【らき☆すた】こなた×かがみPart26【こなかが】
声を出さなかったのは、我ながら上出来だと思った。パソコンの電源が消された今、耳を澄ますと
呼吸音まで聞こえる、そんな距離にこなたが居るのだ。
くふ、とこなたが喉で笑う声が聞こえた。
「あー、かがみん寝ちゃったんだ。あったかくなったもんねぇ。
……放っておいた私のせいでもあるか」
それにしても寝顔可愛いよね、なんて言いながらこなたはベッドに腰かけ、私の前髪を
梳いて来る。さらさら髪が指をすり抜け、下に流れて。
瞼がぴくぴく動きそうになるのを必死で押しとどめる。自ら触れることが出来ないなら
せめて、これぐらいなら。
「全然起きる気配ないね。………そうだ」
いかにもいいこと思いつきました、みたいな声音で呟いたかと思うと私の上でこなたが
動く気配がした。シーツだろうか、何かの衣擦れの音とスプリングの音。それが
私の左右から聞こえて――ということは考えられる体勢は――。こなたが私に覆いかぶさっている?
目を瞑っているから本当の事はわからないけれど、その認識は私を混乱に陥れるには、十分すぎる
声を出さなかったのは、我ながら上出来だと思った。パソコンの電源が消された今、耳を澄ますと
呼吸音まで聞こえる、そんな距離にこなたが居るのだ。
くふ、とこなたが喉で笑う声が聞こえた。
「あー、かがみん寝ちゃったんだ。あったかくなったもんねぇ。
……放っておいた私のせいでもあるか」
それにしても寝顔可愛いよね、なんて言いながらこなたはベッドに腰かけ、私の前髪を
梳いて来る。さらさら髪が指をすり抜け、下に流れて。
瞼がぴくぴく動きそうになるのを必死で押しとどめる。自ら触れることが出来ないなら
せめて、これぐらいなら。
「全然起きる気配ないね。………そうだ」
いかにもいいこと思いつきました、みたいな声音で呟いたかと思うと私の上でこなたが
動く気配がした。シーツだろうか、何かの衣擦れの音とスプリングの音。それが
私の左右から聞こえて――ということは考えられる体勢は――。こなたが私に覆いかぶさっている?
目を瞑っているから本当の事はわからないけれど、その認識は私を混乱に陥れるには、十分すぎる
>>53 感染したよ。くくく・・・w
しまった。こういう奴だった。自業自得とはいえ、何であの時さっさと
起きておかなかったのかと後悔する。こうなってしまったら後はからかわれるだけなのに。
だから、先手を打つことにした。こなたに主導権をとられてしまったら、
平静でいられる自信なんてこれっぽっちもありはしないしないのだから。
「…なんで、あんなこと言ったの」
「ありゃ、意外に冷静だね。あせりまくるかがみが見たかったのに」
やっぱりそんなことか、と半ば呆れの意味をこめてため息を吐いた。この手の悪戯は
良くある事で、そのたびに心臓が高鳴って、一人でどきどきして。
裏切られた気分になる。本人にはそのつもりがないんだから、こなたには
非がないのだけれどどうしてもそう思わずにはいられなかった。
「あとは、あれだね。かがみ今日何月何日か解る?」
「そんなの4月1日に決まっ…――エイプリルフール…」
「そ。…でもあんまり引っかかってくれなかったけどね」
ほら、やっぱり。こなたは私のことを『仲のいい友達』ぐらいにしか思っていなくて、
だから平気でこんなことも出来る。今一度、私のこの想いは異端だということ、届かない想い
なんだということを突きつけられているようで心が痛む。
期待感もちろんあったけれど、こんな風にしてキスを、それも人生初経験のキスを
してもいいのかという罪悪感もあった。それでも、期待感の方が勝ってしまったのは
恋ゆえ仕方のないことなのだろうか。
どくどく勢いよく全身に血液を送り出している心臓に念じる。出来ることならなるべく
ゆっくり鼓動を刻んで欲しいと。
こなたにこの音が聞こえてしまうから。気づかれたくないから。
起きていると気づかれてしまったら、夢みたいなこのひと時が終わってしまうかもしれないから。
こなたの吐いた息が唇の辺りにかかる。それが、私とこなたとの距離の近さを感じさせて
またどきどきしてしまう。こなたは体が小さいから、私との間もそれほどあいていないはず。
暢気に考えていると、やけに私に近いところできし、とベッドのスプリングの軋む音がした。
「――――っ!!」
声を出さなかったのは、我ながら上出来だと思った。パソコンの電源が消された今、耳を澄ますと
呼吸音まで聞こえる、そんな距離にこなたが居るのだ。
くふ、とこなたが喉で笑う声が聞こえた。
「あー、かがみん寝ちゃったんだ。あったかくなったもんねぇ。
……放っておいた私のせいでもあるか」
それにしても寝顔可愛いよね、なんて言いながらこなたはベッドに腰かけ、私の前髪を
梳いて来る。さらさら髪が指をすり抜け、下に流れて。
瞼がぴくぴく動きそうになるのを必死で押しとどめる。自ら触れることが出来ないなら
せめて、これぐらいなら。
「全然起きる気配ないね。………そうだ」
いかにもいいこと思いつきました、みたいな声音で呟いたかと思うと私の上でこなたが
動く気配がした。シーツだろうか、何かの衣擦れの音とスプリングの音。それが
だって、今日はエイプリルフール。これぐらいの嘘は許されるはずでしょ?
