた。
それを見たルルーシュは、やはり持ち前の不器用さは直っておらず。
「なっ…その……あの時は…何も言わずに死んで…申し訳なかった…というか…」
と動揺しながら言った。
カレンは、尚も泣きじゃくり、
「グスッ……ルルーシュに……また…会えるなんて……グスッ……私…」
と嗚咽を漏らしながら言う。
それを聞いたルルーシュは立ち上がるとカレンに近寄り、ポケットからハンカチを差し出しながら
「カレン、本当にすまなかった。」
と、耳元でそっと囁いた。
「そう…それであなたは生き返ったのね。」
ようやく泣き止んだカレンは、ルルーシュから何故死んだはずのルルーシュが生きていたのか、その理由を聞いていた。
「あぁ、どうやら俺はブリタニア皇帝、シャルルのコードを引き継いでしまったみたいだ。」
BR後、C.C.からギアスやコードについての話を聞いていたカレンはその話を何とか理解することができた。
「それで、何で今さら私のところに来たの?」
「……」
ルルーシュは迷っていた。
(ここで、"あの事"を話せばカレンを再び巻き込むことになる…だが…それだと何のために…)
急に黙りこくりうつむいたルルーシュを見つめながらカレンが独り言のように言う。
「そういえば昔、C.C.が言ってた。」
「?」
「あいつは大事な人を遠ざけるって…」
「……」
「それで、またあなたは一人で全部背負うの?」
「……」
ねぇ、ルルーシュ そうカレンが話しかけるとやっとルルーシュは顔を上げた。
チュッ…
「……!!!!」
顔を上げたルルーシュにカレンはキスをしてきた。
ゆっくりと時が流れる…
しばらくの接吻の後、ようやく唇が離れそしてカレンがルルーシュを真っ直ぐと見つめ言った。
「ルルーシュ、私は……あなたの騎士よ。」
「ありがとう、カレン…」
ルルーシュはそう言うと、静かに語り出した。
「俺が死んでから超合衆国とブリタニアが和解したことによって、戦争はなくなり世界は平和になった。だが、それから1年ぐらいたって急に世界中の治安が悪化し始めた。」
「そうよね…」
カレンは相づちを入れる。
現に今日の朝だってシンジュクでテロが起きたのだ。
ルルーシュは続けた。
「それからテロ活動が活発になって、アフリカじゃ内紛も勃発してる。EUも二つに割れてしまった…」
「それで…それがどうしたの?」
「どうして、こうなったのか俺は調べた…そしたら…」
ここでルルーシュは一息置き、そしてまた話し出した。
カレンは真剣な表情でそれを聞いた。
「誰かが意図的に裏で糸を引いてる…」
「え…」
「治安が急に悪くなるときには共通点がある。それは…ブリタニアが何か新しい政略を始めた時に決まって悪くなる…」
「それって…」
カレンが何を言うのか察したルルーシュはそこで遮り、
「いや、ナナリーとスザクにはシュナイゼルがいるから、悪政をすることはないし――現に俺もその立場なら必ずやっている…」
と言った。
カレンが尋ねる。
「でも…どうして?」
「ただ世界を壊したいのか……それとも乗っ取ろうと企んでいる奴がいると思う…」
「そう…じゃあ私に会いに来た理由って…」
「あぁ…君が思っているとおりだ。頼むカレン…もう一度戦ってくれないか?」
ここでルルーシュは生涯二度目となる…頭を下げた。
それを見たカレンがやれやれといった顔でルルーシュに言う。
「バカね、ルルーシュ…さっきも言ったでしょ?私はあなたの騎士だって」
「それじゃあ…」
「ええ…でも、その前に一つ聞かせて?」
「何だ?」
「どうしてC.C.じゃなくて私なの?C.C.はあなたの"共犯者"なんでしょ?」
支援
支援
ルルーシュは先ほどよりもやや小声になり言った。
「それは…俺がC.C.との契約が果たせないからだ…」
「契約…?」
カレンが首をひねる。
と、そこへ今までなかった声が投げ込まれた。
「それは困るな、せっかく生きていたのに」
「!!」
「!!」
カレンとルルーシュは驚いて声のした方を向いた。
そこにはカレンのベッドに座りチーズ君を抱いたC.C.の姿があった。
「あんた、いつから…!?」
「C.C.、どうしてここに!?」
二人が同時に声を発す。