「で、あんたはいつまで乗ってんの。終わったんならさっさと退きなさいよ」
ん、ちょい待って。と起き上がろうとした私をこなたが制止する。
正直言って早く退いて欲しかった。ただでさえいつもよりも近い距離だというのに
さらにこんな体制。こんな恋人同士、みたいな。
こなたはこなたで私の上から退く気配を見せず、ここまでやってもだめかぁ…
とかなんとかぶつぶつ呟いている。
「こなた!」
とうとう焦れて少し大きな声で呼ぶと、こなたは私の声が聞こえてないかのように、
そして何かを決心したみたいにうんうんと頷いた。
「あのね、かがみ。私はね、ずっと前から知ってたんだよ」
「……何を?」
「私もずうっとかがみだけを見てたから」
私の疑問を呆気なく無視してこなたの独白は続く。私も、この話は聞いておかなければ
いけないような気がしてこなたの言葉に集中することにした。
「でもね、私どうしてもかがみから言わせたくて。告白するよりされたい
乙女ゴコロってやつかな。で、色々してみたわけですよ。前よりも
抱きつく回数増やしてみたり……エイプリルフールにかこつけてキスを誘ってみたりね。
…まぁ、でもその激ニブな誰かさんは全然私の想いなんか気づいてくれないわけ」
「というわけで、私としては先にかがみんが我慢出来なくなるかな、と思ってたんだけど
だって、今日はエイプリルフール。これぐらいの嘘は許されるはずでしょ?
「で、あんたはいつまで乗ってんの。終わったんならさっさと退きなさいよ」
ん、ちょい待って。と起き上がろうとした私をこなたが制止する。
正直言って早く退いて欲しかった。ただでさえいつもよりも近い距離だというのに
さらにこんな体制。こんな恋人同士、みたいな。
こなたはこなたで私の上から退く気配を見せず、ここまでやってもだめかぁ…
とかなんとかぶつぶつ呟いている。
「こなた!」
とうとう焦れて少し大きな声で呼ぶと、こなたは私の声が聞こえてないかのように、
そして何かを決心したみたいにうんうんと頷いた。
「あのね、かがみ。私はね、ずっと前から知ってたんだよ」
「……何を?」
「私もずうっとかがみだけを見てたから」
私の疑問を呆気なく無視してこなたの独白は続く。私も、この話は聞いておかなければ
いけないような気がしてこなたの言葉に集中することにした。
「でもね、私どうしてもかがみから言わせたくて。告白するよりされたい
乙女ゴコロってやつかな。で、色々してみたわけですよ。前よりも
抱きつく回数増やしてみたり……エイプリルフールにかこつけてキスを誘ってみたりね。
…まぁ、でもその激ニブな誰かさんは全然私の想いなんか気づいてくれないわけ」
「というわけで、私としては先にかがみんが我慢出来なくなるかな、と思ってたんだけど
だって、今日はエイプリルフール。これぐらいの嘘は許されるはずでしょ?
「で、あんたはいつまで乗ってんの。終わったんならさっさと退きなさいよ」
ん、ちょい待って。と起き上がろうとした私をこなたが制止する。
正直言って早く退いて欲しかった。ただでさえいつもよりも近い距離だというのに
さらにこんな体制。こんな恋人同士、みたいな。
こなたはこなたで私の上から退く気配を見せず、ここまでやってもだめかぁ…
とかなんとかぶつぶつ呟いている。
「こなた!」
とうとう焦れて少し大きな声で呼ぶと、こなたは私の声が聞こえてないかのように、
そして何かを決心したみたいにうんうんと頷いた。
「あのね、かがみ。私はね、ずっと前から知ってたんだよ」
「……何を?」
「私もずうっとかがみだけを見てたから」
私の疑問を呆気なく無視してこなたの独白は続く。私も、この話は聞いておかなければ
いけないような気がしてこなたの言葉に集中することにした。
「でもね、私どうしてもかがみから言わせたくて。告白するよりされたい
乙女ゴコロってやつかな。で、色々してみたわけですよ。前よりも
抱きつく回数増やしてみたり……エイプリルフールにかこつけてキスを誘ってみたりね。
…まぁ、でもその激ニブな誰かさんは全然私の想いなんか気づいてくれないわけ」
「というわけで、私としては先にかがみんが我慢出来なくなるかな、と思ってたんだけど
日差しは西の空へと傾き始めていて窓から入る光も弱くなっている。こなたから
与えられる体温が心地よくて、そしてそれをまだ感じていたくて
離れようとしていたこなたの服の裾を思わず掴んでしまった。
「…あ、違っ!これは、その、そんなんじゃなくて…!」
慌てて離したけれど、無かったことにはならない。こなたがまた、喉の奥で
小さく笑った。
「やっぱりかがみんは寂しがり屋で甘えん坊のウサギさんだネ。
大丈夫だよ。まだ離れないから。ねぇ、ところでさっきの嘘じゃなくしてもいい?」
さっきのって一体何、と問いかけようとしたところで一つだけ思い当たった。
私も嘘を吐いたけれど、こなたも一つだけ吐いていた。つまり、遠まわしに
本当にキスしてもいいかと聞いているのだ。私が我慢できなくなると
思われていた事は心外だったけれど、この際水に流してやろう。
「…解りきったこと聞かないでよ。その代わり、は、初めてなんだから
優しくしなさいよね…!」
「さすがかがみん、こんな時でもツンデレとは…。…仰せのとおりに、お姫様」
最初のやり取りを律儀に覚えていて、畏まった口調のこなたにくすりと笑みを零す。
ん、ちょい待って。と起き上がろうとした私をこなたが制止する。
正直言って早く退いて欲しかった。ただでさえいつもよりも近い距離だというのに
さらにこんな体制。こんな恋人同士、みたいな。
こなたはこなたで私の上から退く気配を見せず、ここまでやってもだめかぁ…
とかなんとかぶつぶつ呟いている。
「こなた!」
とうとう焦れて少し大きな声で呼ぶと、こなたは私の声が聞こえてないかのように、
そして何かを決心したみたいにうんうんと頷いた。
「あのね、かがみ。私はね、ずっと前から知ってたんだよ」
「……何を?」
「私もずうっとかがみだけを見てたから」
私の疑問を呆気なく無視してこなたの独白は続く。私も、この話は聞いておかなければ
いけないような気がしてこなたの言葉に集中することにした。
「でもね、私どうしてもかがみから言わせたくて。告白するよりされたい
乙女ゴコロってやつかな。で、色々してみたわけですよ。前よりも
抱きつく回数増やしてみたり……エイプリルフールにかこつけてキスを誘ってみたりね。
…まぁ、でもその激ニブな誰かさんは全然私の想いなんか気づいてくれないわけ」
「あは、やっぱりかがみん起きてた」
「………いつから」
「んー、髪撫でた辺りから?かがみすごい勢いで真っ赤になっていくんだもん。
気づかない方がおかしいって」
「………」
しまった。こういう奴だった。自業自得とはいえ、何であの時さっさと
起きておかなかったのかと後悔する。こうなってしまったら後はからかわれるだけなのに。
だから、先手を打つことにした。こなたに主導権をとられてしまったら、
平静でいられる自信なんてこれっぽっちもありはしないしないのだから。
「…なんで、あんなこと言ったの」
「ありゃ、意外に冷静だね。あせりまくるかがみが見たかったのに」
やっぱりそんなことか、と半ば呆れの意味をこめてため息を吐いた。この手の悪戯は
良くある事で、そのたびに心臓が高鳴って、一人でどきどきして。
裏切られた気分になる。本人にはそのつもりがないんだから、こなたには
午後になって漸く一段落がついたし、なによりこなたの集中力が切れてしまったから
私でも何とかこなたと張り合えるゲームを少しだけして。
それから。――それから。…そうだ。もうちょっとで終わる恋愛系のゲームがあるからと、
そして私はそういったジャンルのゲームに興味がないからと、こなたのベッドで
前に来た時に気になっていた本を読んでいて――。
起き抜けのせいか、それとも半分寝ぼけているせいか、あるいはその両方共か。
いつもより働かない脳みそを懸命に使って出した答えはひどく単純なものだった。
ここ一週間ほどで急激に高くなり始めた気温は、河川敷や公園に等間隔に植えられた桜の蕾をやはり
急速にほころばせていて。それは今日も例外ではなかった。一ヶ月前コート無しでは
外など出られなかったのが嘘のように、一気に季節は春へ変わろうとしている。