C.C.はまず、カレンの方を見て答えた。
「お前らがキスしているときからな…」
「なっ…」
カレンが赤面する。
C.C.は今度はルルーシュに向けて続ける。
「ルルーシュ、お前コードの力で気配を隠そうとしただろ?甘いな、私とお前…どれだけ"経験"の差があると思っているんだ。」
ルルーシュは今まで完璧に気配を消していたつもりだった。
だが、それが何年も維持できるほどの力をまだルルーシュは持っていなかった。
ちっ、といった表情でルルーシュは顔をしかめながら言った。
「さすが魔女だな…それで、どうしてほしい?お前の望みを叶えるのか…」
この時点でカレンは全く話についていけなくなっており、ただルルーシュを見つめていた。
「いや、違うな。」
C.C.は首を横に振った。
「では、何だ?」
ルルーシュが不思議そうに尋ねる。
「気が変わった。お前の遺した世界を見届けたくなった。そして、これからお前がやろうとしていることが、お前の生きる目的なのだろう?」
「そうだ。」
「だったら協力してやる。私たちは"共犯者"だからな?」
「今更何を――」
フッ…っといった表情になるルルーシュ。と、ここでようやくカレンが話に割って入った。
「ところでルルーシュ。」
「ん?」
「あなたのことはナナリーやスザクには話さないでいいの?」
「あぁ」
ルルーシュはそう答えると続ける。
「今、俺が生きていることを明かせば、あいつらは動揺する。そうすれば相手に付け入る隙を与えてしまう。」
それに とルルーシュは一息おいてやや皮肉な笑みで言う。
「俺が死なないとわかれば、スザクはクロヴィスがC.C.にやったように俺をカプセルに閉じこめるかもしれないしな。」
「なるほどな。」
C.C.が同意する。カレンも何とか理解するが心の中でこう思った。
(ルルーシュとスザク…仲が良いわけじゃないんだ…)
「それでだ、問題の敵についてだが、俺の予想が正しければ次はこの、旧トウキョウ租界内で何か起こす。」
「!!」
カレンは絶句した。
――同じ頃、ルルーシュたちが知る由もないとある場所で――
「もうすぐ、だな…」
「はい、後少しで計画が発動します。」
二人の男が暗い部屋で話していた。
「時代が私を求める日も近い、このアネイリン・ゴドディンを。」
「その通りです。世界は新しい統治者を望んでいます。」
何かが起ころうとしていた。
翌日――
カレンはいつも通り職場へ、ルルーシュは仕込みがあるとだけカレン伝えて去っていった。
C.C.は勝手に消えてしまった。
カレンが病院に着くと、正面入り口の前に止まっている一台の車からカレンがよく見知った人物らしき人が降りてきた。
(もしかして…)
カレンが声をかける。
「扇さーん!」
呼ばれたとおり、車から降りてきたのは現在の日本国首相にして元黒の騎士団No.2の男、扇要であった。
扇はその声に気づき、カレンに歩み寄りながら言った。
「カレン!久しぶりじゃないか。」
「扇さんこそ。病院に来るなんて、どこか悪いところでもあるんですか?」
「いや、昨日のシンジュクの件で負傷者のお見舞いに来たんだよ。」
「そうなんですか〜、でも珍しいですね。普通そういうのって、もっと大勢で来るものじゃないんですか?」
「ハハッ、そうするとマスコミが集まって色々面倒くさいことになるんだよ。」
「そうなんですか〜。」
そうして二人が談笑しているのを陰で見張っている人影があった。
その人物は持っていた無線に話す。
「ターゲットを補足。これより第二フェイズへ移行。」
まとめ2『彼方への手紙。』
「は、ッ…はっ……はぁッ――!」
夜の繁華街を猛スピードで掛けていく……人の網を潜り抜け駆け抜けていく者の影に気付くのは、
誰もが頬を凪いだ風が通り過ぎてからのことだった。風で盛大に捲りあがる短いスカートの下の残像だけを残し
疾走する影がひとつ――呼吸を乱して駆けて行く後姿に緋色の尾のような髪が流れる。
誰もが振り返るような美貌と肉体を持ちながら、その艶やかさではなく切羽詰った速さで今は人の注目を集めていた。
向かうのは、真っ直ぐに向かうのは、病床中にある母と暮らす小さな狭い部屋、二人きりだけど、家族の待つ家。