遮るものなど何もない青空に浮かぶ太陽は、こなたの部屋の窓と純白のレースを透過して
程よいぬくもりを与えてくれている。お昼ご飯を食べた後ということも
原因の一つだったのだろう。
やるやつじゃなかったから。となると一体何十分、いやもしかしたら何時間ぐらい
寝ていたんだろうか。思考の切れ端にそんな疑問があったけど、無視してまた目を閉じることにした。
覚醒と無意識のまどろみの時間というのもこれはこれで心地よい時間だったし、こんな機会でもなければ
こなたのベッドに寝るなんてそうそう出来る事ではないから。
そこまで考えて、どっと自己嫌悪の念が押し寄せた。これではまるで、まるで変態か何かみたいじゃないか。
好きという気持ちはもっと純粋で、綺麗なもののはずなのに。
女の人は身体的な触れ合いよりも気持の繋がりを大事にするというけど、場合によりけりだな
と思う。恋しいとこなたを想う気持ちは、私とこなたが同じ性別である以上
隠し通していかなければならないものだと思うし、それは自分のためというよりも
こなたのためだった。ずっと私だけを見て欲しいだなんて
こんな身勝手で凶悪な気持ち、こなたにぶつけてしまったら。
だけど、自制することでますます想いが強くなっていくのもまた、事実だった。
どうすればいいんだろう、それが私のこのところの目下の悩みだった。
午後になって漸く一段落がついたし、なによりこなたの集中力が切れてしまったから
私でも何とかこなたと張り合えるゲームを少しだけして。
それから。――それから。…そうだ。もうちょっとで終わる恋愛系のゲームがあるからと、
そして私はそういったジャンルのゲームに興味がないからと、こなたのベッドで
前に来た時に気になっていた本を読んでいて――。
起き抜けのせいか、それとも半分寝ぼけているせいか、あるいはその両方共か。
いつもより働かない脳みそを懸命に使って出した答えはひどく単純なものだった。
ここ一週間ほどで急激に高くなり始めた気温は、河川敷や公園に等間隔に植えられた桜の蕾をやはり
急速にほころばせていて。それは今日も例外ではなかった。一ヶ月前コート無しでは
外など出られなかったのが嘘のように、一気に季節は春へ変わろうとしている。
遮るものなど何もない青空に浮かぶ太陽は、こなたの部屋の窓と純白のレースを透過して
程よいぬくもりを与えてくれている。お昼ご飯を食べた後ということも
原因の一つだったのだろう。
やるやつじゃなかったから。となると一体何十分、いやもしかしたら何時間ぐらい
寝ていたんだろうか。思考の切れ端にそんな疑問があったけど、無視してまた目を閉じることにした。
覚醒と無意識のまどろみの時間というのもこれはこれで心地よい時間だったし、こんな機会でもなければ
こなたのベッドに寝るなんてそうそう出来る事ではないから。
そこまで考えて、どっと自己嫌悪の念が押し寄せた。これではまるで、まるで変態か何かみたいじゃないか。
好きという気持ちはもっと純粋で、綺麗なもののはずなのに。
女の人は身体的な触れ合いよりも気持の繋がりを大事にするというけど、場合によりけりだな
と思う。恋しいとこなたを想う気持ちは、私とこなたが同じ性別である以上
隠し通していかなければならないものだと思うし、それは自分のためというよりも
こなたのためだった。ずっと私だけを見て欲しいだなんて
こんな身勝手で凶悪な気持ち、こなたにぶつけてしまったら。
だけど、自制することでますます想いが強くなっていくのもまた、事実だった。
どうすればいいんだろう、それが私のこのところの目下の悩みだった。
声を出さなかったのは、我ながら上出来だと思った。パソコンの電源が消された今、耳を澄ますと
呼吸音まで聞こえる、そんな距離にこなたが居るのだ。
くふ、とこなたが喉で笑う声が聞こえた。
「あー、かがみん寝ちゃったんだ。あったかくなったもんねぇ。
……放っておいた私のせいでもあるか」
それにしても寝顔可愛いよね、なんて言いながらこなたはベッドに腰かけ、私の前髪を
梳いて来る。さらさら髪が指をすり抜け、下に流れて。
瞼がぴくぴく動きそうになるのを必死で押しとどめる。自ら触れることが出来ないなら
せめて、これぐらいなら。
「全然起きる気配ないね。………そうだ」
いかにもいいこと思いつきました、みたいな声音で呟いたかと思うと私の上でこなたが
動く気配がした。シーツだろうか、何かの衣擦れの音とスプリングの音。それが
私の左右から聞こえて――ということは考えられる体勢は――。こなたが私に覆いかぶさっている?
声を出さなかったのは、我ながら上出来だと思った。パソコンの電源が消された今、耳を澄ますと
呼吸音まで聞こえる、そんな距離にこなたが居るのだ。
くふ、とこなたが喉で笑う声が聞こえた。
「あー、かがみん寝ちゃったんだ。あったかくなったもんねぇ。
……放っておいた私のせいでもあるか」
それにしても寝顔可愛いよね、なんて言いながらこなたはベッドに腰かけ、私の前髪を
梳いて来る。さらさら髪が指をすり抜け、下に流れて。
瞼がぴくぴく動きそうになるのを必死で押しとどめる。自ら触れることが出来ないなら
せめて、これぐらいなら。
「全然起きる気配ないね。………そうだ」
いかにもいいこと思いつきました、みたいな声音で呟いたかと思うと私の上でこなたが
動く気配がした。シーツだろうか、何かの衣擦れの音とスプリングの音。それが
私の左右から聞こえて――ということは考えられる体勢は――。こなたが私に覆いかぶさっている?