タクシーやバイク、その他交通機関を使えば待ち時間に無駄が出来ると決して近くない自宅への道程をスニーカーに
履き替えるとダッシュするそのスピードは、常人では到底追いかけることも出来ない速さだった。
あのナイトメア、ナイトメアアルビオンを沈めた聖天紅蓮八極式の元パイロットは、あのKMFから降りて数年経った
今でも、その身体的な能力は衰えることがなかった。早く、早く、早く帰って知らせてやりたい――……。
急く思いに掛けられて夜の中を駆けて行く――。
紅月カレン、ゼロレクイレムの頃から時は過ぎ××年、現在はシンジュクにある中央メディカルセンターの小児科棟を
任された新人研修医だ。やる気と努力、類まれなる集中力に加え根気もあり、少し粗暴な態度も子供達に受けて、
今やこの病棟では人気の名物研修医となっている。医師や看護師達も熱意あるカレンの仕事ぶりには一目置いている。
一人ひとりの命を、心を救うんだという強い信念を持って接する彼女の情熱は、堅く心閉ざしてしまう子供達も受け入れ
認める程に。――偽り無く、助けたい、救いたい、という願いは無垢な子供達に伝わっていたのだろう。
カレンの周りにはいつも子供達が群がっていた。今日も回診に病棟へ訪れると早速、元気な病人の少年に尻を撫ぜられ
隙を見せたところで前から滑り込み胸を鷲掴む子も現れ、悲鳴が――上がるのが普通の女性研修医の反応だったが、
カレンは違った。注射器を並べたバットを真っ直ぐ前に胸を弄る少年の頭に振り下ろし、滑らせるように足を絡めて尻に
手を出した少年には足技で応戦。涼しい顔でギブアップー!の悲鳴を聞くと、カレンは皺になった研修期間中の
丈の短い白衣を揺らしてふふんと笑うと、少年達に背を向け悔しがるやんちゃ坊主の声を聞きながら可笑しそうに肩を竦めた。
「紅月研修医、産婦人科から連絡よ。応援に入って欲しいんですって。産婦人科病棟のQ -10号よ」
小児科のメディカルカウンターに処置を終えたものを片付けていると、先輩に当たる女医と看護師にそう促された。
このセンター内なら人手が十分足りている筈なのに、何故だろう。疑問に首を傾げつつカレンは指定された病棟へと向かった。
全室個室の衛生管理がなされた婦人科病棟の病室、「Q -10号」の並びに何故か懐かしさと切なさを感じながら
扉をノックしIDカードを通して室内に一歩踏み込んだカレンは、ベッドに横たわる人物と、彼女の傍らに佇む者の姿に
思わず声を――上げてしまった。驚きと懐かしさに声が震える。
「ミレイ会長!……リヴァル!」
「よっ!カレンも元気そうで何より!……しかし様になってんなー、医者っぽく見えるぜーっ?」
「もう会長じゃないんだけどねー。報道レポーターミレイさんと言って欲しいなぁ。それも今は産休に入ってるんだけど」
「ぽく見えるんじゃなくて、医者なのよ。研修医だけど…。そ、それよりミレイかい…ミレイさん、産休ってもしかして…」
期待と緊張に高鳴るカレンへ、ミレイは笑顔で手招きする。ベッドの中、ミレイの腕の中で眠る小さな命に。
薄い産毛の髪を生やしてまだ石榴のような真っ赤な顔で健やかに眠るその赤ん坊は――
「ミレイさん……おめでとうございます……」
新しい生命が繋がり合った仲間から生まれていく。その感動にカレンも声を震わせ悦びに目元を滲ませ頭を下げた。
「ちょーっと、めでたいって言うなら俺にも言ってくんないとさー。父親は俺なんだから!」
「え?リヴァルが父親ぁーっ!ほ、ホントなんですか?!ミレイさん!」
「何だよーそこそんなに驚くトコロー?…俺すげー切ない立場にいるんですけど…」
ベッドの隅で蹲るリヴァルを適当に宥めた後、カレンは二人の子だという赤ん坊を抱かせてもらった。
無性に泣きたくなった。抱き締めると小さな手がカレンの頬を撫ぜる。小さな小さな手が縋る先を求めて彷徨う。
いつか育ち来る未来が、この手が掴む未来が明るく平和なものであって欲しい、心底からそう願う。
それを誰よりも望んでいた大事な――友とも悪友とも上官とも――例えようのない相手であったけれど
自分にとってはかけがえのない存在が、この生と、この子の平和な未来をきっと願っているだろうから。
涙を隠すようにしてミレイに子を返し、白衣で涙を拭い、改めて笑顔で生徒会での大事なメンバーだった二人に
おめでとう、と伝えた。リヴァルとミレイはそれぞれ視線を合わせ、嬉しそうにありがとう、と返してくれた。
「それでね……この子の名前なんだけど――『ルルーシュ』にしようかと思ってるの」
ミレイが赤ん坊の頬を撫でながらそう呟く。リヴァルも隣で頷いていた。
「る、るるーしゅって……でも、その名前はっ!」
「悪逆皇帝の名としてヒトの記憶にも新しい、多分これからの歴史上にも残るでしょうね。世界制覇を果たし、
正義の味方に破れた魔王の名前として――けどね、その名前は、私達知らないのよ」
ね?とミレイがリヴァルに視線を向け、リヴァルはああ、と相変わらずの笑顔で頷く。
「俺達が知ってる『ルルーシュ』って言うのはさ、同じ生徒会メンバーで滅茶苦茶やって、妹には甘くって
何処か狡賢くて、大事な俺達の仲間だったんだよ。偶然皇帝と名前が被っちまった奴でさ、ホント大事なトコで
運がねぇっつーかねぇ……けど男の子だって知った時、俺もミレイかいちょ…いや、ミレイも既に決めてたんだ。
大切な仲間の名前を貰おうって。いつの間にか居なくなっちまったあいつの分まで、『ルルーシュ』を幸せにしてやるんだ」
(――ねぇルルーシュ、貴方には聞こえている?貴方は何もかも背負って逝ってしまったけれど)
(貴方を思う者は今だってちゃんと、貴方のことを、忘れてはいなかったわ)
(記憶の中でずっとずっと、貴方は生きていくのよ。私達の中で。永遠に――その名前と、存在は刻まれていくの)
「ミレイさん、リヴァル。……『ルルーシュ』が幸せになりますように、心からお祝いします」
そう微笑むカレンの頬には一つの雫が零れていた。
はぁッはぁっ……!やっと着いた……!」
駆け込んだ玄関の扉の下で脱力するカレン。全力疾走は久しぶりで、体力も低下しているのかもしれない。
ぜぇぜぇと荒れた息をして、荷物を玄関先に置きっ放しにすると、先ずは笑顔で母親にただいまの挨拶をして
――急いた様子に少し母も不思議そうにしていたけれど――自室へ戻る。
振り向けば目線の高さに合わせた、懐かしい写真の中で紫の目をした少年がいた。
穏やかな表情でもう何年も変わらない、年を重ねたカレンとは違い、そこから僅かな時が進むことなく何時見ても
変わらない表情でカレンを見守って来てくれた。――ルルーシュ・ランペルージ。
忘れようにも忘れられない、忘れてはならない、きっと生涯一番深く誰かを想い、傷つき、人の想いの深さを知る
こととなったカレンにとって大切な大切な相手。
指を伸ばし、微笑む写真のルルーシュに微笑みかける。平面の頬を撫でて、笑うつもりが泣き笑いになる。
これは喜びの涙だ。悲しみの涙なんかじゃない。
「ルルーシュ、見てる……?貴方は完全に悪役になりきったつもりなんでしょうけど、甘いのよ、アンタ。
誰からも憎悪の対象になるなんて、出来るわけないじゃない。馬鹿ね。完璧に仮面を被って演じきっても
――その仮面に騙された者もいれば、最期まで貴方を『ルルーシュ』として見てた人達がいたのよ。
ねぇ、リヴァルとミレイ会長の子、貴方の名前なんですって。何も抱えずにただ二人で大事に大事に育てていくそうよ。
ルルーシュ、ルルーシュ、貴方は愛されてるのよ。――今も、昔も、これからもずっと……
……良かった――っ、良かった……ルルーシュっ……良かったね、良かった――っ!!」
写真の前で泣き崩れるカレンを、ルルーシュは静かに、穏やかに見つめていた。何も言えない静止画が一瞬、
「ありがとう」と唇を動かしたように見えたのは、顔を上げたカレンの幻視だろう。けれどカレンは黙って立ち上がり、
濡れた顔を手で乱暴に擦って肌を真っ赤にしながら、「うん!」と強く頷いた。
(両手を引かれる子供。父に愛され、母に愛され、そしていつかまた生まれるかもしれない弟か妹か――)
(それらに愛を返しながらきっとその子は幸福になるだろう。誰よりも優しい少年の名を継いだのだから)
「ルルーシュ!」
ゴリラスレ立てすぎ 邪魔
カレンたんに嫉妬するデブスわろたwww
スレ乱立すんなよ…
ストーカーゴリラに嫉妬とかねぇよww