声を出さなかったのは、我ながら上出来だと思った。パソコンの電源が消された今、耳を澄ますと
呼吸音まで聞こえる、そんな距離にこなたが居るのだ。
くふ、とこなたが喉で笑う声が聞こえた。
「あー、かがみん寝ちゃったんだ。あったかくなったもんねぇ。
……放っておいた私のせいでもあるか」
それにしても寝顔可愛いよね、なんて言いながらこなたはベッドに腰かけ、私の前髪を
梳いて来る。さらさら髪が指をすり抜け、下に流れて。
瞼がぴくぴく動きそうになるのを必死で押しとどめる。自ら触れることが出来ないなら
せめて、これぐらいなら。
「全然起きる気配ないね。………そうだ」
いかにもいいこと思いつきました、みたいな声音で呟いたかと思うと私の上でこなたが
動く気配がした。シーツだろうか、何かの衣擦れの音とスプリングの音。それが
私の左右から聞こえて――ということは考えられる体勢は――。こなたが私に覆いかぶさっている?
だって、今日はエイプリルフール。これぐらいの嘘は許されるはずでしょ?
「で、あんたはいつまで乗ってんの。終わったんならさっさと退きなさいよ」
ん、ちょい待って。と起き上がろうとした私をこなたが制止する。
正直言って早く退いて欲しかった。ただでさえいつもよりも近い距離だというのに
さらにこんな体制。こんな恋人同士、みたいな。
こなたはこなたで私の上から退く気配を見せず、ここまでやってもだめかぁ…
とかなんとかぶつぶつ呟いている。
「こなた!」
とうとう焦れて少し大きな声で呼ぶと、こなたは私の声が聞こえてないかのように、
そして何かを決心したみたいにうんうんと頷いた。
「あのね、かがみ。私はね、ずっと前から知ってたんだよ」
「……何を?」
「私もずうっとかがみだけを見てたから」
私の疑問を呆気なく無視してこなたの独白は続く。私も、この話は聞いておかなければ
いけないような気がしてこなたの言葉に集中することにした。
「でもね、私どうしてもかがみから言わせたくて。告白するよりされたい
乙女ゴコロってやつかな。で、色々してみたわけですよ。前よりも
抱きつく回数増やしてみたり……エイプリルフールにかこつけてキスを誘ってみたりね。
…まぁ、でもその激ニブな誰かさんは全然私の想いなんか気づいてくれないわけ」
「というわけで、私としては先にかがみんが我慢出来なくなるかな、と思ってたんだけど」
「………いつから」
「んー、髪撫でた辺りから?かがみすごい勢いで真っ赤になっていくんだもん。
気づかない方がおかしいって」
「………」
しまった。こういう奴だった。自業自得とはいえ、何であの時さっさと
起きておかなかったのかと後悔する。こうなってしまったら後はからかわれるだけなのに。
だから、先手を打つことにした。こなたに主導権をとられてしまったら、
平静でいられる自信なんてこれっぽっちもありはしないしないのだから。
「…なんで、あんなこと言ったの」
「ありゃ、意外に冷静だね。あせりまくるかがみが見たかったのに」
やっぱりそんなことか、と半ば呆れの意味をこめてため息を吐いた。この手の悪戯は
良くある事で、そのたびに心臓が高鳴って、一人でどきどきして。
裏切られた気分になる。本人にはそのつもりがないんだから、こなたには
非がないのだけれどどうしてもそう思わずにはいられなかった。
「あとは、あれだね。かがみ今日何月何日か解る?」
「そんなの4月1日に決まっ…――エイプリルフール…」
「そ。…でもあんまり引っかかってくれなかったけどね」
ほら、やっぱり。こなたは私のことを『仲のいい友達』ぐらいにしか思っていなくて、
嘘。内心は嵐みたいに荒れ狂っているくせに。痛みと想いを隠して私も嘘を吐く。
だって、今日はエイプリルフール。これぐらいの嘘は許されるはずでしょ?
「で、あんたはいつまで乗ってんの。終わったんならさっさと退きなさいよ」
ん、ちょい待って。と起き上がろうとした私をこなたが制止する。
正直言って早く退いて欲しかった。ただでさえいつもよりも近い距離だというのに
さらにこんな体制。こんな恋人同士、みたいな。
こなたはこなたで私の上から退く気配を見せず、ここまでやってもだめかぁ…
とかなんとかぶつぶつ呟いている。
「こなた!」
とうとう焦れて少し大きな声で呼ぶと、こなたは私の声が聞こえてないかのように、
そして何かを決心したみたいにうんうんと頷いた。
「あのね、かがみ。私はね、ずっと前から知ってたんだよ」
「……何を?」
「私もずうっとかがみだけを見てたから」
私の疑問を呆気なく無視してこなたの独白は続く。私も、この話は聞いておかなければ
いけないような気がしてこなたの言葉に集中することにした。
「でもね、私どうしてもかがみから言わせたくて。告白するよりされたい
乙女ゴコロってやつかな。で、色々してみたわけですよ。前よりも
抱きつく回数増やしてみたり……エイプリルフールにかこつけてキスを誘ってみたりね。
…まぁ、でもその激ニブな誰かさんは全然私の想いなんか気づいてくれないわけ」
「というわけで、私としては先にかがみんが我慢出来なくなるかな、と思ってたんだけど」
嘘。内心は嵐みたいに荒れ狂っているくせに。痛みと想いを隠して私も嘘を吐く。
だって、今日はエイプリルフール。これぐらいの嘘は許されるはずでしょ?
「で、あんたはいつまで乗ってんの。終わったんならさっさと退きなさいよ」
ん、ちょい待って。と起き上がろうとした私をこなたが制止する。
正直言って早く退いて欲しかった。ただでさえいつもよりも近い距離だというのに
さらにこんな体制。こんな恋人同士、みたいな。
こなたはこなたで私の上から退く気配を見せず、ここまでやってもだめかぁ…
とかなんとかぶつぶつ呟いている。
「こなた!」
とうとう焦れて少し大きな声で呼ぶと、こなたは私の声が聞こえてないかのように、
そして何かを決心したみたいにうんうんと頷いた。
「あのね、かがみ。私はね、ずっと前から知ってたんだよ」
「……何を?」
「私もずうっとかがみだけを見てたから」
私の疑問を呆気なく無視してこなたの独白は続く。私も、この話は聞いておかなければ
いけないような気がしてこなたの言葉に集中することにした。
「でもね、私どうしてもかがみから言わせたくて。告白するよりされたい
乙女ゴコロってやつかな。で、色々してみたわけですよ。前よりも
抱きつく回数増やしてみたり……エイプリルフールにかこつけてキスを誘ってみたりね。
…まぁ、でもその激ニブな誰かさんは全然私の想いなんか気づいてくれないわけ」
「というわけで、私としては先にかがみんが我慢出来なくなるかな、と思ってたんだけど」
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l: /://: : : : :/::/':::::/ ´`ヽ _ 三,:三ー二
l://://: : : イ ノヽ--/ ̄ , ` ̄ ̄ ̄
l/: :l l: : : イ:ll ミ } ...| /!
l: : :l: l: :/.:l.:l 」_}`ー‐し'ゝL _
. l: : : W/: : N _,:ヘr--‐‐'´} ;ー------
. l: : : : :ハ: : : ト、 .、,,ノ`ヾ:::-‐'ーr‐'"==-
l: : : : : :、: : : 「フ`‐- ,、-┬:T´: :l l/
. l: : : : :,レ、: : :ヾ、 /、`Y/:l:l: : l
/: : :rニミミヽ: : ヾ、-─┤ `┤: : l
/: : / ̄\ヾヽ: : :ヾ、 l ll: : l
/: : / ヽヾヽ: : lヽ l /l: : l
こなかが(笑)
食堂は廊下の一番端の階段を降りた先で、お昼時には何人もの生徒でいっぱいになってしまう。私たちも
たまに使うけれど、普段お弁当を持ってきているせいかその頻度は普通の生徒よりはちょっと少ないくらい。
だけど、そのたまに食べる学食は値段の割に量も多くて味も結構美味しくて、生徒だけじゃなくて
先生たちも頻繁に利用しているみたいだ。だから、私たちが隅の方にいたとしても気づかれないはず――。
そんなことを考えながら歩いていると、廊下の先、10メートルぐらいの所に蒼い髪がちらりと
踊るのが見えた。
「こ、こなちゃん!?」
「ひゃぁっ!?つかささん!?」
慌ててゆきちゃんのセーラー服の裾を引っ張って抱きしめるみたいにして縮こまって
一緒に目の前にある柱に身を隠した。顔は見えなかったけれど
この学校にあんなに綺麗な蒼くて長い髪の持ち主はこなちゃんしかいない。
トイレはちょうど今進んでいる方の正反対にあるから、もし見つかっちゃったらなんて言い訳したらいいんだろう?
焦りでうまく働かない頭を懸命に働かせながら出来る限り体を小さく折りたためる。
けれど、いつまでたってもこなちゃん、そして一緒にいるはずのお姉ちゃんは廊下を進んでこなかった。
「あれ…?」
不思議に思って少しだけ顔を出してみると、廊下にはこなちゃんどころか誰一人歩いていなかった。
「つ、つかささん…、あの…苦しい…です…」
ぽんぽん腕を叩かれて下を見るとお腹のあたりに抱きしめたままのゆきちゃんがいた。
「わぁっ!!ご、ごめんねゆきちゃん!!」
絡めていた腕を離すと酸欠のせいかゆきちゃんの顔は真っ赤になっていた。しかもなんだか息まで荒い。
「本当にごめんね!!」
「それはいいんですが…むしろ…。ぁ、いえ、なんでもありません!
…それより、泉さんたちは屋上に行ったのではないでしょうか?
食堂は廊下の一番端の階段を降りた先で、お昼時には何人もの生徒でいっぱいになってしまう。私たちも
たまに使うけれど、普段お弁当を持ってきているせいかその頻度は普通の生徒よりはちょっと少ないくらい。
だけど、そのたまに食べる学食は値段の割に量も多くて味も結構美味しくて、生徒だけじゃなくて
先生たちも頻繁に利用しているみたいだ。だから、私たちが隅の方にいたとしても気づかれないはず――。
そんなことを考えながら歩いていると、廊下の先、10メートルぐらいの所に蒼い髪がちらりと
踊るのが見えた。
「こ、こなちゃん!?」
「ひゃぁっ!?つかささん!?」
慌ててゆきちゃんのセーラー服の裾を引っ張って抱きしめるみたいにして縮こまって
一緒に目の前にある柱に身を隠した。顔は見えなかったけれど
この学校にあんなに綺麗な蒼くて長い髪の持ち主はこなちゃんしかいない。
トイレはちょうど今進んでいる方の正反対にあるから、もし見つかっちゃったらなんて言い訳したらいいんだろう?
焦りでうまく働かない頭を懸命に働かせながら出来る限り体を小さく折りたためる。
けれど、いつまでたってもこなちゃん、そして一緒にいるはずのお姉ちゃんは廊下を進んでこなかった。
「あれ…?」
不思議に思って少しだけ顔を出してみると、廊下にはこなちゃんどころか誰一人歩いていなかった。
「つ、つかささん…、あの…苦しい…です…」
ぽんぽん腕を叩かれて下を見るとお腹のあたりに抱きしめたままのゆきちゃんがいた。
「わぁっ!!ご、ごめんねゆきちゃん!!」
絡めていた腕を離すと酸欠のせいかゆきちゃんの顔は真っ赤になっていた。しかもなんだか息まで荒い。
「本当にごめんね!!」
「それはいいんですが…むしろ…。ぁ、いえ、なんでもありません!
…それより、泉さんたちは屋上に行ったのではないでしょうか?
区切りを付けたこなちゃんが話しかけてきた。
「いやいや、それでどしたの?」
え、えーとなんて言おう。まさかこなちゃんにこなちゃん達のことを日記に書いて欲しいと
言われたなんて言えないし、もし気づかれてしまったらそのことを意識してしまって普段のこなちゃん達に
ならないかもしれない。秘密にしておこう。そう心に決めて小さく頷いた。
「え、えーとね、田村さんに頼まれたことがあるの!」
「へ?ひよりんがつかさに?珍しいね?」
こなちゃんが目を丸くしてびっくりしている。それはお姉ちゃんもゆきちゃんも同じで
どれくらい意外なことかということが表情だけで伝わって来た。
そうだよね…。私もびっくりしたし、驚かないわけがない。
「そうなの!なんだか田村さん、孫の手も借りたいぐらい忙しいみたいで!
…んと、なにか思いついたことがあったらこれに書いて欲しいって!」
「孫の手を借りてどーすんのよ…」
「つかささん、孫ではなくて猫ですよ」
「みゆきさん、野暮なことは言いっこなしだよ。天然なつかさが可愛いんだから」
「そんなこと言って、この先ずっと間違えたまんまだったらあんたのせいよ?」
一度しまったノートを取り出して説明すると、みんな納得してくれたみたいだった。
嘘を吐くことは苦手だからなるべく本当のことを話して、知られたくないことだけは
少しだけぼかして言う。いつの間にか話はノートや田村さんの話から
焦りでうまく働かない頭を懸命に働かせながら出来る限り体を小さく折りたためる。
けれど、いつまでたってもこなちゃん、そして一緒にいるはずのお姉ちゃんは廊下を進んでこなかった。
「あれ…?」
不思議に思って少しだけ顔を出してみると、廊下にはこなちゃんどころか誰一人歩いていなかった。
「つ、つかささん…、あの…苦しい…です…」
ぽんぽん腕を叩かれて下を見るとお腹のあたりに抱きしめたままのゆきちゃんがいた。
「わぁっ!!ご、ごめんねゆきちゃん!!」
絡めていた腕を離すと酸欠のせいかゆきちゃんの顔は真っ赤になっていた。しかもなんだか息まで荒い。
「本当にごめんね!!」
「それはいいんですが…むしろ…。ぁ、いえ、なんでもありません!
…それより、泉さんたちは屋上に行ったのではないでしょうか?
他に行く場所もありませんし…」
屋上…。考えてみればそうかもしれない。これより上の階には音楽室やパソコンルームとかの
特別教室しかないし…。まだ午後の授業までは時間があるから…。ひとつ頷いて、ゆきちゃんと
一緒に私はまた歩きだしたのだった。
焦りでうまく働かない頭を懸命に働かせながら出来る限り体を小さく折りたためる。
けれど、いつまでたってもこなちゃん、そして一緒にいるはずのお姉ちゃんは廊下を進んでこなかった。
「あれ…?」
不思議に思って少しだけ顔を出してみると、廊下にはこなちゃんどころか誰一人歩いていなかった。
「つ、つかささん…、あの…苦しい…です…」
ぽんぽん腕を叩かれて下を見るとお腹のあたりに抱きしめたままのゆきちゃんがいた。
「わぁっ!!ご、ごめんねゆきちゃん!!」
絡めていた腕を離すと酸欠のせいかゆきちゃんの顔は真っ赤になっていた。しかもなんだか息まで荒い。
「本当にごめんね!!」
「それはいいんですが…むしろ…。ぁ、いえ、なんでもありません!
…それより、泉さんたちは屋上に行ったのではないでしょうか?
食堂は廊下の一番端の階段を降りた先で、お昼時には何人もの生徒でいっぱいになってしまう。私たちも
たまに使うけれど、普段お弁当を持ってきているせいかその頻度は普通の生徒よりはちょっと少ないくらい。
だけど、そのたまに食べる学食は値段の割に量も多くて味も結構美味しくて、生徒だけじゃなくて
先生たちも頻繁に利用しているみたいだ。だから、私たちが隅の方にいたとしても気づかれないはず――。
そんなことを考えながら歩いていると、廊下の先、10メートルぐらいの所に蒼い髪がちらりと
踊るのが見えた。
「こ、こなちゃん!?」
「ひゃぁっ!?つかささん!?」
慌ててゆきちゃんのセーラー服の裾を引っ張って抱きしめるみたいにして縮こまって
一緒に目の前にある柱に身を隠した。顔は見えなかったけれど
この学校にあんなに綺麗な蒼くて長い髪の持ち主はこなちゃんしかいない。
トイレはちょうど今進んでいる方の正反対にあるから、もし見つかっちゃったらなんて言い訳したらいいんだろう?
焦りでうまく働かない頭を懸命に働かせながら出来る限り体を小さく折りたためる。
けれど、いつまでたってもこなちゃん、そして一緒にいるはずのお姉ちゃんは廊下を進んでこなかった。
「あれ…?」
焦りでうまく働かない頭を懸命に働かせながら出来る限り体を小さく折りたためる。
けれど、いつまでたってもこなちゃん、そして一緒にいるはずのお姉ちゃんは廊下を進んでこなかった。
「あれ…?」
不思議に思って少しだけ顔を出してみると、廊下にはこなちゃんどころか誰一人歩いていなかった。
「つ、つかささん…、あの…苦しい…です…」
ぽんぽん腕を叩かれて下を見るとお腹のあたりに抱きしめたままのゆきちゃんがいた。
「わぁっ!!ご、ごめんねゆきちゃん!!」
絡めていた腕を離すと酸欠のせいかゆきちゃんの顔は真っ赤になっていた。しかもなんだか息まで荒い。
「本当にごめんね!!」
「それはいいんですが…むしろ…。ぁ、いえ、なんでもありません!
…それより、泉さんたちは屋上に行ったのではないでしょうか?
食堂は廊下の一番端の階段を降りた先で、お昼時には何人もの生徒でいっぱいになってしまう。私たちも
たまに使うけれど、普段お弁当を持ってきているせいかその頻度は普通の生徒よりはちょっと少ないくらい。
だけど、そのたまに食べる学食は値段の割に量も多くて味も結構美味しくて、生徒だけじゃなくて
先生たちも頻繁に利用しているみたいだ。だから、私たちが隅の方にいたとしても気づかれないはず――。
そんなことを考えながら歩いていると、廊下の先、10メートルぐらいの所に蒼い髪がちらりと
踊るのが見えた。
「こ、こなちゃん!?」
「ひゃぁっ!?つかささん!?」
慌ててゆきちゃんのセーラー服の裾を引っ張って抱きしめるみたいにして縮こまって
一緒に目の前にある柱に身を隠した。顔は見えなかったけれど
この学校にあんなに綺麗な蒼くて長い髪の持ち主はこなちゃんしかいない。
トイレはちょうど今進んでいる方の正反対にあるから、もし見つかっちゃったらなんて言い訳したらいいんだろう?
焦りでうまく働かない頭を懸命に働かせながら出来る限り体を小さく折りたためる。
けれど、いつまでたってもこなちゃん、そして一緒にいるはずのお姉ちゃんは廊下を進んでこなかった。
「あれ…?」